GUNDAM WAR Last Destiny-

PHASE-02「自由の飛翔」

 

 

 逃走したアスランとメイリンの乗ったグフを撃墜したシンは、レイとともに帰還した。深刻さを抱えるデュランダルのいる部屋に赴いた2人は、彼に敬礼を送る。

「すまなかったね、2人とも・・大変なことを引き受けてもらって・・」

「いえ・・・撃ったのはシンです・・投降を呼びかけましたが、アスランはこれに応じず、シンはやむなく撃墜しました・・」

 悠然と声をかけるデュランダルに、レイが淡々と答える。シンは深刻の色を隠せないでいた。

「辛い気持ちは私も同じだ・・」

「えっ・・・?」

 デュランダルが投げかけた言葉に、シンが戸惑いを見せる。

「アスランは私が復隊させフェイスとまでした者だ。それがこんなことになって・・君たちにも迷惑をかけてしまったね・・」

「いえ、そんな・・・オレは・・・」

「ミネルバのクルーたちにも、今回のことは伝えてある・・辛いことだが、伝えておかなくてはならないことだから・・・」

 デュランダルのこの言葉にシンは困惑を覚える。彼の脳裏にメイリンの姉、ルナマリアの顔が浮かび上がっていた。

 

 デュランダルから事のいきさつを聞かされたルナマリアは、沈痛さを隠せずにいた。妹のメイリン、上官として信頼を寄せていたアスランが逃亡の末、撃墜されたことが、彼女には信じられなかった。

 廊下で佇んでいるルナマリアが、暗い表情のシンと平静の様子のレイが来るのに気付く。シンもルナマリアに気付いて、困惑を浮かべる。

「レイ、先に行ってくれ・・・」

「シン・・・分かった・・・」

 シンの声に答えて、レイがこの場から離れる。廊下の真ん中にて、シンとルナマリアが互いに顔を合わせる。

「シン・・・」

「ルナ・・・」

 ルナマリアに対して罪の意識を感じるシン。ルナマリアがシンに対して、憤りをあらわにしていく。

「どうして・・・メイリンとアスランを・・・!」

 アスランとメイリンを撃ったシンに対して、ルナマリアが怒りをぶつける。

「どうしてアスランとメイリンを!」

 激情のあまり、ルナマリアがシンの頬を叩く。涙を見せる彼女に、シンは沈痛の面持ちを浮かべるだけである。

「・・・ゴメン・・・でも、ああするしか、アスランを止められなかった・・・」

「返して・・・メイリンを返して・・・!」

 謝るシンに怒鳴ろうとするルナマリアだが、押し寄せる悲しみのあまりに言葉が出なくなる。そんな彼女を、シンが強く抱きしめる。

「アスランが前に言ってたんだ・・力を手にしたその時から、今度は自分が誰かを泣かせることになるって・・・」

「シン・・・」

「今回のことで、オレは君を泣かせてしまってる・・・こんな思い、もうこれ以上増やしちゃダメなんだ・・・」

 罪悪感を募らせるシンに、ルナマリアが戸惑いを覚える。

「オレはこんなのはイヤだ・・君にこんな思いをさせるのもイヤだ・・だからルナも世界も、みんなオレが守る・・・」

「シン・・・」

 決意を口にするシンに、ルナマリアが徐々に寄り添っていく。悲しみと憎しみに打ちひしがれた2人が、互いに心を寄せ合っていた。

 

 その翌日、シンたちミネルバのクルーはデュランダルの口から昨晩の事態を聞かされた。ミネルバ副長、アーサー・トラインをはじめとしたクルーたちの多くが動揺を見せていた。

 だがその場にはドーマの姿はなかった。彼は別働隊が整備している機体に乗るため、今朝早々に宇宙に出たのである。

「この事態に動揺や不満を感じていることだろうが、今は彼らの弔いの意味も含めて、この厳しい状況を乗り越えてほしい・・」

 デュランダルが呼びかけたことで、クルーたちが落ち着きを取り戻す。しかしミネルバ艦長、タリア・グラディスは納得がいかず、シンとルナマリアも困惑を抱えたままだった。

「これからの戦いは、パイロット1人1人の判断が大きな鍵を握ることになる。そこでこれを、シン・アスカ・レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホークに・・」

 デュランダルがシンたちにバッチを差し出した。それはフェイス所属を意味するためのものだった。

「それはフェイスの・・・議長・・・!?

