GUNDAM WAR -Encounter of Fate-

PHASE-16「言葉の翼」

 

 

「マイ、アキラ、お前たちはアルテミスを止めろ!他の機体は私とユウが相手をする!」

「分かった。ありがとう、ナツキ。」

 ナツキの指示にマイが頷く。そしてナツキは立ちふさがったツキヨミと対峙する。

「マイ・・タクミのことは、お前たちに任せたぞ・・・!」

 ナツキは眼前の機体を見据え、デュランの銃身を構える。

 一方、スサノオーと対峙するユウのブレイズザクファントム。ビームアックスを構えるも、彼はただならぬ気配を感じ、攻め入ることができなかった。

(何だ・・この感覚は・・・始めて相手したって気がしねぇ・・・!)

 強い動揺にさいなまれるユウ。すると眼前の機体から突然、通信が送られてきた。

“それに乗ってるの、お兄ちゃんだよね?”

「なっ!?・・シ、シホ!?」

 聞こえてきた声にユウは耳を疑った。スサノオーに搭乗しているシホからだった。

“お兄ちゃん、もう1度聞くよ。お兄ちゃん、シアーズに・・シホのところに来て!”

「シホ・・・!」

“シホはお兄ちゃんと戦いたくないの。お兄ちゃんも同じ気持ちでしょ?だけどこのままじゃお兄ちゃんと戦うことになっちゃうよ!だから、お兄ちゃん!”

 自分の気持ちを率直に伝えるシホ。しかしユウは素直に頷くことができなかった。

「シホ、こっちに来る気はないのか・・・?」

“えっ・・?”

 予想していなかったユウの返答にシホが戸惑う。

「シホ、オレと一緒にいたいっていうなら、何もシアーズにいる必要はねぇんじゃねぇのか?こっちに来い、シホ。何もみんなを傷つけるシアーズにつくことはねぇだろ!」

 必死に妹に呼びかけるユウ。他人を説得することは彼は苦手だったが、妹を取り戻したい気持ちは純粋で真っ直ぐだった。

“ダメだよ、お兄ちゃん・・・ライトサイドはシホやお兄ちゃんを守ってくれなかった・・・だからシホは、ホントの平和を作ろうとしているシアーズにつく。”

 しかしシホはユウの言葉と気持ちを頑なに拒んだ。その返答を聞いて、ユウは覚悟を決めた。

「そうか・・・シホ、オレもお前と戦いたくない。その気持ちはお前と同じだ。いいや、オレたち以外の誰もが思ってることだ。だけど、どうしてもお前がシアーズにつくっていうなら、オレは・・・!」

 ユウは覚悟を決め、アクセルをかける。ビームアックスを振りかざし、スサノオーに向かって飛び込んでいく。

 困惑を拭い去れないながらも、シホはスサノオーを駆り、飛翔して振り下ろされた斧を回避する。

「お兄ちゃん、どうしてもシホの気持ちを受け入れてくれないんだね・・・だったら力ずくにでも、お兄ちゃんを連れて行く!」

 いきり立ったシホ。スサノオーが対艦刀を引き抜いて、ブレイズザクファントムに向けて降下する。

 重みのある2つの武器の刃が衝突し、火花を散らしていた。

 

 タクミ救出を第一に考えていたマイとアキラ。カグツチとゲンナイの前にシアーズの量産型MS、アストレイが立ちはだかる。

「続々やってきているな。けど、こんなもんで参っている場合じゃない!」

 アキラはいつもとは違う感情の赴くまま、ゲンナイにアクセルをかける。ビームサーベルを手にして、砲撃、攻撃してくるアストレイたちをなぎ払っていく。

「そこをどいて!あたしはタクミを助けたいだけなんだから!」

 マイもアキラに続いて、双刀のビームサーベルを引き抜いてアストレイたちの攻撃をかいくぐっていく。

 2体のエレメンタルガンダムを前にして、アストレイたちはなす術がなかった。深追いすることもできず、シアーズの機体たちは途方に暮れるしかなかった。

 アストレイの襲撃を突破したカグツチとゲンナイ。その眼前に、エレメンタルガンダムを模したシアーズの黄金のMS、アルテミスが姿を現した。

(あれがアルテミス・・砲撃の威力は、他のエレメンタルガンダムを上回るほど・・・)

 マイはアルテミスの力量を思い返して歯がゆさを覚える。同時に彼女はアリッサとミユを気にかける。

 もしも2人がアルテミスに乗り込んでいるなら、戦えば彼女たちを傷つけることになりかねない。

“カグツチのパイロット、マイ・エルスターさんですね?”

