GUNDAM WAR -Mark&Ark-

PHASE-28「表裏」

 

 

 シンの駆るデスティニーと、ミーティアを装備したキラのフリーダム。重みのある攻撃のできるフリーダムに、デスティニーは攻めきれないでいた。

「あの武器・・今のデスティニーでも押されるのか・・・!」

 シンが拮抗した戦況に毒づく。デスティニーとフリーダムがビームソードを振りかざすが、デスティニーはビームを打ち消しきれないでいた。

「こうなったら、飛び込んで一気に叩く!」

 シンが目つきを鋭くして、デスティニーがビームソードを構えて、加速してフリーダムに迫った。

 

 ヒルダ、マーズ、ヘルベルトのドムを撃破したルナマリアたち。だがソラは衝突により、意識がもうろうとなっていた。

「お嬢様、しっかりしてください!」

「ソラ!返事をして、ソラ!」

 アンジュとハルが呼びかけるが、ソラからの返事がない。

「安全圏まで私が連れていきます。ルナマリアさんとハルさんは攻撃を続けてください。」

 ルナマリアとハルに呼びかけるアンジュ。彼女はソラを連れて1度下がることにした。

「それなら僕も付いていきます。すみません、ホーク隊長。すぐに戻ってきます。」

 するとハルがルナマリアたちに呼びかけてきた。

「ご心配なく。お嬢様は私だけでも・・」

「アンジュさんのドムも消耗しているはずだ。ムラサメとかが来たら、ソラを危険にさらすことになる・・」

 言葉を返すアンジュにハルがさらに呼びかける。

「ハルさん・・・すみません。お手数をおかけします・・」

 アンジュがハルに向けて感謝を口にする。ドム2機とファルコンが1度退いた。

「ここは私がしっかりしないと・・・!」

 ルナマリアは自分に言い聞かせて、インパルスがアークエンジェルと交戦しているミネルバの援護に向かった。

 

 エターナルと交戦するネフィリム。エターナルを追い込みつつあるものの、ネフィリムは決定打を与えられないでいた。

「これじゃ埒が明かない!向こうのほうが数が多いのは簡単に予想がつく!」

 ドギーが危機感を覚えて毒づく。

「ムラサメは片付き始めてる!エターナルへの攻撃に回れそうだ!」

「部隊を完全に撃退するまではヤツらとの戦いに専念しろ!寝首をかかれるのが1番危険だ!」

「それじゃネフィリムが持たないぞ!」

「持たせろ!ブラッドもシンも必死に戦ってるんだ!オレたちが楽な道ばかり選んでたら、アイツらを助けるなんてできねぇぞ!」

 不満や文句を言うクルーたちにドギーが檄を飛ばす。

「オレもダークスで出る!後は頼んだぞ!」

 ドギーもダークスに乗ってネフィリムから出撃。自らエターナルに向かって攻撃を仕掛けていった。

 

 ミネルバとアークエンジェルの攻防。2隻の戦艦は一進一退の戦況を繰り広げていた。

「トリスタン、イゾルデ、ってぇ!」

「ゴットフリート、ってぇ!」

 ミーナとマリューの号令の下、ミネルバとアークエンジェルの砲撃が飛び交う。

「このままでは共倒れになる・・決定打を与えないと・・・!」

 打開の糸口を必死に探るミーナ。

「タンホイザー起動・・目標、アークエンジェル!」

 ミーナが呼びかけて、ミネルバがタンホイザーを起動する。アークエンジェルに砲門を向けたタンホイザーにエネルギーが集まっていく。

「ミネルバ、陽電子砲、発射体勢です!」

 アークエンジェルのクルーがマリューに状況を言う。

「ローエングリン起動!迎え撃ちます!」

 マリューも呼びかけて、アークエンジェルもローエングリンの発射体勢に入る。

「ってぇ!」

 ミーナとマリューが同時に叫び、タンホイザーとローエングリンが同時に放たれる。陽電子の光がぶつかり合い、激しい閃光をきらめかせた。

 荒々しい衝撃に押されて、ミーナたちもマリューたちも揺さぶられていく。

 そのとき、アークエンジェルがさらなる衝撃に襲われた。

「爆発!?ミネルバの砲撃は相殺したはずなのに!?

