GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-29「運命と自由」
感覚を研ぎ澄ませたシンとキラ。デスティニーとフリーダムの動きが機敏となり、攻防が激化する。
フリーダムはビームライフルを手にして、ドラグーンも伴って、デスティニーを狙っていく。キラは接近戦を避けて、射撃と砲撃を駆使していた。
「あくまで距離を取って攻撃しようっていうのか・・・!?」
キラの戦い方を悟り、シンが目つきを鋭くする。
「それでオレを、やれると思うな!」
シンが言い放ち、デスティニーが残像を伴ってフリーダムに向かっていく。フリーダムが連続でビームを放っていくが、デスティニーは素早くかいくぐる。
詰め寄ってくるシンのデスティニーから、フリーダムを駆るキラは距離を取っていくのに必死だった。
ネフィリムからの砲撃を辛くもかいくぐっていくエターナル。
「私たちは、今ここで討たれるわけにはいきません・・私たちが討たれれば、世界は・・・!」
ラクスが戦況を見据えながら言いかける。
「いいえ!お前たちを討たなければ、世界は狂ったまま!」
彼女に反発してきたのはソラだった。彼女のドムがエターナルに向かってきた。
「いつもいつも、自分たちのすることが正しいことだと言い張って!お前の考えることが平和そのものだと、いつまでも思わないことだよ!」
「私たちは、そのつもりは・・・」
「いつまでも支配を続けるお前たちを、私たちは許しはしない・・・!」
ラクスの反論をはねつけるソラ。ドムがビームバズーカでエターナルを狙う。
「エターナルには手は出させない!」
そこへバルトフェルドのガイアが飛び込み、ビームライフルを発射して、ソラのドムをエターナルから引き離す。
「どうしてあんなヤツを守るの!?大切だというなら、アイツの間違いを止めるのが仲間じゃないの!?」
「大切な人だからこそ守るのだ!間違っているのは、お前たちのほうだ!」
「自分たちの間違いを正しいことだと言い張って!」
言い返すバルトフェルドにソラが怒りをあらわにする。ガイアとドムがビームサーベルをぶつけ合う。
「やっぱりお前たちは、滅ぼす以外に辿るべき道はない!」
「敵である者を全て滅ぼすのが平和への道・・お前もそう思うのか・・・!」
「お前たちがそれを言えるの!?」
バルトフェルドとソラが言い放ち、ビームサーベルのつばぜり合いを演じる。そこへファルコンとアンジュのドムが駆けつけて、ガイアに向けてビームを放ってきた。
「くっ!」
バルトフェルドが反応し、ガイアがドムを突き放してビームをかわす。
「ソラ、離れて!僕がそのMSの相手をする!」
ハルが呼びかけて、ファルコンが戦闘機型から人型に変形して、ガイアに向かっていく。
「ハル!」
ソラが叫ぶ中、ファルコンとガイアがビームサーベルをぶつけ合う。
「ハル・・ありがとう!」
ソラがハルに感謝して、ドムがエターナルに向かう。
「させるか!」
バルトフェルドが叫び、ガイアがビームサーベルを振りかざしてファルコンを引き離す。その隙にガイアがドムを追う。
エターナルに向かっていたソラのドムだが、ガイアに追いつかれる。
「こ、このっ!」
ソラが反応し、ドムがビームバズーカを発射する。だがガイアに素早くかわされていく。
「くっ・・こうなったら!」
ソラがドムのスクリーミングニンバスを起動させる。加速したドムがガイアに向けてビームバズーカを発射していく。
「相手になると厄介になってくるとはな・・・!」
ドムと戦うことに皮肉を覚えるバルトフェルド。ドムのビームバズーカからの砲撃を、ガイアがかいくぐっていく。
「だが負けるわけにはいかないのだよ!」
バルトフェルドが言い放ち、ガイアがドムの上を駆け抜けた。その瞬間、ガイアがドムの後頭部をビームサーベルで切りつけた。
