GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-27「果てしない閃光」
キラたちを倒すため、シンたちは発進に備えていた。
「フリーダム・・ミーティアを装備しているわ・・・!」
「ミーティア・・本格的に攻めてくるということですね・・・!」
ルナマリアとハルがフリーダムを視認して声を上げる。
「何をしてきても、オレたちはアイツを倒す・・それだけだ・・」
「シン・・うん・・私たちはもう、勝手な振る舞いに振り回されない・・・」
シンが呼びかけて、ルナマリアが頷く。
「キラは、フリーダムはオレが倒す。みんな、援護を頼む・・」
「分かった。他の機体は食い止めておく・・」
シンが言いかけて、ブラッドが答える。ルナマリアたちもこの提案に頷いていた。
「それじゃみんな・・行くわよ!」
ルナマリアがシンたちに呼びかける。各機が発進準備を整えた。
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」
ルナマリアの乗るコアスプレンダーが発進し、続けて発進したチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットと合体して、フォースインパルスとなる。
「ブラッド・J・クロノス、ジャッジ、発進する!」
「ハル・ソーマ、ファルコン、発進します!」
「ソラ・アオイ、ドム、出ます!」
「アンジュ・ブルースカイ、ドム、出ます!」
ブラッド、ハル、ソラ、アンジュもそれぞれジャッジ、ファルコン、ドムで発進する。ネフィリムからはダークスが発進し、さらにザフトの他の部隊からザク、グフが駆けつけてきた。
(これで終わらせる・・今までの悲劇も・・オレの戦いも・・・)
「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」
これまで自分が体験してきたことと見出した答えを胸に秘めて、シンもデスティニーでミネルバから発進した。
接近してくるミネルバやザフトの戦艦、MSをキラたちは目撃する。ラクスがザフトに向けて呼びかけてきた。
「私はラクス・クラインです。あなた方が行おうとしている戦闘行動を中止してください。あなた方は戦う相手と理念を間違えています。」
ラクスがザフトに戦闘停止を訴えていく。
「世界のため、平和のため、正義のため。戦う理由はそれぞれでも、守りたい思いは同じです。あなた方のこの行動も、その意思が起源となっているのでしょう。ですがあなた方が今行っている戦いは、平和を取り戻すものではなく、世界を混乱に導くものでしかありません。」
ラクスの訴えが届いてきて、ザフトのパイロットたちが当惑を覚える。だがシンたちは彼女の言葉に耳を貸そうとしない。
「あなた方がまとうその制服の誇りがあるなら、直ちに引き返しなさい。」
「誇りがあるからこそ、お前たちの暴挙を止めなければならないのよ!」
ラクスに言い返してきたのはソラだった。
「お前たちは力と権力に溺れて、自分たちのしていることが正しいと思い上がった!それは平和でも正義でもない!ただの支配よ!」
「それがあなた方の平和のあり方なのですね・・しかしその形と手段を、見誤ってはいけません。今こそ手を取り合い、道を探しましょう・・」
「道を踏み外して、それを正しいことにしているお前たちがいたら、いつまでも平和は戻らない・・・!」
ラクスの切実な呼びかけを、ソラが一蹴する。
「ラクス様とソラ様、どちらを信じれば・・・!」
「我々が信じるのはどちらでもない!ザフトの理念と、己自身だ!」
「そうだ・・自分の戦う理由を、見失ったらいけないんだ・・・!」
ザフトのパイロットたちが自分たちに言い聞かせて、迷いを振り切っていく。
「申し訳ありません、ラクス様・・あなた方の暴挙、見過ごすわけにはまいりません・・!」
「たとえ敵わずとも力及ばずとも、あなた方の言いなりになっているわけにはいきません!」
「覚悟していただきます・・ラクス・クライン!」
