GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-30「決着」
アスランの思いを受け止めたキラ。フリーダムが再びミーティアを装備した。
「僕は僕だけじゃない・・ラクスやカガリ、アスラン・・みんながいるから!」
キラが言い放ち、フリーダムがデスティニー目がけて銃砲を一斉発射する。
「オレはもう迷わない・・みんなの願いが引き裂かれないために・・・!」
シンも家族や仲間の思いを背に受けていた。デスティニーが素早く動いて、フリーダムのビームをかいくぐる。
(アンタたちのせいで、オレは何もかも失った・・アンタたちが、オレの悲劇の源なんだ・・・!)
戦いの中、シンがこれまでの記憶を呼び起こしていく。
オーブが戦渦に巻き込まれて、シンは家族と一緒に戦いに巻き込まれた。避難しようとしていた彼らだが、その途中に戦火が飛び込み、両親とマユは命を落とした。
このときシンは呪った。家族を殺した敵を、戦争を。そして何もできなかった自分の無力さを。
強さを求めて軍人となったシン。平和を壊した戦争とオーブを強く憎んだ。
再び起こった戦争に現れて、戦闘中の部隊の武力を次々に破壊していったキラ。
キラの駆るフリーダムによって、シンはまた大切な人を失った。ハイネが死に追いやられ、彼が守ろうとしたステラも手にかけた。
そして仲間のレイ、上官であるタリア、そして自分を導いてくれたデュランダルさえも死に追いやられた。シンも敗北し、キラたちの力に1度は屈した。
だがブラッドやガルたちに檄を飛ばされて、シンは心の奥底に沈めていた決意を呼び起こした。本当の平和を取り戻すには、自分の大切なものを奪った敵を倒さなければならない。決して屈してはいけない。
新たに決意を固めたシンは、迷いを振り切り、キラたちやオーブを倒すことを心に誓った。
自分の抱いている意思が、レイやデュランダルとすれ違っているものかもしれない。それでも自分の意思を貫き、真の平和を取り戻そうとシンは思っていた。
そしてシンはルナマリアたちやブラッドたちとともに戦い、オーブを討ち、キラとの戦いを繰り広げていた。
「もうアンタに、誰も悲劇を味わわせない!」
数々の大切な人たちの思いを背に受けて、シンがキラを倒すために立ち向かう。
デスティニーがフリーダムに詰め寄り、ビームソードを振りかざす。キラが反応し、フリーダムがスピードを上げてビームソードをかわす
デスティニーもスピードを上げて、フリーダムを追撃する。デスティニーが振りかざしたービームソードが、ミーティアの左腕を切りつけた。
フリーダムが即座にミーティアの右腕を振りかざして、ビームソードを振りかざす。デスティニーがビームソードで受け止め、ミーティアのビームソードのビームが高周波によって拡散される。
その瞬間、フリーダムがカリドゥスを発射してきた。シンが即座に回避を取るが、デスティニーが右足を撃ち抜かれる。
「くっ!・・このっ!」
シンが毒づき、デスティニーが体勢を整える。フリーダムがミーティアとともにビームを一斉発射するが、デスティニーは素早くかわしてその上を取る。
デスティニーが振り下ろしたビームソードが、ミーティアに突き刺さった。
「うっ!」
キラが衝撃に襲われて、ミーティアの爆発でフリーダムが吹き飛ばされる。
(アスラン・・君と一緒でももう、シンを止められないの・・・!?)
