GUNDAM WAR -Encounter of Fate-
PHASE-24「蘇る翼」
クサナギを通じてナツキを呼び出した人物。それはダークサイドの手にかかって死んだと思われていた彼女の母、サエ・クルーガーだった。
「母さん・・本当に母さんなのか・・・!?」
困惑しているナツキに、サエは小さく頷いた。
「ナツキ・・あなたに会いたかった・・できることなら、すぐにあなたの前に現れたかった・・・」
「私もだよ、母さん・・・」
ナツキはたまらずサエに駆け寄り涙する。大粒の涙が少女の眼からこぼれ落ちる。
「だけど母さん、どうしてクサナギへの通信で名前非通知にしたんだ?オーブは私を信じてくれる人が多いのに・・」
「だからよ。」
サエの返答にナツキが一瞬唖然となる。
「あなたは優しい子。あなたを信じてくれる人は多いと私も信じていたわ。だからこそ、私はこの経由であなたを呼び出すことにしたのよ。」
「母さん・・・」
母の気持ちに歓喜を覚え、さらに涙するナツキ。
「ナツキ・クルーガー・・彼女があなたの娘さんなんですね、アリスさん?」
そのとき、1人の黒髪の青年が姿を現し、ナツキは警戒心を強める。
「大丈夫よ。彼は私たちの味方よ。キョウジ・ミルキーズ。シアーズでの私の協力者よ。」
「シアーズ・・!?」
サエの言葉にナツキは驚愕した。サエは沈痛の面持ちを浮かべながら、ナツキに説明する。
「私はダークサイドに連れて行かれる途中、隙を見て逃げ出したの。その私を、シアーズの党首、アリッサ・シアーズの保護を受けたの。」
「ならばなぜシアーズに加担したんだ!?シアーズの理念は、この世界を支配という形でまとめようとしていたんだぞ!」
納得がいかないナツキが声を荒げる。するとサエは悔やむように首を横に振る。
「私がシアーズに身を置いたのは、シアーズの理念に共感したからではないの。シアーズの力と動向を探ると同時に、戦争を終わらせる術を見出すためだったのよ。」
サエの意向を耳にしても、ナツキは未だに信じられない面持ちを浮かべていた。
「本当にあなたに会いたかった。すぐに飛んであなたを抱きしめたかった。でも私には、私に課せられた使命を果たさなくてはいけなかった。これを放棄すれば、多くの人が悲劇に巻き込まれてしまう。そう思ったから・・・」
サエは眼に涙を浮かべながら、ポケットから1枚の電子カードを取り出した。
「研究を重ねて完成した希望への架け橋。その扉の鍵を、ナツキ、あなたに託したいの。」
「母さん・・・!?」
母の思いにナツキは息をのむ。サエはそのカードを彼女に渡そうとする。
「母さん、すまない・・今の私に、それを受け取ることはできない・・・」
「ナツキ・・・!?」
頑なに拒むナツキに、今度はサエが困惑を見せる。
「私は母さんを死に追いやったと思い、ダークサイドへ復讐するために今まで戦ってきた。少なくともライトサイドやオーブ、ましてや世界のために戦っていた。そんな私に、希望への架け橋の扉を開く資格なんて・・・」
ナツキが胸を締め付けられるような感覚に陥り、どうしたらいいか分からなくなっていた。
彼女は現にマイ、アリカ、シズルのためにデュランを走らせたこともある。しかしそれは本心ではないと彼女は思っていた。
するとサエは微笑み、空を仰ぎ見る。
「私はあなたの他にも、オーブとライトサイドの動向も把握しています。あなたには、かけがえのない仲間がついています。私がいなくても、あなたは強く生きていけます。今までも、これからも。」
そしてサエはナツキの手に電子カードを握らせる。
「私はあなたを信じる。だから私はあなたにこれを託したいの。どうするかはあなたに任せるわ。」
「母さん・・・」
母の一途な思いに、ナツキは困惑していく。これが母から送られる最高のプレゼントとも思えていた。
「分かった。ありがとう、母さん。これは私が受け取るよ。」
「ありがとう、ナツキ・・」
互いに感謝の言葉を掛け合う親子。2人の様子を見つめて、キョウジは微笑んでいた。
「さぁ、早く移動しましょう。いつここがダークサイドに見つかるか分かりませんよ。」
「ダークサイド?」
キョウジの発した言葉にナツキが眉をひそめる。
「現在シアーズは党首であるアリッサ・シアーズを失い、体勢の整わないところへダークサイドの進撃を受け、崩壊状態に陥ったのです。その大きな要因が、シアーズのメンバーの何人かがダークサイドに寝返ったことになります。オレのサクヤも、ダークサイドに移ってしまった・・・!」
