GUNDAM WAR

-Destiny of Shinn-

PHASE-43「運命と自由」

 

 

 メサイア付近まで近づいたフリーダムとエターナル。キラはオーブを守ろうと、メサイアへの攻撃に踏み切ろうとしていた。

「ラクス、ミーティアを!」

「分かりました。」

 キラの呼びかけにラクスが答える。エターナルから射出されたミーティアを、フリーダムは再び装備した。

「キラ、インパルスが近づいてくるぞ!」

 バルトフェルドが呼びかけて、キラが視線を移す。追ってきたインパルスがフリーダムに追いついてきた。

「あの機体・・・!」

 キラが以前のインパルスとの戦いを思い出して、警戒を覚える。

「相手は強化したフリーダム・・シンに敵わない私じゃ、シンみたいにフリーダムを倒せない・・でも・・!」

 フリーダムに脅威を覚えるルナマリアだが、インパルスがビームライフルを手にした。

「足止めぐらいはしてみせる・・そのくらいはできるはずよ!」

 ルナマリアが言い放ち、インパルスがビームライフルを発射する。フリーダムは上昇してビームをかわす。

 インパルスが続けてビームライフルを撃つが、フリーダムに全てかわされる。

「そんな!?・・あれだけ大きい装備を持った状態で、あんなに速く動けるなんて・・!?

 フリーダムの動きに、ルナマリアが驚愕する。フリーダムがカリドゥスからビームを放ち、インパルスが横に動いてかわす。

「だったら、近づいて直接攻撃する・・!」

 ルナマリアがいきり立ち、インパルスがビームサーベルに持ち替えて、フリーダムに向かっていく。インパルスが振りかざしたビームサーベルを、フリーダムがミーティアのビームソードではじき返す。

「やめろ!議長のために、世界が絶望してしまってもいいのか!?

 キラがルナマリアに向かって呼びかける。

「偉そうなことを言わないで!あなたたちのせいで、どれだけの人が傷ついて、命を落としたと思っているの!?

 するとルナマリアが怒りをあらわにして言い返してきた。

「確かに僕たちのやり方は間違っていた・・戦いの覚悟が足りなかった・・でも、こんな僕でも、管理された世界を止めることはできる!」

「開き直りのつもり!?そんなんでプラントも宇宙も引っ掻き回されたらたまんないのよ!」

 自分の反省と思いを口にするキラだが、ルナマリアからの反感を買うばかりだった。

「僕は戦う・・みんなの自由を守るために、みんなが自由に生きられるように・・!」

 キラが決意を口にして、フリーダムがインパルスを迎え撃つ。インパルスが再び振りかざしたビームサーベルをかわして、フリーダムがレールガンを発射する。

「うっ!」

 インパルスが右腕を撃たれて破壊されて、ルナマリアが衝撃に揺さぶられてうめく。とっさにビームライフルを左手で持ったインパルスに向かって、フリーダムが右のビームソードを振り下ろしてきた。

「うあっ!」

 ビームライフルさえも切り裂かれて、インパルスが突き飛ばされ、ルナマリアが悲鳴を上げる。

「ゴメン・・でも行かなくちゃならないんだ・・・!」

 キラが謝って、改めてメサイアに突入しようとした。

「フリーダム!」

 そのとき、シンのデスティニーが駆けつけて、ビーム砲を展開して発射した。キラが気付き、フリーダムがスピードを上げてビームを回避する。

「大丈夫か、ルナ!?

「シン!・・アスランは・・・!?

