GUNDAM WAR
-Destiny of
Shinn-
PHASE-48「託される未来」
ルナマリアとステラの乗るインパルスを先に行かせ、シンのデスティニーがレイのレジェンドの行く手を阻んだ。
「シン、まさかお前も、アスランやキラ・ヤマトと同じ過ちを犯すとは・・・!」
レイがシンたちに対して憤りを募らせる。
「オレはアスランたちとは違う・・アイツらは自分たちのことしか考えてなかった・・自分たちが無事なら、他が傷つこうと関係ない。そんなやり方だった・・・!」
シンが反論して、キラたちの行動への不満を口にする。
「お前もヤツらと違うというなら、この世界のために戦うんだ・・議長が道を指し示してくれる平和の世界を守るために・・」
レイが冷静にシンに向けて告げる。
「議長もキラも、他の人の意思を無視する・・そんなやり方があっちゃいけないんだ・・・!」
「世界の混迷を失くすためには仕方がない・・正しい道が示されてこそ、正しい生き方ができるのだ。」
「それじゃ議長から死ぬように言われたら、お前は死ぬのか!?生きる希望を踏みにじられるようなことを言われても、お前は納得するのか!?」
「議長は破滅をもたらす方ではない!お前もそのことは分かっているはずだ!」
呼びかけるシンだが、ギルバートを信じるレイが彼の言葉をはねつける。
「レイ、お前は寿命が短いって言ってた・・それに逆らって、お前は長く生きようと決めたんじゃないのか!?」
「そうだ・・オレは生きる・・議長のために、残された命を生き抜く・・そう決めたんだ・・・!」
「それはレイ、お前の意思じゃないのか!?お前がそうしたいと、議長のために生きたいと、お前自身で決めたんだろ!?」
さらに呼びかけるシンに、レイが戸惑いを覚える。
「だがシン、お前はその意思で、議長の信頼を裏切った・・だからオレは、お前たちを許さない・・!」
「レイ・・・!」
ギルバートに従順であろうとするレイに、シンが歯がゆさを募らせる。
「お前も敵に回ってしまった・・議長の敵に、世界の敵に・・・!」
「どうあっても議長に従おうとするのか、レイ・・・!」
敵意を募らせるレイに、シンが怒りや悲しみが入り混じる激情を膨らませていた。
「正直、レイとは戦いたくはなかった・・議長とも・・だけど、オレたちの生き方を認めず、一方的に討とうとするなら、オレも迷わない・・・!」
「オレも、シンと戦うことを、快く思ってはいない・・・!」
互いに自分の正直な思いを口にするシンとレイ。それでも信念を貫くため、2人は戦いへのためらいを振り切った。
デスティニーとレジェンドがビームライフルを手にして、同時にビームを放ってぶつけ合った。
「シン・・議長が認めてくれたのに、その期待を裏切った・・・!」
「オレは信じたかった・・議長は、みんなの意思を尊重してくれる方だと・・・」
敵意を向けるレイに、シンがギルバートに対する苦悩を告げる。
「自分たちの目的のために、誰かの意思を、罪のない人の心を踏みにじっていいわけがない・・!」
「議長は世界の全てを思って決断されている。それに逆らうことこそ罪だ・・!」
「自分たちに逆らう者は、全部罪人・・全部敵って言いたいのかよ・・!?」
レイの変わらない意思に、シンが憤りを募らせていく。
「オレはそんなやり方は受け入れない・・レイが戦おうとするなら、オレも戦う・・!」