 アルテミスからカグツチのコックピットに向けて、聞きなれた声が伝わってくる。

「アリッサちゃん・・・」

 淡々と聞こえてくるアリッサの声に、マイは困惑を覚える。

“これが私たちシアーズが、エレメンタルガンダムを模して製作したMS、アルテミスです。先ほど拝見されたとおり、アルテミスが放つ黄金の雷は、街さえも焦土にできるほどの威力を備えています。”

「アリッサちゃん、お願い!戦いをやめて、タクミを返して!」

 マイが悲痛の心境で呼びかけるが、アリッサもミユを気持ちを変えない。

“シアーズに降伏しなさい。それがあなたたちのたったひとつの道です。”

 アリッサがマイに対して最後の警告を告げ、降伏を促す。しかしマイはその申し出に頷こうとしない。反応のなさを否定の意と見て、アリッサは決断する。

“そうですか・・仕方がありませんね・・・ミユ。”

 彼女から呼びかけられたミユが、アルテミスのレーダーを見据え、キーボードを叩く。

「黄金の雷、次の発射可能まで3分52秒89。」

「アルテミスの武器は、黄金の雷だけではありません。天使の羽根は、時に悪魔を撃ち抜く矢となるのです。」

 アリッサが淡々と声をかけると、アルテミスの背の翼から分岐するものがあった。その分離したものは空中に浮遊し、カグツチとゲンナイに狙いを定めている。

 遠隔操作で相手を攻撃する小型分離式兵器「ドラグーン」。全方位からの砲撃を可能としているが、この砲撃の使用、または回避を行うには、高度の空間認識能力が必要となってくる。

 アルテミスのパイロットとして生成されたアリッサは、空間認識能力が非常に長けていた。また、シアーズの人造人間であるミユも、ドラグーンの操作プログラムを入力されていた。

「アルテミス、“閃光の羽根”。」

 突如黄金のドラグーンが機敏な動きを見せ、カグツチとゲンナイに向けてレーザーを発射してきた。

「なっ!?」

 驚愕の声を上げるものの、マイとアキラは迫り来るレーザーを回避しようとする。カグツチは何とかかわしたものの、縦横無尽に飛び交う光線の群れをかわしきれず、ゲンナイは手にしていたビームサーベルを撃ち抜かれてしまう。

「くっ!あんな攻撃を仕掛けてくるとは・・!」

 毒づきながらも飛び交うレーザーから脱して、アキラはアルテミスを見据える。カグツチに狙いを集中させているのを見計らって、ミラージュコロイドを始動して接近を試みる。

(このまま近づいて、一気に本体を叩く!)

 姿とともに気配を殺しながらアルテミスに近づいていくゲンナイ。その間にも、マイはドラグーンの位置を把握して、的確にレーザーを回避している。空間認識能力が長けていることを現していた。

 そしてゲンナイがアルテミスの背後に回りこんだ。

(もらった!)

「あなたの動きは予測しています。」

 アルテミスに取り付こうとしたとき、黄金のドラグーンの1機が、姿を見せていないゲンナイの左肩を射抜く。

「何っ!?」

「ミラージュコロイドは、姿やエネルギー反応は隠せても、機体の動きやそれによる空気の流れは隠せません。」

 ミラージュコロイドが解け、さらにドラグーンの攻撃を受けていくゲンナイ。損傷が大きくなっていく機体とともに、アキラは落下していった。

「アキラくん!」

 マイがゲンナイの救出しようと機転を利かすが、アルテミスの攻撃に完全に阻まれていた。

(このままじゃタクミやアキラくんを助けるどころか、あたしがやられちゃう・・!)

