GUNDAM WAR Horrible Wishes-

PHASE-45「死闘と私闘」

 

 

 ヴァルキリー迎撃の先陣を任されたクレスト。そのクレストがオーディンに向けて発進する前に、ジンの乗ったフェイスがクレストを飛び出した。

「あれはフェイス!?・・ジンくん、先に出てっちゃったわけ!?

 リンがジンとフェイスに向けて驚きの声を上げる。

「自分だけでヴァルキリーに戦いに行ったんだわ・・あの兵器も一緒に破壊するつもりね・・」

「いくらなんでも1機ではムリだ!逆に状況を混乱させることになる!」

 マリアが深刻な面持ちで声を上げ、ソワレが焦りを見せる。

「すぐに追いかけてアイツを止めに・・!」

“その前にクレストを発進させる。”

 ゼロで出撃しようとしたソワレを、ガルが呼び止めてきた。

「ですが、いくらクレストでも、フェイスに確実に追いつけるとは・・!」

“それでも構わん。先陣の先陣はジン、アイツに任せよう・・”

 声を上げるソワレにガルが呼びかける。

「先陣の先陣ね・・しゃれた言い方だけど・・状況はお気楽じゃないわね・・」

 マリアが深刻な面持ちを浮かべて呟きかける。

“パイロットは発進準備。ヴァルキリーの部隊の撃退、および衛星兵器の破壊を行う。”

 ガルの指示がクレスト艦内に響き渡る。

「私たちも行くわよ、ソワレくん・・アルバくんとリリィさんも力を貸してもらうわよ・・」

 呼びかけるマリアに、アルバとリリィが頷く。

「私も行きます!ジンを追いかけないと!」

 カナがブレイズに乗り込んで、ジンのフェイスを追いかけようとする。

「カナさんはジンくんを追いかけて!衛星兵器は私たちで止めるから!」

「リリィさん・・・ありがとうございます!」

 声をかけるリリィに感謝の言葉を返して、カナが発進に備える。

(ジン、私も行くからね・・・!)

「カナ・カーティア、ブレイズ、ゴー!」

 カナのブレイズがクレストから発進した。

「アルバ・メモリア、フューチャー、行くぞ!」

「ソワレ・ホークス、ゼロ、発進する!」

 アルバのフューチャー、ソワレのゼロも続けて出撃していった。

 

 オーディンの防衛と抵抗勢力の排除に備えていたヴァルキリー。ヴァルキリアのレーダーが、接近してくる熱源を捉えた。

「接近する熱源あり!MSです!」

 アンの報告を受けて、ジャッカルがモニターを注視する。

「ジンのあの機体か・・・!」

「ものすごいスピードで向かってきます!」

 目つきを鋭くするジャッカルと、さらに声を上げるアン。

“すぐに出撃してジン・シマバラを迎え撃ちます。”

 ジャッカルに向けて、ヴァルカスに乗ったバーンが呼びかけてきた。

“これより迎撃態勢に入る。ヴァルキリアも迎撃に備えよ。”

 続けてレイアからも命令が入った。ジャッカルたちもジンの突撃に備えた。

 

 ジンのフェイスの出現に、バーンも戦意を募らせていた。

(ジン・シマバラ、今度こそここで引導を渡す。我々の今の最大の障害はお前だ。)

 ジンへの敵意を募らせて、バーンがハッチの開かれた虚空を見据えた。

「バーン・アレス、ヴァルカス、発進する!」

「レイア・バルキー、グレイヴ、出撃する!」

「ゼビル・クローズ、カース、発進する!」

 バーンのヴァルカス、レイアのグレイヴ、ゼビルのカースがヴァルキリアから発進した。

(僕が平和を取り戻すんだ・・無理やりにでもカナを連れ戻して、一緒に平和を・・・!)

