GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-35「不動の意思」
ルナマリアたちを追い込んでいたイザークたちだが、新たにマークデスティニーに乗って駆けつけてきたシンに行く手を阻まれた。
「たとえどれだけ力と速さがあろうと、オレを仕留められると思うな!」
イザークが言い放ち、ザクがビームサーベルを手にしてデスティニーに飛びかかる。シンは反応し、デスティニーが素早く動いて、グフのビームサーベルをかわす。
その後すぐにグフがビームウィップを伸ばして、デスティニーの左足に巻きつける。
「もらった!」
イザークが叫び、グフがデスティニーに向けてビームガンを発射する。
そのとき、ビームウィップを巻きつけられているデスティニーの左足から光が発せられた。その光がビームウィップを切り裂いた。
デスティニーの足からは紅い光のビームブレイドが発せられていた。このビームブレイドでビームウィップを切り裂いたのである。
「あれはジャスティスの・・アイツ、アスランを・・・!」
デスティニーがジャスティスの武器を使っていることに、いら立ちを募らせていく。
「イザーク、落ち着け!あのデスティニーは前以上に武器だらけだぞ!」
ディアッカが呼びかけて、デスティニーへの注意を促す。
「だが、このままおめおめと引き下がれるものか!ヤツのために、アスランやプラントの希望を・・!」
イザークは引き下がろうとせず、グフがデスティニーに飛びかかり、ビームサーベルを振りかざす。デスティニーが掲げた左腕から発したビームシールドで、ビームサーベルを受け止める。
イザークが即座に反応し、グフがビームガンを連射する。するとデスティニーが左腕を押し込んでグフを突き飛ばすと、ビームソードを振りかざす。
ビームソードはビームサーベルを持つグフの右腕をなぎ払った。
「何っ!?」
「イザーク!」
驚愕するイザークに、ディアッカが声を荒げる。ザクがとっさにビーム砲を発射して、デスティニーをけん制する。
「くっ・・!」
その隙にイザークが反応し、グフがデスティニーから離れる。
「イザーク、お前は離れろ!今のお前に戦える武器がない!」
「ふざけるな!このままヤツらを野放しにするのか!?」
呼びかけるディアッカにイザークが不満をあらわにする。
「お前がやられたら、誰もアイツらを止められなくなる!お前なら部隊をまとめて、アイツらを止められる!」
「ディアッカ・・・!?」
ディアッカが口にする言葉に、イザークが眉をひそめる。
「ここはオレが食い止める!イザークは下がれ!」
「ディアッカ、何を言って!?・・隊長はオレだぞ!」
「命令違反なのは承知だ!そうしてくれていい!だからオレの言うことを聞け、イザーク!」
声を荒げるイザークにディアッカが呼びかける。
「オレがデスティニーを引き付ける!イザークは行け!」
「ディアッカ!」
ディアッカが呼びかけてイザークが声を上げる。ザクがデスティニーに向かっていって、ビーム砲を発射する。
「コイツら、どこまでも自分たちを押し付けて!」
シンがディアッカとイザークの行動に憤りを感じていく。
ビームをかわすデスティニーに、ザクがさらにビームを放つ。デスティニーもビーム砲を発射して、ビームを相殺する。
(チャージしないせいで威力が弱まるが、それでも連射ができるなら・・・!)