 毒づきながらも全方位からの攻撃を打開できず追いつめられるマイとカグツチ。

 そのとき、アルテミスに向けて飛び込んでくる機影があった。ビームサーベルを振りかざして、黄金の天使の猛威を食い止める。

 オーブの新型MS、コーラルである。

「オーブ軍が来たようですね。でもこのアルテミスの閃光の羽根はかわせませんよ。」

 アリッサは微笑をもらして、標的をコーラルに変える。体勢を整えようとしているカグツチの前で、アリカの駆るコーラルがドラグーンの攻撃を回避していった。

 

 鎌を駆使して攻撃を仕掛けてくるツキヨミに対し、四足獣型MAに変形して対抗するデュラン。MA形態でも背に備わっている銃身を使用することが可能で、各種弾丸で応戦していった。

「ロードクロードカートリッジ!」

 ツキヨミが振り下ろしてきた鎌を後退してかわし、弾丸を発射する。だがツキヨミはそれを飛び上がってかわす。

(何という力だ・・攻撃を当てられてはいないが、デュランの攻撃をことごとくかわしている・・・!)

(やっぱり同じエレメンタルガンダムが相手じゃ、そう簡単にいかないみたいね・・・)

 それぞれが互いの攻撃をかわし、一進一退の拮抗した戦いとなっていた。

 そのとき、1機の機体がデュランとツキヨミの間に割って入ってきた。オーブのエレメンタルガンダムの1機、ハリーである。

 憮然となっているナツキ。デュランに向けてハリーから通信が入ってくる。

“私はオーブのMSパイロット、アカネ・ソワールです。”

「オーブ・・!?」

 アカネからの通信に、ナツキは眉をひそめる。

“ヴィントブルムを守るため、私たちはあなたたちを援護します。”

「そうか・・すまない。」

 アカネの助力に、ナツキは微笑んで答えた。

 

 本位でないものの、戦うことを決意し衝突するユウとシホ。しかしエレメンタルガンダムであるスサノオーの力とドラグーンを駆使した攻撃を前に、スラッシュザクファントムは追い込まれていた。

「くそっ!やっぱ性能の差かよ・・!」

 毒づきながらも性能の差を痛感せざるを得なくなるユウ。

「お兄ちゃん、もうすぐだからね・・シホがお兄ちゃんを連れ帰って、一緒に暮らすんだから・・」

 シホが歓喜の笑みを浮かべ、スサノオーがクローをザクに向ける。

 そのとき、突如姿を現したダイアナ、上空から降下してくるブレイズザクファントムに、スサノオーは進撃を阻まれる。ダイアナのクローを受け止め、空から撃ってきたザクのビームを後退してかわす。

「んもう!シホとお兄ちゃんの邪魔しないでよ!」

 苛立ちを覚えたシホが、ダイアナとザク、ユキノとニナに対して敵意を見せつけた。

 

 悪戦苦闘しているライトサイドのMSたちを援護し、シアーズの侵攻を阻むオーブのMSたち。アリカも新たな決意を胸に秘めて、アルテミスに向かっていった。

(これ以上、みんなを傷つけさせるわけにはいかないよ、シアーズ!)

 黄金のドラグーンの攻撃をかいくぐり、アリカはコーラルを動かしてアルテミスに向かって飛び込んでいく。

 ビームサーベルを持った手でアルテミスの顔面を殴りつけるコーラル。吹き飛ばされるものの、アルテミスはすぐに体勢を立て直す。

“なかなかです、コーラル。その動きはカグツチに勝るとも劣りませんね。”

 アリッサが通信回線を開いて、コーラルのアリカに呼びかけてきた。その幼き少女の声に、アリカは戸惑いを感じて動きを止める。

“ですが、私たちはここで引き下がるわけにはいきません。既に黄金の雷のエネルギー充填は完了しています。”

 その言葉にマイは危機感を覚えた。今度こそアリッサとミユは、ヴィントブルムの城下町に向けて砲撃してくるはずだ。

「ダメッ!」

 マイはたまらずカグツチを加速させ、アルテミスの砲撃の妨害を試みる。そこへアリッサが、カグツチのみに向けて通信を送ってきた。

“ひとつ教えておきます、マイさん。タクミさんは今、このアルテミスの特別室にいます。”

 その言葉にマイは眼を見開き、耳を疑った。同時にアルテミスに接近しようとしていたカグツチの動きが止まる。

(ウソ・・・タクミが・・アルテミスの中に・・・!?)