 突然のことに驚きを見せるシン。動揺のあまり、彼はバッチを受け取ることをためらう。

「議長のこのお気持ちは嬉しいです・・ですが、自分はまだそれだけの力があるとは・・」

「そんなことはない。これは我々が君たちの力を頼みとしている、という証だ。どうかそれを誇りとし、今後も力を尽くしてほしい・・」

 謙そんするシンに、デュランダルが信頼を込めた励ましの言葉を告げる。

「自信を持ちたまえ。君たちはそれだけの力を持っている。それは私だけでなく、ドーマも賞賛していることだ・・」

「ドーマ隊長も、ですか・・・?」

「彼も君たちのことを高く評価している。これからは彼と行動をともにする機会も多くなってくる・・彼にも力を貸してあげてほしい・・」

 デュランダルだけでなく、ドーマからも信頼を寄せてきていることに、シンはようやく笑みを見せる。

「本当に、ありがとうございます、議長・・・」

 感謝の言葉を口にして、シンがレイたちとともに敬礼を送った。

 

 集会の解散の後、デュランダルはタリアに声をかけた。腑に落ちない心境を抱えたままのタリアを、彼は気になったのである。

「彼らをフェイスとしたことで、絶対何か一言あると覚悟していたんだがね・・」

「何を今さら・・・」

 デュランダルの言葉にタリアがため息をつく。

「言いたいことは山ほどありますが、迂闊に言えることでもないので黙ってるんです。聞く気がないのなら放っておいていただきたいわ・・」

「聞く気がないだなんて、そんな・・・」

「アスラン・ザラとメイリン・ホークの件、私はまだ納得したわけではありません・・」

「分かってるさ・・だが・・」

 タリアの不満にデュランダルが淡々と言葉を返していたときだった。兵士の1人がデュランダルに駆け寄ってきた。

「どうした?」

「アルバ・メモリア、リリィ・クラウディを発見しました・・」

 兵士の報告を聞いて、デュランダルが真剣な面持ちを見せた。

 

 突然のフェイス就任に、シンだけでなくルナマリアも戸惑いを浮かべていた。

「まさか私がフェイスになるなんて・・夢を見てるみたい・・・」

「議長とドーマの推薦だ。それだけオレたちが評価されているということだ・・」

 思わず言葉をもらすルナマリアに、レイが冷静に言いかける。

「特にルナ、お前をフェイスに推薦したのは、ドーマの計らいが大きい・・」

「ハァ・・ドーマ隊長も、見る目があるのかないのか・・」

「とにかく、オレたちは今まで以上に、議長やプラントの期待を背負っていくことになる・・それを裏切ることなく、オレたちは悲劇を終わらせなければならない・・」

 気の乗らないルナマリアに対し、レイは淡々と言いかける。その言葉にシンが頷く。

「やってやる・・戦いのない世の中をつかむためなら、どんな敵だって戦ってやるさ・・・!」

 決意を口にするシンが、右手を強く握り締める。

「アークエンジェルとフリーダムは撃破した。地球連合も追い込んだ・・残るオレたちの脅威は2つ・・」

「2つ?オーブを含めても、あと1つは・・・?」

 レイの言葉にルナマリアが疑問を投げかける。

「アルバ・メモリアとリリィ・クラウディ・・2人はザフトにも連合にも組することなく、独自の行動を取っている。しかも彼は新型MS、フューチャーに搭乗している・・」

「新型・・・そんなのに乗っているのに、勝手なことを・・・!」

 レイからの説明を聞いて、シンが憤りを覚える。

「だが、時期に行方もつかめる。フューチャーを押さえることで、議長の目指す理想の世界が実現に向かう・・」

 レイの言葉にシンが頷く。戦いの元凶となっているフューチャーを止めることを、シンは心に誓うのだった。

 彼らにミネルバ搭乗の命令が伝わったのはその後だった。

 

 自身専用の新型MSに乗るため、ドーマは宇宙に渡っていた。その宇宙ドックに到着した彼は、早々にその機体の前にやってきた。

 タイタン。砲撃主体の遠距離攻撃を得意としている機体。最大の武器である「トライデストロイヤー」は、3種のビーム砲を放ち、化学反応を引き起こして威力を格段に引き上げる相乗効果ももたらしている。

