GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-11「破壊の雷」
「アテナ・クレッセント、ラグナログ、出撃する!」
アテナの乗るラグナログがケルビムから切り離されて発進する。ラグナログはジェットで加速して前進していく。
「デストロイのデータ以上の性能を備えているのは確かのようね・・」
ラグナログについて呟いて、アテナが操作を続けていく。
「前方にオーブの部隊を発見。これより攻撃に移る。」
アテナが言いかけて、ラグナログが高エネルギー砲「アウフプラール・フィアツェーン」を発射する。
「うわあっ!」
連合の捜索を行っていたオーブのムラサメ隊が、ラグナログのビームを受けて吹き飛ばされる。
「このまま一気に、敵を殲滅していく・・・!」
アテナが戦意をむき出しにして、ラグナログを動かしていく。ラグナログはさらに胴体に展開されているビーム砲「リプライスキュラ」を連射していく。
ラグナログから放たれるビームが、次々に地上を吹き飛ばし、焼き尽くしていく。
「これなら、どんな相手でも負ける気がしない・・」
“油断するな。大きな胴体故の弱点は、完全には解消されているわけではない。”
笑みをこぼすアテナに、ドルズからの通信が入る。
“懐に飛び込まれても、胴体に備えられている砲門で引き離せるようにしてある。冷静に判断すれば、対処できないことはない。”
「はい。頭に入れておきます。」
ドルズの説明を聞いて、アテナが頷く。ラグナログが砲撃を繰り返しながら前進していった。
ムラサメ隊が攻撃を受けた知らせは、すぐにカガリたちの耳に入った。
「あれは・・ベルリンに現れた巨大MS・・・!」
「いや、形状が少し違う。おそらく後続機だろう・・!」
カガリとアスランがモニターでラグナログを見て言いかける。
「MSは砲撃を続けながら、市街地に向かって進行しています!」
オペレーターがカガリたちに報告する。
「市街地には絶対に入れさせるわけにはいかない・・その前に食い止めなければ・・!」
カガリが言いかけて、アスランに目を向けた。
「アークエンジェル、ムラサメ別働隊は直ちに発進。敵機を食い止め、オーブの防衛を行う。」
「それならオレが先に行く。ジャスティスならすぐに敵と接触して、食い止めることができる。」
指示を出すカガリにアスランが言いかける。
「アスランもアークエンジェルに乗艦。発進後すぐに出撃してくれ。」
「あぁ。行ってくる・・」
カガリの呼びかけに答えて、アスランがアークエンジェルに向かう。
「あ、アスラン・・」
そのとき、カガリがふとアスランを呼び止めてきた。
「もう、大丈夫なのか・・・?」
先日の戦闘のことで苦悩していたことを気にして、カガリはアスランに心配を投げかけた。
「オレは大丈夫だ・・もう迷っている場合じゃない・・・」
アスランはカガリに微笑んでから、改めてアークエンジェルに向かった。その笑みにまだ迷いが残っているように思えて、カガリは困惑を感じていた。
アークエンジェルの発進準備を整えたマリュー、ムウたち。
「すみません!遅くなりました!」
「お、来たな。」
そこへアスランが駆けつけてきて、ムウが振り返って笑みを見せてきた。
「カガリさんから連絡を受けています。本艦発進後、アスランくんも出撃して。」
「はい。準備に入ります。」
マリューが声をかけて、アスランが真剣な面持ちで頷く。
「それじゃ行くぞ、アスラン。」
「はい。」
ムウとアスランも出撃に備えるため、指令室からドックへ向かった。
「アークエンジェル、発進します!」
マリューの指示により、アークエンジェルが発進した。上昇して、ラグナログに向かって前進を始めたところで、アスランとムウも発進を行う。
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」
「ムウ・ラ・フラガ、アカツキ、出るぞ!」
アスランのジャスティス、ムウのアカツキがアークエンジェルから発進した。
「では先に行きます!フラガ隊長はアークエンジェルとオーブを!」
「あぁ!任せておけ!」
アスランの呼びかけにムウが答える。ジャスティスがラグナログに向かって、一気にスピードを上げた。
ラグナログ出現の知らせは、ミネルバにも伝わっていた。
「あの機体・・きっとあの施設にあった・・・!」
「ついに戦闘に投入された・・・!」
ミーナとハルがラグナログについて声を荒げる。
「進行方向にはオーブ市街があります!1機が巨大MSに接近しています!」
マイがさらにラグナログの動向を報告する。
「ジャスティス・・アスランが先行して止めに来たのです。」
指令室に来たルナマリアが声をかけてきた。モニターにジャスティスの姿も映し出された。
「ジャスティス・・勝手なことを・・・!」
ソラがジャスティスを見て憤りを覚える。
「私たちも行きましょう。おそらくアークエンジェルも向かっているでしょうけど、あの巨体の機体です。止めに入る戦力はあるに越したことはありません。」
「ルナマリア・・その通りよ。私としても、ザフトとしても、アレを野放しにしておくわけにはいきません。」
ルナマリアの呼びかけにミーナが頷く。
「私は反対です。オーブの味方などやってはいけないことです。」
するとソラが口を挟んできた。
「あの機体を止めるのはもちろんですが、ジャスティスもオーブも・・」
「私たちがやらなくてはならないのは、あのMSを止めること。止めなければ多くの死傷者が出ることになる。ソラ、相手を間違えないで。」
敵意を見せるソラにミーナが注意を投げかける。押し黙るも、ソラは納得してなかった。
「ミネルバ発進!私たちも巨大敵機の撃退に向かいます!」
ミーナが号令をかけて、ミネルバもラグナログを止めるべく動き出した。
眼前に入ってくるものを焼き払いながら、アテナはラグナログを前進させていく。
「いいよね、アテナは。それで何もかも吹っ飛ばせて・・」
「今は作戦中だ。ラグナログの破壊力があるからと言って油断するな。」
文句と僻みを言うマキに、スーラが注意を投げかける。ふくれっ面を浮かべてから、マキは集中する。
“接近する熱源あり。これは・・ジャスティスです!”