ミーティアを破壊され、キラが心を揺さぶられていく。
「僕は・・僕たちは、ただみんなを守りたいだけなのに!」
キラが叫び、フリーダムが2つのビームライフルを組み合わせて、レールガンとして発射する。デスティニーはビームをかいくぐり、フリーダムに詰め寄る。
デスティニーが振りかざしたビームソードが、フリーダムのレールガンを切り裂いた。
「そのために、アンタたちはムチャクチャにした・・オレたちも、世界も、何もかも・・・!」
シンが低く言って、デスティニーがフリーダムに向けて左手を突き出す。デスティニーの左手がフリーダムの頭部をつかんで、パルマフィオキーナで破壊した。
キラが危機感を覚え、フリーダムが次の瞬間にビームサーベルを手にして投げつける。ビームサーベルがデスティニーの頭部に刺さって破壊する。
「キラ!」
「シン!」
爆発の衝撃でデスティニーとフリーダムが吹き飛ばされる中、シンとキラが感情を込めて叫んでいた。
キラのフリーダムの迎撃で1度体勢を崩されたが、ソラのドムは体勢を立て直して、エターナルに迫った。
「ライフルもバズーカも使えない・・一気に飛び込んで!」
ソラがいきり立ち、ドムがビームサーベルを手にしてエターナルに向かう。だがエターナルの迎撃でドムは近づくことができない。
「どこまでも往生際悪く・・・!」
攻めきれないことに毒づくソラ。そのとき、エターナルから放たれたビームが、ドムに向かって飛んでくる。
そのとき、そのビームが、別方向から飛んできたビームとぶつかってかき消された。
「今のは・・・!?」
「お嬢様!」
驚きを覚えるソラを助けたのは、駆けつけたアンジュのドムだった。
「大丈夫ですか、お嬢様!?」
「うん・・ありがとう、アンジュ・・!」
心配の声をかけてくるアンジュに、ソラが微笑んで答える。
「私は接近戦しかできない状態だから、アンジュ、援護をお願い!」
「分かりました!」
ソラの呼びかけにアンジュが答える。ソラのドムがスクリーミングニンバスを起動して、エターナルに向かう。
エターナルから飛んでくるビームをものともせずに、ドムがエターナルに迫る。さらに迎撃を仕掛けようとしたエターナルだが、アンジュのドムが発射してきたビームバズーカの砲撃で砲門が破壊される。
「いい加減にして!もうお前たちの思い通りにはならない!」
ソラが言い放ち、ドムがビームサーベルをエターナルの艦体に突き刺した。エターナルの艦体が爆発を起こす。
「もうお前たちには従わない!誰も従わせない!」
ソラが言い放ち、ドムがさらにビームサーベルでエターナルを切りつける。エターナルの爆発が、ラクスたちのいる指令室にまで及ぶ。
「ラクス様、早く脱出を!」
ダコスタがラクスを連れて、指令室から外の廊下を押し出す。
「あなたに何かあってはいけません!だから早く!」
ダコスタがラクスに呼びかけると、指令室と廊下をつなぐ扉が閉まる。指令室が爆発に巻き込まれたのを痛感して、ラクスが悲痛さを強める。
「みなさん・・・本当に、申し訳ありません・・・!」
込み上げてくる悲しみを振り切って、ラクスはドックを目指して廊下を走る。彼女は息詰まる廊下を走り、ドックにたどり着いた。
だがそのとき、機体や艦艇があったドックも爆発に巻き込まれた。その上部にドムが回り込んでいた。
「危なくなったら自分だけ逃げ出そうとする・・そんなふざけたマネ、私がさせない!」
怒りの声を上げるソラ。彼女のドムを目の当たりにして、ラクスが緊迫を高めた。
「お前はプラントの歌姫でも女神でもない・・世界の魔女・・・!」
ソラが低く言って、ドムがビームサーベルを突き出した。その刃の光がラクスを襲った。
シンとキラ、デスティニーとフリーダムの激闘の激化は頂点に達していた。
「終わらせる・・アンタたちがもたらす悲劇を、全て!」
