GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-33「遠い幸せ」
地球を目指していたミネルバだが、尾行されていることにミーナたちは気づいていた。
「この機に乗じて狙ってくる敵がいるとは想定していたけど・・」
「あれ、ボルテール・・ジュール隊の、ザフトの艦ですよ・・・!」
呟きかけるミーナと、不安を浮かべるマイ。
「ボルテール・・ジュール隊・・離反してラクスたちに味方していた部隊ですよね・・・!?」
ソラが目つきを鋭くして言いかける。
「私たちがオーブやエターナルを倒したから、敵討ちに出てきたのかも・・ラクスを支持していた人は少なくないから・・」
ルナマリアが推測を口にする。
「ラクスたちが間違っているのは明らかなのに、どうしてこんなバカなことを・・・!」
「ずっと信じていたものは、簡単には切り捨てられない・・私たちと同じ人は、少ないのかもしれない・・・」
憤りを浮かべるソラに、ルナマリアが深刻な面持ちで言いかける。
「みんな、それぞれ答えを見つけていく・・でもそこに到達するまでに時間がかかるのも確か・・私もシンも、すぐに答えを出せたわけじゃなかったから・・・」
「ルナマリア・・・」
ルナマリアの言葉を聞いて、ソラが戸惑いを覚える。
「もしもボルテールが攻撃を仕掛けてくるなら、私たちも迎撃に出なければならない・・」
ミーナがルナマリアたちに向けて、真剣な面持ちで呼びかける。
「私たちはただやられるのを待っているつもりはない・・攻撃してくるなら、迎え撃つ・・たとえ、同じザフトでも・・」
「リアス艦長・・・出撃準備に入ります。」
ミーナの意思を聞いて、ルナマリアが指令室を出た。ソラもミーナに敬礼を送ってから、ドックに向かった。
ボルテールで、イザーク、ディアッカたちが出撃準備を整えていた。
「いいか!ボルテールはオレの命令があるまで出てくるなよ!オレたちが先に出て、ミネルバを包囲する!」
「はっ!」
イザークの呼びかけに部下のパイロットたちが答える。
「イザーク・ジュール、グフ、出るぞ!」
「ディアッカ・エルスマン、ザク、発進する!」
イザークのグフイグナイテッド、ディアッカのガナーザクウォーリアがボルテールから発進する。さらにボルテールからザクが続々を出撃する。
そしてイザークがミネルバに向けて通信を送る。
「ミネルバ、聞こえるか!貴様たちは包囲されている!全ての武装を解除して投降しろ!そうすれば攻撃を中止する!」
イザークがミネルバの向けて忠告する。彼の声はミーナたちに届いていた。
「ジュール隊の隊長、私たちはザフトが果たすべき理念にのっとって行動を取っただけ。その理念に反する敵を討っただけです。それを意に反するというのなら、私たちはザフトの理念の下、あなたたちを迎え撃たなければなりません・・」
ミーナが動じることなく、イザークに自分たちの考えを告げた。彼女の言葉がイザークをいら立たせた。
「きれいごとを口走って・・貴様らの馬鹿げたマネ、これ以上放っておくものか!」
イザークが声を荒げ、グフがビームソードを引き出す。
「先行部隊、攻撃だ!ミネルバを撃ち落とせ!」
イザークが言い放ち、ザクたちもミネルバに向かっていく。
「ルナマリア、ソラ、発進よ!」
ミーナが呼びかけて、ルナマリアとソラが発進に備える。
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」
「ソラ・アオイ、ザク、出ます!」
ルナマリアのコアスプレンダー、ソラの青色のザクウォーリアがミネルバから発進した。コアスプレンダーは続けて射出されたチェストフライヤー、レッグフライヤー、ブラストシルエットと合体して、ブラストインパルスとなる。
インパルスがビーム砲を発射して、イザークたちのグフ、ザクをけん制する。
「ミネルバに攻撃はさせない・・私たちが守る・・・!」
「ラクスたちの味方をしようとするアンタたちも、私たちは許さない!」
ルナマリアとソラがイザークたちに言い放つ。ザクがビームトマホークを手にして、グフたちに向かっていく。
「アイツら、調子に乗りおって・・ディアッカ、援護射撃だ!」
イザークがディアッカに呼びかけて、グフがザクを迎え撃つ。ビームトマホークとビームソードがぶつかり合い、激しく火花を散らす。
「イザーク、離れろ!」
ディアッカが呼びかけて、ザクがビーム砲を発射する。イザークとソラが即時に反応して、グフとザクが後ろに下がってビームをかわす。