「うわっ!」
ドムが損傷されて、ソラが衝撃に襲われてうめく。
「おとなしくしてもらうぞ!」
バルトフェルドがドムにとどめを刺そうとして、ガイアがビームライフルを発射する。体勢を崩しているドムは、回避が取れない。
「ソラ!」
そこへハルのファルコンが飛び込み、ソラのドムを横に突き飛ばした。ガイアのビームがドムを庇ったファルコンの左わき腹を撃ち抜いた。
「ハル!」
ファルコンが損傷し、ソラが叫ぶ。ファルコンのコックピットにも衝撃と爆発が襲い、ハルが意識を失う。
「ハル、大丈夫!?ハル!」
ソラが呼びかけるが、ハルからの返答がない。
「よくも・・よくもハルを!」
ソラがバルトフェルドに対して怒りを膨らませる。ドムが一気にスピードを上げて、ガイアに突っ込んでいく。
ガイアがビームライフルを発射していくが、スクリーミングニンバスを発動しているドムに弾かれていく。
ガイアがビームサーベルを手にして振りかざす。だがドムの突進力にサーベルがはじき飛ばされる。
「何っ!?おわっ!」
バルトフェルドが驚愕した瞬間、ドムのビームサーベルがガイアに突き刺さった。ドムの突撃に押されて、ガイアが突き飛ばされて火花を散らしていく。
「ラクス・・・キラ・・・お前たちは・・生き・・・ろ・・・!」
声を振り絞るバルトフェルドが、ガイアの爆発に巻き込まれる。ガイアが散る際の閃光を、ソラは息を乱しながら目の当たりにする。
「ハル・・・!」
ソラがハルを心配して、ドムがファルコンに向かう。既にファルコンにはアンジュのドムが支えていた。
「ハル・・私のために・・・!」
庇ってくれたハルに、ソラが胸を締め付けられるような気分に襲われる。
「お嬢様、ハルさんは私がミネルバに連れて帰ります・・お嬢様は大丈夫ですか・・・!?」
アンジュに声をかけられて、ソラが込み上げてくる感情を振り払う。
「私は大丈夫・・このままエターナルに向かう・・・!」
「お嬢様・・分かりました・・ハルさんを送ったら、すぐに戻ってきます・・・!」
言いかけるソラにアンジュが答える。アンジュのドムがファルコンを連れて、ソラのドムから離れていく。
(お願い、ハル・・無事でいて・・・!)
ハルの無事を祈りながら、ソラはドムを駆り、エターナルに向かっていった。
突撃を繰り返すシンのデスティニーに対し、キラのフリーダムは遠距離からの射撃、砲撃を行っていた。だがデスティニーに素早くかわされていく。
「僕は・・僕たちは戦いを終わらせたいだけなのに・・どうして、僕たちが・・・!?」
「アンタたちは道を外れた・・自分たちが戦いを激しくしていることにも気づかず、自分たちの勝手でたくさんの人の命を失わせた!」
互いに言い放つキラとシン。フリーダムがドラグーンも駆使していくが、四方八方のビームさえもデスティニーはかいくぐる。
「ハイネを死なせた!オレの家族やステラを殺した!レイやデュランダル議長の命を奪った!たくさんの命を奪っておきながら自分勝手なマネをするアンタたちを、いつまでも野放しにするわけにはいかないんだ!」
「だけど・・それでも戦いを止めないと・・!」
「その戦いを広げているんだよ、アンタたちは!」
言い返そうとするキラにシンが怒号を放つ。
「どこまでも自分を押し付けようとするアンタは、いなくなる以外に許されることはない・・・!」
「それでも・・戦いを終わらせるために・・・!」
鋭く言いかけるシンに、キラが自分の意思を示す。
「戦いを広げている君を・・僕が止める!」
キラが目つきを鋭くして、フリーダムがビームサーベルを手にする。彼はデスティニーに対して禁じ手となっている接近戦を行おうとしていた。
「オレが有利になる戦いになると、油断してくると思ったら、大間違いだぞ!」
シンが意思を強くして、デスティニーがフリーダムを迎え撃つ。キラはフリーダムで一気に飛び込み、デスティニーに接近した一瞬に機体に切りつけようとしていた。
