GUNDAM WAR –Last Destiny-
PHASE-06「巨人の鉄槌」
デュランダルの提唱したデスティニープランと、彼らの取った行動に、アルバとリリィも複雑な心境に駆られていた。
「ずい分と慌しくなってきたね・・・」
「誰もすぐには答えを出し切れないでいる。大がかりなことが相手だから仕方がないのだろう・・だが、少なくとも、デュランダルの創り上げようとしている世界は、オレたちの見ている世界とは違う・・」
呟きかけるリリィと、真剣な面持ちで言いかけるアルバ。
「オレの生き方はオレ自身で決める・・運命や力に決められるつもりはない・・」
「私も自分の思ったように動いてきたつもりだよ。もちろんこれからもね・・他の誰かに生き方を決められたんじゃ、生きた心地がしないよ・・」
決意を口にするアルバに、リリィが肩を落としながら自分の考えを告げる。
「だがアークエンジェルやエターナルの考えにも賛同できない・・アイツらも結局は、自分の意思を力で押し付けるだけ。いいなりにならなければ排除する・・デュランダルのしていることと大差ない・・」
「この状況じゃ、両者がぶつかり合うのは時間の問題・・ううん、目に見えている・・・」
「呼びかけて、止めるしかない・・力で戦いを止めても、新たな戦いを生むだけだ・・・」
「それがうまく行くなら、戦争なんて起きないんだけど・・・それが今の最善手というの確かだけど・・・」
自分たちの意思を改めて固めていくアルバとリリィ。
「どちらかが宣戦布告してきたら動き出すか・・・」
火蓋が切られようとしている戦況を見据えて、2人は行動を開始した。
デュランダルの指揮する攻撃を止めるため、キラたちは発進しようとしていた。エネルギーのチャージが完了次第、レクイエムの砲撃がオーブを滅ぼすことになる。彼らはその前にレクイエムを破壊しようとしていた。
前進するアークエンジェルとエターナルの前に、ザフト軍による防衛線が立ちはだかる。エターナルにいるラクスが、通信回線を開いてザフト軍に呼びかける。
「こちらはエターナル、ラクス・クラインです。中継ステーションを護衛するザフト軍兵士に通告いたします。私たちはこれより、その無用な大量破壊兵器の排除を開始します。それは人が守らねばならないものでも、戦うために必要なものでもありません。平和のためにと、その軍服をまとった誇りがまだその身にあるのなら、道を空けなさい・・・!」
プラントの歌姫であるラクスの登場に、ザフト軍は一瞬困惑する。だがデュランダルの命令を受けていた彼らは、彼女の警告を聞き入れようとしない。
「やっぱり引かないわね・・どうするんです?」
“時間がない。ここは中央突破だ・・”
ラクスに向けてかけたマリアの言葉に答えたのは、アークエンジェルにいるカガリだった。
「今は行くしかありません・・お二方も、よろしくお願いします・・」
微笑みかけてくるラクスに、ソワレもマリアも苦笑いを浮かべる。
「本当にやるしかない・・あんなものを撃ち込まれたら、何人もの人々が命を落とすことになる・・・」
「あれはもう、平和という名の破壊ね・・・」
それぞれ言いかけてから、ソワレとマリアは出撃に赴く。既にキラとアスランはフリーダムとジャスティスに乗り込んでいた。
「キラ・ヤマト、フリーダム、いきます!」
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」
フリーダムとジャスティスがエターナルから出撃する。
「カガリ・ユラ・アスハ、アカツキ、行くぞ!」
アークエンジェルにいたカガリも、アカツキに乗って出撃した。
「ミーティア、リフトオフ!」
「ミーティア」。MSの巨大補助兵装。装備したMSは戦艦クラスの戦闘を行うことが可能となる。
エターナルから分離したミーティア2機がフリーダム、ジャスティスにそれぞれ装備される。2機が先行し、レクイエム破壊のためにザフトの防衛線に飛び込んでいった。
