GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-23「終わらない慟哭」
ミネルバ、アークエンジェルからMSが発進していく。ムラサメ隊もオーブ領内の防衛と国民の救援のために行動していた。
カガリはオーブ政府にて戦況と国内の現状を把握して、防衛と指揮に務めていた。
「アークエンジェル、ミネルバと交戦に入りました!」
オペレーターからの報告が、カガリに伝えられる。
「避難を急がせろ!絶対に市民に飛び火させてはいけない!」
「はっ!」
カガリの指示に兵士たちが答える。
(お願いだ、キラ、アスラン・・ミネルバを・・シンを止めてくれ・・・!)
キラたちに自分の思いを託して、カガリは自分のやるべきことに専念するのだった。
アークエンジェルから発進したキラ、アスラン、ムウとミネルバから発進したシン、ルナマリア、ソラ、ハル、ブラッド。
「オレがシンを止める。オレがシンを思いとどまらせる・・!」
「でも、アスランだけじゃ・・!」
呼びかけるアスランにキラが声を荒げる。
「オレがやらないといけない・・オレがシンを、必ず止める・・!」
アスランの決心が固いことを悟って、キラが戸惑いを覚える。
「オレがシンを止める・・アイツにオーブを討たせるわけにはいかない・・・!」
アスランがジャスティスを駆り、シンにデスティニーに向かっていく。そしてキラのフリーダムの前に、ブラッドのジャッジが立ちはだかった。
「アスラン・・・アイツの相手はオレがする!」
「シン・・・分かった。お前の思うようにすればいい・・」
シンの考えを汲み取って、ブラッドがキラと対峙する。
「ハルは私とアカツキを攻撃するわ!アカツキにビーム射撃は通じないから気を付けて!」
「分かっています!一気に飛び込んで、サーベルで攻撃します!」
ルナマリアの呼びかけにハルが答える。
(これが、私たちの選んだ道・・平和という支配を受けるくらいなら、自分たちで本当の平和をつかみ取る・・!)
ルナマリアは迷いを振り切り、オーブとの戦いに臨んだ。
シンのデスティニーとアスランのジャスティスが対面を果たす。両機はにらみ合うようにじっと構えていた。
「シン・・どうしてもオーブを討つというのか!?・・・それが平和のためになると、お前は本気で思っているのか!?」
「アンタはいつもそうだ・・自分たちが正しいと言わんばかりに、オレたちを問い詰めて・・・!」
呼びかけるアスランだが、シンはもう聞く耳を持っていなかった。
「オレはアンタたちの言葉には惑わされない・・オレはオレの意思で、本当の平和を取り戻す・・!」
「そのためにオレたちを・・オーブを討つというのか!?」
「アンタたちがいるから、世界はいつまでも乱れたままなんだ・・勝手な理屈を押し付けるだけの世界を、今度こそ、オレが終わらせる!」
「ふざけるな!そうやって敵を倒しても全てを壊しても、逆に世界を混乱に導くだけだ!」
感情をぶつけ合うシンとアスラン。デスティニーとジャスティスがビームソードとビームサーベルを手にして構える。
「自分たちが正しいと言い張るアンタたちの言葉は聞かない・・何を言っても意味がないと思い知らされているからだ・・!」
シンが言い放ち、デスティニーがジャスティスに向かっていく。ジャスティスが横に動いて、デスティニーの突撃をかわす。
(受けたらダメだ!サーベルごと腕を持っていかれる!)
アスランがデスティニーの力と武装を警戒する。ビームソードの刀身が高周波を発して振動して威力を上げているため、防御はままならない。
(的確に武装を削ぐしかない・・!)
腕を切り裂いてビームソードを使えなくする。アスランはそう考えていた。
「シン、お前をこれ以上間違った道に進ませはしない・・オレが、お前を止める!」
シンに言い放つアスランの中で何かがはじけた。彼の感覚が研ぎ澄まされ、視界がクリアになる。
デスティニーとジャスティスが同時に飛びかかる。2機がビームソードとビームサーベルを振りかざす。
弾き飛ばされたのはジャスティスのビームサーベルだった。ビームサーベルが腕に当たるよりも速く、デスティニーがビームソードで弾いていた。
デスティニーとジャスティスがぶつかり合う直前、シンもアスランと同様の覚醒を果たしていた。シンは即座にジャスティスの動きの一瞬一瞬を察知していた。
(シン・・強くなっている・・しかも冷静に、オレの動きを読んでいる・・・!)