ラクスの言葉を聞き入れることなく、ザフトはエターナル、アークエンジェルへの攻撃に踏み切った。ガナーザクウォーリア数機がエターナルに向けて一斉に砲撃を仕掛けた。
そのとき、別方向からビームが飛んできた。ビームはザクの砲撃を打ち破り、さらにザクをなぎ払った。
「あれは、フリーダム・・・!?」
パイロットが驚愕を覚える。ミーティアを装備したフリーダムが、射撃で砲撃とザクを的確に射抜いたのである。
「どいてくれ・・できることなら、君たちを傷付けたくないんだ・・・!」
キラが振り絞るように言いかける。フリーダムがアークエンジェルとエターナルを守ろうと、ザフトの前に立ちふさがる。
「エターナル・・どこまでも我らの前に立ちふさがるのか・・・!」
フリーダムに対してパイロットが毒づく。しかし彼らは引き下がろうとしない。
「だが、お前たちに屈するくらいなら・・!」
パイロットがいきり立ち、ザクとグフが突撃していく。だがフリーダムの放つビームの前に次々になぎ払われていく。
フリーダムへの警戒を強めていくザフトのパイロットたち。そこへムウのアカツキがムラサメ隊を伴って、射撃を仕掛けてきた。
「キラだけじゃないぞ。よそ見してる暇はないぞ。」
ムウが言いかけて、ザク、グフを迎え撃つ。シラヌイを装備しているアカツキがドラグーンを射出して、次々に狙い撃ちにする。
「このまま突き進む!だが無闇に命を奪うようなことはするな!」
「了解!」
ムウの指示にムラサメのパイロットたちが答える。キラたちがミネルバを目指して前進していく。
そこへ一条の光が飛び込んできた。キラは反応し、フリーダムがミーティアのビームソードを振りかざして光を弾く。
フリーダムたちの前に、シンのデスティニーが駆けつけてきた。デスティニーがビーム砲を発射してきたのである。
「シン・・・もう君と僕は、分かり合うことはできないのか・・・!?」
「これで終わらせる・・オレの過去の悲劇を・・アンタとの戦いも・・・!」
歯がゆさを浮かべるキラに、シンが敵意を募らせる。だがむき出しの敵意ではなく、迷いを振り払っていた。
「あの坊主・・これ以上好き勝手にさせるか!」
ムウがいきり立ち、アカツキがデスティニーに向かっていく。そこへジャッジが駆けつけて、アカツキの行く手を阻んだ。
「シンの戦いの邪魔はさせない・・お前の相手はオレがする・・!」
「・・ここはキラに託すしかないか・・・!」
言いかけるブラッドに毒づくムウ。ジャッジが2つのビームライフルを手にして構えるが、発砲しない。
(あの機体にはビームが通用しない。ビーム攻撃では牽制にもならない・・仕留めるには、刃か打撃で直接叩くしかない・・・!)
アカツキの特徴を考慮して、ブラッドが戦い方を模索する。
ジャッジが持っていたビームライフルを発射する。だが狙ったのはアカツキではなく、周囲のデブリ。
デブリが爆発して粉塵が散らばり、ムウは視界をさえぎられる。
「やってくれるじゃないの。でも、そんなんじゃオレの目は欺けないぜ。」
ムウは笑みを消すことなく、アカツキがドラグーンを射出して、ジャッジを狙い撃つ。ブラッドは即座に反応して、ジャッジがドラグーンのビームをかわしていく。
ジャッジがアカツキに向かって飛びかかりつつ、右手の甲からビームダガーを出す。ジャッジが振りかざしたビームダガーを、アカツキが動いてかわす。
「もう2度と、お前たちに屈するものか・・・!」
不条理への憤りを口にするブラッド。ジャッジが左手からもビームダガーを出して、アカツキを攻め立てていった。
ミネルバとネフィリム、アークエンジェルとエターナル。4隻の戦艦もまた対峙していた。
「アークエンジェルはこちらがやります。そちらはエターナルを。」
「分かった!任せとけ!」
ミーナの呼びかけにドギーが答える。ミネルバとアークエンジェルが向き合うそばで、ネフィリムがエターナルに向かっていく。
「ラクス・クライン・・お前らがいい気になっていられるのも今日限りだ!」