デスティニーがフリーダム目がけてビームソードを振り下ろす。フリーダムはビームソードの高周波が及ぶ範囲のギリギリ外で回避して、ビームサーベルを振りかざす。
フリーダムのビームサーベルはデスティニーの手からビームソードを弾いた。
「くっ!」
シンが毒づきながらも、デスティニーが左手で右肩のビームブーメランをつかんで投げつける。キラが即座に反応して回避行動を取るが、ビームブーメランはフリーダムの右翼を切り裂いた。
デスティニーがビームソードを拾おうとするが、シンがキラのフリーダムの動きを警戒する。
「今度はこっちが、遠距離戦に持ち込もうとするなんてな!」
シンが皮肉を口にして、デスティニーがビーム砲を発射して、フリーダムをけん制する。立て続けに発射されたビーム砲のビームを、フリーダムがカリドゥスを発射して相殺する。
さらにフリーダムがドラグーンを動かしてビームを放つ。デスティニーは素早く動いて、的確にビームをかわしていく。
「これじゃキリがない!」
シンが毒づき、デスティニーが両肩のビームブーメランを投げつける。そしてデスティニーはすぐにビームライフルを手にして発射する。
放たれたビームは回転するビームブーメランに当たったことで拡散される。そのビームがデスティニーの周辺に散開しているドラグーンを次々に破壊していく。
この爆発で、キラはデスティニーを一瞬見失ってしまう。その一瞬にシンはデスティニーを駆り、ビームソードを拾いに行く。
直後、キラもデスティニーの動きを目撃して、フリーダムも飛びかかる。フリーダムがビームサーベルを構えつつ、デスティニー目がけてレールガンを発射する。
シンが反応し、レールガンのビームをデスティニーが紙一重でかいくぐる。デスティニーは右手を伸ばして、ビームソードをつかんだ。
迫ってきたフリーダムに、デスティニーが即座にビームソードを振りかざした。その一閃がフリーダムの右足を切り裂いた。
「ぐっ!」
衝撃とフリーダムの損傷を痛感して、キラが毒づく。彼はとっさにカリドゥスを発射して、デスティニーを突き放そうとする。
「もうアンタの思い通りにはならない・・今日、ここで、オレがアンタを!」
シンが言い放ち、デスティニーがフリーダムに向かって飛びかかっていった。
ハルの無事を祈りながら、ソラはエターナルに向かっていく。彼女のドムがエターナルに接近する。
「これはお前たちが許せない、世界のためだけじゃない・・ハルのため、みんなのために、私はお前たちを・・・!」
ソラはハルたちのことを思い返して、ドムがビームバズーカを構えてエターナルを狙う。
「ドム、本艦にロックしてきました!」
ダコスタがドムの動きを報告する。
「ここは退避するしかありません。キラと合流しましょう・・」
「ですが、それではキラくんに負担が・・!」
「ラミアス艦長やフラガ隊長とも連絡が取れない以上、散開して戦うのは危険です。ここは合流したほうがいいです。」
声を荒げるダコスタにラクスが呼びかける。ダコスタが頷いて、エターナルが迎撃を続けながら移動をしていく。
「逃げるな!」
ソラが叫び、ドムがエターナルを追う。ビームバズーカからの砲撃が、エターナルの艦体に迫っていた。
ビームソードを取り戻したデスティニー。機敏な動きを見せるデスティニーに対して、フリーダムは射撃、砲撃での遠距離攻撃を続けていた。
だがデスティニーの素早い動きと振りかざすビームソードで、フリーダムのビームは通じなくなっていた。
「もうフリーダムの攻撃は通じないぞ!」
シンが言い放ち、キラが打開の糸口を必死に探す。
「こんなこと・・こんなことがいいことには・・・!」
キラが言い返そうとしながら、フリーダムがデスティニーへの反撃と迎撃を続けていく。
“キラ!”