シンが覚悟を決めて、デスティニーが再びビームライフルを発射した。レイが反応し、レジェンドがビームをかわす。
「デスティニーは万能型だが、シンの戦い方は接近戦に強い・・射撃と遠距離攻撃は、オレとレジェンドが有利だ・・!」
レイが冷静にデスティニーの特徴とシンの戦い方を分析する。レジェンドもビームライフルを発射するが、デスティニーはスピードを上げてかわす。
「スピードもデスティニーが上・・だがそのスピードを封じる術を、レジェンドは持っている・・・!」
レイが呟き、レジェンドがドラグーンを射出する。シンが反応して回避行動をとるが、縦横無尽に飛び交うビームをかわし切れず、デスティニーがビームを当てられる。
「くっ・・!」
シンがうめき、デスティニーが爆風から脱する。デスティニーはビームシールドを張って、ダメージを抑えていた。
「さすがだ、シン・・アスランやキラ・ヤマト以上に強いパイロットになっている・・!」
レイがシンの強さを痛感して毒づく。
「オレはあの戦い、キラ・ヤマトに敗れた・・だが、オレは何度も敗れるわけにいかない・・たとえシン、お前がキラやアスラン以上の力を持っているとしても・・!」
レイが目つきを鋭くして、レジェンドがさらにドラグーンを操作する。デスティニーはさらにスピードを上げて、ビームをかいくぐる。
「レイ・・シュミレーションで何度か相手をしたことはあるが、それ以上の力だ・・それだけレイが本気だってことなのか・・・!?」
シンもレイの力を痛感して、緊張を膨らませていく。
「このままじゃ、ルナとステラから離される・・このままインパルスが地球へ行っても・・・!」
シンはルナマリアとステラのことを気に掛け、焦りを噛みしめる。
そのとき、プラントから発進したミネルバが、レジェンドとデスティニーに追いついた。
「艦長・・ルナマリアがステラを連れて、地球へ向かっています。」
レイがタリアに現状を報告する。
「ミネルバはインパルスを追ってください。自分はデスティニーを、シンを押さえます。」
「あなただけで止められるの、レイ?本艦もあなたの援護をすべきだと思うわ。」
シンとの一騎打ちを申し出るレイに、タリアが問いかける。
「インパルスだけでは、地球の大気圏を突破することはできない。シンの回収に専念しても問題はないわ。」
「しかしインパルスならば不可能とは言い切れませんし、パイロットはルナマリアです。可能性を否定することはできません。」
タリアの投げかける言葉に対し、レイが自分の意見と判断を告げる。
「自分だけで、シンを止めてみせます。」
「レイ・・・他の部隊にも連絡が届いているわ。救援が来るまでは無事でいなさい。」
レイの申し出をタリアは聞き入れた。
「本艦はインパルスの追跡に向かいます。」
「よろしいのですか!?・・このままレイとシンだけで・・・!」
指示を出すタリアにアーサーが声を荒げる。
「デスティニーの相手を戦艦がするのは明らかに不利よ。シンを止められるのは、レイだけよ・・」
「艦長・・・」
タリアが投げかける言葉に、アーサーが困惑する。彼はタリアがシンたちと対立することを快く思っていないことを悟った。
「分かりました・・ミネルバ、インパルスを追跡する!」
アーサーが頷いて、クルーたちに指示を出した。
(お姉ちゃん・・戦いたくないけど・・もう、やるしかないんだね・・・!)