「悪いけど、オレも余裕がないからな・・!」
ディアッカが呟いて、ザクがさらにビーム砲を放った。そこへインパルスが放ったビームが飛び込んできて、2つのビームがぶつかり合って相殺される。
「好き勝手にはさせない・・討たれるぐらいなら、ここであなたたちを討つ!」
ルナマリアが言い放ち、インパルスがミサイルランチャーを発射する。ディアッカのザクが動いてミサイルをかわす。
「ディアッカ、前に出るな!」
イザークが言い放ち、グフがインパルスを狙う。が、その前にソラのザクに行く手を阻まれる。
「アンタの相手は私だよ!」
「貴様・・オレをなめるな!」
言い放つソラにイザークがいら立ちを見せる。グフが振りかざしたビームソードが、ザクのビームトマホークをはじき飛ばした。
「えっ!?」
ソラが驚愕の声を上げ、ザクがグフのビームガンの射撃を受けて爆発を起こす。
「うっ!」
爆発の衝撃に襲われるソラ。ザクが体勢を整えられないまま、押されてデブリの1つに落下した。
(これが、隊長格の実力・・MSが強力なら、もっととんでもない力を出していたかも・・・!)
イザークの力量を痛感して、ソラが毒づく。イザークのグフがディアッカのザクと撃ち合いをしているインパルスに向かっていく。
「今度は貴様だ!ここで仕留める!」
イザークが言い放ち、グフがビームソードをインパルスに受けて振りかざす。インパルスがビームジャベリンを手にして、ビームソードを受け止める。
インパルスがビームジャベリンを振りかざして、グフを引き離す。だがグフがビームガンを発射して、インパルスのビーム砲に命中させてきた。
「うっ!」
ビーム砲が爆発して、インパルスが押されてルナマリアがうめく。
「ミネルバ、フォースシルエット!」
ルナマリアが呼びかけて、インパルスが押されながらもビームジャベリンをグフ目がけて投げつける。
ビームジャベリンはグフのビームソードの刀身を突き破った。
「くっ!・・アイツもなめたマネを・・!」
イザークが毒づき、グフが後退してディアッカのザクと合流する。
「イザーク!」
「オレは何ともない!・・ビームサーベルをよこせ!」
イザークはディアッカに言葉を返して、ボルテールに呼びかける。ボルテールからビームサーベルが出されて、グフが手にする。
一方、インパルスは損傷したブラストシルエットを外して、フォースシルエットと合体してフォースインパルスとなる。
「負けない・・負けられない・・ミネルバに、シンが帰ってくるんだから・・・!」
ルナマリアが声を振り絞り、インパルスがビームサーベルを手にして構えた。
眠りから覚めて体を起こしたシン。医師たちから診察を受けたシンは、見守っていたアンジュに目を向けた。
「あなた・・オレはいったい・・・」
「シンさん・・目が覚めて、本当によかったです・・・」
当惑を見せるシンに、アンジュが安心を見せる。アンジュは気持ちを落ち着かせてから、シンに事情を説明する。
「シンさん、あなたはあの戦いで意識を失って・・私たちにミネルバに運ばれて、この医療施設に運ばれました・・」
「そうだったのか・・アイツらは・・キラたちは・・?」
「倒れました。最後はあなたがフリーダムを押し込んで、エターナルに突っ込んで・・デスティニーは激しい損傷を受けましたが、あなたは意識を失っただけで無事でした。といっても、今までずっと眠り続けていたのですが・・」
「そうか・・・オレ・・やっと・・・」
アンジュからの説明を受けて、シンはキラたちを倒したことを実感する。ようやく自分が追い求めていた真の平和を取り戻せたと、彼は思っていた。
「みんなは・・ミネルバは・・・?」
「アテナさんたちをプラントに連れてくるために、戦闘の後処理を兼ねて地球へ・・ネフィリムも別の宙域へ・・」
シンの問いかけにアンジュが答える。
「ハルさんはこの施設の別室にいます・・デスティニーとファルコンは損傷が激しい状態で・・・」
「そうか・・オレは今は、戦うことはできないのか・・・」
さらにアンジュから話を聞いて、シンは今の自分にできることがないと思った。
「今は体を休めてください、シンさん。お嬢様やルナマリアさんたちを信じましょう。」
「アンジュさん・・あぁ・・」
アンジュに言われて、シンは頷いてベッドに横になった。
「あなたのことをミネルバに知らせてきます。少し失礼します。」
アンジュが1度シンのいる病室を出て、ミネルバとの通信を取ろうとした。
「ミネルバ、今よろしいでしょうか・・?」
“右舷被弾!ザク、さらに3機接近!”