「整備は完了しているか?」

「はい。後はドーマ隊長による最終シュミレーションのみとなっております・・」

 ドーマの問いかけに技術士の1人が答える。

「よし。シュミレーションと最終チェックを行い、すぐに議長の下に・・」

「報告します!」

 ドーマがタイタンに乗り込もうとしたとき、兵士の1人が駆け込んできた。

「エターナルを発見しました!」

「エターナル?・・とうとう見つけたぞ、ラクス・クライン・・・!」

 兵士からの報告を聞いて、ドーマが目つきを鋭くする。

「どうやらシュミレーションを行うことなく、タイタンを実践投入することになるな・・・」

「隊長・・・!」

「包囲後に攻撃開始!私もタイタンで出撃する!」

 ドーマの呼びかけに兵士と技術士たちが答える。ドーマもタイタンに乗り込み、出撃していった。

「ドーマ・フリークス、タイタン、出る!」

 

 高速戦闘艦「エターナル」。プラントの動向を伺いつつ隕石に隠れていたエターナルには、1人の少女が指揮を執っていた。

 ラクス・クライン。平和を訴えるプラントの歌姫であり、キラの恋人。穏和な性格を持つ一方で、部隊を指揮し、武力行使に出る一面もある。

 現在ラクスはエターナル艦長、アンドリュー・バルドフェルドとともに、デュランダルの動向を探っていた。バルドフェルドの部下、マーチン・ダコスタが、コロニーでの情報収集を終えてエターナルに帰艦してきた。

「いやもう、参りましたよ・・コロニーは空気も抜けちゃってて荒れ放題だってのに、遺伝子研究所の方はなぜかデータから何まできれいにに処分されちゃってまして・・」

 ダコスタが肩を落として報告する。

「今ある手がかりは唯一・・・」

「デスティニープラン、か・・・」

 ラクスが呟き、バルドフェルドも続ける。情報収集はうまくいかず、得ている情報の詳細の解析に関しても、謎が深まるばかりだった。

「それでもまだ慎重に行動を進めるしかないですよ・・」

 そこへ1人の青年が、1人の少女とともにラクスたちの前に現れた。

 ソワレ・ホークスとマリア・スカイローズ。元々はザフトのMSパイロットであったが、戦闘の最中に窮地に追い込まれた際にエターナルに救出された。以後、戦況分析のためラクスたちと行動をともにしている。

「ソワレさん、マリアさん、助けていただいてありがとうございます・・」

「平和の歌姫に感謝されるとは嬉しいです・・ただ、僕はラクスさんたちに完全に賛同しているわけではありません・・」

 笑顔を見せるラクスに、ソワレが真剣な面持ちで言いかける。

「戦争のない世の中を目指して、僕たちもみなさんも尽力しています・・ただ、武力による制圧は、結局は新たな戦いを呼んでしまいます・・」

「・・どうすれば終わるのか、何と戦わなくてはならないのか・・戦争は難しいですわね・・・」

 語りかけるソワレの言葉に、ラクスが深刻な面持ちを浮かべる。

「あなたたちの考え次第では、私たちは袂を分かたなければなりません・・私があなたと行動をともにしているのは、現時点で目標が同じであるからと、あなたがハロ愛好家であるから・・」

 マリアが続けてラクスに言葉を投げかける。作戦室の床を、球体のロボット「ハロ」が2体転がってじゃれあっていた。一方はラクスのピンク色のハロ、もう一方はマリアの紅いハロ、ハローズである。

「くれぐれも慎重な対応をお願いしますね。あなたたちも、アークエンジェルのみなさんにも・・」

 マリアがラクスたちに向けて注意を促したときだった。エターナルのレーダーがMSの熱源を捉えた。

「何だ?・・・偵察型ジン!?

 モニターでの確認で、バルドフェルドが声を荒げる。情報収集を行っていたダコスタだが、ザフトの追跡に気付いていなかった。

「私が迂闊でした・・・」

「いや、迂闊なのはコイツだ・・・!」

 自分を責めるラクスに、バルドフェルドがダコスタをつまみ上げて言いかける。

「発進しましょう。時期に包囲されるでしょう・・」

「ですが、それでは丸見えに・・・!」

「もう同じことです・・・」

 ダコスタの声も虚しく、ラクスの指示でエターナルが発進する。包囲網を敷きつつあるザフトのMSが、その艦影を捉えていた。

 

 シンのデスティニーによって、アスランとメイリンの乗ったグフは撃墜された。だが2人は生きていた。

 アークエンジェルに回収されたアスランたち。彼が目を覚ました医務室には、キラとカガリの姿があった。

「キラ!?・・・お前、死んだんじゃ・・・!?