そのとき、キラの脳裏にラクスの声がよぎってきた。
「ラクス!?」
緊迫を強めたキラが、エターナルのいるほうへ振り向く。フリーダムがエターナルに向かって加速する。
「逃げるな!」
シンが叫び、デスティニーがフリーダムを追いかける。2機が徐々にエターナルに近づいていく。
「ラクス!」
キラが叫び、エターナルを狙い撃ちにしていたソラのドムに向けて、フリーダムがレールガンを発射する。ドムがビームバズーカを破壊されて、その衝撃でエターナルから引き離される。
「フリーダム!?・・シンさんは・・・!?」
キラのフリーダムが駆けつけたことに、ソラが驚愕を覚える。
「ラクス、大丈夫!?」
「キラ!・・はい・・・!」
キラが呼びかけて、ラクスが微笑んで答える。そのとき、シンのデスティニーが追いついて、フリーダムにビームソードを振りかざす。
「くっ!」
キラが反応し、フリーダムがビームソードをかわして、ビームライフルでけん制する。
(シンはあくまで僕を・・でもこのままじゃエターナルが・・ラクスが・・・!)
ラクスたちの危機にキラが焦りを感じていく。ソラのドムが再びエターナルに近づいていく。
「シンさん・・・今度こそ・・今度こそラクス・クラインを・・・!」
シンを目撃して安堵してから、ソラが改めてエターナルへの攻撃に意識を向ける。ドムがビームサーベルを手にして、エターナルに振りかざす。
エターナルがエネルギー砲、レールガンを発射して、ドムに近づけさせまいとする。
「どこまでも往生際悪く・・だったら!」
ソラがいきり立ち、ドムがスクリーミングニンバスを起動させる。エターナルから放たれるビームを、ドムははじき返していく。
「このままじゃラクスが・・・!」
ラクスたちを守ることにキラが頭の中を満たしていく。
「やめろ!ラクスに手を出すな!」
キラが叫び、フリーダムがドムに向けてビームライフルを発射しようとした。そこへデスティニーが飛び込み、フリーダムが射撃を止めてビームソードをかわす。
(どうしたらみんなを・・ラクスを守れるんだ・・僕にある力は、守れるだけの力があるはずなのに・・・!)
ラクスを守り自分も生き残る打開の糸口を探っていくキラ。
そのとき、キラは目の前にアスランが現れたように感じた。幻であると痛感していたが、キラは戸惑いを覚える。
(アスラン・・・!)
目を見開くキラに、アスランが真剣な面持ちで頷いてきた。
(そうだね、アスラン・・君なら諦めないよね・・・)
「ラクス、ミーティアを!」
困惑を振り切ったキラがラクスに呼びかける。エターナルに搭載されていたもう1機のミーティアが射出される。それは元々はジャスティスのためのものである。
フリーダムがミーティアを装備して構えを取る。
(アスラン・・君の思い、受け取ったよ・・僕に力を貸してくれ・・・!)
アスランの思いを受け止めて、キラはシンに打ち勝つことを心に決めた。
「どこまで・・どこまでもアンタは、みんなを・・・!」
キラへの憤りを募らせて、シンが目つきを鋭くする。シンもキラを倒すことに迷いなき決意を秘めていた。
次回予告
2人の願いは同じだった。
戦いのない世界を願い、それを実現するために力を振るった。
しかし選んだ選択の違いで、2人の思いは違った。
彼らはもう分かち合うことはできない。
それぞれの意思は変わらないから・・・
悲劇の運命に終止符を打て、デスティニー!