GUNDAM WAR -Encounter of Fate-
PHASE-26「ナツキ」
ナツキが眼を覚ましてまず視界に入ったのは、部屋を照らしている蛍光灯だった。まぶしい光でくらみそうになり、彼女は眼を細める。
「ここは・・・?」
ナツキが周囲を見回して、自分がいる場所を確認する。彼女が寝ていたのは医務室のベットだった。
彼女は状況をもっとよく知るため、ベットから降りて立ち上がる。すると部屋のドアが開き、1人の少女が入ってきた。
「あ、気がつきましたか。安心しました。外傷は見られないのですけど、なかなか意識が戻らなかくて心配してしまいましたよ。」
少女は安心した面持ちをナツキに見せる。
「ここはどこだ・・?」
そんな少女にナツキは問いかける。
「ここはシアーズの軍事施設だったところの医務室です。海に落ちたザクにいたあなたたちを、私たちが助けたんです。」
「シアーズ・・・!?」
少女の言葉にナツキが眉をひそめる。すると少女は微笑んで続ける。
「申し送れました。私はキヨネ・レアラ。シアーズ旗艦“エクリプスワン”のオペレーター兼、アリス・クラインことサエ・クルーガーの助手を務めていました。」
「母さん・・・」
少女、キヨネの自己紹介に、ナツキは母を思い返して困惑する。サエはナツキに全てを託して命を閉じたのだった。
「私はサエさんとともに、シアーズの動向を探りつつ、エレメンタルテクノロジーの研究を行ってきました。そしてついに私たちは、そのデータと技術の全てと、世界で有数の動力源であるエレメンタルチャージャーを注ぎ込んで、エレメンタルガンダムに並ぶ機体の完成に成功したのです。」
キヨネが真剣な面持ちになって、ナツキに説明をしていく。彼女もサエに助力を注いで、ナツキのために力を入れてきたのだ。
「研究の合間に、ナツキさんのことはサエさんから聞いていました。優しくかわいい娘がいるって・・サエさんにそっくりですよ。姿かたちだけじゃなく、性格や考え方も。」
満面の笑顔を見せるキヨネを見て、ナツキも安堵して笑みをこぼす。
「ところでキョウジは、男も1人乗っていたんだが・・」
「あ、あの人なら隣の部屋にいますよ。男女合同にするといろいろと不便が出てしまうと思ったのですが・・」
「そうか。ありがとう・・少し歩かせてくれ。」
ナツキはキョウジの安否を直に確かめる目的で、キヨネとともにひとまず部屋を出ることにした。その廊下で、彼女たちは同じく部屋を出てきていたキョウジを見つける。
「キョウジ・・お前も無事だったんだな・・」
「ナツキさん・・何とかこのとおり生きてたよ、オレは。」
互いに安堵の笑みを見せるナツキとキョウジ。しかしすぐにキョウジの表情が曇る。
「私もサクヤのことが気がかりだ。私も彼女を助けたいと思っている。」
「ありがとう、ナツキさん。だけど、サクヤとはオレ自身の問題でもあるんだ。その答えは、オレが出さなくちゃならないと思う・・・」
「キョウジ・・・」
沈痛さを見せるキョウジに、ナツキも困惑を隠せなくなっていた。
長き時の封印を破り、戦場にその姿を現したマイスター、パール、コーラル。黒曜軍の攻撃をひとまず退け、クサナギの体勢を整える時間を与えることに成功していた。
そんなオーブ軍の前に、シディアから出撃したスサノオー、ツキヨミ、ミロクが立ちはだかってきた。
「アリカさん、ニナさん、エルスティンさん、気をつけて。スサノオー、ツキヨミ、ミロクが接近してきます。」
「了解、ユキノさん!」
