GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-41「決意の戦場」
世界への攻撃を繰り返すキラのフリーダム。彼は地球連合の中央本部の付近にまで迫っていた。
「まずはここを壊して、連合の機能を止める・・・」
本部の建物を見据えて、キラが敵意を募らせる。フリーダムがビームライフルを手にして加速する。
フリーダムの接近に気付いた中央本部から、「ストライクダガー」や「ウィンダム」など、MSが続々と出撃してきた。
「何が出てきても・・僕を止めることはできない・・・」
キラが低く呟いて、フリーダムがビームライフルを発射する。フリーダムの的確な狙撃が、ウィンダムたちを次々に撃ち抜いていく。
回避するばかりか攻撃を仕掛けることさえもままならず、ウィンダムたちは一気に劣勢に追い込まれた。
連合とフリーダムの交戦が始まったことは、ミネルバとネフィリムに伝わっていた。
「始まったわね・・ここからはさらに気を引き締めないと・・」
ミーナが言いかけて、ルナマリアたちが頷く。
「出撃準備に入ります。ソラ、ハル、行くわよ。」
ミーナに言いかけてから、ルナマリアがソラとハルに呼びかける。
「はいっ!」
ソラとハルが答えて、ルナマリアとともにドックに向かった。
「マイ、シンくんはまだ部屋にいるわね?」
「はい。部屋から外には出ていません。」
ミーナから言われて、マイがモニターを確認する。
(今のシンくんには、キラ・ヤマトとの戦いは酷だわ。艦長としては外に出すわけにはいかない・・)
シンのことを気遣いながら、ミーナはミネルバでの指揮に集中する。
「各機発進。一気にスピードを上げて、極力接近して攻撃を仕掛ける。」
「了解!」
ミーナが出した指示にマイが答えた。
同じ頃、ネフィリムも出撃準備を進めていた。
「ダークスは1機も出すな。出るのはジャッジだけだ。ネフィリムもフリーダムには近づくな。」
「おい、ブラッド!・・お前だけじゃ危険だぞ!」
呼びかけるブラッドにドギーが抗議の声を上げる。
「ダークスで大勢で攻めても、格好の的にされるだけだ。お前たちは後方支援に徹しろ。無駄死にしたくなければ・・」
ブラッドはドギーたちに忠告してからドックへ向かう。彼はジャッジに乗り込んで、発進に備える。
(シン、お前だけに負担をかけてしまった・・今はオレがフリーダムを止めてみせる・・・)
ブラッドが心の中でシンへの思いと決意を呟いた。
「ブラッド・J・クロノス、ジャッジ、発進する!」
ブラッドの駆るジャッジがネフィリムから発進した。
それぞれの機体に乗り、発進準備を整えていたルナマリア、ソラ、ハル。そんな中、ハルがソラに声をかけてきた。
「ソラ・・絶対に生きて帰ろう。僕たちも、みんなの平和の中に入っているから・・」
「分かってる・・もう、理不尽にされるのはイヤだから・・・」
ソラが真剣な面持ちで答えて、気を引き締めなおす。
「ねぇ、ハル・・この戦いが終わって落ち着いたら・・どこかお出かけしよう・・」
「えっ・・・!?」
ソラが突然投げかけてきた誘いに、ハルが動揺を覚える。彼はまた気持ちを落ち着けて答えようとした。
「ソラ、ハル、発進するわよ!」
「は、はいっ!」
そこへルナマリアが呼びかけて、ハルが我に返って答える。ソラもハルからの答えを聞くことなく、戦いに専念することになった。
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、いくわよ!」
「ソラ・アオイ・・」
「ハル・ソーマ・・」
「ファルコン、出ます!」
ルナマリアのコアスプレンダー、ソラとハルのファルコンがミネルバから発進する。続けて発進したチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットとコアスプレンダーが合体して、フォースインパルスとなる。