ドギーが言い放ち、ネフィリムがビーム砲撃を仕掛ける。エターナルが回避を取る。
ダークスも前進して、エターナルに向けて攻撃を仕掛けようとした。
そのとき、ダークスの1機がビームバズーカの砲撃を受けて吹き飛ばされる。
「あれは・・ドム!」
ダークスのパイロットが声を上げる。ヒルダ、マーズ、ヘルベルトがドムで攻撃を仕掛けてきた。
「ラクス様にふざけたマネして、ただで済むと思わないことだね!」
「きついお仕置きが必要ということだ。」
「派手にふっ飛ばされろってな!」
ヒルダ、ヘルベルト、マーズが言い放ち、ドムが射撃、砲撃を伴った突撃でダークスをなぎ払っていく。
「くっ!・・いつまでもアイツらになめられてたまるか・・・!」
ヒルダたちにいら立ちを感じていくドギー。
「ドギー、インパルスたちが来た!」
ネフィリムのクルーの声を聞いて、ドギーが視線を移す。インパルスとファルコンが駆けつけてきた。
「あの3機のドムは敵よ!ソラたちと間違えないようにね!」
「大丈夫です!区別できています!」
ルナマリアの呼びかけにハルが答える。インパルスとファルコンの後方から、ソラとアンジュの乗るドムが来た。
「私たちは後方からの援護に回りましょう!大丈夫だとは思いますが、万が一にも敵味方が混同してしまうようなことは避けたいですので!」
「ホーク隊長とハルなら大丈夫だけど・・・!」
呼びかけるアンジュにソラが言葉を返す。
「1年前だけじゃまだ足りないってわけかい?」
「だったら何度でも思い知らせてやりゃいい。」
ヒルダとマーズが強気に言いかける。彼らのドム3機がインパルスに向かっていく。
「あのときのようにはいかないわよ!」
ルナマリアが言い放ち、インパルスがビームサーベルと盾を構える。
「僕も負けるわけにはいかない!」
ハルも言い放ち、ファルコンが人型に変形してビームサーベルを手にする。ビームを発射するドムに、インパルスとファルコンがビームサーベルを振りかざしていく。
「なかなかやるようになったじゃないか。」
「そうでないと張り合いがないってもんだ。」
ヘルベルトとマーズが不敵な笑みを浮かべる。
「お前たち、一気に攻めるよ!」
「了解。」
「これでしまいにしてやる!」
ヒルダの呼びかけにヘルベルトとマーズが答える。
「ジェットストリームアタック!」
ドム3機がスクリーミングニンバスを起動して、射撃、砲撃を伴ってインパルスに向かって突っ込んでいく。ルナマリアはドムたちの動きをしっかりと見据えていた。
インパルスが上に動いて、ドムの突撃を回避する。その際、インパルスがヒルダのドムの頭部を踏みつけた。
「なっ!?あたしを踏み台に!?」
「コイツ・・・!」
ヒルダとマーズが声を荒げる。インパルスがビームサーベルを振り下ろして、ヒルダのドムの左肩を切りつけた。
「ぐあっ!」
「ヒルダ!」
ドムが損傷した衝撃にうめくヒルダに、マーズとヘルベルトが叫ぶ。ドムが1機負傷したことで、3機の連携が崩れる。
そこへファルコンが飛び込んで、ビームサーベルで素早く切りかかる。ヘルベルトのドムはビームサーベルをかわし、マーズのドムがビームサーベルで受け止める。
「くそっ!いい気になりやがって!」
攻め立ててくるハルにマーズが毒づく。
「マーズ!」
ヘルベルトのドムがファルコンに向かってビームバズーカを発射する。そこへソラのドムもビームバズーカを発射して、砲撃を相殺する。
「お前たちの好きにさせないと言ったはずだよ!」
言い放つソラにヘルベルトが毒づく。ファルコンが振りかざしたビームサーベルが、マーズのドムのビームバズーカを切りつけた。
「マーズ!」
ヒルダが叫び、ドムがファルコンに飛びかかる。ハルが反応し、ファルコンがドムたちから1度離れる。
「アイツ、ちょこまかと!」
ヒルダがいきり立ち、彼女のドムがビームバズーカでファルコンを狙う。
「させません!」
アンジュのドムがビームライフルを発射して、ヒルダのドムのビームバズーカを撃ち抜いた。バズーカの爆発の衝撃に、ヒルダのドムがあおられる。
「そこ!」
