GUNDAM WAR Horrible Wishes-

PHASE-48「平和と再生」

 

 

 ユウとリヴァイバーを撃墜したのは、レイアのグレイヴだった。グレイヴのラグナログがユウを消したのだった。

「ユウ・フォクシー・・お前の平和を望む志は買っていたのだが、まさに買いかぶりだったようだ・・」

「ユウ・・・そんな・・・!?

 不敵な笑みを浮かべるレイアと、ユウの死に目を疑うカナ。

「裏切られたことには残念に思うが、ここまでヴァルキリーの理想郷の実現に貢献してくれたことは感謝しよう・・」

「ユウを・・・よくもユウを!」

 カナが激高して、ブレイズがレイアのグレイヴに向かって飛びかかる。ビームサーベルを振りかざすブレイズだが、グレイヴに軽々とかわされていく。

「ジン・シマバラほどの技量と覇気はないようだな、カナ・カーティア。ジンも裏切り者として処罰することになるが・・」

 レイアがカナをあざ笑い、グレイヴがクレイモアを手にして振りかざす。カナが回避行動を取ろうとするが、クレイモアがビームサーベルごとブレイズの右腕を吹き飛ばした。

「えっ!?

 あまりに一瞬な出来事に感じて、カナが驚く。ブレイズはグレイヴによって、瞬く間に戦力を削がれてしまった。

「お前もユウ・フォクシーのいる場所へ送り届けてやろう。かつての同胞への手向けだ。」

 レイアがカナに言葉を投げかけ、グレイヴがクレイモアを振り上げた。

 次の瞬間、クレイモアが突然弾かれた。アルバのフューチャーがエクスカリバーをクレイモアにぶつけたのだった。

「アルバさん!」

「お前は下がれ!それでは戦えないだろう!」

 声を上げるカナに、アルバが呼びかける。グレイヴの前にフューチャーが立ちはだかった。

「アルバ・メモリア・・お前とは決着をつけなくてはならないようだな・・」

 レイアがアルバに対して敵意を向ける。フューチャーとグレイヴが対峙する中、カナのブレイズが2機から離れていく。

「お前・・自分たちの目的のために、仲間の命を・・・!」

 アルバがレイアに対して憤りを感じていく。しかしレイアは不敵な笑みを浮かべるだけだった。

「仲間?あのときのユウ・フォクシーは我々を裏切った。裏切り者を処罰しただけのことだ。」

「だから殺したと・・たった1つの命を、お前は・・・!」

 アルバが激高し、フューチャーがエクスカリバーを構える。

「ヴァルキリーの追い求める理想郷のために尽力するのが我々の使命。そのために命を賭す、反逆は死をもって償う。それが我々が背負った宿命だ。」

「それで命を切り捨てていい理由にはならない!命を軽く見る世界など、平和であるはずがない!」

「フン。世界よりも命を選んだ分際で、平和を口にするとはな・・」

 憤るアルバをレイアがあざ笑う。グレイヴがクレイモアを構えて、フューチャーを迎え撃つ。

「ディアス・フリークスであろうと、アルバ・メモリアであろうと、我々の目指す平和に背くならば我々の敵。それ以外の何者にもなれぬ。」

「ならばオレたちが生きるために、オレはお前を倒す!」

 目を見開くレイアにアルバが言い放つ。フューチャーがエクスカリバーを構えて、グレイヴに飛びかかる。

 ビームを伴った巨大な2本の剣がぶつかり合い、激しく火花を散らす。

「さすがはフューチャー。このグレイヴのパワーに負けないとは・・」

 不敵な笑みを浮かべるレイア。つばぜり合いを相殺させて、フューチャーとグレイヴが距離を取る。

 グレイヴが遠距離からフューチャーを倒そうと、ラグナログのエネルギーを充填させていく。

「このまま撃たせるわけがないだろう!」

 アルバが言い放ち、フューチャーがエクスカリバーを手にしてグレイヴに向かっていく。だがグレイヴがビームライフルを手にして、フューチャーに向かって狙撃する。

「かかったな、アルバ!一撃必殺だけがグレイヴの武器だと思うな!」

