GUNDAM WAR -Mark&Ark-

PHASE-05永遠(とわ)なる自由」

 

 

 アーモリースリーから離れて、プラントの周囲を航行するエターナル。その艦内で、キラはラクスを心配していた。

「ラクス、本当に大丈夫・・・?」

「えぇ。私は大丈夫ですわ。突然のことで驚いただけです・・」

 キラの声に答えて、ラクスが微笑みかける。

「本当にあの子、どうしてあんなことを・・・」

「私の行為に納得できないことがあるのでしょう・・誰もが受け入れられることは、なかなかないものです・・」

「それでも僕たちは、正しい答えを見つけないといけない・・みんなが争うことのない幸せのために・・」

「キラ・・・」

 励ましてきたキラにラクスが戸惑いを覚える。彼女は微笑みかけて、小さく頷いた。

 キラとラクスはエターナルの指令室に戻ってきた。そこで2人はエターナルの艦長を務めているアンドリュー・バルトフェルドに声をかけられた。

「アスランから連絡があった。カガリたちと合流した。」

 バルトフェルドの報告にキラとラクスが頷く。

 アスランはオーブの防衛にも尽力しなければならないと、1人エターナルを離れてオーブに向かった。キラが付いていこうとしたが、ラクスやエターナルを守る者がいなくなると、アスランに苦言を呈された。

「私たちもオーブも狙われている状況です。大切なものを守るために、私たちは力と知恵を出していかなくてはなりません。」

「僕もアスランも、大切なものを守るために・・・」

 ラクスが口にした言葉にキラが頷く。

「何かあれば、向こうから連絡が入ってくる。オレたちは、オレたちの戦いをするだけだ。」

「戦いは僕がやります。みなさんには手出しさせません。」

 言いかけるバルトフェルドにキラが決心を告げる。

「あたしらがいるのを忘れちゃ困るな。」

 キラたちに声をかけてきたのは3人の男女。ヒルダ・ハーケン、マーズ・シメオン、ヘルベルト・フォン・ラインハルト。MS「ドムトルーパー」に乗るパイロットである。

「ラクス様のためなら、オレたちは戦いは惜しまないぜ。」

「お前さんだけに任せきりにするつもりはないから、そのつもりでな。」

 マーズとヘルベルトが自信を込めた笑みを見せてきた。

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

 キラがヒルダたちに微笑んで、小さく頭を下げた。

「接近している艦影、数を増やして徐々に包囲を狭めてきてます。」

 そこへエターナルにて補佐官をしているマーチン・ダコスタが呼びかけてきた。

「デブリに隠れてオレたちを取り囲んでいるな。迎撃に出ても逆に反撃を食らうところだな。」

 バルトフェルドがレーダーを見て状況を把握していく。姿は見せていないものの、多くの艦がデブリに隠れての包囲網を敷いてきていることに、彼は気づいていた。

「僕がおびき出します。エターナルはその間に脱出を。」

 キラが真剣な面持ちで提案を持ちかけてきた。

「だがお前をおびき出してエターナルから引き離すことも狙いにしていることだろう。迂闊に迎撃に出るのは、逆にオレたちの危機を招くことになるぞ。」

「大丈夫です。この艦には手出しさせません。」

 バルトフェルドが懸念を見せるが、キラは考えを変えない。

「お前の強情なところには頭が下がるな。ま、いつも有言実行してくれるからいいが・・」

 バルトフェルドが苦笑をこぼして肩を落とした。

「それじゃ、今回も有言実行してもらおうかな、少年。」

「もう少年という年でもないですよ・・」

 バルトフェルドにからかわれて、キラが苦笑をこぼした。

「気を付けてください、キラ。無事の帰還を祈っています・・」

「ありがとう、ラクス・・行ってくる・・」

 声をかけてきたラクスに、キラが微笑んで頷いた。彼女たちを守るため、キラは出撃のため指令室を飛び出した。

「あたしらも準備しておくよ。」

 ヒルダが呼びかけると、マーズ、ヘルベルトとともに出撃準備に向かった。

 