キョウジは歯がゆい面持ちを見せ、ナツキとサエが沈痛さを感じる。彼も彼自身の苦悩にさいなまれているのだ。
「オレはサクヤを助けたい。そのためにも、オレも戦わなくちゃならないのかもしれない・・・!」
「キョウジ・・・」
「ナツキさん、オレはサクヤを助けたい。だからオレは、ダークサイドと敵対することにする。」
決意を見せるキョウジに、ナツキとサエは頷いた。それぞれの決意を秘める中、ナツキがブレイズザクファントムに乗り込もうとした。
「行かせないよ!」
そこへ幼さの入った少女の声が飛び込んできた。キョウジが愕然さを覚えながら振り返ると、そこには流れるようなピンクの長髪の少女が銃を構えていた。
「サクヤ・・・!?」
「お兄ちゃん・・その人、ライトサイドのパイロットだよね・・・?」
サクヤがキョウジに鋭く言い放ち、足を止めたナツキに視線を向ける。
「お兄ちゃん、私と一緒にいて!私はお兄ちゃんと一緒だったから、頑張ってこれて、寂しくなかった!だからお兄ちゃん・・・!」
「サクヤ、やめろ!どうしてダークサイドに行くんだ!?この世界を支配しようとしてるヤツらに、なぜ従うんだ!」
サクヤの悲痛の叫びに反論するキョウジ。
「違うよ!この世界を混乱しているのはオーブなんだよ!だってオーブは、私のお父さんを殺したんだから!」
サクヤの突然の言葉にナツキは驚愕を覚える。2人の脳裏に、戦火を駆け抜ける自分たちの姿がよぎっていた。
オーブは一時期、ダークサイドの侵攻を受けて戦火にさいなまれたことがあった。ダークサイドとの協定を断った故に起こったことだった。
その戦火から逃げ惑うキョウジとサクヤ、そして彼らの父親。しかしその戦火が彼らに向けられ、それに巻き込まれた父親は彼らをかばって命を落としたのだ。
「もしもあのとき、オーブがダークサイドの協定を断らなかったら、オーブが戦場になることはなかった!だから私はオーブが信じられない。だから私は私の手で、オーブを壊すの!」
「違うんだ、サクヤ!あれはダークサイドが一方的に申し出てきたことなんだ!それを拒んだオーブを、オレは信じてる!だからお前も来い、サクヤ!」
キョウジがサクヤに向けて手を差し伸べる。しかしサクヤは頑なにその手を取ることを拒む。もしもその手を取れば、オーブへの嫌悪を否定することになる。たとえその手が愛しい兄のものだとしても、今は取るわけにはいかない。
「ダメだよ・・やっぱり私は、オーブを信じるなんてできないよ!」
サクヤは揺れる感情のあまりに発砲する。その銃口はキョウジに向けられていた。
「危ない!」
そのとき、キョウジの前にサエが立ちはだかった。サクヤの放った弾丸が、サエの胸に突き刺さった。
「母さん!」
ナツキが驚愕しながらサエに駆け寄る。サクヤは体を震わせて、完全に動揺しきっている。
「母さん!しっかりして!」
脱力して倒れたサエに呼びかけるナツキ。サエは弾丸の突き刺さった胸を押さえて、痛みにうめきながらもナツキを見つめる。
「ナツキ・・私に構わず、早く行って・・・」
「何を言っているんだ、母さん!いますぐ病院に向かうから、それまで辛抱して!」
「私に構わないで・・・今、あなたがしなくてはいけないことは、他にあるの・・・」
涙をこぼすナツキに優しく微笑むサエ。
「ナツキ・・あなたには大切なものがたくさんある・・それを守る力も、強い気持ちも・・・」
「母さん・・・」
「ナツキ、あなたはあなたのために・・あなたの信じる大切なもののために生きて・・・」
サエは満面の笑みを浮かべると、ナツキをつかんでいた手が脱力し、砂地に落ちた。
「母さん・・・母さん!」
ナツキは眼を閉じたサエに悲痛の叫びを上げる。そして母を砂地に横たわらせてからゆっくりと立ち上がる。
「行こう、キョウジ・・母さんの思いを、ムダにするわけにはいかない・・・」
ナツキは鋭く言いつけると、間髪置かずに銃を手にしてサクヤの持っている銃を弾く。護身用としてポケットに常備している銃を再びしまって、キョウジを連れてザクのコックピットに乗り込む。
「イタタタ・・早くツキヨミの発進準備をして!絶対にお兄ちゃんを逃がさないで!」
手を押さえながら、サクヤがエレメンタルガンダム、ツキヨミに乗り込む。その間に、ナツキとキョウジを乗せたブレイズザクファントムが発進していた。
しかしツキヨミはすぐにザクに追いついてきた。鎌を構え、ザクを狙って攻撃を仕掛けてくる。
「ぐっ!」
寸でのところでその刃をかわすナツキ。しかしツキヨミの性能は、ザクを大きく上回っていた。
(こんなところで・・こんなところでやられるわけにはいかない!)