ユキノの通信にアリカが答える。そして迫ってくるダークサイドのエレメンタルガンダムを見据える。
「ニナちゃんはツキヨミを!エルスちゃんとアカネさんはクサナギを守ってください!」
「分かったわ!」
「了解、アリカちゃん!」
「分かったわ、アリカちゃん!」
アリカの指示にニナ、エルスティン、アカネが答える。
「ここで落とさせてもらうよ、オーブ!」
スサノオーを駆るシホがマイスターを見据える。そして2機は一気に加速し、エクスカリバーと対艦刀が激しく衝突する。
パワー、スピードにおいてはマイスターがスサノオーを圧倒していた。ところがスサノオーはドラグーンを展開し、戦法を変えてきた。
「うわっ!」
アリカは慌ててドラグーンの乱れ飛ぶビームを回避していく。ドラグーンの操作と回避に必要不可欠である空間認識能力に長けている賜物だった。
そんなマイスターに向けて、スサノオーがスキュラを発射する。えん曲に曲がってくるビームに、マイスターは悪戦苦闘を強いられていた。
一方、パールとツキヨミが攻防を繰り広げていた。ツキヨミの振り下ろす巨大鎌を、パールの右足のビームブレイドが受け止める。
しかしその一進一退の傍らで、クサナギの防衛に当たっているコーラルとハリーは、ミロクのドラグーンと対艦刀の攻撃に苦しんでいた。
「このままではクサナギが・・・!」
二ナがクサナギを気にするが、ツキヨミの攻撃にその場を離れることができない。
そのとき、一条の閃光が、クサナギとミロクの間に割って飛び込んできた。全員が飛んできたほうに視線を向けると、星光軍旗艦「ジーザス」が接近してきていた。ローエングリンでミロクの攻撃を阻んだのだ。
ジーザスから1機の機体が出撃してきた。エレメンタルガンダム、ガクテンオーだ。
「こっちだって危なっかしい状態だけど、このままほっとくわけにもいかないんでね!」
ミドリが言い放って、ミロクに向かって飛び込んでいく。ミロクは飛翔して、MA形態となったガクテンオーの突進をかわす。
“ミコト、クサナギはひとまず捨て置け。今はガクテンオーを叩け。”
「はい、兄上・・」
レイトからの通信を受けて、ミコトが淡々と頷く。そして兄に促されるまま、通常形態に戻るガクテンオーを見据える。
ドラグーンを展開して発砲し、さらに対艦刀を振りかざして迫る。空間認識に慣れていないミドリは、ドラグーンの縦横無尽の砲撃をかわしきれず、ビームサーベルを持つ右手と左足を撃ち抜かれてしまう。
「し、しまった!うわっ!」
体勢を崩され、降下していくミドリとガクテンオー。ミコトの駆るミロクが追撃を加えようと降下していく。
そのとき、一条の閃光が天空から飛び込んできた。ミロクはとっさに回避行動を取り、ガクテンオーから距離を離す。
ミコトとミドリが驚きながら上空を見据える。同時にジーザスのレーダーに反応が1つ現れる。
「上空から高エネルギー反応!こちらに接近してきます!わっ!は、速い!」
報告するアオイが驚きの声を上げる。報告どおり、1体の機体が急降下で飛び込んできた。
神々しく思える姿と光を帯びた翼。
「あ、あれは・・・!?」
「カグツチ・・・!?」
ミドリやミコトをはじめ、この場にいる全員が驚愕を覚える。ミロクによって倒されたはずのカグツチが、この戦場に駆けつけてきたのだ。
「バカな・・カグツチはミロクの力で完全に破壊されたはず・・・!?」
シディアにいたレイトも、カグツチの参戦に動揺を隠せなかった。
(まさか、あれが水晶の姫が隠していたという力か・・・!?)