その頃、メサイアに到着したミネルバ。シン、ルナマリア、レイはドーマに連れられて、デュランダルの前にやってきた。
「デュランダル議長、ただ今参りました。」
ドーマがシンたちとともに敬礼を送り、デュランダルに声をかける。
「すまない。わざわざここまで来てもらって・・さっそくだが、またしても大変なことになっている・・」
デュランダルが口にした言葉に、シンたちが緊張を覚える。
「今、レクイエムのステーション1が、アークエンジェルとエターナルに攻撃されている・・」
「アイツらが!?」
デュランダルが告げた言葉に、シンが声を荒げる。
「反抗の兆しを見せた連合のアルザッヘル基地を討ったので、それを口実に出てきたようだが・・いや、全く困ったものだよ。我々はもう、これ以上戦いたくないというのにね。これでは本当にいつになっても終わらない・・」
「はい。でも仕方ありません。彼らは言葉を聞かないのですから・・今ここで万が一、彼らの前に我々が屈するようなことになれば、世界は再び混沌と闇の中へ逆戻りです。嘆きながらも争い、戦い続ける歴史は終わらない。何も変わりません・・」
デュランダルの言葉にレイが答える。
「終わらせるために、変えるために、デスティニープランを実現させる・・それが自分の願いです・・」
レイの意思を聞いて、デュランダルが微笑みかける。
「君はどうかな、シン?」
デュランダルがシンに視線を向ける。突然の問いかけに、シンが戸惑いを浮かべる。
「君もレイと同じ願いか・・?」
デュランダルの問いかけに、シンが困惑する。彼はこれまでの自分と、今まで出会った人々の言葉と意思を思い返していく。
“お前は何がしたいんだ!?シン、お前は本当は、何がほしかったんだ!?”
“迷ったらいけないのも分かってる・・でも、アスランに対してどうしたらいいのか、まだ分からないまま・・・”
“死んでいった仲間のためにも、オレたちは生きなければならない・・オレたち自身で決めたことだ・・・”
“このまま傷つくだけの世界は変えないといけない・・誰だって変わってほしいと思ってる・・・”
“あなたが求めている平和は、そんな閉ざされた世界なのですか?”
アスラン、ルナマリア、アルバ、キラ、ラクスの言葉が、シンの脳裏によぎる。敵味方にさいなまれてきたシンの中には、ひとつの決意が存在していた。
「今まで生きてきて、今まで戦ってきて・・本当の平和を取り戻したい一心でした・・そして議長の考えを聞いて、デスティニープランがどういうものかを知って、改めて決心しました・・」
シンがデュランダルに向けて、自分の考えを口にする。
「議長が目指す世界なら、人は争うことはない。そうなれば戦争もなくなり、そのための悲しみも怒りもなくなる・・オレが求めていた平和は、そんな世界にあったんだと分かったんです・・」
「シン・・・」
シンの告げる言葉を聞いて、ルナマリアが戸惑いを覚える。
「議長の描く世界を守るため、オレは戦います・・オレがそう決めました・・・」
自分の決意を真剣に告げるシン。彼の言葉にデュランダル、レイ、ドーマが一瞬当惑を覚える。
だがデュランダルはすぐに微笑を取り戻した。
「君はどうかな、ルナマリア・ホーク?」
「はい・・私もシンと同じ気持ちです・・」
デュランダルの問いかけにルナマリアが答える。シンは自身の決意を強固にし、ルナマリアは彼のそばにいようとしていた。
だが彼らのこの意思は、デュランダルが図っていた目論見からは大きく外れたものだった。
アークエンジェルとエターナルを迎え撃つべく、シン、ルナマリア、レイがミネルバに向かう。彼らを見送りながら、デュランダルとドーマが言葉を交わす。
「やはり彼の意思を掌握することはできなかったようだ・・」
「自らの意思で行動を決定している・・あのような直情的な人間は、我らの導きがなければすぐに過ちを犯すことになるでしょう・・」
シンの意思表示にデュランダルとドーマが苦言を呈する。
「ルナマリアも彼に依存している様子・・彼女をフェイスに薦めた私の判断は間違っていたようです・・」