シンの強さを痛感して、アスランが毒づく。
(以前のシンは怒りに身を任せて戦うことが多かった。特にオレと戦ったときには迷いがあった・・だが今のシンは怒りがむき出しになっていないし、迷いもなくなっている・・・!)
シンのことを考えて、アスランが困惑を噛みしめる。
(そうまでして倒したいのか・・オレたちを・・オーブを・・・!?)
迷いなく自分たちを倒そうとするシンに、アスランはさらに憤りを感じていた。
「オレは大切な人を、オーブを守る!たとえ相手がどれだけ強くても、お前であっても!」
自分自身の決意を胸に秘めて、アスランがシンを倒すことへのためらいを振り切った。ジャスティスが降下して、落としたビームサーベルを拾い上げる。
デスティニーがジャスティスを追って降下する。デスティニーが振りかざしたビームソードが、回避したジャスティスから外れて地面にぶつかる。
振動するビームソードの刀身で、着きつけられた岩場が砕ける。その隙を狙って、ジャスティスが持ち替えたビームライフルで射撃するが、デスティニーの素早い動きでかわされる。
「今度こそ・・今度こそ終わらせる・・オレの悲しい過去を・・・!」
シンが声と力を振り絞り、デスティニーがビームソードを構えてジャスティスに向かっていった。
鏡面装甲であらゆるビームを跳ね返すことのできるアカツキに対し、ルナマリアとハルは直接攻撃を狙う。インパルスとファルコンがビームサーベルを手にアカツキに迫る。
「こっちの特徴をよく知っているな・・!」
ムウがルナマリアとハルの攻め方に毒づく。
「けどな、弱点を突かれるのは先刻承知だ!」
ムウが言い放ち、アカツキが右手にビームサーベル左手にビームライフルを持つ。アカツキはビームライフルを発射して、インパルス、ファルコンとの距離を取る。
「あくまで距離を取らせてビームを撃たせようと・・!」
「でもその手には乗らない・・ファルコンにも、スピードがあるのだから・・!」
ルナマリアとハルが言いかけて、インパルスとファルコンがアカツキに迫る。アカツキが放つビームを2機がかいくぐっていく。
飛び込んできたインパルスが振りかざしてきたビームサーベルを、アカツキもビームサーベルで受け止める。2本の光の刃が激しく火花を散らす。
そこへファルコンが飛び込んできて、両手に持ったビームサーベルを振りかざしてきた。
「ちっ!」
ムウが反応し、アカツキがインパルスを突き放して後ろに下がる。ファルコンが突き出したビームサーベルは、2機の間の空を切った。
「反応もいい・・これがあのフラガ隊長か・・!」
ハルがアカツキを駆るムウの技量を痛感する。
「数が増えても、オレは引き下がらないぜ。なぜならオレは、不可能を可能にする男だからな。」
気さくかつ強気に言いかけるムウ。攻め立ててくるインパルスとファルコンを、アカツキが迎え撃った。
オーブ領域に着陸したソラのドム。出撃してきたムラサメたちを、ドムがビームライフルとバズーカで攻撃していく。
「これがドムの力・・でも、私には扱える!」
ソラが言い放ち、さらにムラサメを狙い撃ちにする。
「アンジュが託してくれた思い、ムダにはしないよ・・!」
アンジュのことを思い、ソラがドムを動かす。ドムがスクリーミングニンバスを起動させて、ムラサメ隊に突っ込む。
ドムの高まった突進力の前に、ムラサメたちはなすすべなく撃破されていく。
「今度こそお前たちを打ち倒す・・オーブ!」
オーブ打倒という意思を見せつけて、ソラは攻撃を続けた。
ビームライフルでけん制し、回避の隙を狙って攻撃を仕掛けるアスランのジャスティスだが、シンのデスティニーの素早い動きを捉えることができないでいた。
「オレもお前も、平和のために、戦いのない世界のために必死になってきた・・オーブも、平和のために尽くしている・・それなのに、なぜオレたちとお前が戦わないといけない・・!?」
「アンタたちの口にする平和も理想も、結局は自分たちの思い通りにするのものだったんだ・・そんなの、ただの支配だ。それが平和であるわけがない!」
苦言を呈するアスランを、シンが真っ向から反発する。
「アンタがオーブに付いたから、オーブやキラたちがいつまでも自分勝手のままだから、世界はいつまでもおかしいままなんだ!」
シンが言い放ち、デスティニーがビーム砲を展開して発射する。ジャスティスが横に動いてビームをかわす。
「アンタたちがいるから、世界がおかしくなる・・アンタたちの言葉が考えが、世界を狂わせていくんだ!」
シンが言い放ったこの言葉。その瞬間、ジャスティスの動きが一瞬鈍った。
(オレが・・オレたちが、お前を狂わせてしまったというのか・・・シン・・・!?)