「僕たちがスピードを上げて注意を引き付けます。ルナマリアさんとブラッドさんはその隙を狙ってください!」
「分かったけど、深追いは禁物よ、2人とも!」
ハルが呼びかけて、ルナマリアが答える。ファルコンが先行して、フリーダムに向かっていく。
ファルコンの接近にキラが気付く。フリーダムがビームライフルで射撃を仕掛けるが、ファルコンは素早い動きでかいくぐる。
「今だ、ルナマリア!」
「えぇ!」
ブラッドが呼びかけて、ルナマリアが答える。ジャッジとインパルスがビームライフルを構えて、ビームを発射する。
キラが反応し、フリーダムがビームをかわして即座にビームライフルを発射する。フリーダムの射撃が、ビームライフルを持つインパルスの右腕を撃ち抜いた。
「うわっ!」
「ルナマリア!」
衝撃にあおられてうめくルナマリアに、ブラッドが声を上げる。フリーダムがビームサーベルに持ち替えて、ジャッジに飛びかかる。
ブラッドが駆るジャッジがレールガンを発射する。フリーダムもレールガンを発射して、ビームを相殺する。
「キラ!」
ソラが言い放ち、ファルコンが戦闘機から人型に変形して、ビームサーベル2本を手にして飛びかかる。1本のビームサーベルを受け止めたフリーダムに向けて、ファルコンがもう1本のビームサーベルを振りかざす。
フリーダムが後ろに動いて、ファルコンの一閃をかわす。同時にフリーダムはレールガンを発射する。
「ハル!」
「分かってる!」
ソラが呼びかけて、ハルが反応する。ファルコンが素早く動いて、フリーダムのビームをかわす。
「新しいファルコン・・スピードだけなら、ホントにフリーダムに負けていないみたいだ・・!」
ハルは改めて、ファルコンのスピードを実感した。フリーダムが再びビームライフルを手にする。
フリーダムが立て続けにビームを発射していく。ビームを回避するファルコンだが、フリーダムに近づくことができない。
「これじゃ近づけない・・・!」
「私に代わって!近づけないなら狙い撃ちする!」
焦りを覚えるハルにソラが呼びかける。
「ソラ・・分かった!操縦交代!」
「交代承認!」
ハルが頷いて、ソラにファルコンのコントロールを譲渡する。ファルコンがビームライフルに持ち替えて構える。
「近づけなくても、私が撃つ!」
ソラが言い放ち、ファルコンがビームライフルを発射する。フリーダムのビームとぶつかり合いビームが相殺される。
そこへブラッドが狙い、ジャッジがビームライフルを発射する。キラが反応し、フリーダムが射撃を続けながら回避行動を取る。
「ミネルバ、チェストフライヤー、フォースシルエットを!」
「はいっ!」
ルナマリアが呼びかけて、マイが答える。インパルスが分離して、破損したチェストフライヤーがフォースシルエットとともにフリーダムに向かっていく。
「同じ手は通じない・・・」
キラが言いかけて、フリーダムがドラグーン以外の全ての銃砲を一斉に発射する。チェストフライヤーがビームを受けて爆発を起こす。
その間にコアスプレンダーがレッグフライヤー、峰るアカら新たに射出されたチェストフライヤー、フォースシルエットと合体を果たす。
「今のように一気に撃ち落としてくる!気を付けろ!」
ブラッドが檄を飛ばして、ルナマリア、ソラ、ハルが頷く。
「できる限り散開して、一斉放射での全滅を避けるのよ!いくらあのキラでも、こちらが他方に散れば・・!」
ルナマリアも呼びかけて、インパルス、ジャッジ、ファルコンが散開する。しかしキラは動じることなく、3機の位置を把握していた。
ルナマリアたちがキラと交戦する中、ミネルバは距離を取り、接近しようとはしなかった。