「今さら悔いても仕方がないことだ・・むしろ私の判断の甘さだ・・」
「そんな・・議長に間違いなど・・・」
デュランダルの言葉にドーマが困惑する。
「2人もまた障害となるでしょう。しかし処罰はこの戦闘の後がいいでしょう。2人がデスティニープラン実行の大きな鍵となっているのも確かなのですから・・」
「それが賢明だろう。この戦闘で、2人がヤツらと相打ちになってくれれば、こちらとしては好都合だが・・処分は君に任せる・・」
ドーマの言葉を受けてデュランダルが指示を出す。
「私も行きます。現時点での最大の障害は、アークエンジェルとエターナルですから・・」
デュランダルに敬礼を送ると、ドーマもシンたちを追っていった。
「ステーション1を落とした後、彼らはおそらくそのままこちらへ来るだろう。なんといっても数が少ないからな・・」
激化する戦況を見守って、デュランダルは呟きかけた。彼はキラたちの動きを予測していた。
ついに進撃したアークエンジェルとエターナル。彼らとザフトの動向を、アルバとリリィも探っていた。
「やっぱり動き出したね・・」
「ステーション1を落とし、さらに前進している。これでは戦いがますます激しくなるぞ・・」
リリィとアルバが呟いて、戦場となっている宇宙を見上げる。
「こんなやり方じゃお互い悪者になる・・その前に止めなければ・・・」
「行こう、アルバ・・私たちが生きるために・・・」
意を決するアルバに、リリィが呼びかける。
「アルバ・メモリア、フューチャー、行くぞ!」
「リリィ・クラウディ、ソリッド、行きます!」
アルバのフューチャー、リリィのソリッドも戦場に向けて飛翔していった。
アークエンジェルとエターナルを迎え撃つべく、メサイアを発進したミネルバ。その中でシンたちは、宇宙での攻防をモニターで見据えていた。
「ステーション1が落とされたか・・このままでは制圧されることも懸念せねば・・」
「そんなことはさせません。オレたちが止めてみせます。」
戦況を分析するドーマに、レイが淡々と答える。
「先に私とレイが先行し、射撃と砲撃でヤツらを翻弄する。シンとルナマリアはその後畳み掛けるんだ。」
ドーマの指示にシンとルナマリアが頷く。そしてシンがレイに声をかける。
「話は聞かせてもらったよ、レイ・・レイが命を賭けてまで議長の描く世界を守ろうとしていることは分かってる。でもそのために命を捨てるようなことはしないでくれ・・」
「シン・・・」
真剣な面持ちを見せるシンに、レイが一瞬動揺する。だが彼はすぐに微笑んで答える。
「心配は要らない。オレにはまだこの後も、やらなくてはならないことがある。簡単に死ぬつもりはない・・」
レイの答えを聞いて、シンが安堵の笑みをこぼす。
「ではそろそろ行くぞ・・グラディス艦長、ドーマ・フリークス、レイ・ザ・バレル、出撃します。」
“了解。本艦もアークエンジェルへの攻撃を開始します。”
ドーマの呼びかけにタリアが答える。キラたちを狙い撃つため、ドーマとレイが先行し、出撃するのだった。
「ドーマ・フリークス、タイタン、出る!」
「レイ・ザ・バレル・レジェンド、発進する!」
「ソワレ・ホークス、ゼロ、発進する!」
「マリア・スカイローズ、ルナ、行くわよ!」
ソワレのゼロ、マリアのルナもエターナルを発進した。ゼロ、ルナ、アカツキの戦闘力で、ザフトのMSを迎撃し、その隙を突いてフリーダムとジャスティスが突き進み、アークエンジェルとエターナルも続いていた。
だがその最中、キラたちは量産型とは違うMSの接近に気付く。
「この反応・・まさか!?」
驚愕の声を上げるソワレ。キラたちの前に現れたのは、フューチャーとソリッド、アルバとリリィだった。
「アークエンジェル、エターナル!すぐにこの強行突入をやめろ!」
「アルバ!」
呼びかけるアルバに、ソワレが声を荒げる。
「お前たちは単なる戦闘停止による介入しか行わなかった!それが宣戦布告とはどういうつもりだ!?」