アテナたちの耳にケルビムのオペレーターの報告が入る。アテナたちの視界が、ラグナログに向かってくるジャスティスを捉えた。
「ジャスティスが出てきた・・このラグナログで、ヤツも打ち倒してやる・・・!」
アテナがジャスティスの姿を見据えて戦意を高める。ラグナログがジャスティスのいるほうに振り向く。
ラグナログがアウフプラールをジャスティスに向けて発射する。だがジャスティスは素早く動いて、ビームをかいくぐる。
「アイツ、チョコチョコ動いて!」
マキがいら立って、マグナがレールガンを発射する。しかしこのビームもジャスティスにかわされる。
続けてスーラのトリトンがジャスティスに向かっていく。トリトンがジャンプして、2本のビームサーベルをジャスティス目がけて振りかざす。
ジャスティスがビームサーベルとビームシールドで、トリトンのビームサーベルを受け止める。
「今だ、アテナ!」
スーラが呼びかけ、アテナが反応する。ラグナログがジャスティスに両手を伸ばして、指の先にある「スプリットビームガン」を発射する。
アスランが即座に反応して、ジャスティスが足を振り上げて、ビームブレイドでトリトンの右腕とビームサーベルを吹き飛ばす。そしてジャスティスは素早く動いて、ラグナログのビームをかわす。
「スーラ、無事か!?」
「問題ない。だがやはり手ごわいぞ、ジャスティスは・・」
アテナの呼びかけにスーラが答える。着地したトリトンだが、右腕を失って劣勢になっていた。
「ジャスティス・・いい気にはさせない・・・!」
アテナがいきり立ち、ラグナログが再びスプリットビームガンを発射する。ジャスティスはこれもかわしていく。
その瞬間、ラグナログがリプライスキュラをジャスティス目がけて発射してきた。
「くっ!」
アスランは反応して、ジャスティスがビームを紙一重でかわした。ジャスティスはそこから一気にラグナログの懐に飛び込んだ。
アテナがジャスティスに迫られて目を見開く。リプライスキュラによって補正はされたものの、ラグナログの接近戦という弱点は完全には解消されていない。
「振り払う・・ジャスティス!」
アテナがいきり立ち、ラグナログがリプライスキュラを放ちながら、ジャスティスに向かって飛び込んできた。
ジャスティスが背中に搭載されていたリフター「ファトゥム-01」をラグナログに向けて射出した。ラグナログはファトゥムをぶつけられて、一瞬体勢を崩した。
その隙にジャスティスがビームをかわしながら、ラグナログの上を飛び越える。丁度跳ね返ってきたファトゥムを、ジャスティスは再び装備する。
「接近戦を警戒している・・素早く飛び込んで一気に叩くしかない・・・!」
アスランがラグナログの戦法に毒づく。体勢を整えたジャスティスに、ラグナログが再び迫ってきた。
ラグナログを止めるべく、ミネルバは前進していた。ルナマリア、ソラ、ハルも発進準備を整えていた。
「ソラ、ハル、ついてきて。勝手な行動は控えるように。」
「はい!」
ルナマリアの呼びかけにハルが答える。しかしソラからの返事がない。
「ソラ、いいわね?」
「了解です・・」
ルナマリアが言うと、ソラが渋々頷いた。
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」
「ハル・ソーマ、ファルコン、発進します!」
ルナマリアのコアスプレンダー、ハルのファルコンがミネルバから発進する。コアスプレンダーはチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットと合体して、フォースインパルスとなる。
そしてソラが新しく乗り込んだ青色の「グフ・イグナイテッド」も発進に備える。
「ソラ・アオイ、グフ、出ます!」
ソラの乗るグフも続いてミネルバから発進していった。
「止まらずに、動きながら攻撃と回避をしていく。立ち止まれば格好の的よ。」
ルナマリアが呼びかけて、インパルス、ファルコン、グフが散開する。3機の接近にアテナたちが気づく。
「ミネルバも来たようね・・・!」
「これ以上いい気にさせてたまるか・・!」
アテナとマキがインパルスたちを見て、目つきを鋭くする。
「数で詰め寄られるのはまずい。できる限り引き離すぞ・・」
「スーラ、トリトンのその状態では・・!」
呼びかけるスーラにアテナが言葉を投げかける。
「ラグナログがオレたちの要だ。やられれば何もかもが終わりとなる・・」