“マイちゃん、危ない!”

 混乱していたところをミドリに呼びかけられ、マイは我に返る。彼女の眼に、まばゆい光を解き放とうとしているアルテミスの姿があった。

「まずいっ!」

 マイはとっさにアクセルを切り、カグツチがアルテミスの前から離れる。その直後、アルテミスがエネルギー砲を発射する。

 しかしその瞬間、コーラルがビームライフルを撃ち込んで、アルテミスのエネルギー砲の狙いがわずかに外れていた。本来の狙いのヴィントブルムから外れ、この郊外の森林に命中した。

 アルテミスの黄金の雷の威力を、今度は間近で見ることになったアリカは息を呑んだ。

「これが・・アルテミスの力・・・こんなの、街に撃たせるわけにいかない・・・!」

 危機感を覚えたアリカは、次の砲撃をさせてはならぬとアルテミスに飛び込む。

「ダメッ!タクミとアリッサちゃんが!」

 それを見かねたマイは、コーラルに向けてビームライフルを撃つ。突然のカグツチからの攻撃に、アリカが驚く。

「えっ!?」

 戸惑うアリカに向けて、マイが間髪置かずに攻撃を仕掛けてくる。カグツチが双刀のビームサーベルを振りかざして、コーラルを牽制する。

“ちょっとマイちゃん、どうしちゃったのよ!戦う相手が違うわ!”

 ジーザスからミドリが呼びかけてくるが、マイはコーラルへの攻撃をやめない。コーラルを引き離すと、彼女は再びアルテミスに近づく。

「タクミ、そこにいるの!?返事をして!」

 マイが必死にアルテミスに呼びかける。アリッサはその声を耳にして、特別室の通信回線を回す。

“お姉ちゃん・・・お姉ちゃんなの・・!?”

「タクミ!・・・よかった、無事だったんだね・・・」

 カグツチのコックピット内のモニターに、アルテミスの特別室にいるタクミの姿が映し出される。

「ゴメンね、タクミ・・お姉ちゃんのホントのこと、あたしが星光軍に入ったってこと、教えてあげなくて・・・」

 悲痛の面持ちで弟に詫びるマイ。するとタクミは微笑んで首を横に振る。

“そのことは知ってたよ・・アキラくんとお姉ちゃんが知り合いだって知ったときから・・・”

「えっ・・・?」

 タクミの返事にマイは驚きを覚える。

“僕、お姉ちゃんがこの世界の平和のために戦ってるって思うと、すごく嬉しく思うよ。だから僕はこれ以上、お姉ちゃんの重荷になっちゃいけないと思ってる。”

「タクミ、それは違うよ!タクミはあたしにとって弟ってだけじゃない!決して失いたくない大切なものだから・・・」

“ありがとう、お姉ちゃん・・でもお姉ちゃん、僕のために犠牲にならないで。僕のために自分を殺さないで・・”

 タクミの言葉にさらに困惑するマイ。

“お姉ちゃんがいつも僕を大切にしてくれたことは正直嬉しい・・でも、お姉ちゃんが本当に大切にしている人は、他にいるんでしょ?”