「違う!このままじゃオーブが討たれる!僕たちはそれを止めに行くんです!」
呼びかけるアルバに、キラが言葉を返す。大振りな攻撃になってしまうため、ミーティアを装備しているフリーダムもジャスティスもフューチャーを攻撃しない。
そこへソワレの駆るゼロが飛びかかり、トラスカリバーを突き出してきた。アルバがすぐに気付き、フューチャーがエクスカリバーを構えて、ゼロの突きを受け止める。
「邪魔をするな、アルバ!デュランダル議長を放置すれば、レクイエムが放たれてオーブが壊滅する!オーブだけじゃない!議長の敵対勢力全てが一掃されてしまう!」
「ソワレ!」
呼びかけるソワレにアルバが毒づく。フューチャーがエクスカリバーを振りかざし、ゼロのトラスカリバーを振り払う。
「強硬手段そのものが間違っていると言っている!こんな手を打つ前に、発射停止を呼びかけることができたはずだ!」
「ならなぜザフトに呼びかけない!?先手を打ってきたのは向こうだぞ!」
抗議の声を上げるソワレに、アルバが目を見開く。
「落ち着きなさい、アルバくん、リリィさん!どちらを尊ぶかで、悲劇の大きさがまるで違ってくるのよ・・・!」
「でも、このままでも戦火は広がってるのよ・・これを見過ごすことなんて・・・!」
続けて呼びかけるマリアに、リリィが困惑する。キラたちはアルバとリリィに対して出方を見出せず、ザフト軍も彼らへどう攻めるべきか、決めあぐねていた。
そのとき、この戦場にいるMSのレーダーが、接近する熱源を感知した。
(このエネルギー量・・まさかタイタン!?)
「すぐに離れろ!トライデストロイヤーだ!」
熱源の正体に気付いたアルバが呼びかけると、周囲のMSや戦艦が回避行動を取る。直後、巨大なエネルギーの奔流が戦場に飛び込んできた。
トライデストロイヤーの砲撃を受けて、ザフトのMSが爆発を引き起こす。さらにその余波でも爆発するMSが出た。
「ぐっ!」
そしてその余波はアスランの乗るジャスティスの装備しているミーティアにも及んだ。危機感を覚えたアスラン。ジャスティスから切り離されたミーティアが爆発を引き起こした。
「大丈夫、アスラン!?」
「オレは平気だ・・それよりも・・・!」
呼びかけるキラに答えて、アスランが視線を移す。その先にはドーマの駆るタイタンの姿があった。
「紙一重で難を逃れたか・・機体の機動力だけでなく、お前の判断力も優れているようだな、アスラン・・・!」
「ドーマ・・・!」
ドーマの出現にアルバが緊迫を覚える。タイタンの後方には、レイの駆るレジェンドがいた。
「終わらせる・・今度こそ全てを!」
いきり立つレイがキラたちに敵意を見せる。レジェンドからドラグーンが射出され、フリーダムに向けて射撃が放たれる。
「ドラグーン!」
ソワレが毒づき、ゼロもフューチャーもドラグーンのビームを回避する。
「くそっ!」
キラが毒づき、ミーティアを切り離したフリーダムもドラグーンを射出する。フリーダムとレジェンド、2機のドラグーンによる攻防戦が繰り広げられる。
「やめろ、ドーマ!そんなに世界に破滅をもたらそうというのか!?」
「目を覚ませ、ディアス!お前は元々こちら側の人間!それにお前が求めている生も、デスティニープランの中に存在している!」
声を掛け合うアルバとドーマ。フリーダムとレジェンドの交戦の中に、フューチャーとタイタンも入り乱れる。
「このままでは、オーブが討たれる・・・!」
この危機的状況に、アスランが毒づく。戦況は一進一退となり、その間にレクイエムの発射準備は着々と進行していった。
激化していく戦況を、ミネルバから見ていたシンとルナマリア。2人はアスランの乗るジャスティス、さらにアルバの乗るフューチャーを見据えていた。
「そろそろ行かないと・・今度こそアイツらを・・・!」
「シン・・本当に、これでいいのかな?・・本気で、アスランやラクス・クラインと・・」
意を決するシンに、ルナマリアが不安を口にする。
「アイツらはもう敵なんだ・・やっとの思いで届きそうなこの平和を壊す敵なんだ・・・」