彼が思い立ったところで、カグツチが2つのビームライフルをそれぞれの手に構える。
「ミドリちゃん、大丈夫!?」
「・・う、うん、私は大丈夫。といいたいけど、ガクテンオーが動かなくなっちゃって・・・」
カグツチからのマイの声にミドリは当惑しながらも答える。
「ミドリちゃんはジーザスに戻って!ミコトはあたしとユウで何とかするから・・・!」
「ユウくん・・!?」
マイの言葉にミドリが疑問符を浮かべる。モニターにマイとともにコックピットに乗り込んでいるユウの姿があった。
このカグツチはミロクやアルテミスと同様、2人乗りが可能の機体である。ナオとの戦いでスラッシュザクファントムを損傷したユウは、カグツチに乗り込み、マイとともに駆けつけたのだった。
「分かったわ、マイちゃん、ユウくん。ここは任せたわ。」
ミドリの言葉にマイは頷く。そして戦場に残っているMSたちを見据える。
「行くよ、ユウ。」
「あぁ。レーダーのほうはオレに任せとけ。」
マイの指示を受けてユウが答える。彼のレーダー管理を視野に入れながら、彼女はカグツチを駆る。
双刀のビームサーベルを引き抜いたカグツチは、攻撃を仕掛けてきた黒曜軍のMSを迎撃し、その動きを止める。また翼に装備されているドラグーンを分離し、背後からの敵機にも対応する。
その姿にミコトは当惑していた。マイが無事でここに戻ってきたことへの喜びが一瞬脳裏をよぎったが、兄への忠誠心がそれをかき消す。
「私は兄上が好きなんだ・・他の誰よりも、マイよりも・・・!」
兄への想いの赴くままに、ミコトはミロクを駆ってカグツチに飛びかかる。
(ミコト!)
「マイ、ミロクが来たぞ!」
ユウの声と同時にマイがミロクに視線を向ける。振り下ろしてきたミロクの対艦刀をビームサーベルで受け止める。とっさの判断とビームサーベルの主力増加による刀身の強化でしのぐものの、ミロクの力でカグツチは突き飛ばされる。
ミロクは間髪置かずにドラグーンを展開して追撃を仕掛ける。カグツチはすぐに体勢を立て直して、ドラグーンで迎え撃つ。
双方のドラグーンの砲撃同士が相殺する中、カグツチがミロクに向けて両腰、両肩に武装されているレール砲を放つ。4色の閃光が収束し、ミロクの対艦刀を弾き飛ばす。
近距離における攻撃の手立てを絶たれたミコトは、マイとの対立の躊躇も相まって、完全に動揺し切ってしまっていた。
“ミコト、ひとまずシディアに帰還するんだ。この状態でカグツチと戦うのは危ない。”
そこへレイトからの通信が入ってくる。しかし兄を想うあまり、ミコトは彼の命令を素直に受け入れられずにいた。
“お前の代わりに戦いたいと志願している者がいるのでね。ここは彼女に任せて、お前は戻って体勢を立て直すんだ。”
「はい、兄上・・」
「ミコト!」
レイトに言われるがまま、ミコトはマイの呼びかけに答えることなく、シディアに帰還していった。その姿をマイとユウは困惑の面持ちで見送るしかなかった。
その頃、シディアの整備ドックでキヨヒメのシステムチェックを行っていたシズル。そのモニターに、戦場に乱入してミロクを退けたカグツチの姿が映し出された。
「カグツチ!?・・わざわざこっちに来はったんか・・・」
カグツチの姿に一瞬驚くも、すぐに妖しい笑みを浮かべるシズル。
「カグツチ・・ナツキを傷つけたエレメンタルガンダムにして、ライトサイドの有力な戦力どす・・」
シズルの中にカグツチへの敵意が呼び起こされる。ナツキとデュランを傷つけた敵を許すことができない。
システムチェックを済ませたシズルは、開かれるハッチの先の空を見据える。
「シズル・ヴィオーラ、キヨヒメ、行きますえ!」
ナツキの弊害となる全てを敵と見なし、シズルはシディアから戦場へと飛び立った。
「カグツチ・・・今度は・・今度は負けないんだから!」
困惑の空気の包む戦場の中で、アリカはカグツチに向けて敵意を見せ始める。前回の戦いでの敗北を気にしていたのだ。
たまらず攻撃の手を休めたカグツチに向かって飛びかかる。ビームサーベルを振りかざし、カグツチに向けて攻撃を仕掛ける。
「あれは・・!?」
「お、おわっ!」
マイがとっさに反応し、ユウが少し慌しい様子を見せる。振り下ろされたマイスターの刃を、カグツチのビームサーベルが受け止める。
激しい火花を散らし、激突する2つの刃。「負けられない」という意思が、2人の少女を突き動かしていた。
「今度は絶対にやられない!このマイスターで、今度こそやっつけるんだから!」
「いったい何だっていうの!?この機体も相当強いじゃないのよ!」
感情の赴くままに叫び声を上げるアリカとマイ。2つの光刃が強い反動で弾かれ、カグツチとマイスターは距離を取る。
(カグツチがクサナギを攻撃したせいで、ダークサイドにここまで追いつめられてるのよ・・だからカグツチを倒して、私はみんなの夢と平和を守るのよ!)