 アスランはキラの姿に目を疑った。フリーダムはインパルスによって撃墜されたはずだった。

「大丈夫だよ、アスラン・・僕も君も生きてるから・・」

 だがキラはアスランの前にいた。キラは生きていて、アスランに微笑みを見せていた。

「メイリン・・彼女は・・・?」

「大丈夫だ。彼女も無事だ・・お前が庇ってやったんだろ、アスラン・・・?」

 メイリンを心配するアスランに、カガリが答える。彼の隣のベットでメイリンは眠っており、負傷は見られなかった。

「キラ・・・オレは・・・」

「アスラン、もういい・・今はしゃべらないで・・・また、僕たちは話せるから・・・」

 言いかけるアスランをキラが励ます。アスランは気持ちを落ち着けて、再びベットに横になろうとした。

“キラくん、大変よ!エターナルが発進したわ!”

 そこへアークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスからの通信が入ってきた。

“ザフトに発見されたって・・・!”

「ザフト・・・ラクスが!」

 マリューからの連絡に、キラが動揺を見せる。同じくその連絡を耳にしたアスランが、体を起こそうとして痛みを覚える。

“部隊の中に最新型の機体もいるとも言ってきている・・このままではエターナルが・・・!”

 マリューの言葉にキラが困惑する。エターナル、ラクスの危機を黙って見ていたくなかった彼だが、フリーダムは大破してしまっている。

「キラ・・行くんだ・・・ラクスを、守るんだ・・・!」

 そこへアスランが声を振り絞り、キラに呼びかけてきた。

「彼女を失ったら、何もかもおしまいだ・・・!」

「アスラン・・・」

 必死に呼びかけるアスランに、キラが戸惑いを覚える。この呼びかけとラクスの危機に、彼は迷いを振り切った。

「ありがとう、アスラン・・・カガリ、ルージュを貸して!」

「キラ!?

 アスランに感謝し、続けてカガリに呼びかけるキラ。

「ブースターを装備して、エターナルまで飛ぶんだ・・・!」

 キラはカガリに言いかけると、駆け足で医務室から飛び出していった。

 カガリが使っていたストライクに乗り込み、OSを調整して自分に合わせた。そのコックピットに、マリューからの通信が入る。

“エターナルの軌道予想、いいわね!?だいぶ降下してきてるわよ!”

「はい、大丈夫です!」

 マリューの呼びかけにキラが答える。ブースターを装備したストライクの前のハッチが開かれる。

「ストライクブースター、行きます!」

 キラの乗るストライクが、エターナルの航行する宇宙に向けて飛び立っていった。

 

 ザフトの包囲網に行く手を阻まれたエターナル。この襲撃を打破するため、ソワレとマリアが出撃を決意する。

 ゼロ。バランスの取れた性能を有するMSで、ビームライフル、強化型ビームシールド、両足のビームブレイド、両手甲部のビームダガー、突きに特化したビームソード「トラスカリバー」を搭載。

 ルナ。ビームライフルと6門のレールガンによる遠距離型MSで、巨大鎌「クレッセント」による近接戦闘も可能としている。

「ソワレ・ホークス、ゼロ、発進する!」

「マリア・スカイローズ、ルナ、行くわよ!」

 ソワレのゼロ、マリアのルナがエターナルから発進する。高性能を発揮する2体が、ザフトのMSを撃退していく。

「みなさん、直ちに撤退してください!僕たちはみなさんに危害を加えるつもりはありません!」

 ソワレがザフトのMSのパイロットたちに向けて呼びかける。

「ですがみなさんが攻撃を仕掛けてくるなら、こちらも応戦することに・・!」

 だがザフトはソワレの呼びかけに応じることなく、攻撃を続ける。

「そんなこと言われて言うこと聞くなら、最初から攻撃してこないのが定石よね・・」

 マリアがため息をつき、ルナがクレッセントを振りかざして、攻撃してきたザクやディンたちを撃退していく。

 ソワレも腑に落ちないながらも迎撃に出る。ゼロが繰り出すトラスカリバーの突きで、ザフトのMSが貫かれて破損していく。

「あまり長く付き合わないで撤退してくれればいいのに・・・」

「これは全ての攻撃の手をつぶす以外にないのか・・・!」

 呟きかけるマリアと、撤退しないザフトに毒づくソワレ。ゼロとルナがザフトの軍勢を押し返しつつあった。

 そのとき、ゼロとルナ、エターナルのレーダーが高出力のエネルギーを感知した。その反応にソワレが危機感を覚える。

「この反応・・・マリア、退避を!」

「ソワレ!?