 思わぬ事態にマリューが驚愕の声を上げる。

「MSによるビーム攻撃です!インパルスです!」

「えっ!?

 オペレーターからの報告に、マリューが声を荒げる。ルナマリアのインパルスが駆けつけて、ビーム砲でアークエンジェルの右エンジンを横から撃ち抜いたのである。

「ミーナ艦長、大丈夫ですか!?

「ルナマリア・・助かったわ・・ありがとう・・!」

 呼びかけるルナマリアにミーナが微笑みかける。インパルスの砲撃で、アークエンジェルが致命的な被害を被っていた。

「右エンジン、右舷被害大!垂心、維持できません!」

 クルーたちの声が飛び交い、マリューも艦の被害に危機感を痛感していた。

 

 アークエンジェルの危機に、ブラッドと戦っているムウも気づいた。

「マリュー!?

 ムウが声を上げて、アカツキがドラグーンでジャッジをけん制して、アークエンジェルに向かう。

「待て!」

 ブラッドが声を上げて、ジャッジがアカツキを追う2機とミネルバとアークエンジェル、インパルスと合流した。

「マリュー、下がれ!これ以上はアークエンジェルが・・!」

「ムウ・・ありがとう・・・!」

 呼びかけてくるムウにマリューが感謝する。アカツキがビームサーベルを構える中、アークエンジェルが後退していく。

「アークエンジェルはやらせん!」

「このまま逃がすわけにいかないわ・・すぐに追撃を!」

 言い放つムウと、マリューたちを追おうとするミーナ。アークエンジェルへの追撃に乗り出すミネルバだが、アカツキのドラグーンのビームが、タンホイザーの砲門を撃ち抜いた。

「タンホイザーがやられました!使用不能!」

「これでは、アークエンジェルが・・・!」

 マイが状況を報告する中、ミーナが危機感を募らせる。アカツキにジャッジが飛びかかり、ビームサーベルとビームダガーをぶつけ合う。

「ルナマリアはアークエンジェルを追え!アカツキはオレが倒す!」

「ブラッド・・分かったわ!私がアークエンジェルを!」

 ブラッドの呼びかけに答えて、ルナマリアがアークエンジェルの追撃に向かう。

「行かせるか!」

 ムウが言い放ち、アカツキがインパルスを止めようとする。が、ブラッドに行く手を阻まれる。

「お前ら、何でそこまでオレたちを倒そうとするんだ!?オレたちもお前らも、戦いを終わらせたいと思ってるんだろ!?