ナツキは胸中で毒づきながらも、必死に前に進もうとする。
(私がここでやられれば、母さんの思いが費えてしまう・・・!)
そのとき、ナツキの眼前に鎌を振り上げたツキヨミが立ちはだかった。ナツキはキョウジとともに驚愕し眼を見開く。
(お兄ちゃん・・ゴメンなさい・・・!)
サクヤは悲しみを覚えながら、ザクに向けて鎌を振り下ろす。ザクの右腕が切り裂かれ、その反動で体勢を崩したザクはそのまま海に落下していった。
(お兄ちゃん・・・)
サクヤは海の中に沈んだキョウジのことに苦痛を覚えて、眼から涙をこぼしていた。
マシロからの呼び出しを受けて、小惑星基地跡地にやってきたマイとユウ。その整備ドックで、マシロとフミと対面していた。
「マシロさん、なぜあたしたちを呼んだのですか?わざわざここまでの作戦まで立てて・・」
マイが当惑しながら問いかけると、マシロは顔色を変えずに答える。
「あなたたちをここに呼んだ理由。それはあなたたちに託したいものがあるからです。」
「託したいもの?」
マシロの言葉にユウが眉をひそめる。
「ダークサイドのエレメンタルガンダム、ミロクがこの世界に解き放たれたときから・・いいえ、それ以前から私たちは、この世界が混乱に満ちることを予感していました。だから私は、それに対抗する力の誕生を進めてきました。」
マシロは暗いドックの天井を見上げる。
「しかしその力を誰かに託す前に、その人がその力を使うにふさわしいかを見定める必要があったのです。力は諸刃の剣に等しく、誰もが持っているもの。心の強さがなければ、強大な力の前にたちまち飲み込まれてしまうでしょう。」
「その力を使えるのが、あたしだっていうんですか・・・?」
マイが息を呑んで問いかけると、マシロは無言で頷いた。
「私があなたが、これを使い、この光と闇の連鎖を断ち切ってくれると信じています。勝手なお願いだとは分かっていますが、あなたに受け取ってほしいのです。」
マシロが言い終わると同時に、ドックの明かりがいっせいについた。マイたちの眼前に、壮大にそびえ立つ白い機体があった。
「こ、これは・・・!?」
「カ、カグツチ・・・!?」
ユウとマイが驚きを見せる。その機体はカグツチとあまりにも酷似していた。
「元々エレメンタルガンダムは、光のカグツチと闇のミロクが起源とされています。そこから10体のエレメンタルガンダムや、それを流用した機体や武器が作り出されたのです。ここにあるカグツチは、あなたが使っていたカグツチを強化改良したものです。あなたなら、この力を正しく使ってくれるでしょう。」
「マシロさん・・・」
微笑むマシロに対し、マイは沈痛の面持ちを浮かべる。
「ダメです、マシロさん。あたしに、これを受け取る資格はありません。あたしは大切なものを失い、そのためにライトサイドやオーブを混乱させてしまった。もしもこのカグツチに乗っても、また世界を混乱させてしまうかもしれない。だから・・・」
マイは自分を責めていた。もう自分のそばにタクミもミコトもいない。悲しみと怒りに駆られて世界を混乱に陥れてしまうばかり。そんな自分がこの強大な力を使うのは、さらなる混乱を呼び込むだけだ。
そんな彼女の返答に対し、マシロはユウに視線を向けると満面の笑みを浮かべた。
「マイさん、あなたが本当に望んでいる世界は何ですか?」
「えっ・・?」
あまりに唐突な問いかけにマイは困惑する。
「あたしが、望んでいる世界・・・?」
「あなたはタクミさんのために生涯を捧げてきました。ですがそれは、本当にあなた自身が望んだことなのでしょうか?タクミさんを助けなくてはいけない。その使命感に駆られて、あなたは自分自身を殺してきたのではないでしょうか?」
マシロの言葉にマイは苦悩する。自分が今まで何をして、何のために生きてきたのか。その答えに困惑する彼女の脳裏に、タクミの言葉が蘇る。
“お姉ちゃんの、本当にほしいものは、何?”