シンが言い放ち、デスティニーがビームソードを構える。
「負けられない・・僕が・・みんなを守る!」
キラも言い放ち、フリーダムが突撃を仕掛けるデスティニーに向けて、全ての射撃、砲撃を一斉発射する。
「アンタが守るものが、全てをムチャクチャにする・・!」
シンが声を振り絞り、デスティニーが真っ向からフリーダムに向かって突っ込む。ビームを受けて翼や足を撃ち抜かれても、デスティニーは立ち止まることなく前進する。
そして、デスティニーのビームソードがフリーダムの胴体を貫いた。核エネルギーを含んだフリーダムのエンジンをとっさに切ったキラだが、完全にフリーダムを倒そうとするシンとデスティニーの前では意味のないことだった。
「違う・・僕は・・みんなを・・・!」
キラがデスティニーに向けて手を伸ばす。
「もう何も言うな・・アンタたちの言うことは、自分を押し付けるだけ・・・!」
シンが低く鋭く、キラの言葉をはねつける。デスティニーがフリーダムにさらにビームソードを押し込む。
そしてデスティニーがビームソードから手を放して、両手を突き出してフリーダムに叩き込む。両手のパルマフィオキーナがフリーダムの傷口をさらにえぐる。
「アンタたちを討つ・・今、ここで!」
力の限り叫ぶシン。デスティニーがパルマフィオキーナを発射したまま、フリーダムを全速力で押し込んでいく。
身動きの取れなくなったフリーダムが、爆発を起こしているエターナルまで押し込まれていく。
「ラクス・・・!」
キラがラクスを想う中、フリーダムがエターナルに押し付けられた。それでもデスティニーはフリーダムを押し込んでいく。
「ラクス・・・」
爆発と灼熱が入り混じる閃光の中、キラはこれまでの自分の記憶を呼び起こしていく。
戦いの中でのアスランとの再会。すれ違いを経て、ついには戦いを終わらせるために共闘することとなった。
かつてはアスランの婚約者だったラクスとの出会いと交流。
ラクスの言葉と助力に励まされて、キラは戦いを止めるために自身の力を使っていくと心に決めた。
自分たちのしていることで戦いを止められるなら、力を使っていくことを厭わない。キラはそう思っていた。
だが自分たちが戦いを止めようとしても、止まるどころか混迷は深まるばかり。それでも戦いを止めなければならないと、キラは自分に言い聞かせた。
それが過ちの根源であると、キラはシンたちから押し付けられた。
キラたちはいつしか、全てを乱す世界の敵になってしまっていた。
(僕は・・・僕は・・・)
心の中で声を上げるキラ。彼は真っ白な光の中にいるような感覚に襲われていた。
「キラ・・・!」
そのとき、キラはラクスの声を耳にして戸惑いを覚える。彼は目の前にラクスが現れたように見えた。
「ラクス・・・!」
キラが想いに突き動かされるように右手を伸ばす。
「キラ・・・」
「ラクス・・・」
ラクスとキラの伸ばした手が触れ合おうとした瞬間、白い光が2人の姿を完全に包み込んだ。
デスティニーに押し込まれて、フリーダムがエターナルに押し込まれる。フリーダムとエターナルが爆発を引き起こしても、デスティニーはさらに押し込もうとする。
元々持っていたキラたちへの怒りに揺るぎない決意が加わっている。自分のキラ打倒の意思に突き動かされるように、シンは感情をあらわにしていた。
フリーダム、エターナルの爆発が一気に強まった。巻き込まれるのも構わず、デスティニーは突撃を続ける。
爆発の光にデスティニーも消えていった。
「シンさん!」
ソラがシンに向かって叫ぶ。シンのデスティニーが爆発の中から出てこない。
「シンさん・・・!」
シンの身を案じてソラが困惑する。そこへルナマリアのインパルスがやってきた。
「シン・・・ソラ、シンは・・・!?」
「シンさんは今、フリーダムをエターナルに・・・!」