 航行を続けていたエターナルが速度を弱めた。その様子を見ていたガオウが眉をひそめた。

「動きを止めてきた?もしや気付かれたか?」

「気づいて迎撃に出てこようと構わない・・私が向こうがすぐに手出しできないほどの距離から仕留めてやるだけです。」

 疑念を抱くガオウにマキが言いかけてきた。

「そこまで言うならば見事ヤツらを仕留めてみせろ。まずはお前が出撃。距離を取ってエターナルとフリーダムを狙い撃つ。」

「分かりました。」

 命令を下すガオウに、マキが不敵な笑みを見せて答えた。彼女は発進に向けてドックに駆けつけた。

「偽物の平和を作っていい気になっているフリーダムとラクス・クライン・・絶対に野放しにしてたまるか・・・!」

 マキがマグナに乗り込んで敵意を膨らませていく。

「マキ・シリア、マグナ、出るよ!」

 マキの乗るマグナが発進する。マグナはエターナルに近づかず、逆に距離を取ってきた。

(このマグナランチャーは、MSでありながら戦艦の陽電子砲クラスの威力と射程距離のビームを出すことができる。そこまでやるとチャージに時間がかかるのが問題だけど・・)

 マキが心の中で呟く。マグナの両肩にある砲門「マグナランチャー」にエネルギーが集まっていく。

(その前にエターナルが何かやらかしてくるか・・・!)

 エターナルの動きを見計らって、マキは毒づいていた。

 

 追跡者の迎撃のため、キラはフリーダムに乗り込んだ。フリーダムの眼前のハッチが開く。

「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」

 キラの乗るフリーダムがエターナルから発進した。キラはレーダーに目を向けて、フリーダムが包囲網を敷いているダルタス隊に向かって進んでいく。

 フリーダムがビームライフルを手にして、ダルタス隊の艦の1隻に向かっていく。フリーダムが放った射撃が、その艦の艦体に命中した。

「やはり気付いていたのか・・・!」

 フリーダムの行動にガオウが毒づく。

“アイツをちょっとでも動きを止めれば、私が仕留めてやりますよ。”

 ガオウに向かってマキからの通信が入ってきた。

「いいだろう。そこまで言うなら、うまくおびき寄せてやるとしよう。」

 ガオウが笑みを浮かべて、フリーダムとエターナルの動きをうかがう。

「フリーダムをうまく誘い込め。ただしヤツは全身武器だと思っておけ。わずかの油断も命取りとなるぞ。」

 ガオウが直属のMSパイロットたちに指示を出す。連合のMS「ウィンダム」が続々と出撃する。

 ウィンダムたちがビームライフルを次々に発射していく。キラは反応して、フリーダムが素早くかわしてビームライフルで迎え撃つ。

 フリーダムの射撃は素早く、さらに正確にMSや戦艦の武装やカメラを撃ち抜いていく。キラはこれにより命を奪うことなく、戦力をつぶして戦いを止めてきた。

「フリーダムめ・・相変わらずのやり方を・・・!」

「これ以上アイツになめられてたまるか・・!」

 パイロットたちがフリーダムにいら立ちを覚える。ウィンダムが攻撃を仕掛けるが、フリーダムは今度はビームサーベルを振りかざして武装を切り裂いていった。

「くっ・・ただでやられるものか・・・!」

 パイロットたちがいきり立ち、ウィンダムがビームライフルの射撃をフリーダム目がけて放つ。だがフリーダムにビームを軽々とかわされ、ビームサーベルに切り裂かれて、戦闘不能に追いやられる。

「今だ!」

 そのとき、マキがエネルギーを集めていたマグナのマグナランチャーを発射した。

「ヤツはよけられない。よければエターナルに命中する。」

 ガオウが戦況を見て不敵な笑みを浮かべる。マグナランチャーの射線上にはフリーダムだけでなく、エターナルもいた。

 ガオウはフリーダムをエターナルと並ぶように誘い込むよう、パイロットたちに指示を出していた。

 次の瞬間、キラの中で何かが弾けた。これにより、彼の感覚が一気に研ぎ澄まされた。

 フリーダムが全ての武装の砲門を展開して、一斉放射した。放たれたビームは集束されて、マグナのビームとぶつかる。

 フリーダムのビームはマグナのビームを打ち消すには至らなかったが、軌道を大きく外すことに成功し、エターナルからも大きくそれた。

「な、何っ!?