言いかけたアンジュの耳に、戦闘をしているミネルバからのマイの状況報告が入ってきた。それを聞いた途端、アンジュが一気に緊迫を膨らませた。
「ミネルバ!どうしたのですか、ミネルバ!?お嬢様!」
たまらず声を荒げて呼びかけるアンジュ。彼女の呼び声は、病室にいたシンの耳にも入ってきていた。
「ミネルバ・・ルナ・・みんな・・・!」
ミネルバの危機にシンも不安を膨らませていた。
ミネルバとジュール隊の攻防。インパルスとグフが交戦する中、ディアッカたちザクがミネルバに迫っていた。
「トリスタン、イゾルデ、ってぇ!」
ミーナが号令を飛ばし、ミネルバが射撃、砲撃を仕掛けてザクを撃退していく。しかし他のザクが次々に執拗に攻め立ててくる。
(数でこちらを攻めてきている・・このままでは時期に追い詰められることになる・・・!)
ミーナが戦況を分析して危機感を募らせていく。
(早く潜り抜けないと・・このままでは、撃墜される・・・!)
打開の糸口を必死に探るミーナ。ミネルバが迫り来るザクたちから離れようとする。
「逃がさないぞ、お前ら!」
ディアッカが言い放ち、ザクがビーム砲を発射する。放たれたビームがミネルバの右舷に直撃する。
「ミネルバ!・・このままじゃミネルバが・・・!」
ルナマリアが焦りを募らせて、インパルスがグフの前から離れてミネルバに向かう。
「逃がすか!」
イザークが言い放ち、グフもインパルスを追う。グフがビームガンを発射して、ルナマリアが反応して、シールドでビームを防ぐ。
「邪魔しないで!このままじゃミネルバが!」
ルナマリアが言い放ち、インパルスがビームライフルを手にして発射する。しかしグフに素早く回避される。
「その程度でオレを倒せると思うな!」
イザークが言い放ち、グフがインパルスに詰め寄ってビームサーベルを振りかざす。この一閃がインパルスのビームライフルをはじき飛ばした。
「えっ!?」
ルナマリアが驚愕の声を上げ、グフがさらにインパルスを攻め立てる。ビームサーベル同士でぶつかり合うも、インパルスはグフに押されていく。
「ザフトから離反した貴様らは、ここで打ち倒す!」
「このまま・・私たちは倒れるわけにいかない!」
イザークとルナマリアが言い放ち、グフとインパルスはさらなる激闘を繰り広げていった。
その頃、別の宙域を航行していたネフィリム。その最中、ネフィリムはミネルバがイザークたちからの攻撃を受けていることを捉えた。
「ブラッド、ミネルバが・・!」
ドギーが声をかけて、ブラッドもレーダーを注視する。
「これは、ザフトの部隊・・クライン派の生き残りか、心を傾けたヤツらか・・・!」
「今のミネルバの戦力は量産機とインパルスだけ・・戦力が足りない・・・!」
ブラッドが言いかけて、ドギーが不安を口にする。
「ミネルバと合流する!救援だ!」
ブラッドが呼びかけて、ネフィリムをミネルバのいる地点に向かわせようとした。
「大変です!本艦の周辺に、複数の熱源が!ザフトの戦艦です!」
「何だとっ!?」
そこへオペレーターが声を上げて、ドギーが驚愕の声を上げる。
「オレたちも監視されていたか・・オレたちとミネルバを分断させるために・・・!」
ブラッドが相手の戦力と数を把握して毒づく。
「全速力でも単純に突破するのは不可能だ・・ジャッジで出る!」