霧のように淀んでいたその答えが、次第に鮮明になっていくのを覚えていくマイ。そして彼女は唐突にユウの顔を見つめていた。
「それが、あなたの望む本当の世界ですね。」
マシロの言葉にマイは迷いが晴れていく気分を感じていた。自分でも気付かないうちに、彼女は自分がユウを想っていたことを悟る。
そのとき、彼女たちのいるドックに轟音が鳴り響く。驚愕を覚えながら、マイたちが天井を仰ぎ見る。
「何、今の!?」
「・・ついにここまで来たようですね・・」
驚くマイの横で、マシロが静かに囁く。
「オレはザクで食い止めてくる。ここをやられるわけにはいかねぇんだろ。」
ユウはマイたちに言いつけてから、スラッシュザクファントムに乗り込むべくドックを駆け出す。彼の後ろ姿を見送ってから、マイはマシロに振り返る。
「あなたに世界の運命を託したいというのが私の本心ではありますが、あなたはあなたの望む世界のために、この力を使ってください・・・」
マシロが言い終わると、フミは彼女の車椅子を押してドックを去ろうとする。
「マシロさん、フミさん、どこへ・・・?」
マイが呼び止めると、フミは足を止め、マシロがマイに視線を向ける。
「私の役目は終わりました。これからの世界の未来を担うのはあなた方です。」
「マシロさん・・・!?」
マシロの言葉にマイは動揺を見せる。
「私はこの世界に存在しないはずの人間。長きに渡る時間を生きてしまった私の罪と罰なのです・・・」
「マシロさん、あなた・・・!?」
マイが驚愕を覚えると、マシロは振り向き、天使のような微笑みを向ける。
「さぁ、あなたは行ってください。あなたの世界へ・・・」
彼女の言葉と思いを受けて、マイは真剣な面持ちで頷く。そして振り返り、白い機体に乗り込んでいく。
ドックから出てすぐの廊下。マシロは唐突にフミに声をかけた。
「フミさん、あなたも逃げなさい。あなたはもう私に縛られることはないのです・・・」
マシロが呼びかけるが、フミは微笑んで首を横に振る。
「マシロ様がいないこの世界には、フミの生きる意味はありません。フミはいつもマシロ様とひとつなのです・・・」
「フミさん・・・今まで、本当にありがとうございました・・・」
フミの率直な気持ちを受けて、マシロは感謝の言葉をかける。
2人の姿を、廊下に広がってきた炎が包み込んだ。長きに渡って使命を帯びてきた水晶の姫は今、少女たちに全てを託してその命を終えた。
マシロたちの動向を探り、この基地を発見したダークサイド。急行してきたナオと合流した黒曜軍は、基地に向けて攻撃を開始した。
しかし星光軍もこれを迎え撃った。ユウのスラッシュザクファントムも参戦するが、ジュリアの脅威の前に侵攻されていく。
次々と機体を落とされ、ビームアックスを構えるザクもジュリアのビームサーベルの前に満身創痍となっていた。
「くそっ!ここまでなのかよ・・・!」
毒づくユウの前に、ジュリアが悠然と構えている。
「私を陥れた報いよ。兵器を手に入れるだけじゃなくて、徹底的にやってやるわ。」
ジュリアがさらに憤って、手のひらの発射口を眼下の基地に向ける。これ以上砲撃を受ければ、全員が助からない。
ユウはアクセルをかけて、ジュリアの砲撃を阻もうとする。しかし傷ついたザクはジュリアに詰め寄れない。
そのとき、基地のドックからまばゆいばかりの閃光がほとばしった。その光にユウとナオは驚きを感じながら振り返った。
炎が及び始めたドック内。その中でマイは白い機体に乗り込み、そのシステムをチェックしていた。
(これは今までのエンジンでも、核エネルギーでもない・・全然見ないけど、すごい動力源・・・)
マイは機体のエネルギー源を目の当たりにして驚きを覚える。核エネルギーを超えるエネルギー源「エレメンタルチャージャー」である。
エレメンタルチャージャーはエレメンタルテクノロジーの産物の動力源として生み出されたもので、眼に見えないあらゆる微弱エネルギーを取り込んで、装備したものの性能によっては無尽蔵のエネルギーを作り出すことが可能である。
しかしその強大な供給理論のため、量産は不可能だった。古代科学の全盛期でもほんの一握りしか生産されていない。現在でも3つしか存在していないが、その1つがこの機体の動力源となっている。
ドックのハッチが開かれ、マイはアクセルをかける。彼女の脳裏にマシロの言葉が蘇る。
“あなたはあなたの望む世界のために、この力を使ってください・・・さぁ、あなたは行ってください。あなたの世界へ・・・”
(あたしは戦う・・あたしの本当の気持ちを貫くために・・・!)