 ユウがリヴァイバーのコックピットで、自分に言い聞かせていく。気を引き締めてから、彼は発進に備えた。

「ユウ・フォクシー、リヴァイバー、行きます!」

 ユウのリヴァイバーがヴァルキリアから発進した。ヴァルキリーの別部隊のMSも、レイアたちと合流していく。

「バーン、ゼビル、ユウ、散開してオーディンを防衛しろ。接近する敵全てを一掃するのだ。」

「了解。」

「分かりました・・・!」

 レイアの指示にバーンとゼビルが答え、ユウも声を振り絞った。グレイヴ、ヴァルカス、カース、リヴァイバーが散開して、オーディン各機の防衛に向かった。

(ジン・・私を狙ってきているか・・・!)

 ヴァルカスのレーダーに映るフェイスの位置を確認して、バーンはジンに意識を傾ける。

(向こうから断罪されに来るとは・・ならば私が直接処断しよう。)

 バーンが意識を集中させて、ヴァルカスがスナイパーたちから離れてフェイスを迎え撃つ。

「お前たちはオーディンに向かえ。私があのMSの相手をする。」

“了解、バーン様!”

 バーンの指示にスナイパーのパイロットが答える。ビームの刃を出した2本のストライカーを振り下ろすフェイスを、ヴァルカスが2本のビームサーベルを手にして迎え撃つ。

「今度こそ・・今度こそ間違いを正してやるぞ、スバル!」

「私はバーン・アレス。間違いを正されるのはお前のほうだ。」

 言い放つジンに、バーンが冷静に言い返す。

「どこまでも自分のことを棚に上げて!」

 ジンが怒号を上げて、フェイスがストライカーに力を込める。突き飛ばされるヴァルカスだが、すぐに踏みとどまって体勢を整える。

「お前はオレも、お前を信じていたヤツも、お前自身も裏切って、ヴァルキリーのパイロットに逃げた!そんなヤツをオレは友とは思わない!ミリィを殺したお前を、オレは絶対に許さない!」

「まだ戯言を口にするか。だがそれも我々の前では全く意味をなさない。」

 感情をむき出しにするジンと、感情を見せないバーン。フェイスとヴァルカスが飛びかかり、ストライカーとビームサーベルをぶつけ合った。

 

 レイア、ゼビル、ユウがスナイパーとともにオーディン各機のそばに到着した。

「襲撃してきたのがあの機体だけと考えるな。フューチャーとゼロも必ず現れる。」

「望むところです。敵を一掃する絶好の機会です。」

 呼びかけてくるレイアに、ゼビルが落ち着いて答える。

「ユウ、平和を取り戻すのは今だ。必ず勝利を手にするのだ。」

「はい・・レイア様・・・!」

 続けてレイアが呼びかけると、ユウが声を振り絞るように答えた。

「来たぞ。クレスト委が先陣を切ってきた・・」

 レイアの言葉を受けて、ゼビルとユウが視線を移す。ジンのフェイスを追う形でクレストが、さらにフューチャー、ゼロ、ブレイズも姿を現した。

「カナ・・・!」

 ブレイズに乗っているカナに対して、ユウが動揺を覚えた。

 

「リリィ・クラウディ、ソリッド、行きます!」

「マリア・スカイローズ、ルナ、行くわよ!」

 リリィとマリアもソリッドとルナに乗って、クレストから発進する2機もフューチャーたちと合流して、グレイヴたちに向かっていく。

「あの機体はオレが押さえる。リリィは衛星兵器を・・」

「分かったわ、アルバ・・気を付けて・・・!」

 アルバの呼びかけにリリィが答える。

「私もリリィさんと一緒に行くわ。ソワレくんはそっちをお願い。」

「分かりました。」

 マリアも呼びかけて、ソワレが答える。ルナと別れたゼロの前に、ゼビルのカースが現れる。

「リードの英雄よ、お前の栄光も今日限りだ!」

「悪いが僕は英雄だと思ったことはない・・!」

 言い放つゼビルに言葉を返すソワレ。スピードを上げたカースを、ゼロはトラスカリバーを手にして迎え撃った。

 