 ソワレの呼びかけにマリアが声を荒げる。次の瞬間、彼らのいる戦場に向けてエネルギーの奔流が飛び込んできた。

 その光線の直撃はなかったが、その余波を受けてゼロが破損する。

「ソワレ!」

 破損したゼロにマリアが声を上げる。大破には至らなかったが、ゼロは戦闘を行える状態ではなくなっていた。

「どうだ、タイタンの主力、トライデストロイヤーの威力は!」

 そこへ声がかかり、エターナルのモニターに機影が映る。ドーマの駆るタイタンが姿を見せていた。

「タイタン!?もう実践投入してきたのか!?

 タイタンの登場にバルドフェルドが声を荒げる。タイタンの放ったトライデストロイヤーが、ゼロを負傷させたのである。

「お前たちはここで葬られるしかない!このタイタンのトライデストロイヤーは、戦艦の陽電子砲をも凌駕する!」

 高らかに言い放つドーマに、ザフトのMSパイロットたちが鼓舞する。ゼロの負傷にソワレが危機感を覚える。

「エターナル、この状態ではゼロは戦えない!帰艦します!」

“すぐに帰艦してください。マリアさんも深追いは避けてください。”

 ソワレが呼びかけると、ラクスからの返答が伝わってくる。エターナルに向かうゼロを、マリアの駆るルナが援護する。

 だがゼロの戦力をそがれたことで、ルナは劣勢を強いられ、ザフトのMSの猛攻に追い込まれていく。

(このままではやられるのは時間の問題じゃない・・しかも時期にタイタンの砲撃のチャージが完了してしまう・・そうなったら・・・!)

 必死に思考を巡らせるマリア。彼女だけでなく、エターナルにいるラクスやバルドフェルドたちも危機感を募らせていた。

(終われない・・私もソワレもまだ、こんなところで終わるわけにいかないのに・・・!)

 焦りを膨らませるマリア。だがそのとき、彼女たちのいる宇宙に接近するエネルギーの反応を、ルナのレーダーが捉えた。

「この反応・・・ストライク!?

 マリアがたまらず声を荒げる。この戦場に飛び込んできたのは、キラの乗るストライクだった。

「大丈夫ですか!?

「その声は・・・!?

「キラ・・・!」

 呼びかけてきたキラの声に、マリアとラクスが驚きを覚える。アークエンジェルにいたキラが、エターナルを救うために駆けつけてきたのである。

「あなたがあのフリーダムのパイロット、キラ・ヤマトくんなの・・・!?

「はい。あなたは・・・?」

 呼びかけてくるマリアに、キラが疑問符を浮かべる。

「だったら早くエターナルに入りなさい!あなたのフィアンセと、新しい機体が待ってるわよ!」

 マリアがからかい半分でキラに呼びかける。MSの総攻撃で、キラの駆るストライクも迎撃が間に合わずに、直撃を受けて損傷していく。

 辛くもエターナルに接近し、その艦内に入ることができたストライク。降り立ったキラをラクスが迎える。

「ラクス!」

「キラ!」

 再会の喜びに、互いを抱きしめるキラとラクス。

「ラクス・・よかった・・・」

「キラ・・・」

 互いの無事に喜びを募らせる2人。キラはラクスに導かれて、ドック内のある機体の前に来た。

「あれは・・・!?

 キラはその機体を見て目を見開いた。その機体はフリーダムそのものだったが、彼が今まで乗ってきたフリーダムとはやや差異があった。

「フリーダム・・・!?