ディアッカが思考を巡らせて、ザクがさらにビームを発射していく。デスティニーがビームをかいくぐり、ザクに迫る。
「デスティニーは遠距離でも近距離でも戦える!」
シンが言い放ち、デスティニーがザクの前まで詰め寄ってきた。
「それにオレはもう、戦うことに迷ったりしない!」
デスティニーがビームブレイドを発している左足を振りかざしてきた。ディアッカがとっさに反応し、ザクが紙一重でかわすが、デスティニーは勢いと回転に乗せて、続けて左手を突き出してきた。
デスティニーのパルマフィオキーナが、ザクのビーム砲を破壊した。
「ぐっ!くそっ!」
ディアッカが毒づき、ザクがビームライフルを手にして発射する。デスティニーがビームを回避し、ビームブーメランを左手で持って投げつける。
「がっ!」
ザクが左のわき腹を切りつけられて、ディアッカがうめく。ビームブーメランが旋回し戻ってくる。
デスティニーがビームライフルを発射して、ビームブーメランに当てる。回転するビームブーメランが、ライフルのビームを拡散させる。
拡散したビームがザクに降り注ぐ。ザクに付けられた傷口からビームが入り込み、爆発を引き起こした。
「こ・・こんな・・・!」
ディアッカのいるコックピットにも閃光が広がった。ザクが爆発を引き起こして、宇宙の中に消えていった。
ディアッカに促されて、イザークはデスティニーから引き下がった。ディアッカに対してやるせなさと憤りを感じて、イザークが両手を強く握りしめる。
(アイツら・・このままには絶対にしておかんぞ・・必ず・・必ず・・・!)
激情を募らせていくイザーク。彼のグフは別の部隊と合流するため、移動を続けていた。
ジュール隊と連携していたザフトの部隊から、ネフィリムとブラッド、ダークスたちは活路を見出して前進していた。
「迷うな!一気に振り切って、ミネルバのところへ行くぞ!」
ドギーがクルーたちに呼びかけて、戦況を見据える。
「オレが活路を作る!タイミングは一瞬だぞ!」
ブラッドが呼びかけて、ジャッジがビームライフルとレールガンを構える。
「邪魔をするな!」
ブラッドが叫び、ジャッジがビームを一斉に発射する。射線軸にいたザク、グフが次々に狙撃されて爆発していく。
「全速前進!ミネルバのところまで突っ走れ!」
ドギーが叫び、ネフィリムが一気に加速して前進していく。
「これ以上付きまとうなら、お前たちは全滅となる・・それでいいなら、オレが全員仕留めるぞ・・・!」
ブラッドがザフトの部隊に向けて忠告を送る。しかし部隊は攻撃の手を緩めず、ジャッジ、ダークスたち、ネフィリムを狙う。
「ならば全員消えろ・・・!」
ブラッドが目つきを鋭くして、ジャッジとダークスたちがさらに射撃する。さらに部隊の機体や戦艦が狙撃されていく。
ネフィリムは部隊の猛襲を振り切り、ミネルバを目指す。ジャッジとダークスたちも続いていった。
シンのデスティニーに助けられて、戦場を離れることができたミネルバ。そこへルナマリアのインパルスとソラのザクが追いついてきた。
「リアス艦長!」
「ルナマリア、ソラ・・無事だったのね・・・!」
ルナマリアが声をかけて、ミーナが安堵を覚える。
「デスティニーは・・シンくんは・・・?」
「まだ戦っています・・前のデスティニーを超えるパワーとスピードです・・・!」
ミーナの問いかけにルナマリアが答える。ミネルバのハッチが開いて、インパルスとザクが着艦する。
「すぐにインパルスを修理して!最低限で構わないから!」
ルナマリアがインパルスのコックピットから出て、整備士たちに呼びかける。
「すぐにやれなくもないが、移動だけで戦闘はできやしませんぞ!」
「それでもいいから、早く!」
声を荒げる整備士にルナマリアが怒鳴る。
「わ、分かりましたよ!」
整備士たちが慌ただしく、インパルスの修理を始めた。
(今のデスティニーは強いけど、シンのほうは・・早く行かないと・・・!)