メイリンが心の中で呟いて、ルナマリアへの思いを募らせた。
全身するミネルバをデスティニーが追いかける。だがレジェンドのドラグーンのビームに、行く手を阻まれる。
「シン、お前はオレが討つ・・・!」
「レイ・・・!」
敵意を向けるレイに、シンが動揺を深めていく。
「オレはルナとステラを信じる・・だからオレは、レイ、お前との戦いに専念する・・!」
シンがレイとの戦いに専念して、デスティニーがレジェンドに向かっていった。
ルナマリアとステラの乗ったインパルスが、地球へ向かって進む。その最中、彼女は大気圏の突破の方法を考えていた。
(核エンジンじゃないインパルスで大気圏を突破するには、あまりにも危険・・私だけならやってみせるところだけど・・・)
ルナマリアがステラのことを気に掛けて、不安を膨らませていく。
「ルナ・・・シン、大丈夫だよね・・・?」
ステラがシンを心配して、ルナマリアに声を掛けてきた。
「シンは大丈夫よ。シンは強くなった。強い機体に乗っているだけじゃなくて、シン自身も強くなった・・」
「シン・・もっと強くなった・・・?」
「えぇ。私もみんなもビックリさせられてばかり・・」
ステラの問いに答えて、ルナマリアがシンのことを想う。ルナマリアの答えを聞いて、ステラが微笑んだ。
(シンならすぐに追いついてくる・・レイやメイリンも無事ならいいけど・・・)
ルナマリアはシンだけでなく、レイたちの身も案じていた。
そのとき、インパルスのレーダーに近づいてくる反応が映った。ミネルバがインパルスを追って近づいてきていた。
「ミネルバ!・・シンがやられるわけがない・・レイに足止めされているのね・・・!」
ルナマリアがミネルバを見て、シンへの信頼を募らせながら状況を推測する。
「ルナマリア、すぐにミネルバに戻りなさい。この命令が聞けないなら、本艦は攻撃を開始するわ。」
タリアがルナマリアに警告を送ってきた。
「グラディス艦長・・私たちは戻れません・・私たちもシンも、このまま戻っても議長の思い通りになるだけです・・・」
ルナマリアが自分の考えを告げて、タリアの警告を拒む。
「艦長は議長に、デスティニープランに従い続けるのですか・・?」
「私たちはザフト。上層部の命令に従い、実行するのが務めよ。」
「しかし艦長はフェイスです!艦長自身の判断で行動することができるはずです!」
「だからこそよ。私は、私の信念を偽ることはできない。」
呼びかけるルナマリアだが、タリアは考えを変えず、自分たちに課せられた使命に従おうとしていた。
「戦うしかないみたいですね・・・!」
ルナマリアが迷いを振り切り、インパルスがビームライフルを手にして構えた。
「インパルスと距離を取りながら攻撃します。近づけさせなければ、こちらに勝機はあります。」
タリアがアーサーたちに向けて、冷静に指示を出す。
「インパルスのエネルギーには限界があります。そうなれば我々に勝機はあります。」
「了解です。トリスタン、イゾルデ、発射用意!」
タリアの言葉に答えて、アーサーがクルーたちに指示を出す。ミネルバが臨戦態勢に入り、インパルスに向かってビームを放つ。
ルナマリアが反応し、インパルスがビームをかわしてビームライフルを発射する。ミネルバも動いてビームをかわす。
「ミネルバ・・インパルスの動きを読んで、攻撃をかわしている・・!」
ルナマリアがミネルバの動きとタリアの判断に、緊張感を膨らませる。
「トリスタン2番、ってえ!」
アーサーが号令を言い放ち、ミネルバが移動していくインパルスへビームを放つ。インパルスが紙一重で回避し、さらに盾でビームを防ぐ。
(正確に狙われる・・もっと距離を離さないと・・!)
ルナマリアが射撃されないようにして、インパルスがミネルバから離れる。
「イゾルデ、発射!インパルスを逃がさないようにして!」
タリアが指示を出して、ミネルバがミサイルを発射して、インパルスの後方に飛ばす。ミサイルの爆発による弾幕が、インパルスの行く手を阻んだ。
「これじゃ逃げ切れない・・どちらかの動きを止めるしか、戦うしかない・・!」
回避を続けてシンのデスティニーが来ることへの期待をやめて、ルナマリアが本格的な攻撃を決断した。
(ミネルバを止めるには、接近して攻撃するしかない・・・!)