「これはフリーダムの後続機、ストライクフリーダム・・あなたの、新しい剣です・・・」

 ラクスがキラに微笑んで語りかける。キラの新しい剣「ストライクフリーダム」が、彼の眼前にそびえ立っていた。

「ありがとう、ラクス・・これで僕はまた、ちゃんと戦える・・僕の戦いを・・・」

 キラが感謝の言葉をかけると、ラクスも微笑んだ。

 

 フリーダムに乗り込み、システムを起動させるキラ。フリーダムの先のハッチが開放され、戦場が広がった。

「キラ・ヤマト、ストライクフリーダム、行きます!」

 キラの掛け声とともにフリーダムがエターナルが出撃する。その姿を目の当たりにして、ザフトのパイロットたちが驚きを覚える。

「フリーダム!?バカな!?フリーダムはインパルスに撃墜されたはず!?

 その中で1番驚愕していたのはドーマだった。

 キラの駆るフリーダムが戦場を駆け抜ける。その高い機動力と正確な射撃が、ザフトのMSの武装を次々に撃ち抜いていく。

「動きを押さえろ!たとえフリーダムでも、トライデストロイヤーの直撃を受ければ木っ端微塵だ!」

 ドーマが呼びかけると、グフがビームウィップを振りかざして、フリーダムの両腕、両足を捕らえて動きを止める。

「このまま押さえておけ!もうすぐチャージが完了・・・」

 ドーマが勝ち誇ろうとしたときだった。フリーダムの翼から複数の突起物が射出され、そこから放たれたビームがグフのビームウィップを撃ち抜いた。

 オールレンジ攻撃を可能とするシステム「ドラグーン」。その発展型「スーパードラグーン」が、ストライクフリーダムには搭載されている。

「あのフリーダムはドラグーンを備えているのか!?

 自由を取り戻したフリーダムに、ドーマが毒づく。

「おのれ!」

 毒づいた彼は、チャージ完了と同時に、フリーダムに向けてトライデストロイヤーを発射する。だが素早く動くフリーダムに、巨大なエネルギーの奔流は回避されてしまう。

「くっ!やはり速い相手には・・!」

「当たれ!」

 うめくドーマの眼前で、フリーダムがドラグーンを展開する。同時にキラは周囲にMSに対するマルチロックオンを行う。

 フリーダムのレールガンとドラグーンから一斉射撃が放たれる。射撃、砲撃はMSの武装を撃ち抜くが、ドーマの駆るタイタンは移動して回避する。

 だがそこへフリーダムが飛びかかってきた。振りかざされたビームサーベルが、タイタンの胴体をかすめた。

「ぐっ!・・ヤツめ!これではトライデストロイヤーがうまく機能しない・・・!」

 トライデストロイヤーに支障をきたし、ドーマが毒づく。

「撤退だ!体勢を立て直す!」

 ドーマの呼びかけでザフト軍が撤退をしていく。エターナルの危機を、キラとフリーダムが救ったのである。

 

 アルバとリリィの目撃情報が、デュランダルの耳に入ってきた。2人が目撃されたのはオーブ。食料の購入をしたところを発見したのである。

 デュランダルはオーブ政府に向けて、アルバとリリィの捕縛と身柄引き渡しを要求した。だが中立の理念を貫くオーブは、この要求を一方的な脅迫と判断し、拒否を示した。

「やはり聞き入れてはもらえないか・・オーブは我々にとっても友好的な国だ。それを思うと残念でならないが、我々も一歩も引くことはできん・・」

 オーブの返答に落胆の表情を浮かべるデュランダル。だが彼はすぐに毅然とした態度を見せた。

「アルバ・メモリアをオーブから引きずり出せ!ただし市街地、民間人への被害は極力避けろ!」

 デュランダルの命令が、オーブに接近していたMS隊に伝達された。部隊はオーブの軍施設に狙いを絞って攻撃を開始した。

「やはり見つかってしまったようだな・・・」

「腹が減っては戦ができないっていうから買出しに出たけど、やっぱりまずかったみたいね・・」

 憮然とした面持ちを浮かべるアルバと、肩を落とすリリィ。

「今は軍事施設に狙いを絞ってきているようだが、いつ市街に飛び火するか分からないぞ・・」

「急いで戻ろう・・このままムチャクチャになるのは、やっぱりよくないよね・・・」

 呟きかけるアルバに、リリィが物悲しい笑みを浮かべて言いかける。

「みんなを失ったオレたちは、生きていくことが全てとなった・・たとえ全てを敵に回すことになっても未来を切り開く・・」

「それが、私たちの全てということね・・・」

 胸の中に秘めている決意を口にするアルバとリリィ。2人はオーブ市街の外、各々の機体のいる場所に向かっていった。

 

 

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