「えっ・・・」

 タクミに問いかけられた直後、マイの脳裏にユウの顔が浮かんだ。いつもがさつでぶっきらぼうなところを見せているが、自分や他の誰かのために悩み、力になろうとしてくれる。マイは知らず知らずのうちに安らぎを感じていたのである。

 思い立った彼女を見て、タクミは再び微笑む。

“その人のこと、大切にしてあげて・・・”

「タクミ・・・」

 タクミの心からの想いにマイは困惑を覚える。彼は姉の重荷になってはいけないと、自分の力で歩き、病と闘うことを決意していた。

「強くなったね、タクミ・・あたしが少し眼を離していた間に、こんなにも強くなってたんだね・・・でもタクミ、今は戻ってきて。あたしだけじゃない。アキラくんもユウも、みんな待ってるから・・・」

 マイも微笑んでタクミに向けて手を差し伸べようとする。同様に、カグツチも戦意を消してアルテミスに手を差し伸べていた。

 すれ違いながらも心を通わせていく姉弟の姿。アリッサもミユも少なからず共感していた。

「マイさん、タクミさん、あなたたちの想う心、私たちにも安らぎを与えてくれました・・ですが・・」

 その気持ちを理解しながらも、彼女たちは使命を優先させた。

「私たちは、この世界を導かなくてはならないのです・・新たなる、黄金の時代へと・・・」

 エネルギーが充填された黄金の雷を放とうとするアリッサ。

「ダメッ!やめて、アリッサちゃん!」

 マイが必死に呼びかけようとするが、アリッサは砲撃をやめようとせず、タクミを解放する様子も見せない。

「安心してください。ヴィントブルムを砲撃した後、タクミさんは解放いたします。あなた方ライトサイドがシアーズに降伏するなら、砲撃を中止しますが・・」

「ダメだよ!街を壊すなんて!」

 そこへアリカがコーラルを駆り、アルテミス目がけて飛び込んできた。黄金の雷の発射口である胸部にビームサーベルを突き刺す。

「タクミ!アリッサちゃん!」

 マイが貫かれるアルテミスを見て愕然となる。黄金の機体が火花を散らして体勢を崩す。

「アルテミス、エンジンを貫通。機体炎上、機能を維持できません。」

 ミユが淡々とアルテミスの現状を説明する。しかしアリッサは優しく微笑んでいた。

「ありがとう、ミユ・・ミユがそばにいてくれたから、私はシアーズのために戦うことができたのです・・」

「そんな・・感謝するのは私のほうです、お嬢様。アリッサお嬢様が、機械の体の私に人の心を与えてくださったのです・・」

 座席を立ち上がり、微笑むミユに寄り添うアリッサ。炎に包まれたコックピットの中で、黄金の天使が翼を休める。

「アリッサお嬢様・・ミユはいつまでも、お嬢様のそばにいます・・・」

「ありがとう、ミユ・・・」

 使命という重荷を背負い続けてきた2人の少女。燃え盛る炎の中で、アリッサとミユは眠りについた。

 一方、タクミも自分の死が目前となっていることを悟っていた。酸欠で息苦しさを感じながら、彼は姉、マイの顔を思い返していた。

 彼女は弟のために全てを注いでくれた。その恩は数え切れず、返そうとしても返しきれないものである。

 その恩を少しでも返せないと思っていることが、彼の唯一の心残りだった。

「お姉ちゃん・・・ゴメンね・・ありが・・とう・・・」

 タクミが微笑みながら囁いた姉への感謝の言葉。その姿をモニター越しに見つめていたマイの耳にも届いていた。

 やがて映し出されているタクミの姿が、激しくなる炎に包まれた。

「タクミ・・・!」

 爆発に備えて回避していくコーラルの眼前で、ついにアルテミスが爆発し、戦場の空に散った。

「タクミーーー!!!」

 大爆発に向かって悲痛の叫びを上げるマイ。

 すばらしい歌声を奏でる幼き黄金の天使とその従者、そしてマイの大切な弟は、無限に広がる青空で命を失った。

 

 

次回予告

 

守れなかった命。

救えなかった大切なもの。

大切なものは、失って初めて本当の価値に気付く。

タクミを失ったマイの心は、虚無の世界を彷徨う。

そして消えない悲しみは、歯止めの利かない怒りへと変わる。

 

次回・「中立への反逆」

 

真の敵、見定めろ、デュラン!

 

 

作品集

 

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