「シン・・・」
「ルナの気持ちは分かる・・でもここで弱さを見せたら、オレたちはダメになってしまう・・・」
戸惑いを見せるルナマリアに、シンが真剣な面持ちで言いかける。そしてシンはルナマリアを抱きしめる。
「もう失いたくない・・もしもルナが危なくなったら、オレがすぐに駆けつけるから・・・」
「ありがとう、シン・・でもシン、私も守られてばかりじゃないから・・・」
想いを伝えるシンに、ルナマリアも切実に答える。抱擁を終えて、2人は意識を戦いに戻す。
「艦長、オレたちも行きます・・」
“分かったわ。あなたたちも、気をつけて・・”
シンの呼びかけにタリアが答える。長きに渡る戦争と悲劇を終わらせるため、シンとルナマリアも戦場に身を投じるのだった。
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」
ルナマリアの乗るコアスプレンダーが、ミネルバから発進する。続けて発進したチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットと合体し、インパルスが出撃する。
「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」
続けてシンの乗るデスティニーがミネルバから発進する。2機はドーマ、レイ、キラ、アルバの交戦する戦場に向かっていく。
「レイ!ドーマ!」
シンが呼びかけ、デスティニーがビームライフルを発砲する。この射撃をフリーダムとフューチャーが回避する。
「デスティニーか!」
アルバが毒づき、フューチャーがエクスカリバーを構える。アロンダイトビームソードを振り下ろすデスティニーの一閃を、フューチャーが受け止める。
(重みのある攻撃だ・・機体が元々持っているパワーだけじゃない・・パイロットの気迫も混じっているのか・・・!?)
デスティニーの力にアルバがさらに毒づく。フューチャーがエクスカリバーを振りかざしてデスティニーを突き飛ばし、距離を取る。
「デスティニー・・シン・・・!」
デスティニーを目にして、カガリがいきり立つ。彼女が自分に宿す信念を込めて、アカツキがデスティニーに向かう。
「カガリ!」
彼女を追おうとするアスラン。だがジャスティスの前に、ルナマリアの乗るインパルスが行く手を阻む。
「アスラン・・・」
「インパルス・・ルナマリアか・・・!」
戸惑いを覚えるルナマリアと、インパルスを見て緊張を覚える。ルナマリアの脳裏に、アスランとメイリンへの思いが膨らむ。
「どうして私たちを裏切ったの・・どうしてメイリンまで巻き込んで・・・!?」
「彼女は本当は巻き込みたくなかった・・でもいつか彼女に危険が迫ることは目に見えていた・・・」
「2人とも生きていたのは嬉しい・・でもアスラン、どうして私たちの敵に・・・!?」
「あのままザフトにいれば、オレはただ戦うだけの存在でしかなくなってしまう・・そして今も、世界の誰もが議長の思うがままにされようとしている・・それだけは阻止しなくてはならない・・・!」
困惑するルナマリアに対し、アスランは揺るがない決意を見せる。彼女の視線が、ジャスティスの後方にいるエターナルに向く。
「ラクス・クラインにそそのかされてるんですね・・あの人の言いなりになって、それでも戦うだけでないといえるんですか・・・!?」
「ルナマリア・・何を言っているんだ・・・!?」
ルナマリアが口にした言葉に、アスランが耳を疑う。
「エターナルを・・ラクスを止めれば、アスランを救うことができる・・・!」
「ルナマリア!」
ルナマリアが意を決し、インパルスがエターナルに向かう。アスランが彼女を止めようとし、ジャスティスが追う。
ビームライフルを発射して止めようとするジャスティスだが、インパルスはこの射撃を回避して、エターナルに向けてビームライフルを構える。
(これでいいのよね・・これでいいのよね、シン・・・?)