 レイアが言い放つが、アルバはビームライフルの射撃に反応していた。フューチャーがエクスカリバーを構えて盾にして、ビームを防いだ。

 続けてフューチャーが左手でビームライフルを手にして発砲する。グレイヴがビームをかわして、再びフューチャーとの距離を取る。

「近距離攻撃と突撃だけが、フューチャーの攻撃ではないぞ・・!」

「私の中にまだ、過信と慢心があったようだ・・」

 アルバのフューチャーに攻撃が通らなかったことに、レイアが苦言を口にする。

「だがそれでも私は、ヴァルキリーの使命を果たさねばならない・・もう私は、一切の過信と慢心を捨てる!」

 レイアが集中力を高め、グレイヴがクレイモアを構えて飛びかかる。フューチャーがエクスカリバーを振りかざして、クレイモアとぶつけ合う。

「世界は荒みきってる。世界を動かしている者が愚か者たちで、旧人類とオメガという人種の隔てを機とした戦争を繰り返してきた。」

 交戦の中、レイアがアルバに向けて語りかけていく。

「愚か者たちのエゴのために、戦争は終息するどころか、過激化の一途を辿っていく。その因果を断ち切るには、平和の敵の源を叩くしかない。」

「そのためにヴァルキリーを設立して、行動を起こしたというのか・・・!」

「平和の敵の根源を排除し、ついに理想郷を築く直前まえたどり着いたのだ。それをお前たちに邪魔されるわけにはいかんのだ。」

「その理想郷のために、多くの命を、一方的に奪うというのか!?

「愚か者には鉄槌が下されるのが道理。世界の敵の罪は死をもって償わなければならない。」

「お前・・神になったつもりか・・!?

 自分たちの目指す平和のために命を一掃することもいとわないレイアに、命を重んじるアルバの怒りが爆発した。

「命は、誰かに弄ばれるためにあるのではない!」

 アルバが言い放ち、フューチャーがエクスカリバーを構えてグレイヴに向かっていく。グレイヴがクレイモアでエクスカリバーを受け止めていく。

「たとえ正しいことであろうと、命を弄ぶ理想郷にオレはすがらない!」

 フューチャーがクレイモアとぶつけ合っていくエクスカリバーを右手で持って、左手のビームハンドを構える。

「悪になろうとも、オレたちは生きる!命を生かす!」

 アルバが言い放ち、フューチャーが左手を出してビームハンドでグレイヴの右わき腹に攻撃を加えた。

「ぐっ!」

 攻撃を受けた衝撃に襲われて、レイアがうめく。右のわき腹部分に損傷が出て、グレイヴは機動力を落とすことになった。

 フューチャーが再びエクスカリバーを振りかざす。グレイヴがクレイモアでエクスカリバーを受け止めるが、力負けして押されていく。

(損傷が思った以上に激しい・・このままではやられることも・・・!)

 自分が追い込まれていることに、レイアが毒づく。

(だがここで引き下がることは、世界を暗黒のままにすることと同じ・・この命を費やしてでも、私は引き下がるわけにはいかない!)

 レイアは押し寄せてきた迷いを振り切り、アルバのフューチャーへの攻撃を仕掛ける。グレイヴがフューチャーに向かって加速し、クレイモアを振りかざす。

 エクスカリバーとクレイモアが激しくぶつかり合った。損傷してるグレイヴが力負けして、クレイモアが手から弾かれてしまう。

「これで勝ったとは思わないことだ!」

 レイアは攻撃の意思を捨てていない。グレイヴはクレイモアで攻撃する間も、ラグナログのエネルギー充填を行っていた。

「お前だけでも倒さねば!」

「オレは、死ぬわけにはいかない!」

 言い放つレイアとアルバ。フューチャーがとっさにエクスカリバーを、グレイヴのラグナログの発射口に突き立てた。

「ぐっ!」

 驚愕の声を上げるレイア。切り札としていたラグナログさえも破壊され、グレイヴはフューチャー撃破の手立てを失った。

(私は・・最後の最後で、志半ばにして倒れるのか・・自らの手で、理想郷を築くことができないまま・・・)