「マイ・エルスター、カグツチ、行きます!」
マシロの思いを背に受け、自分自身の想いを胸に秘めて、マイは宇宙(そら)に飛び立った。
交戦するライトサイドとダークサイドの戦いの中、ビームを帯びた翼を広げるカグツチ。その姿は神か天使と見間違えるほど神々しく見えた。
「な、何なのよ、コレ!?・・カグツチ・・・!?」
その姿を見たナオが驚愕を覚える。彼女はミロクがカグツチを打ち倒したことを聞かされていた。
「そんなバカな・・・カグツチはミコトが・・・!?」
眼の前の光景を信じられないでいるナオ。しかしその気持ちは次第に高揚感に発展していった。
「いいじゃない・・今度こそ私がやってやるわよ!」
いきり立ったナオが標的をカグツチに変え、ジュリアが手のひらからビームを放つ。しかしカグツチは簡単に飛翔してかわしてしまう。
「何っ!?」
さらなる驚愕を覚えるナオを尻目に、マイは立ちはだかる黒曜軍を見据える。
「タクミ、ミコト・・あたしは、あたしの大切なもののために戦うから・・・行くよ、カグツチ!」
マイの意思に同調するように、カグツチが空を駆け抜ける。構えた2つのビームライフルで次々とダークサイドのMSの武装と頭部を撃ち抜いていく。
カグツチのレーダーが次々と機体の位置を捉えていく。そして光り輝くその翼が分岐し、そこからもビームを発して武装を撃ち抜く。装備されたドラグーンの砲撃だった。
「何だっていうのよ、アイツは・・・アイツは!」
ナオは憤慨してカグツチを睨む。ジュリアが手のひらの発射口から電撃鞭を放射して、カグツチに飛びかかる。
鞭はカグツチの構えた双刀のビームサーベルの刀身の1つに巻きついた。
(やったわ・・!)
相手を捕まえたと思ったナオは勝機を覚える。しかしカグツチはその脅威的な力で、逆にジュリアを引き込む。
「えっ!?」
眼を疑うナオの眼前で、カグツチが電撃鞭を放っているジュリアの左腕をなぎ払う。その強烈な衝撃にジュリアは体勢を崩される。
(私が・・この私がこんなことで・・・!)
「ウザいんだよ、アンタは!」
怒りをあらわにしたナオは、強引に体勢を立て直してカグツチに迫ろうとする。至近距離から右手のビーム砲を放とうとする。
これをカグツチは紙一重でかわし、とっさにビームサーベルでジュリアの胴体をなぎ払う。その光刃と爆発が、ナオのいるコックピットにまで及ぶ。
「ぐあっ!・・こんな・・・私が・・・!」
胴体を両断されたジュリアとともに、ナオは爆発に巻き込まれて消えていった。
「カグツチ」という力と新たなる決意を握り締め、マイは果てしなく広がる宇宙を見つめていた。
次回予告
あの人に憧れて踏み出した夢の一歩。
壊れたと思っていたその夢には、まだ続きがあった。
平和への意思がアリカの心を突き動かす。
平和と夢を担う3人の少女は今、新たな剣を手にする。
夢の架け橋、駆け抜けろ、マイスター!