「これ以上の接近は迎撃されるだけ。タンホイザーは威力があるけど、フリーダムなら回避はたやすい・・」
思考を巡らせるミーナだが、ミネルバがフリーダムに対する有効な攻撃もそのチャンスも極めて少ないと痛感していた。
「援護しかできないのが、とても悔しいわ・・・!」
「艦長・・・」
歯がゆさを浮かべるミーナに、マイが戸惑いを覚える
「このままルナマリアたちの援護を続けて。フリーダムの動きに注意して。」
「は、はいっ!」
ミーナが冷静さを保って指示を出し、マイが答える。ミネルバはネフィリムとともに、ルナマリアたちの援護に徹した。
ミネルバでの自室にいたシン。戦闘が行われていることに気付いていた彼だが、戦う決意に揺らぎがあった。
(みんな戦ってる・・世界を・・何よりオレを守ろうとして・・・)
ルナマリアが守ってくれていることを実感するシン。
(オレもみんなを守るために戦ってきた・・だけどそのために、みんなを傷付ける敵を生み出す結果を作っている・・・)
自分たちの戦いが新たなる戦いを呼んでいると思い、シンは苦悩を深める。キラを倒してもまたよみがえってくるかもしれないと、彼は考えていた。
(オレたちの戦いに終わりが来ない・・それじゃ、オレがやってきたことは、いったい・・・)
絶望に打ちひしがれていくシン。彼は込み上げてくる迷いを振り切ることができないでいた。
(それでもオレは・・戦わないといけないのか・・・)
戦う理由を見定めることができず、シンは立ち上がることができないでいた。
キラのフリーダムに対し、ルナマリアたちはスピードでかいくぐる。しかしフリーダムのほうがスピードは格段に上だった。
「フリーダム・・ますます動きがよくなっている・・・!」
「でも退けない・・退けばキラは、さらに世界を壊していく・・・!」
ブラッドが毒づき、ソラが意思を強く示す。フリーダムが放つビームが、ジャッジの装甲をかすめ始めた。
「僕はここで立ち止まるつもりはない・・敵を全て倒す・・・!」
キラが呟いて、フリーダムが右手にビームサーベル、左手にビームライフルを手にして、ジャッジを狙って向かっていく。
「オレを狙ってくるか・・!」
ブラッドが声を荒げて、ジャッジがビームライフルとレールガンを発射する。フリーダムはビームの隙間を縫ってかわす。
フリーダムがビームライフルを発射して、ジャッジが紙一重でかわす。その一瞬の隙を狙って、フリーダムが飛び込みビームサーベルを振りかざす。
「ぐっ!」
フリーダムの一閃でジャッジが左腕を切り裂かれる。その直後、ジャッジがフリーダムの右腕に組み付いた。
「今だ!お前たち、撃て!」
ブラッドがルナマリアたちに向けて呼びかける。ジャッジがフリーダムを押さえている間に、インパルスとファルコンに撃たせようとした。
そのとき、フリーダムが左足を振りかざし、発したビームブレイドでジャッジの右腕を切り裂いた。
「何っ!?」
驚愕の声を上げるブラッド。腕を失ったジャッジに、フリーダムがビームサーベルを突き立てようとする。
「ブラッドさん!」
ソラが叫び、ファルコンがビームライフルを連射してフリーダムに向かっていく。間にビームが飛び込み、ジャッジがフリーダムから離れる。
「キラ・ヤマト・・あなたはいつまでも!」
ソラが怒りを言い放ち、ファルコンがビームを放ちながらフリーダムに迫る。フリーダムが眼前まで来たファルコン目がけて、ビームサーベルを振り下ろす。
「ハル、交代!」
「交代承認!」
ソラが呼びかけて、ハルがファルコンを動かす。ファルコンが右手をビームサーベルに持ち替えて、フリーダムのビームサーベルを受け止める。
「そこっ!」
ハルが言い放ち、ファルコンが左手もビームサーベルに持ち替えて振りかざす。だがフリーダムが振り上げた右足のビームブレイドに弾かれる。