シンの身を案じるルナマリア。デスティニーを駆り高い戦闘力を発揮しているシンだが、キラたちとの戦いでの消耗からまだ回復していないのだった。
ディアッカのザクを撃破し、イザークグフを追いかけるシンのデスティニー。シンがグフの機影を捉えた。
「逃がさない・・これ以上、勝手なマネはさせない・・・!」
シンが目つきを鋭くして、デスティニーがグフに向けてビームライフルを発射する。
「アイツ!」
イザークが毒づき、グフがビームをかわす。
「貴様・・ディアッカはどうした!?」
「オレは倒す・・どんな敵とだって・・これ以上、大切な人を失わせないために!」
怒号を放つイザークに、シンが決意を言い放つ。デスティニーがビームソードを手にして、グフに飛びかかる。
「これでオレを倒して、全て丸く収まるとでも思ってるのか!?逆に世界を混乱させるだけだ!」
「そんなことで、オレはもう惑わされない・・戦いを終わらせるために、偽物の平和を打ち砕くために、オレはこの力を使う!」
イザークの投げかける言葉をはねつけるシン。デスティニーが振りかざしたビームソードが、グフの頭部をなぎ払う。
「もう前たちのようなヤツに、世界をムチャクチャにさせない!」
シンが言い放ち、デスティニーがビームソードをグフに突き立てた。光の刃がグフの胴体を貫いた。
「く、くそっ!・・・オレは・・こんなところで・・・!」
声を振り絞るイザークが、グフの爆発の光に包まれる。デスティニーがビームソードを引き抜いて、グフが爆発して宇宙に消えた。
(オレは戦う・・本当の平和のために、この運命を背負う・・・!)
揺るがない決意を強めて、シンは平静を保っていた。
そのとき、シンが突然意識を失って、コックピットの中で眠りについた。デスティニーも動きを止めて、宇宙でぐったりとした体勢になってしまった。
軽めの修理を受けたインパルスに乗って、ルナマリアはシンを探しに出た。ジュール隊は壊滅状態に陥り、騒然さは完全に消えていた。
「シン、どこにいるの!?応答して!」
ルナマリアがシンに向けて呼びかける。しかしシンからの応答はない。
(あれだけの力を発揮したデスティニーがやられるはずない・・シン自身に何かあったんじゃ・・・!?)
シンの体の心配を感じていくルナマリア。彼女はデスティニーの反応を必死に探る。
そのとき、インパルスのレーダーがデスティニーの反応を捉えた。
「デスティニー!・・シン!」
ルナマリアが呼びかけて、インパルスがデスティニーのところへ向かう。彼女の視界がデスティニーの姿を捉えた。
「シン!しっかりして、シン!」
ルナマリアが呼びかけるが、シンからの応答がない。
「シン、デスティニーの中で意識が・・・!?」
不安を一気に膨らませたルナアリア。インパルスがデスティニーを連れて、ミネルバに向かっていく。
「ミネルバ!シンを発見!機体は無事ですが、シンが意識を失っています!」
ルナマリアがミネルバに向けて呼びかける。
“今、ソラがザクでそちらに向かったわ。医療班にも連絡しているわ。”
「分かりました・・助かります・・」
ミーナの言葉を聞いて、ルナマリアが小さく頷く。デスティニーを連れているインパルスに、ソラのザクが向かってくる。
「ルナマリア!シンさん!」
「ソラ!」
ソラが呼びかけてルナマリアが答える。ザクもデスティニーを支えて、ミネルバに向かう。
そのとき、インパルスとザクのレーダーに、近づいてくる熱源を捉えた。
「これは、ミネルバとネフィリムの機体じゃない・・ロックされました!」
ソラが声を上げて、ルナマリアとともに目を向ける。ジュール隊所属のグフが、インパルスたちに向かってきていた。
「どこまでも性懲りもなく・・!」
ソラが憤りを覚えて、ザクがビームライフルを手にしてグフを迎え撃とうとした。
そのとき、ビームが飛び込んできて、グフが横から撃ち抜かれて爆発を起こした。
「えっ・・!?」