 砲撃を外されたことに驚くマキ。次の瞬間、マグナのマグナランチャーが突然爆発を起こした。

「マグナランチャーがこのぐらいで・・・攻撃された・・・!?

 驚愕をしたまま、マキが周囲を見回す。彼女はマグナの近くに数機の攻撃端末がいることに気付く。

 フリーダムが射出した攻撃端末「ドラグーン」である。

「フリーダム・・気付かれていた・・・!?

 フリーダムにドラグーンで攻撃されたことに毒づくマキ。

「おのれ、フリーダム・・このままやられてたまるか!」

 マキがいきり立って、マグナが飛び出してレールガンでフリーダムを狙う。だがフリーダムのビームライフルの速射で、マグナがレールガンを破壊される。

「こ、このおっ!」

 打つ手を奪われてうめくマキ。マグナがビームライフルでフリーダムを反撃しようとする。

 そこへさらにビームとバズーカ砲撃を駆使した突撃を受けるマグナ。攻撃してきたのはフリーダムではなく、3機のドムトルーパーだった。

「遠くからラクス様を狙おうなんて、なめたマネしてくれるじゃない!」

 ヒルダがマグナに向けて言い放つ。

「さっさとコイツを片付けちまおうぜ。」

「畳み掛けるぞ!」

 ヘルベルトとマーズが声を掛け合う。

「ジェットストリームアタック!」

 ドムトルーパー3機が連携攻撃「ジェットストリームアタック」を仕掛けた。熱エネルギーを発した壁を仕掛けたドムの突撃で、射撃、砲撃がままならないマグナが突き飛ばされた。

「ちくしょう、フリーダム・・ラクス・クライン!」

 マキが絶叫を上げて、マグナが宙域を離れていった。

 他のウィンダムと戦艦も、フリーダムとエターナルによって、次々に武装を破壊されていった。

「艦長、このままでは持ちません!ヤツらはコックピットへの直接攻撃を避けているつもりですが、いずれは我々は全滅を被ることに・・・!」

 オペレーターがガオウに向けて声を荒げる。劣勢に追い込まれている戦況に、ガオウはいら立ちを隠せなくなる。

「全軍撤退だ!体勢を立て直す!」

 ガオウが部隊に指示を出す。ダルタス隊がフリーダムたちとエターナルから離れていった。

 

 ダルタス隊との戦闘を切り抜けたキラたち。フリーダムとドムたちがエターナルに帰艦していく。

「ありがとうございます。おかげで助かりました。」

「ううん・・僕もみんなを守れてよかった・・・」

 感謝の言葉をかけるラクスに、キラが微笑んで答える。

「やれやれ。オレの出番がなくなったな。」

「隊長の手は煩わせませんよ。」

 苦笑をこぼすバルトフェルドに、ヒルダが言葉を返す。

「艦と機体の整備を済ませたら、地球の付近まで移動する。アーモリースリーを襲撃したヤツらの母艦が他にいる気がしてならない。」

「そうですね。アスランたちのことも気になりますし・・」

 バルトフェルドの判断に頷いて、ラクスが心配を浮かべる。

「大丈夫だよ。オーブにはアスランもカガリもムウさんもいます。もしも何かあれば、すぐに連絡が来る。今は信じてみよう・・」

「キラ・・分かっています・・」

 キラに励まされて、ラクスが頷いた。エターナルは今いる宙域を離れ、地球に進路を向けた。

 