その中でまだ迷いを抱いていたルナマリアが、心の中で問いかけ、自分に言い聞かせていく。
(エターナルを撃った先に、私たちの目指していた平和がある・・だから!)
“やめて、お姉ちゃん!”
インパルスがエターナルに向けて発砲しようとしたとき、ルナマリアに向けて声がかかってきた。エターナルにいたメイリンが、彼女に呼びかけてきたのである。
「メイリン!?エターナルに!?」
驚きをあらわにするルナマリアに、メイリンが悲痛の声を上げる。
“何で分かんないの・・何で分かんないの!?ラクス様と議長、どっちが正しいのか、何で分かんないの!?”
「メイリン、何を言って・・・!?」
“目を覚まして、お姉ちゃん!お姉ちゃんたちのしていることは間違ってるんだよ!”
メイリンの投げかける言葉に、ルナマリアは愕然となる。メイリンとは時々口喧嘩をすることはあったが、彼女が姉の戦いを否定することはなかった。
このような反発をしてきたメイリンに、ルナマリアの心は大きく揺さぶられた。
「ルナマリア・・・!」
動きを止めたインパルスに追いついてきたアスランのジャスティス。彼の声を耳にして、ルナマリアがジャスティスに目を向ける。
「メイリンはあんなことを言う子じゃなかった・・ケンカすることはあっても、互いの生き方を否定しなかった・・・」
ルナマリアがアスランへの敵意をむき出しにしていく。
「あなたが連れ出さなければ・・エターナルに引き入れられなかったら、メイリンがあんなことを言ったりしない・・変わったりしなかった・・それなのに、あなたは・・・あなたがメイリンを・・よくもメイリンを!」
インパルスがビームライフルでジャスティスを攻撃する。今のルナマリアを駆り立てていたのは、アスランへの怒りだった。
「やめろ、ルナマリア!お前も!」
「逃げるな!」
呼びかけるアスランに、ルナマリアが怒鳴る。回避するジャスティスを、インパルスがビームサーベルを手にして飛びかかる。
「くそっ!邪魔をするな!」
アスランが毒づき、インパルスが振りかざしたビームサーベルを、ジャスティスが右足のビームブレイドが右腕ごとなぎ払った。
「もうやめろ!君を討ちたくなどない!」
「何を!」
さらに呼びかけるアスランだが、ルナマリアは聞き入れようとしない。インパルスがジャスティスに向けてシールドを投げつけつつ、左手でビームライフルを手にして発砲する。
ジャスティスがビームサーベルでインパルスのシールドをなぎ払い、ビーム攻撃をビームシールドで防ぐ。
「やめろと言ってるのに!」
苛立ちを噛み締めるアスラン。ジャスティスが投げたビームブーメランが、インパルスの右足を切り落とす。
さらにジャスティスがインパルスに飛びかかり、振りかざしたビームサーベルでインパルスの左脇を切り裂いた。
「キャアッ!」
攻撃の衝撃がコックピットにも及び、悲鳴を上げるルナマリア。戦闘力も機動力も奪われたインパルスが、月面に落下していった。
「こんなこと、したくなかったのに・・・!」
ルナマリアに攻撃したことに、アスランが歯がゆさを覚える。インパルスは大破し、ルナマリアは意識を失った。
オーブの理念を守るため、カガリはシンと対峙することを決めた。ビームサーベルを振り下ろすアカツキだが、シンのデスティニーがビームソードで受け止める。
「やめろ!これ以上無闇に敵対するな!」