アリカがカグツチに対してさらに負けん気を見せる。ビームサーベルからエクスカリバーに持ち替えて、マイスターが再び身構える。
“待って、アリカちゃん!カグツチは私たちの味方よ!”
「えっ!?」
そのとき、クサナギからのユキノの呼びかけがマイスターに伝わってきた。飛び出そうとしていたところを、アリカは慌てて踏みとどまる。
“マイちゃん、攻撃しないで!それはオーブのMS、マイスターよ!”
「ミドリちゃん!?」
同時にミドリの通信がカグツチに届いてきていた。驚きを見せるも、マイはマイスターに対する攻撃を止める。
そのとき、一条のビームがカグツチに向けて飛んできた。ビームを直撃するカグツチだったが、装甲の耐久性とマイとユウのとっさの判断で損傷はさほど受けていない。
「な、何だ・・!?」
驚愕しながらもレーダーで攻撃の発生源を探るユウ。モニターを見据えたマイは、向かってくる紫の機体を眼にする。エレメンタルガンダム、キヨヒメだった。
「あれは・・キヨヒメか・・!」
キヨヒメの登場にユウが驚愕を浮かべる。
「シズルさん・・・!」
アリカもシズルに動揺を感じていた。彼女の眼の前で、シズルはカグツチに対して敵意を覚えていた。
「カグツチ、アンタはナツキの仇、うちの敵どすえ。せやから、アンタは絶対許しまへん。」
シズルの駆るキヨヒメが長刀を構え、カグツチに向かって飛びかかる。振り下ろされた長刀を飛翔してかわすカグツチだが、長刀の刀身が分割し、鞭のような動きを見せる。
その刃がカグツチの左腕を叩く。衝撃がマイとユウを揺るがす。
「こんなもんで済むと思うてはるん?」
冷淡に告げるシズル。キヨヒメがドラグーンを展開し、カグツチに狙いを定める。ところが、放たれるビームをカグツチは体勢を立て直しながら回避していく。
キヨヒメはさらに長刀を振りかざし、追撃を仕掛ける。カグツチはこれをビームサーベルで受け止めるも、力任せのキヨヒメの攻撃に徐々に押されていく。
「アリカさんをやったときみたいに、胴体を串刺しにしたるさかい・・・」
カグツチを見据えるシズルの眼つきが鋭くなる。キヨヒメが長刀を構え、突きと突進の体勢に入る。
「待ってください!」
そのとき、キヨヒメに向けてアリカが呼びかける。シズルが表情を変えずに、接近してくるマイスターに視線を向ける。
「シズルさん!こんな戦い方、シズルさんらしくないですよ!」
「アリカさん・・・」
「いつものシズルさんは、もっと華麗で綺麗な戦い方をします!でも今のシズルさんは、ただ自分の敵と見なした相手を絶対倒してやるって感じですよ!そんなの、ホントのシズルさんじゃないです!」
必死の思いでシズルに呼びかけるアリカ。彼女はオーブの理想の党首と慕われていたシズルに、このような戦いをしてほしくないと思っていた。
「それはおおきに、アリカさん。せやけど、うちはもう戻れへんやさかい。堪忍な・・」
「シズルさん・・・あの手紙、読みました。シズルさんは私たちに、自分たちの信じるオーブを作るように言ってくれましたよね?私は私の信じるオーブのために、平和と夢のために戦います。そのためにシズルさん、あなたを止めます・・・!」
真剣な面持ちでシズルに決意を見せるアリカ。彼女の思いを目の当たりにして、シズルは小さな笑みを浮かべた。
「そうどすか・・ならうちも、うちのこの想いのために戦います・・・相手がアリカさん、アンタでも・・・」
シズルはカグツチへの攻撃を邪魔すると判断し、マイスターに狙いを変えた。アリカも覚悟を秘めてキヨヒメと対峙した。
サクヤ、サエ、シズルへの思いに困惑するばかりになっていたナツキとキョウジ。そんな2人とキヨネの前に、1人の少女が駆けつけてきた。