突然のことにソラが驚きを覚える。グフを狙撃したのは、駆けつけたジャッジだった。
「シン、ルナマリア、ソラ、大丈夫か・・!?」
ブラッドがルナマリアたちに声をかけてきた。遅れてネフィリムとダークスたちも駆けつけてきた。
「ブラッド・・・!」
「来るのが遅れてすまない・・オレたちもザフト部隊の襲撃を受けた・・ミネルバも攻撃を受けていることに気付き、包囲を突破してきた・・」
戸惑いを覚えるルナマリアに、ブラッドが事情を説明する。
「今はネフィリムに入れたほうがいい!2人も付いてきてくれ!」
「分かったわ。ミネルバにもそう知らせる。」
ドギーからも呼びかけて、ルナマリアが頷く。インパルスとザクがデスティニーを連れて、ジャッジとともにネフィリムに着艦した。
収容されたデスティニーのコックピットから、シンが引きずり出された。
「早く医務室に運ぶんだ!急げ!」
ジャッジから降りてきたブラッドが、医療班に呼びかける。インパルス、ザクから出てきたルナマリアとソラが、シンの身を案じて不安を浮かべる。
「シンはムチャしただけ・・しっかり休めば、必ず元気になる・・・」
「ルナマリア・・・」
声を振り絞るルナマリアに、ソラが戸惑いを感じていく。
「そう信じて・・私たちは、私たちのやることを・・」
「はい・・・」
ルナマリアが声をかけて、ソラが頷いた。
「ミネルバ、ただ今ネフィリム艦内にいます。シンはネフィリムにて療養中。」
ルナマリアがインパルスのコックピットから、ミネルバに連絡を入れる。
“よかった・・私たちもそちらへ行く。合流するわよ。”
「分かりました・・」
ミーナの言葉を聞いて、ルナマリアは通信を終える。
同じときにソラがザクのコックピットから、アンジュと連絡を取っていた。
「マークデスティニーにシンさんを乗せたの、アンジュだよね・・・?」
“お嬢様・・はい。シンさんの、みなさんを助けたいという強い意思に心を動かされて・・託すべきだと思いました・・大きな負担がかかると警告したのですが・・・”
ソラの問いかけにアンジュが深刻さを込めて答える。
「もういいよ・・結果的に、シンさんに助けられた・・・」
“申し訳ありませんでした・・お嬢様・・・”
「療養はこれからは、ザフトの管轄下で進めていく。アンジュはクライン派の残党が潜んでいないか、徹底的に調べて・・」
“分かりました・・お嬢様、シンさんをお願いします・・・”
アンジュとの通信を終えたところで、ソラがため息をつく。
(今はシンさんに負担をかけたらいけない・・私が、私たちが守らないと・・)
込み上げてくる様々な感情を抑えて、ソラは決意を秘めた。
ルナマリアから連絡を受けたミネルバは、ネフィリムとの合流を果たした。
「助かったわ。あなたたちがいなかったら、私たちもシンくんも・・」
「いや・・オレたちも、肝心なときにそちらへ行けなくて・・・」
感謝を示すミーナに、ドギーが頭を下げる。
「シンは眠っている。このままプラントに戻り、完全に回復させる。」
ブラッドもミーナにシンのことを話す。
「そのつもりよ。いくらあのデスティニーを動かして、私たちを助けてくれたといっても、シンくんの疲労は生易しくない。とても戦闘や任務に出られる状態じゃない・・」
「このままプラントに戻る。ミネルバは予定の任務を続けてくれ。」
「そうしたいけれど、艦の状態を万全にしないことには・・」
「そうか・・ネフィリムも似たような状態だ・・・」
ミーナに言われて、ブラッドが渋々納得する。
「いずれも、回復・改善が最優先のようだ・・」
「えぇ・・」
声を掛け合うブラッドとミーナ。2人はそれぞれネフィリムとミネルバで、プラントに戻ることになった。
次回予告
満身創痍のまま新たな力を振るったシン。
同じく傷を背負った仲間たちとの、束の間の休息。
交わされる思いが、互いの決意を強くしていく。
彼らの心に、曇りはない。
平和の空へ、飛び立て、ミネルバ!