ミネルバに勝つ術を見出すルナマリア。
「ステラ、しっかりつかまっていて・・・!」
「う、うん・・!」
ルナマリアが呼びかけて、ステラがコックピットの椅子にしがみついた。
インパルスがビームライフルを発射しながら、ミネルバに接近する。ミネルバもビームとミサイルを撃ちながら、インパルスとの距離を保つ。
「接近して攻撃するつもりね・・でもそれもさせないわ・・・!」
タリアは冷静に判断して、ミネルバがインパルスへの対処と迎撃に出る。
今度はミネルバが下がって、インパルスを近づけさせないようにする。
(近付ければインパルスがミネルバを止められる・・艦長もそう思っているのね・・・!)
自分の手の内が読まれていることに毒づくルナマリア。しかしこれ以外に手がないと思っていたため、彼女は今の攻め手を変えなかった。
インパルスがビーム攻撃を続けながら、左手にビームサーベルを持った。
「あくまで接近して攻撃しようというのね、ルナマリア・・・!」
タリアもインパルスへの攻撃を続ける。ミネルバがトリスタンとイゾルデだけを発射し続けていた。タンホイザーはチャージの時間があり、気付かれて回避されるリスクが高いため使えない。
「弾幕でインパルスを包囲。動きを封じてから集中攻撃する!」
「了解!イゾルデ、ってぇ!」
タリアの指示を受けて、アーサーが号令する。ミネルバが発射したミサイルが、インパルスの周囲で爆発する。
インパルスが弾幕に囲まれて、ルナマリアは視界をさえぎられた。
(目で見ることができないなら、レーダーで・・!)
ルナマリアがミネルバの反応を頼りにして、インパルスが弾幕を突っ切る。ミネルバが待ち構えているのを承知の上で。
「インパルス、こちらへ向かってきます!」
「迷いがないわね・・でもこれでは格好の的になるだけ・・・」
オペレーターが報告して、タリアが呟く。
「下方から熱源が接近!ビームです!」
メイリンがレーダーを見て報告する。ミネルバに向かって下からビームが飛んできた。
「回避!」
アーサーが声を上げて、ミネルバが動いてビームを回避した。そこへ弾幕を突破したインパルスが突っ込んできた。
「はあっ!」
インパルスが振りかざしたビームサーベルが、ミネルバの艦体を切りつけた。
(浅い・・これじゃまだ動く・・!)
ミネルバのエンジンを止めるまでに至らず、ルナマリアが毒づく。
「トリスタン、1番発射!」
タリアがとっさに指示を出し、ミネルバがビームを放つ。インパルスが左手に持っていたビームライフルを撃ち抜かれた。
「反撃された・・でも、このまま攻める・・!」
ルナマリアが臆することなく、インパルスが追撃を仕掛ける。インパルスがミネルバを狙って、ビームサーベルを振り上げた。
その瞬間、インパルスのエネルギーが切れて、フェイズシフトが機能しなくなった。
「こ、こんなときに・・!」
インパルスの戦闘力が一気に低下して、ルナマリアが驚愕する。
「今のうちにインパルスを回収するのよ!」
「は、はい!」
タリアの指示にメイリンが慌てて答える。動きの鈍ったインパルスに、ミネルバが接近していく。
(このままじゃやられる・・何とかしないと・・・!)
ルナマリアが焦りを募らせて、不安を感じているステラに目を向けた。
「こちらに接近する機体と戦艦あり!ジュール隊です!」
メイリンが報告して、タリアが目を見開く。インパルスとミネルバの間にビームが飛んできた。
ミネルバが後方に下がって、インパルスから離れる。両者の前にボルテール、イザークのグフ、ディアッカのガナーザクウォーリアが現れた。
「ジュール隊・・どういうことなんだ・・!?」
イザークたちの乱入に、アーサーが驚きを隠せなくなる。ルナマリアもステラもイザークたちに対して戸惑いを感じていた。
次回予告
確立された絶対の平和。
しかしそれも、完全な一枚岩ではなかった。
決められた道から、自ら選ぶ平和への道へ進んでいく。
力を求めていた少年も、自分だけの道を歩いていく。
生への答え、見出せ、レジェンド!