 大破したグレイヴのコックピットで、レイアが絶望を感じていく。

(悔いが残るが、これで理想郷が実現できなくなったわけではない・・我々にはまだ、バーン・アレスがいる・・・)

 レイアが自分たちの悲願をバーンに託した。

(バーン・・お前が、真の平和を・・・)

 レイアの姿が白い光の中に消えた。フューチャーの攻撃で返り討ちにされて、グレイヴが爆発を起こした。

(そうだ・・オレたちは生きる・・生きていくことが、オレたちのために死んでいった者たちに報いることになるのだから・・・)

 命を落とした仲間たちのことを思い、アルバはリリィのソリッドに通信をつなげる。

「リリィ、1度お前と合流する・・ジンは・・?」

“まだヴァルカスと戦ってる・・あの衛星のことも気にせずに・・・”

 アルバの言葉に、クレストに戻っていたリリィが答える。フューチャーのコックピットのモニターに、激闘を繰り広げるフェイスとヴァルカスの姿が映し出される。

「あそこはジンに任せるしかない・・オレは戻ってから、また衛星の破壊に向かう・・」

“うん、分かった・・私たちももう1度出るよ・・”

“アルバくんも整備を整えてから再出撃よ。”

 アルバが言いかけると、リリィに続いてマリアも返事をしてきた。フューチャーがクレストに向かって移動していった。

 

 フェイスとヴァルカスがスピードを上げたまま、それぞれ2本のストライカーとビームサーベルを振りかざしてぶつけ合っていく。

「スバル、オレはお前を倒す!今ここで、お前を叩き潰す!」

「ジン、お前を倒すことで、ヴァルキリーの理想郷を脅かす敵の一角が崩れることになる。ヴァルキリーと世界のために、お前は消えなければならない。」

「消えるのはお前のほうだ!お前の都合をオレに押し付けるな!」

 淡々に告げるバーンに、ジンが怒号を放つ。フェイスとヴァルカスがストライカーとビームサーベルを交差させてから振りかざし、ぶつけ合う。

「全てを捨てて、何もかも裏切って、そうまでしてこんなふざけた理想郷ってヤツを実現させたいのか!?

「レイア様とヴァルキリーの崇高な使命を愚弄するとは・・」

 怒鳴るジンに苛立ちを噛みしめるバーン。ヴァルカスが素早くビームサーベルを振りかざして、フェイスのストライカーのビームの刃を叩いていく。

「自分のことしか考えていないお前では、決して平和を築くことはできない。世界の全てを変えなくては、争いの根源を断たなければ、理想郷は、真の平和は実現しない。」

「身勝手を押し付ける平和など、オレは平和とは認めない!」

 バーンの言葉にジンが言い返す。フェイスがストライカーで、強引にヴァルカスのビームサーベルを押し返す。

 押されたヴァルカスがすぐに体勢を整えて、さらにスピードを上げてフェイスに迫る。スピードではヴァルカスがフェイスを上回っていることを、バーンは確信していた。

「その不可思議なMSであろうと、今のヴァルカスには及ばない!」

「オレは、お前をこのまま生かしてはおかない!」

 ヴァルカスが接近してビームサーベルを突き出した瞬間、フェイスの胴体から光があふれ出してきた。

「またこの光か・・!」

 バーンが毒づき、ヴァルカスがフェイスの光に包まれる。この光の中で、ジンとバーンの精神がリンクされる。

「スバル、お前はミリィを殺した・・お前が思いを寄せていたアイツも、お前が殺した・・!」

「私に過去はない。レイア様とヴァルキリーのために存在し、敵と見なしたものを排除することが私の全て。」

「違う!そうやって否定していって、お前は満足か!?オレに苦痛を与えていって、お前は満足なのか!?