フリーダムがレールガンを展開して発砲する。至近距離での射撃をかわすことができず、ファルコンが直撃を受けて爆発の衝撃に押される。
「ぐあっ!」
「うわっ!」
ハルとソラがうめき、ファルコンが体勢を崩す。
「ハル!ソラ!」
ルナマリアが叫び、インパルスがビームライフルを手にしてフリーダムに向かっていく。しかしインパルスの射撃より、フリーダムのファルコンを狙っての射撃の体勢が速い。
そのとき、突如ビームが飛び込み、フリーダムとファルコンの間に割って入った。
「な、何っ!?」
驚きの声を上げるルナマリア。フリーダムの射撃が一瞬遅れたことで、ファルコンは回避が間に合い、体勢を整えることができた。
「危なかった・・でも、誰が・・!?」
「ミネルバでもネフィリムでも、ダークスでもない・・・!」
ハルとソラがビームが飛んできたほうに目を向ける。ファルコンたちの前に現れたのは、アテナのクレッセントとスーラのトリトンだった。
「えっ・・!?」
「あの、連合のMS・・アテナさんとスーラさん・・・!?」
クレッセントとトリトンの登場に、ソラとハルは驚きを隠せなくなる。アンジュの指示によって、ブルースカイ家の開発部がフライトシステムを組み込んだことで、2機は飛行を可能としていた。
「アテナ、スーラ・・どうしてあなたたちが・・・!?」
「私もスーラも、戦うことを決めたの・・世界や、シンのために・・・」
声を上げるソラに、アテナが自分たちの意思を口にする。
「オレたちは連合の命令に従うだけだったエクステンデッドだが、今はオレたちのために戦う。オレたちの意思でだ。」
スーラも自分の意思をソラたちに告げる。
「もしかして、アンジュが・・・アンジュったら、もう・・!」
アンジュが仕組んだことだと思って、ソラが気が滅入る。
「違うわ、ソラ。これは私が申し出たこと。アンジュはそれを聞き入れただけ・・」
するとアテナがソラに説明をしてきた。
「シンは私を助けようとしてくれた・・シンが私を戦場から遠ざけようとしてくれたのに・・私が戦いに出てくるのは、シンの気持ちを裏切ることになる・・それでも、私はじっとしていることはできなかった・・・」
「アテナ・・・でもそれじゃ・・・!」
「戦いに来たけど、死のうなどとは思ってはいない・・生き残って、残った命の限り生き抜いていく・・・」
困惑を見せるソラに、アテナがさらに意思を口にしていく。
「だからオレたちは戦う・・戦って、必ず生き抜く・・・!」
「スーラ・・アテナ・・・」
続けてスーラも言いかけて、ソラが戸惑いを見せる。
「ソラ・・2人の思いも、もう止められないよ・・僕たちの決意と同じように・・・」
ハルが気分を落ち着けて、ソラに呼びかける。
「どうしても死なせたくないなら、僕たちがみんなを守るんだ・・・!」
「ハル・・・みんな、しょうがないんだから・・・」
呼びかけるハルに、ソラが呆れて肩を落とす。彼女は開き直るように、フリーダムとの戦闘に集中する。
「立ちはだかるなら、誰だろうと倒すだけ・・・!」
アテナとスーラの出現にも動じず、キラが戦いに集中する。
「アテナ、スーラ、ここまで来てしまったのなら仕方ないわ・・私たちとミネルバの指示に従うように・・・!」
「オレたちはわがままでここに来ている・・指示に従う・・」
ルナマリアの言葉にスーラが答える。クレッセントがビームライフルを、トリトンが2本のビームサーベルを構えて、フリーダムと交戦しようとしていた。
次回予告
守りたいものがある。
それは誰の心にもあり、強いほどに止められない。
その先にあるのが破滅の未来しかなくても、果てしない道ばかりだとしても。
戦う運命を受け入れた者に、新たな決意が宿る。
平和への海を、突き進め、トリトン!