「その戦いの火種を、お前たちはまき散らしているのだぞ!」

 怒鳴りかかるムウにブラッドも言い返す。アカツキがジャッジを突き放して、ビームライフルとドラグーンによる射撃を狙う。

「あくまで遠距離に持ち込もうとするのか・・・!」

 ブラッドが毒づき、ジャッジが飛び交うビームをかわしていく。その間にアカツキがアークエンジェルを追いかける。

「しつこくされるのは勘弁してもらいたいねぇ!」

 ムウが毒づき、アカツキがさらにビームを放つ。ジャッジがビームをかいくぐり、アカツキとの距離を詰めていく。

「お前たちには屈しない・・お前たちを野放しにはしない・・・!」

 ブラッドが意思を示して、ジャッジがビームダガーをアカツキに向けて突き出す。

「お前たちがもたらすものの先に、平和はありはしない!」

 ブラッドが言い放ち、ジャッジが右手のビームダガーを突き出す。ムウが反応し、アカツキがビームダガーをかわした。

 だがジャッジはすぐに右手を振りかざし、アカツキの胴体を切りつけた。

「ぐっ!」

 ムウがうめき、ジャッジが左手を突き出してビームダガーをアカツキに突き立てる。

「ぐあっ!」

 アカツキが損傷し、衝撃と爆発がムウのいるコックピットにまで及んできた。

 ムウが即時にアカツキを動かし、ドラグーンによる射撃でジャッジの左腕を撃ち抜いた。ジャッジが腕から爆発を起こして、アカツキから離れる。

「くっ・・ここまでか・・だがアイツだけは、ここで!」

 ブラッドがうめき、ジャッジがレールガンを展開する。

「ビームを跳ね返す装甲の機体でも、損傷した場所まではそうはいかない!」

 ブラッドがアカツキを見据えて、ジャッジがレールガンを発射する。威力に関係なく反射するはずのアカツキの装甲だが、損傷している部分を突かれて、反射できずに貫かれた。

「マ・・マリュー・・・!」

 大破していくアカツキの中で、ムウがマリューに向けて声を振り絞る。

「オレは・・不可能を・・可能にする・・男だ・・・!」

 ムウは力を振り絞り、アカツキがアークエンジェルに向かう。

「アイツ・・本当にしぶとい・・・!」

 アカツキとムウに対し、ブラッドが毒づく。

「ジャッジも、この状態ではこれ以上戦えない・・向こうも、動けるのが不思議なほどだが・・・」

 ところがジャッジが負傷して、ブラッドはムウを追うことができなかった。アカツキもまともに戦えないことを確信しながら。

 

 後退していくアークエンジェルと、追撃を仕掛けるインパルス。アークエンジェルが迎撃を繰り返すが、インパルスは素早くかわしていく。

「もう逃がさない・・もう、あなたたちの思い通りにはさせない・・・!」

 ルナマリアがアークエンジェルに狙いを定める。

「あなたたち大天使はもう、堕ちてしまったのよ・・・!」

 彼女が声を振り絞り、インパルスがビーム砲を発射した。負傷しているアークエンジェルは、回避が間に合わない。

「マリュー!」

 そのとき、ムウのアカツキがアークエンジェルの前に飛び込み、インパルスのビームを受け止める。

「アークエンジェルはやらせん!どんなことをしてでも!」

「ムウ・・・!」

 言い放つムウに、マリューが戸惑いを覚える。アカツキに当たったビームが跳ね返り、インパルスのビーム砲の1機を破壊した。

「うっ!・・このっ!」

 ルナマリアがうめき、インパルスがビームジャベリンをアカツキに向けて投げつけた。ビームジャベリンはアカツキの傷口に命中し、突き刺さった。

「マリュー・・・オレ・・・オレは・・・」

 爆発の閃光に包まれるムウ。インパルスが残ったビーム砲を発射して、アークエンジェルに命中する。

「うっ!」

 ビームの直撃の爆発にクルーたちが巻き込まれ、マリューも壁に叩きつけられる。

「ム・・ムウ・・・!」

 落下してくるアカツキの中にいるムウに向かって手を伸ばすマリュー。アカツキとアークエンジェルが爆発を起こし、完全に消えた。

「やった・・やっと・・アークエンジェルを・・・」

 ルナマリアが安堵を覚えて脱力する。同時にインパルスのエネルギーが尽きて、フェイズシフトが消失した。

 

 ヒルダたちとの激突で意識がもうろうとなったソラ。彼女はハルとアンジュに呼びかけられて、ようやく気が付いた。

「ハル・・アンジュ・・・私・・・」

「お嬢様、大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

 弱々しく声を上げるソラに、アンジュがさらに呼びかける。

「クライン派のドム3機は倒しました!ルナマリアさんはミネルバの援護に向かいました!」

「ホーク隊長・・エターナルは、ネフィリムと交戦中なの・・!?