その隙をルナマリアが狙い、インパルスが飛びかかってビームサーベルを突き出してきた。ヒルダは体勢が整わず、回避が間に合わない。
「ヒルダ!」
そこへマーズのドムが飛び込み、ヒルダのドムを横に突き飛ばす。インパルスのビームサーベルはマーズのドムの胴体に突き刺さった。
「マーズ!?」
「ヒルダ・・ラクス様を・・・!」
驚愕するヒルダに、マーズが声を振り絞る。彼の乗るドムが爆発を引き起こした。
「マーズ!」
悲痛の叫びを上げるヒルダとヘルベルト。2人が怒りと悲しみに心を満たし、ドムが勢いを増して突っ込んできた。
「ミネルバ、デュートリオンビームを!」
「僕もお願いします!」
ルナマリアとハルがミネルバに呼びかける。
「ここは私たちで食い止める!」
「今のうちに回復をしてください!」
ソラとアンジュがルナマリアとハルに呼びかけて、ヒルダとヘルベルトを食い止めようとする。
「ありがとう、2人とも・・マイ、お願い!」
「はい!デュートリオンビーム、照射!」
感謝と呼びかけを口にするルナマリアに、マイが答える。アークエンジェルと交戦する中、ミネルバがインパルスにデュートリオンビームを照射する。
続けてファルコンにもデュートリオンビームが放たれる。消耗していた2機のエネルギーが回復する。
「ソードシルエットを!」
「はい!」
さらに呼びかけるルナマリアにマイが答える。ミネルバからソードシルエットが射出されて、インパルスがフォースシルエットを装備したままエクスカリバーを手にした。
「ソラ、アンジュ、離れて!」
「はい!」
ルナマリアが呼びかけて、ソラが答える。ソラとアンジュのドムがヒルダとヘルベルトのドムから離れる。
「シンには敵わないけど、私もやってみせる!」
ルナマリアが言い放ち、インパルスがエクスカリバーを構えて突っ込む。ビームバズーカの砲撃をかいくぐり、インパルスが突き出したエクスカリバーがヘルベルトのドムを貫いた。
「ぐあっ!・・こ、このままやられるかよ・・・!」
ヘルベルトが絶叫を上げて、ドムがインパルスにビームサーベルを突き立てる。ビームサーベルはインパルスの左肩に刺さる。
「チェストフライヤー、ブラストシルエット!」
「はい!」
ルナマリアが呼びかけて、マイが答える。インパルスが分離して、胴体がドムに突っ込む。
「ヒルダー!」
絶叫を上げるヘルベルトが、ドムの爆発の中に消えた。その間にコアスプレンダーは再び合体をして、ブラストインパルスとなる。
「絶対に仕留める・・絶対に!」
ヒルダが怒号を放ち、ドムがスクリーミングニンバスを起動させて、インパルスに向かって突っ込んでいく。
「このっ!」
ルナマリアがドムを狙って、インパルスがビーム砲を発射する。ドムがビームを弾いてインパルスに突っ込んでいく。
「いつまでもしつこくして!」
そこへソラが叫び、彼女のドムもスクリーミングニンバスを発して飛び込んできた。2機のドムが加速状態のまま激突する。
荒々しい衝撃がコックピットにまで響き、ソラとヒルダが揺さぶられる。ソラは意識がもうろうとなり、ヒルダも思うように体を動かせなくなる。
「今!」
そこへハルのファルコンが飛び込んで、怯んでいるドムに2本のビームサーベルを突き立ててきた。
「ぐあぁっ!」
コックピットにまで爆発が及び、ヒルダが絶叫を上げる。
「マーズ・・ヘルベルト・・・ラクス・・さ・・・ま・・・」
声を振り絞るヒルダが、ドムの爆発に巻き込まれた。
「やった・・クライン派のドムを倒した・・・」
ヒルダたちを倒したことに、ハルが安堵を覚える。
「お嬢様、大丈夫ですか!?お嬢様!」
アンジュがソラに向かって呼びかける。ところがソラからの応答がない。
ヒルダのドムとの衝撃に襲われたソラ。彼女の意識はまだ残っていたが、アンジュたちに答えることができないでいた。
次回予告
希望と絶望、生存と破滅。
同じ平和への願いを抱く両者が分かたれた戦い。
もう交わることのない平行線。
両者が刃を交える世界の行く先は・・・
絶望の闇、吹き飛ばせ、アークエンジェル!