「ブラッド!」
指令室を飛び出したブラッドに、ドギーが声を荒げる。
「ダークスも発進準備だ!ここを突破する!」
「おおっ!」
ドギーの呼びかけにクルーたちが答える。ブラッドがジャッジに乗り込み、発進に備える。
「ブラッド・J・クロノス、ジャッジ、発進する!」
ブラッドの乗るジャッジがネフィリムから発進する。ダークスも続いて次々に出撃する。
「ネフィリムはミネルバのいる方へ進路を取り続けろ!オレたちが活路を開く!」
「分かった、ブラッド!」
ブラッドの呼びかけにドギーが答える。ネフィリムを取り囲んでいる戦艦からザク、グフが出撃してくる。
「ヤツらをネフィリムに近づけさせるな!こんな形で足止めされるわけにはいかない!」
ブラッドがダークスのパイロットたちに呼びかける。ジャッジがビームライフルを手にして、ザク、グフを狙撃していく。
ダークスもビームサーベルを手にして、ザク、グフを切りつけていく。
ジャッジとダークスが食い止めている間に、ネフィリムが前進しようとする。が、ザクとグフが続々と駆け付けて、ネフィリムの行く手を阻んでくる。
「くっ!これじゃキリがない・・!」
進みきれない事態にドギーが毒づく。ブラッドたちも敵対の意思を示してきたザフトの部隊に追い詰められていた。
ミネルバの危機を聞かされて緊迫したまま、アンジュは病室に戻ってきた。
「シンさん、すみません・・すぐに行かなくてはならないところがあります・・」
「ミネルバに、か・・・!?」
アンジュが声をかけると、シンも深刻な面持ちで言いかけてきた。
「・・・聞いていたのですか・・・!?」
「聞こえてしまったって、言ったほうが正しいんだけど・・・」
さらに緊張を膨らませるアンジュに、シンが言葉を返す。
「行かないと・・このままじゃみんなが・・・!」
「気持ちは分かりますが、意識が戻ったばかりです・・すぐに戦闘や、MSの操縦は危険です・・!」
ベッドから起き上がろうとするシンを、アンジュが呼び止める。
「だけど、このままじゃミネルバが、みんなが・・・!」
しかしシンは思いとどまろうとせず、病室を出ようとする。
「みんなが危険になっているのに、おとなしくしているくらいなら、死んだほうがマシだ・・これ以上、大切な人を失うのは、耐えられない・・・!」
「だからって、あなたに何かあっては、今度はみなさんが辛くなります・・・!」
自分の思いを口にするシンに、アンジュが言いとがめる。
「それでも、オレはみんなを見殺しには・・・!」
「シンさん・・そこまであなたは・・・!」
引き下がろうとしないシンに、アンジュは心を揺さぶられていく。ルナマリアたちを助けたいというシンの思いは揺るがない。
「そこまでの覚悟と決意でしたら・・あなたに託してもいいかもしれません・・」
「アンジュさん・・・?」
話を切り出したアンジュに、シンが疑問を投げかける。
「ついてきてください、シンさん・・あなたに、託したいものがあります・・」
真剣な面持ちで言いかけるアンジュに、シンも緊張を感じていた。
次回予告
無力を呪い、悲劇を終わらせようと求めた力。
今はその力を、大切なもののために使う。
そのためならどんな苦難も受け入れる。
満身創痍の中、シンは戦いに舞い戻る。
決意の力、身にまとえ、デスティニー!