ルナマリアの問いかけに、ソラが困惑したまま答える。広がる爆発を見つめて、ルナマリアも心を揺さぶられる。
「シン・・応答して、シン!」
ルナマリアが呼びかけるが、シンからの応答はない。
「シン・・・!」
シンへの心配を募らせていくルナマリア。ソラもアンジュも爆発の中にいるはずのシンのデスティニーの機影を探る。
やがて爆発が弱まって小さくなっていく。フリーダム、エターナルの残骸が吹き飛ばされて散らばっていく。
そのとき、爆発の煙の中からデスティニーが飛び出してきた。
「シン!」
ルナマリアとソラがデスティニーを目撃して叫ぶ。インパルスとドムがデスティニーに向かう。
フリーダムとエターナルの爆発に至近距離で巻き込まれたため、デスティニーも激しく損傷していた。
「シン、しっかりして!シン!」
「大丈夫ですか、シンさん!?応答してください!」
ルナマリアとソラが呼びかけるが、シンからの応答がない。
「ミネルバまで運びましょう!私たちの機体も損傷しているのですから・・!」
アンジュが呼びかけて、ルナマリアとソラが頷く。インパルスとドムがデスティニーを支えてミネルバに向かう。
ミネルバに到着するまでの間も、ルナマリアたちがシンに呼び続けた。しかしシンからの応答がないままだった。
整備士たちが外からデスティニーのコックピットのハッチを開ける。コックピットにいたシンは意識を失って動かなくなっていた。
「シン、しっかりして!シン!」
ルナマリアがシンに駆け寄って呼びかける。しかしシンは目を覚まさない。
「医療班、急いで!治療の準備を!」
ルナマリアに呼びかけられて、医療班が駆けつける。ルナマリアとソラが医療室の前まで付き添う。
「私が見ても、体に傷はなかった・・大けがをしているということじゃないはず・・・!」
ルナマリアがシンの状態を口にする。それはシンが無事でいてほしいという彼女の自分への言い聞かせでもあった。
「ホーク隊長・・・」
ルナマリアの心境を察して、ソラが戸惑いを感じていく。
(私も信じないと・・やっとここまで・・ここまで来たんだから・・・)
ソラが心の中で祈りの言葉を呟いていく。
(ここで死んでしまうなんてありえない・・シンさん・・ハル・・・!)
そしてソラはいつしか、シンからハルのことを心配するようになっていた。彼女はたまらず医療室の前から離れていく。
「ソラ・・・」
シンを気に掛けたまま、ルナマリアはソラを見送っていた。
ミネルバの廊下の途中で立ち止まったソラ。彼女は困惑したまま窓から外を見つめる。
(シンさん・・・ハル・・私・・私たち・・・)
戦いを終えて勝利を得たにもかかわらず、ソラは胸を締め付けられるような気分に襲われていた。
「ハルさん、命に別状はないとのことです・・」
アンジュがやってきてソラに声をかけてきた。
「ハル・・よかった・・・」
ハルが無事であると聞いて、ソラは安堵していた。
「お嬢様・・・」
その彼女を見てアンジュも戸惑いを覚える。
「エターナルとアークエンジェルは撃墜。フリーダムもアカツキも撃破されましたね・・」
「うん・・これで私たちの・・シンさんの願っていた平和が戻ってくる・・・」
アンジュが投げかけた言葉にソラが頷く。
「オーブ、クライン・・世界を乱す敵がいなくなって、戦いのない世の中になった・・みんなが望んでいた、平和な世界に・・・」
ソラが宇宙を見つめながら呟いていく。
「私やハル・・シンさんが願い続けてきた平和が・・実現に・・・」
シンたちの戦いを思い起こして、ソラは心の揺らぎを抑えようとする。彼女はこれから本当の平和がやってくることを確信していた。
次回予告
戦いは終わった。
ここから先、真の平和が訪れる。
しかし戦いを終わらせた救世主は、眠りについたまま・・
未来の行き先はそれぞれが見出さなければならない。
答えは、それぞれの心の中に・・・
つながる思い、伝えよ、ハロ!