スーラがアテナにさらに呼びかけて、トリトンがグフに向かっていく。
「邪魔をするつもり!?」
ソラが声を上げて、グフがトリトンを迎え撃つ。グフがトリトンに向けて、鞭「スレイヤーウィップ」を振りかざすが、トリトンに横にかわされる。
グフは今度はビームソードを展開して、トリトンに向かっていく。トリトンが左手のビームサーベルでビームソードを受け止める。
「お前たちに近づけさせるものか!」
「あなたたちのやっていること・・みんなを無差別に攻撃して・・絶対に許さない!」
言い放つスーラにソラが怒鳴りかかる。グフが再びスレイヤーウィップを振りかざして、トリトンの左腕に巻きつけた。
「何っ!?」
驚きを覚えるスーラ。スレイヤーウィップから高周波が放たれ、トリトンが左腕も破壊される。
「くっ・・ここまでか・・・!」
スーラが毒づき、グフから離れていく。
「逃がさない!」
ソラが追撃しようとするが、ケルビムから出撃したウィンダムたちが行く手を阻んだ。ソラが目つきを鋭くして、グフがビームソードでウィンダムを切りつけていく。
トリトンはグフを振り切って、ケルビムに合流していった。
距離を取って砲撃を仕掛けていたマキのマグナ。ハルのファルコンがマグナに向かってスピードを上げていた。
「コイツもチョコマカと動き回って!」
マキがいら立って、マグナがレールガンで狙い撃ちを仕掛ける。ファルコンはビームをかわして、マグナとの距離を詰めると、戦闘機型から人型に変形して、即座にビームサーベルを振りかざす。
ファルコンのビームサーベルがマグナの左肩を切りつけた。
「くっ!」
マグナが損傷したことに毒づくマキ。マグナが右肩のマグナランチャーを速射するが、ファルコンに素早くかわされる。
「逃げるな!逃げずに戦え!」
マキが怒鳴りかかり、マグナがファルコンを狙ってさらにビームを放つ。しかしファルコンにことごとく射撃をかわされる。
「アイツ・・・!」
“マキ、その状態では太刀打ちできない。1度ケルビムに帰艦しろ。”
いら立ちを募らせていたところで、ケルビムからの通信が入り、マキはやむなく従うことにした。マグナがファルコンから離れていって、ケルビムに戻っていった。
ルナマリアのインパルスが、ラグナログと交戦しているジャスティスと合流した。
「アスラン、大丈夫!?」
「ルナマリア・・オレは大丈夫だ。だがあの機体、侮れないぞ・・」
声をかけてきたルナマリアにアスランが答える。
「アイツをこれ以上進ませるわけにいかない・・力を貸してくれ!」
「私たちもあの機体を止める任務でここで来ました。やりますよ、私たちも。」
呼びかけるアスランにルナマリアが淡々と答える。
「ザフト・・ミネルバ・・ヤツらまで来たとは・・・!」
アテナがインパルスに対しても敵意をむき出しにする。ラグナログがインパルスとジャスティス向かって、スプリットビームガンを発射する。
ルナマリアとアスランが反応し、インパルスとジャスティスが素早くビームをかわす。
「ベルリンに出たあの機体以上の火力・・!」
「接近戦の対応もそれなりにできている・・油断は命取りだぞ・・!」
ラグナログの破壊力にルナマリアとアスランが毒づく。
「誰だろうと容赦しない・・ジャスティスだろうと、インパルスだろうと・・・!」
アテナが2機への敵意を募らせて、ラグナログがさらにスプリットビームガンを連射していく。
インパルスがジャスティスとともにビームをかわして、ビームライフルを手にして反撃に出る。だがインパルスのビームは、ラグナログの装甲を傷つけるほどの威力がなかった。
ラグナログがインパルスを捕まえようと、左手を伸ばしてきた。インパルスがビームサーベルに持ち替えて構える。
そのとき、一条の光がインパルスとラグナログの間に飛び込んできた。
「えっ!?」
「何っ!?」
突然のことにルナマリアとアテナが声を荒げる。
そこへ1機の機影が降下してきた。その姿にルナマリアたちは見覚えがあった。
「あれは・・!」
「まさか・・・!?」
ルナマリアとアテナが再び声を荒げる。
「フリーダム・・キラ・・・!」
アスランもたまらず声を上げる。インパルスたちの前に、キラの駆るフリーダムが駆けつけてきた。
次回予告
破壊を食い止める自由。
迷いを抱きながらも立ち向かう正義。
偽りの平和などいらない。
本当の平和を導くため、少女は戦いを続ける。
正しき未来、切り開け、トリトン!