「はい!でも攻めきれていない様子で・・!」

「まだエターナルは・・私たちも戻ろう・・!」

 アンジュから話を聞いて、ソラが戦いに戻ろうとする。

「ダメだよ、ソラ!気を失っていたも同然だったのに・・!」

「それでも行かないと・・ここで引き下がるわけにはいかない・・・!」

 ハルが呼び止めるが、ソラは彼の制止を振り切って飛び出していく。

「ソラ・・僕たちも行かないと・・ソラだけじゃ危険です・・!」

 ハルは戸惑いを感じながら、アンジュとともにソラを追いかけていった。

 

 ネフィリムとエターナルの攻防は、拮抗状態が続いていた。

「このままではエターナルが・・!」

「弱音を吐くな!オレたちがやらなければ、何もかもムチャクチャになるぞ!」

 悲鳴を上げるダコスタにバルトフェルドが檄を飛ばす。

「ドム2機、ファルコンが接近してきます!」

 ダコスタがソラたちが近づいてくるのを報告する。

「くっ!・・オレも出撃する!ここは任せたぞ、ダコスタくん!」

「は、はいっ!」

 ダコスタに呼びかけて指令室を飛び出すバルトフェルド。彼はMS「ガイア」に乗り込んだ。

「アンドリュー・バルトフェルド、ガイア、出るぞ!」

 バルトフェルドの乗るガイアがエターナルから発進して、ファルコンとドムを迎え撃つ。

「宇宙でも砂漠の虎は健在だぞ!」

 バルトフェルドが言い放ち、ガイアがビームライフルを発射する。ファルコンが素早く動いてビームをかわす。

「たとえ相手が誰であっても、引き下がるわけにはいかない!」

 ハルも言い放ち、ファルコンがガイアとビームサーベルをぶつけ合う。

「ハルさん!」

 アンジュが叫び、彼女のドムがビームバズーカを発射する。バルトフェルドがファルコンから離れて、砲撃をかわす。

「終わらせるものか!おとなしくやられるつもりはないぞ!」

「お前たちの言い分はもう受け入れはしない!ここで討つ!」

 バルトフェルドとアンジュが言い放つ。ガイアがファルコン、ドムと交戦する。

「ここは、エターナルを・・ラクスを・・!」

 ソラがエターナルに目を向けて、ドムが前進する。

「くっ!行かせるか!」

 バルトフェルドが毒づき、ガイアがソラのドムを追う。そのガイアをファルコンが追走した。

 

 シンとキラの攻防も激化の一途を辿る。フリーダムのミーティアのビームソードをデスティニーがビームソードで受け止めるが、その度に強く突き飛ばされていく。

「そう何度も・・オレをどうにかできると思うな!」

 シンが言い放ち、デスティニーが体勢を整えてフリーダムに向かっていく。フリーダムが放つビームとミサイルをかいくぐり、デスティニーがビームソードを振りかざす。

 ミーティアのビームソードは外れ、デスティニーのビームソードがミーティアの右のアームを切り裂いた。

「ぐっ!」

 ミーティアが損傷したことに毒づくキラ。デスティニーが突き出したビームソードに、ミーティアがさらに突き立てられていく。

「くっ!・・このままやられるわけにはいかない!」

 言い放つキラの中で何かが弾けた。感覚が研ぎ澄まされ、視界がクリアになる。

 フリーダムがミーティアを切り離して、ビームサーベルを手にする。

「アンタを討つ・・世界のために、オレの悲しい運命を終わらせるために!」

 シンも言い放ち、感覚を研ぎ澄ませる。フリーダムが素早く振りかざしてきたビームサーベルを、デスティニーもビームソードで受け止める。

「ぐっ!」

 その瞬間、キラが即座に反応して、フリーダムがデスティニーから離れる。つばぜり合いをしても、ビームソードから出ている高周波がサーベルのビームを拡散させてしまうのが分かっていたからである。

「オレとアンタは、もう同じ世界にはいられない・・・!」

 シンがこれまでのキラとの因縁と戦い、運命を思い返していく。

「オレの悲劇の種となっているアンタを討たない限り、オレたちに平和は戻らない・・・!」

 揺るぎない決意を強めて、シンがデスティニーを突き動かしていった。

 

 

次回予告

 

強い力を持ち、戦いを止める戦いを続けてきたキラ。

その力によって絶望を強いられてきたシン。

2人の平和への思いは食い違った。

もうお互いのいる世界に、それぞれの平和はない。

 

次回・「運命と自由」

 

平和の空、突き進め、フリーダム!

 

 

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