 先にエターナルを離れ、地球に戻ってきたアスラン。ジャスティスに乗る彼は、オーブへの連絡を取った。

「オーブコントロール、こちらアスラン・ザラ。プラントとの会合から帰還。ただ今地球に戻った。」

“こちらオーブコントロール。こちらの誘導に従い、帰還されたし。”

「了解。誘導を感謝する。」

 連絡を終えたアスランが進行を続ける。オーブのMS「ムラサメ」数機がジャスティスに近寄って、誘導を行っていく。

 ジャスティスとムラサメの向かった先には、航行艦「アークエンジェル」がいた。

「アークエンジェル、こちらアスラン。誘導に従い、そちらへ着艦する。」

 アスランがアークエンジェルに呼びかけて、ジャスティスが着艦していった。

 

 オーブへの攻撃のため、先に地球に降下していたケルビム。オーブの動向をうかがっていたドルズたちは、アスランのジャスティスが降下したのを捉えていた。

「ジャスティスはフリーダムと別行動を取り、オーブに戻ってきたか。」

 ドルズがオーブとジャスティスの動きについて呟いていく。

「これでオーブとしての戦闘態勢は整ったということか。」

「ここはいきなり、ローエングリンで遠距離攻撃を加えるのが得策ではないでしょうか?いくらジャスティスでも、距離を取っての陽電子砲の砲撃は対処できないはずです。」

 ケルビムのクルーの1人がドルズに進言する。

「相手がジャスティスだけならそれでもいいでしょうけど、強力なMSはジャスティスだけではありません。」

 するとアテナも声をかけてきた。

「アカツキか・・」

 スーラが口にすると、アテナが小さくなずいた。

「アカツキはあらゆるビームを跳ね返す。それは陽電子砲も例外ではありません。」

「それではマキでは手も足も出ないということか・・」

 アテナの言葉を受けて、スーラが呟く。

「アカツキには接近戦が有効よ。スーラ、トリトンのほうが適任ということね。」

「そしてアテナはジャスティスを倒す、か。オレもそれで構わない。」

 声を掛け合うアテナとスーラが、ドルズに視線を戻す。

「アテナ、スーラ、お前たちが先陣を切れ。ヤツらが注意を引き付けられている間に、我らが裏を突く。」

「了解。直ちに出撃準備に入ります。」

 ドルズの命令を受けて、アテナとスーラが敬礼を送ってから駆け出していった。

「オーブ・・中立国としてどちらでもない立場を貫く・・だがもはや、どっちつかずの選択など愚か者の証明でしかない。」

 ドルズがオーブに対する懸念を募らせていく。

「一時は我々と同盟を結んでいたが、もはや今はそれもないも同然。葬り去ることに何のためらいもない。」

 オーブ打倒に一切の迷いのないドルズ。連合の理念に背くものは全て敵であると、彼は考えていた。

 

 地球に向けて航行していくミネルバ。その独房で、ソラは今もふさぎ込んでいた。

(地球・・きっと、オーブを守るために戦うとかになるんだろうね・・・でも、私はオーブのためになんて絶対に戦わない・・・)

 ソラが心の中で頑なな意思を貫いていく。

(オーブはシンさんから全てを奪った敵・・そしてラクス・クラインに協力している連中・・・力を貸す理由なんて何もない・・・)

 シンのことを思い出していくソラが、さらなる怒りを胸に秘めていく。

(この気持ちだけは絶対に変えちゃいけない・・変えたら、生きながら死んでいるのと同じ・・・!)

 揺るぎない決意を固めるソラ。彼女は本当の平和のために戦うことを誓っていた。

 

 

次回予告

 

他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない。

長い年月の中で受け継がれてきたオーブの理念。

しかし、それが本当の平和の形であろうか?

答えと平和を探しながら、アスランは襲撃者に立ち向かう。

 

次回・「果てしなき正義」

 

平和への道、切り開け、ジャスティス!

 

 

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