シンの揺るぎない決意を痛感して、アスランの心が揺さぶられる。
次の瞬間、デスティニーが突き出したビームソードが、ジャスティスの左肩をかすめた。ビームソードの高周波と光の刃が、ジャスティスの左肩を焼き付けた。
「ぐっ!」
アスランが毒づき、ジャスティスがデスティニーとの距離を取る。
(もうお前を、思いとどまらせることはできないのか・・・!?)
困惑を感じていくアスランと、頑なな意思を示すシン。攻め立てるデスティニーに対し、ジャスティスは防戦一方となっていた。
アスランがシンに追い込まれていることは、カガリたちにも伝わっていた。
「アスランがここまで追い込まれるなんて・・シンは本当に強くなっているということなのか・・・!?」
アスランの危機を痛感して、カガリが焦りを隠せなくなる。
「私個人でなら、すぐにでも助けに行きたいところだが、オーブの代表として、勝手なことは許されない・・シンの心の傷を深めることにもなる・・・!」
自分に言い聞かせて、オーブの代表としての責務を果たそうとするカガリ。
「ムラサメ隊にアスラン、キラ、フラガ隊長の援護を!ただし深追いは禁物だ!」
カガリが判断を下し、劣勢に追い込まれているキラたちの援護を指示した。
シンのデスティニーに近づけさせまいとするブラッドのジャッジに行く手を阻まれて、キラのフリーダムはアスランのジャスティスに駆け寄ることができないでいた。
「どいてくれ!このままじゃアスランが!」
「あれはシンの戦いだ・・シンが自ら選択し、進んでいる道だ・・それを阻むことは許されない・・オレも、お前も!」
呼びかけるキラだが、ブラッドは引き下がろうとしない。ブラッドはシンの意思のために力を振りかざそうとしていた。
「それでも・・アスランを、オーブを、みんなを守る・・こんな戦い、させるわけにはいかない!」
キラがブラッドの言葉を振り払い、フリーダムがビームサーベルを構える。
「通してくれないなら・・力ずくでも・・!」
言い放つキラの中で何かが弾けた。彼の感覚が研ぎ澄まされて、視界がクリアになる。
ジャッジが2つのビームライフルで連射するが、素早く動くフリーダムにかわされる。一気に飛び込んできたフリーダムが、ビームサーベルを振りかざしてジャッジの腕を切り裂いた。
「ぐっ!」
左腕が切られるのは免れたものの、ジャッジが右腕を切り落とされて、ブラッドが衝撃を受けてうめく。
「アスラン・・!」
キラがアスランを助けようと、フリーダムを駆る。
「両腕ともやらなかったのは失敗だったな!」
そのとき、ブラッドが言い放つと同時に。ジャッジが左手のビームライフルを発射する。キラが即座に反応して、フリーダムがビームをかわす。
だがジャッジがレールガンを発射してきた。フリーダムがとっさにビームシールドを展開して、ジャッジのビームを防ぐ。
「くそっ!」
キラが毒づき、フリーダムがドラグーンを除く全ての銃砲を展開して、一斉発射した。ビームはジャッジの頭部と左腕、両足を撃ち抜いて墜落させた。
「しまった・・・シン・・・!」
動かせなくなったジャッジが地上に落下する中、ブラッドは危機感を募らせていた。
落下したジャッジに目を向けてから、キラはアスランを助けに向かった。
デスティニーが繰り出したパルマフィオキーナを、ジャスティスがビームシールドで防ぐ。が、デスティニーに力負けして突き飛ばされて、ジャスティスが地上に叩きつけられる。