 オーディン撃破のため、速度を上げるソリッドとルナ。だが2機の前に、防衛線を敷いていたスナイパーたちが立ちふさがった。

「今までで最高の数ね・・・!」

「数が押さえ込もうという考えらしいけど、ここまでとはね・・・!」

 リリィとマリアがスナイパーの多さに声を荒げる。

「それでも、私は引き下がるわけにはいかない・・・!」

「せめて援護が到着するまでは耐えないと・・!」

 声をかけ合うリリィとマリア。ソリッドとルナがビームライフルを手にして、向かってくるスナイパーを射撃していった。

 

 フューチャーとグレイヴがエクスカリバーとクレイモアをぶつけ合っていく。続けて2機はビームライフルを手にして射撃して、けん制し合っていく。

「これだけの力、これだけの意思の強さがありながら、我々と敵対する道を選ぶとは・・滑稽であると同時にもったいないことと思う・・」

「お前たちが口にする平和は、多くの命を奪うもの!オレはそれを見過ごすことはできない!」

 不敵な笑みを浮かべるレイアと、自分の意思を口にするアルバ。フューチャーが振りかざしてくるエクスカリバーを、グレイヴが素早く動いてかわしていく。

「だが愚か者は私利私欲のために戦争を繰り返す。地球連合もリードも。平和を取り戻すという詭弁すらも口にするヤツらに代わり、我々ヴァルキリーが理想郷を築いていく。」

「そのために世界を壊す行為を認めろというのか!?

「我々が淘汰するのは連合とリードの拠点のみ。ヤツらを野放しにし続けてきた者たちも、我々の断罪を受けるのみ。」

「無関係の人たちまで巻き込んでいるじゃないか!やはりお前たちを野放しにはできない!」

 自分たちの考えを語るレイアに反発するアルバ。

「我々の理想郷に刃向かうものは全て敵対勢力。世界の敵としてこの手で滅ぼす。アルバ・メモリア、お前も例外ではないぞ!」

「自分たちの意に沿わないのは全て敵・・それで平和が作れるはずがない!」

 レイアに言い返すアルバ。フューチャーがエクスカリバーを振り上げる。

「オレたちは死なない!必死に生きている人たちの命も、失わせはしない!」

 アルバが言い放ち、フューチャーがグレイヴに向かっていった。

 

 スナイパーたちと交戦するソリッドとルナ。だが圧倒的な数のスナイパーを相手に、リリィもマリアも焦りを募らせていた。

「このままではあの兵器に近づくこともできない・・・!」

「離れて、リリィさん!一気に撃ち抜く!」

 声を荒げるリリィにマリアが呼びかける。ソリッドが距離を取ったところで、ルナが6門のレールガンを一斉発射して、スナイパーを次々に撃ち抜いていく。

 だが数を減らしただけで、スナイパーの数の多さと防衛線に変化は見られない。

「これじゃきりがない・・!」

「もう1度私が撃つわ。リリィさんはその隙に一気に突き進んで、衛星兵器を破壊して。」

 さらに焦るリリィにマリアが呼びかける。

「ルナで開いた活路を突き進む。その役目、あなたに任せるわ。」

「重要な役割を押し付けられてる感じになってるけど・・そこまで信頼してくれるなら、私がやるしかないわね・・・!」

 マリアに背中を押されて、リリィも意を決する。

「うまくタイミングを合わせてよね!」

「誰に向かって言っているの?」

 声をかけ合うリリィとマリア。ルナがレールガンを再び展開してスナイパーに狙いを定める。

「行きなさい、リリィ!」

 マリアが叫ぶと同時に、ルナがレールガンを一斉放射した。6つのビームがスナイパーに命中したと同時に、ソリッドが一気にスピードを上げて、オーディンに向かった。

 突き進んでいくソリッドの行く手を、スナイパーたちが阻む。

「どきなさい!」

 リリィが叫び、ソリッドが右手にビームサーベル、左手にビームライフルを手にして、スナイパーの軍勢に突撃する。射撃と斬撃を繰り広げて、ソリッドがオーディンに向かっていく。

 だが次々に現れるスナイパーの妨害で、ソリッドはついに失速してしまう。

「もう少し・・もう少しなのに・・!」

 接近を試みるリリィだが、スナイパーたちの射撃を当てられて、ソリッドが怯む。

「リリィ!」

 マリアが声を上げるが、ルナの行く手をスナイパーが阻む。

(このままだとリリィがやられる・・・!)