「レイア様とヴァルキリーのためだけに私は存在している。それ以外には何もない。」

 怒りと憎しみを言い放つジンだが、バーンは表情も態度も考えも変えない。

「もうお前の中に、スバルはいない・・完全にオレの敵になったというのか・・!?

 ジンが込み上げている怒りを爆発させる。彼がバーンに向けて拳を繰り出した。

 まるで本当に殴られたかのような衝撃を受けるバーン。しかし完全に気圧されず、バーンも意思を示す。

「これが、ジンの戦意・・だが、それで私が止まることにはならない。」

 バーンが目つきを鋭くして、ジンの怒りに対抗しようとしていた。

 

 フェイスからあふれていた光が弱まって、ジンとバーンの意識が現実に戻ってきた。

「ジン・シマバラ・・理想郷を築き上げるためには、お前をこの世界から消し去らなければならないようだ・・・!」

「スバル・・もうお前は救えない・・オレはもう絶対に、お前を救おうとはしない!」

 互いへの敵意を強めていくバーンとスバル。フェイスとヴァルカスが再び対峙する。

「ここでお前を叩き潰す・・ミリィのいる天国へは行かせない・・・!」

 ジンが声を振り絞り、フェイスがストライカーを組み合わせてストライクセイバーにする。ストライクセイバーから発せられるビームの刃が巨大になっていく。

「全力を出してきたというところか。だがそれでも私を、我々の理想を止めることはできない・・!」

 バーンが目つきを鋭くして、ヴァルカスもビームサーベルを組み合わせてビームの刃を巨大にする。

「この巨大さゆえに若干スピードが落ちることになるが、あのビームソードのパワーに対抗するにはこれしかない。MSそのものの性能が上がってきているのもある。」

 バーンが言いかけて、ヴァルカスがビームソードを構える。

「この全力で葬られることを、誇りに思え、ジン・シマバラ!」

「オレはお前に何のいい気持ちも見せない!」

 言い放つバーンとジン。ヴァルカスが飛び込んで振りかざしたビームソードを、フェイスがストライクセイバーで受け止める。

「オレはスバル・・お前を絶対に許さない!たとえ元のお前に戻ったとしても!」

 ジンが怒号を上げて、フェイスがストライクセイバーを振りかざして、ヴァルカスを突き飛ばす。

 怯んだヴァルカスにフェイスがストライクセイバーを構えて詰め寄る。

「バーン様!」

 そこへスナイパーが数機飛び込んできて、フェイスに向けてビームを発射してきた。フェイスの胴体からかすかにあふれている光で、スナイパーのビームが弾かれた。

「バーン様、我々が援護します!」

「ヴァルキリーの裏切り者が!」

「下がれ!ムダに命を落としたいのか!?

 加勢するスナイパーのパイロットたちに、バーンが呼びかける。援護射撃をしてくるスナイパーにも、ジンが敵意を向ける。

「どいつもこいつも・・そんなにオレたちを苦しめたいのか!?

 ジンの怒りは殺意となって、彼の感覚を研ぎ澄ませた。彼のこの殺気に呼応するかのように、フェイスからあふれている光が紅く染まっていく。

「こ、これは・・うわあっ!」

 フェイスの紅い光が刃のように押し寄せて、スナイパーが切り裂かれて爆発を引き起こしていく。

「この紅い光・・まさに、聖戦士を脅かす悪魔・・・!」

 バーンが今のフェイスを目の当たりにして、緊迫を痛感させられる。

「その悪魔を倒した先に理想郷があるなら、私は一切の迷いなくそれを遂行するのみ!」

 バーンが意思を強めて、ヴァルカスがフェイスに向かっていった。

 

 

次回予告

 

ヴァルキリーの理想郷のために尽力するバーン。

スバルへの怒りをむき出しにするジン。

失われた過去、スバル。

果てしない死闘、激化する戦争の中で彼らが見たものは?

 

次回「世界の果てで」

 

 

作品集

 

TOP

inserted by FC2 system