「ぐっ・・このまま負けるわけには・・・!」
アスランが劣勢を痛感して焦りを噛みしめる。デスティニーがジャスティスに向かって降下してくる。
「ザラ隊長!」
そのとき、ムラサメ隊が駆けつけて、アスランのジャスティスを援護しようとデスティニーに向かってきた。
「やめろ、お前たち!ムラサメじゃ敵わないことは分かっているはずだ!」
アスランが呼び止めるが、ムラサメは引き返さずにデスティニーへの攻撃を仕掛ける。だがデスティニーがビームソードとビームライフル、ブームブーメランでムラサメを次々と撃墜させていく。
「やめろ、シン!お前はそこまで、オーブを滅ぼそうというのか!?」
アスランが呼びかけるが、シンは答えることなく、デスティニーがジャスティスに振り返る。
「お前にこのまま、オーブを滅ぼされるわけにはいかない・・そうなるくらいなら、オレは・・お前を討つ!」
いきり立ったアスランが、シンを倒す決意を固める。ジャスティスが飛び上がり、デスティニーと同時にビームライフルを発射する。
2機のビームがぶつかり合い、激しく火花を散らす。そしてデスティニーとジャスティスが同時にビームブーメランを投げつけ、2本ともぶつかり合って弾かれる。
次の瞬間、デスティニーが2本目のビームブーメランを投げてきた。ビームブーメランはジャスティスが持っていたビームライフルに刺さってはじき飛ばした。
さらにデスティニーがジャスティスに向かって飛びかかり、ビームソードを振りかざしてきた。アスランが即座に反応し、ジャスティスが上昇してかわす。
ジャスティスがとっさにビームブレイドを発した左足を振りかざした。が、デスティニーが左手を出して、パルマフィオキーナで受け止めて押し返す。
さらに迫るデスティニーに、ジャスティスが右足のビームブレイドを繰り出す。デスティニーがビームソードを振りかざす。
ジャスティスの右足がビームソードの一閃に切り裂かれた。
「ぐっ!」
ジャスティスがさらに突き飛ばされて、アスランがうめく。
「オレは終わらせる・・オレの悲劇を・・アンタたちに囚われる運命を!」
シンが言い放ち、デスティニーがビームソードを構えて突っ込んできた。
「シン!」
アスランが叫び、ジャスティスがビームキャリーシールドを併用しての2本のビームサーベルをデスティニー目がけて振り下ろす。
光の刃に切り裂かれたのはジャスティスのほうだった。振り下ろされた2本のビームサーベルが捉える前に、デスティニーが突き出したビームソードがジャスティスの胴体を貫いていた。
「シ・・シン・・・!」
破損したジャスティスのコックピットの中で、アスランがシンに向けて手を伸ばす。
「オレが、全てをムチャクチャにしたのか・・・世界も・・お前も・・・」
絶望で心を満たすアスラン。火花を散らすジャスティスから、デスティニーがビームソードを引き抜いた。
「アスラン・・・!」
そこへキラのフリーダムが駆けつけた。その瞬間、ジャスティスが爆発を引き起こして、アスランがその閃光に包まれた。
(シン・・・キラ・・・)
「アスラン!」
爆発の中に消えたアスランに向けて、キラが悲痛の叫びをあげた。
次回予告
友の魂は失われてしまった。
悲劇の過去と揺るぎない決意の狭間で、黄金の意思が揺れる。
シンとソラの平和のための意思。
過去の運命に今、終止符が打たれる。
巨大なる城壁、撃ち破れ、ドム!