「違う!これは私が償わなくてはならないことなんだ!」
乱入されたアルバが呼びかけると、カガリが彼に自分の意思を告げる。デスティニーの力に突き飛ばされるも、アカツキはすぐに体勢を整える。
「私たちの判断の甘さが、お前に深い悲しみを植えつけてしまったことは、私たちにとって許されざることだ・・だが私たちは簡単に討たれるわけにはいかないし、お前がオーブを討っても何にもならない!」
「アンタ・・この期に及んでまだ勝手なことを!」
カガリの呼びかけをはねつけるシン。デスティニーが飛びかかってビームソードを振りかざすが、アカツキは後退して回避する。
「シン、やめろ!」
カガリが言い放ち、アカツキがドラグーンを射出してビームを発する。放たれたビームが光の檻となってデスティニーを取り囲む。
アカツキのドラグーンのビームは立体的に展開することで、戦艦1隻を覆えるほどの防御フィールドを形成できるのである。
「憎しみのために戦うな!憎しみのために、本当に大切なものが何かを見失うな!」
「何っ!?」
さらに呼びかけるカガリと、動きを封じられたことに毒づくシン。
「これ以上お前に罪を重ねるわけにはいかない!たとえお前からさらに恨まれることになっても、ここでお前を止める!」
「ふざけるな!今まで散々きれいごとを口にしておいて、今度はオレを止めるだと!?」
シンを止めようとするカガリだが、シンが反発し、デスティニーが機動力を高めて防御フィールドを突き破ろうとする。
「アンタたちのやり方じゃ、何も変わらない!本当の平和を取り戻すために、オレはアンタを討たなくちゃならないんだ!」
「シン!」
「もう誰も死なせたくない!誰も悲しませたくない!だからここで、アンタを討つ!」
シンが決意を言い放ち、デスティニーがついに防御フィールドを打ち破った。ビームソードを構えるデスティニーが光の翼を広げる。
カガリが緊迫を募らせ、アカツキがドラグーンを操作してデスティニーに向けてビームを放つ。だが残像を伴う速さを見せるデスティニーにかわされる。
飛び込んできたデスティニーに対し、アカツキもシールドを突き出す。ビームソードを防ぎつつビームサーベルで迎撃しようとするアカツキだが、デスティニーの左手に頭部をつかまれる。
左手のパルマフィオキーナで頭部を破壊され、アカツキが怯む。さらにデスティニーがビームソードを突き出し、アカツキは盾を構えて防ごうとする。
だが盾は突き破られ、さらにアカツキが左脇を突かれて切り裂かれる。
「うわあっ!」
カガリが悲鳴をあげ、アカツキが機動力を削がれて動きが取れなくなった。その姿をシンが見つめ、デスティニーがビームソードの切っ先をアカツキに向ける。
(これで終わるんだ・・これでオーブの勝手を終わらせることが・・・!)
“あなたのその願いと行動は、本当にあなた自身のものなのですか?”
カガリにとどめを刺そうとしたシンに、ラクスの言葉がよぎってくる。カガリを倒す絶好の機会を目前にしながら、シンはそれに踏み出すことができなくなった。
「キャアッ!」
そのとき、シンの耳にルナマリアの悲鳴が飛び込んできた。
「ルナ・・・!?」
緊迫を覚えたシン。アカツキにとどめを刺すことなく、デスティニーがこの場を離れていった。
「シン・・・」
動作の自由が利かず、カガリは去っていくデスティニーを見送ることしかできなかった。