「大変です!オーブとダークサイドが戦闘に入りました!」
「何っ!?オーブが・・!?」
少女の報告にナツキが驚きを見せる。
「はいっ!しかもライトサイドのジーザスも戦場に飛んできた模様です!」
「ジーザスまで来たのですね・・・!」
少女のさらなる報告に、キヨネを緊迫を覚えていた。
「行かないと・・今はクサナギもジーザスも、ダークサイドとまともに戦える状態じゃない。シズルがダークサイドについてるならなおさらだ。」
ナツキが振り返り、キョウジとキヨネに言いつける。
「母さんに託された鍵を使って、希望への活路を開かないと。」
「サエさんの・・・その鍵、カードキーを使う扉はここにあります。」
キヨネの言葉にナツキが驚きを見せる。
「ここはシアーズの軍事施設。この中の機体の1つを電源を入れるために使うのが、そのカードキーなんです。」
そういってキヨネは、ナツキがサエから託されたカードキーを手渡した。救出の際、彼女が管理、保持していたのだ。
「ついてきてください。サエさんがナツキさんに渡したかったのは、この先にあります。」
キヨネは振り返り、ナツキとキョウジを案内した。その先のドックの中にある青い機体の前で彼女たちは立ち止まった。
「こ、これは・・・!?」
その機体の姿にナツキはさらなる驚きを見せる。
「そうです。これはあなたが使っていたエレメンタルガンダム、デュランです。」
キヨネがそんな彼女とキョウジに向けて説明を入れる。眼前の機体の姿はまさにデュランだった。
「これはサエさんがエレメンタルテクノロジーに関するデータを使って、あなたのために開発した機体です。あなたが目指しているものの力になれればと。」
「母さん・・・」
「デュランを使っていたナツキさんなら、必ず使えるはずです。どうか、サエさんの思いを受け取ってください・・・」
サエの想いを代弁するキヨネの言葉を聞きながら、ナツキは沈痛の面持ちで眼前のデュランを見つめる。
「このデュランには、母さんの思いがたくさん詰まっている・・私はこの思いを受け取って、私の大切なもののために戦わなくちゃいけない・・・」
ナツキは呟きながら、デュランのコックピットに通じるエレベーターに足を踏み入れる。
「誰が決めたことでもない。私自身がそう決めたことだから・・・」
彼女の言葉を受けて、キョウジとキヨネが微笑んで頷く。
「ナツキ、オレも後から向かうよ。キヨネさんから、もうすぐここを破棄するって聞かされている。」
「はい。ダークサイドに、いつここを発見されるか分かりません。そのとき、私たちが研究したエレメンタルテクノロジーの情報を知られることになってしまいます。大丈夫。データはフロッピーに保存してありますから。」
キョウジが言葉をかけた後、キヨネが1枚のディスクをナツキに見せる。サエのために努めてくれているキヨネに、ナツキは感謝を感じていた。
「ありがとう、キヨネ、キョウジ・・じゃ、私は行くよ・・」
ナツキは静かに頷くと、1人デュランに乗り込んでいった。
サエから託されたカードキーを右のソリッドに差し込むと、システムの電源が入り、起動音が響きだす。
(私は戦う・・母さん、マイ、アリカ、ニナ、キョウジ、そしてシズル・・大切なもののために・・・)
新しいデュランの能力の把握とシステムチェックを済ませ、ナツキは発射口を見据えた。
「ナツキ・クルーガー、デュラン、GO!」
様々な思いを胸に秘めて、ナツキの駆るデュランが大空に飛び上がった。
次回予告
今自分が大切にしているもの。
今本当に守りたい人。
例えそれが傲慢な願いだとしても、自分の気持ちを大事にしたい。
友の心を救うため、ナツキもまた、混沌に満ちた戦場に舞い戻る。
邪な想い、撃ち抜け、デュラン!