 リリィの危機を痛感するマリア。スナイパーのビームライフルの銃口が、ソリッドを捉えた。

 そのとき、ソリッドと狙っていたスナイパーたちが横から狙撃された。

「間に合ったようだな。遅れてすまん・・」

 リリィとマリアの耳にガルの声が入ってきた。クレストが駆けつけて、マーズとサターンでスナイパーたちを狙撃した。

「艦長・・助かりました・・」

 クレストの到着と援護にマリアが安堵を覚える。

「クレストが援護射撃を行う。マリア、リリィ、お前たちで衛星兵器を破壊しろ。」

「了解!」

 ガルの指示にマリアが答える。ルナがクレッセントを手にして、スナイパーたちを切り裂きながら前進して、ソリッドに追い付く。

「私も一緒に突撃するわ。このままあの衛星兵器を仕留めるわよ!」

「えぇっ!」

 マリアの呼びかけにリリィが答える。

「ルナとソリッドを援護する!2機にヴァルキリーのMSを近づけさせるな!」

「了解!」

 ガルの指示にクルーたちが答える。クレストがソリッドとルナを援護すべく、武装を展開して射撃を行った。

 

 駆けつけてきたクレストの位置を、ヴァルキリアのレーダーも捉えていた。

「出てきたか、クレスト・・ここでオーディンを失えば、我々の活路も閉ざされることになる・・・!」

 ジャッカルが戦況を見定めて、判断を下していく。

「我々はクレストを押さえる!ヤツの援護を止めれば、ルナとソリッドを食い止められる!」

「了解!」

 ジャッカルの指示にアイナが答える。ヴァルキリアがクレストに向けて、砲撃の狙いを定める。

「ブラスト、ラッシュ、ってぇ!」

 ジャッカルの号令で、ヴァルキリアからクレストに向けて射撃が放たれた。

 

 ジンのフェイスを追い求めて、戦場を移動していくカナのブレイズ。ブレイズが戦火をかいくぐっていき、カナがヴァルカスと交戦するフェイスを発見した。

「ジン・・・!」

 フェイスとヴァルカスの攻防に巻き込まれないように、カナがジンに呼びかける。

「ジン、私も戦う・・ヴァルカスを攻撃するから!」

 カナが呼びかけて、ブレイズがビームライフルを構えて、ヴァルカスに向けて発砲する。だがブレイズのビームが、上から飛び込んできた別のビームを当てられて爆発を起こした。

 援軍が来たと思って、カナが周りを見回す。

「カナ!」

 カナに向けて声をかけてきたのは、リヴァイバーに乗ったユウだった。リヴァイバーの放ったビームが、ブレイズのビームライフルのビームを撃ったのである。

「ユウ・・・!」

「カナ、やめるんだ!どうして平和を壊そうとしている連中の味方をするんだ!?

 緊張を覚えるカナに、ユウが呼びかけてくる。

「オーディンがあれば平和の敵を一気に片付けられる!もうすぐ平和を取り戻すことができるんだ!」

「自分たちの敵に回るもの全てを一掃する平和が、ユウの望んでいた平和だっていうの!?

 言い放つユウにカナも言い返す。

「目的のために、ジンまで簡単に切り捨ててしまう平和なんていらない・・そんな偽物の平和を、私は撃つ・・・!」

「何が偽物の平和だよ・・手を打たないと、また誰かが戦争に巻き込まれて辛い思いをするんだ!」

 意思を示すカナにユウが憤りを覚える。

「僕ももう迷わない・・たとえ力ずくでも、カナ、君を連れ戻して、平和の世界に連れて行く!」

 ユウが言い放ち、リヴァイバーがブレイズに向かっていった。

 

 

次回予告

 

世界の平和を取り戻す。

その意思は正義か否か?

ソワレの決意とゼビルの意思が、ゼロとカースとともにぶつかり合う。

激化する戦況の中、正義を貫き通すのは・・・?

 

次回・「本当の平和」

 

 

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