 声を掛けるシンに、ルナマリアが問いかける。

「オレが討った・・アスランも本気でオレと戦おうとした・・オレたちじゃなく、キラたちのために・・・!」

「そんな・・・アスラン・・・!」

 シンが答えて、ルナマリアが困惑を覚える。

「フリーダムはオレが討つ・・ルナはエターナルを止めるんだ・・!」

「でも、手持ちの武器がなくて・・・!」

 呼びかけるシンにルナマリアが答える。負傷しているインパルスに残されている武器はバルカンとナイフだけで、戦艦を攻めるには力不足である。

「デスティニーのビームライフルを使うんだ。これならインパルスでも使えるはずだ・・!」

 シンがルナマリアに言うと、デスティニーがビームライフルを手にして、インパルスに渡した。

「でも、それだとシンが・・・!」

「フリーダムに撃ち合いをしても、デスティニーでも勝ち目が薄い・・近付いて、直接攻撃を当てる・・!」

 動揺するルナマリアに、シンが冷静に答える。

「オレは必ず生きて帰る・・キラを、フリーダムを止めて・・ルナもエターナルを止めてくれ・・!」

「シン・・・分かった・・一緒にプラントに帰ろう・・!」

 シンと約束を交わして、ルナマリアが微笑んだ。メサイアに向かったエターナルを、インパルスを追いかけていった。

「ラクス!」

 キラがラクスを守ろうとして、フリーダムがインパルスを追おうとした。デスティニーがエネルギー砲を発射して、フリーダムの移動を阻んだ。

「キラ、アンタの相手はオレだ!」

「シン・・!」

 言い放つシンにキラが毒づく。

 フリーダムがデスティニー目がけて、左のビームソードを振り下ろす。デスティニーは残像を伴った高速でビームソードをかわして、フリーダムとの距離を詰めた。

 デスティニーが右手を伸ばして、パルマフィオキーナをミーティアの左アームに当てた。アームが爆発を起こして破壊される。

 キラが毒づき、フリーダムが自身とミーティアの全ての銃砲を一斉発射した。デスティニーがスピードを上げて、ビームをかいくぐった。

 ダメージが大きくなったミーティアから、フリーダムが離脱した。デスティニーとフリーダムが再び対峙する。

「デュランダル議長の作る管理された世界じゃ、夢も自由もなくなる・・君はそれでもいいのか!?

「確かに議長が正しいとは言えない・・だけど、アンタたちの綺麗事を信じても、もっと世界がムチャクチャになる!」

 呼びかけるキラに、シンが自分の考えを言い放つ。

「いきなり戦場に出てきて、オレたちや他のヤツらの事情も聞かずに戦いを始めて・・戦いを止めるつもりでいたとしても、それでどれだけの被害が出たのか、分かっているのか!?

「それでも戦いを止めたかった・・あのときのやり方は間違っていた・・でも僕は、戦いを止めるために戦う!みんなが自由に生きられるように!」

「その自由っていうのは、好き勝手に暴れるってことなのか!?どんな間違いも、アンタたちなら許されると言いたいのか!?

「違う!それは・・!」

「違うと思ってるのはアンタたちだけなんだ!勝手に出てきて、綺麗事ばかり並べて自分を正当化する!みんなのことを考えているつもりになっているだけで、何も分かってない!」

 言い返そうとするキラに、シンが反発する。

「アンタたちの自由にさせるくらいなら、オレがアンタを討つ!」

 シンが鋭く言い放ち、デスティニーがアロンダイトを手にして構えた。

「やられるわけにはいかない・・君が立ちはだかるなら、僕は迷わない・・・!」

 キラも意思を強く持ち、フリーダムが両手にビームライフルを1つずつ持った。

 加速して近づいてくるデスティニーを、フリーダムが射撃で迎え撃った。

 

 デスティニーの加勢で大きな損傷を受けたアークエンジェル。それまで互角の攻防を繰り広げていたミネルバが、これで優勢になっていた。

(ラミアス艦長、あなたの指揮と信念、決して忘れないわ・・・!)

「タンホイザー、起動!ここでアークエンジェルを討つ!」

 マリューへの経緯を胸に秘めて、タリアが指示を出す。

「本艦のダメージも大きいです・・タンホイザーを使えば、これ以上戦闘を続けることは・・・!」

「アークエンジェルを止めるには、こうするしかないわ・・私たちは、シンとルナマリア、ザフトの他の部隊を信じましょう・・・!」

 ミネルバの現状を口にするアーサーに、タリアが微笑んで答えた。

「了解です、艦長・・タンホイザー、発射準備!」

 アーサーがタリアに答えて、メイリンたちに指示を出す。ミネルバがタンホイザーの発射体勢に入り、アークエンジェルに砲門を向けた。

「ミネルバが撃ってくるわ・・こちらもローエングリンを・・・!」

 マリューがミネルバを迎え撃とうと指示を出す。

「この状態では回避が間に合わない・・不利だと分かっていても、押し返すしかない・・・!」

 打開の糸口を探り、突破口を開こうとするマリュー。アークエンジェルもローエングリンの発射準備を整えた。

「ってぇ!」

 タリアとマリューの号令が重なった。ミネルバとアークエンジェルが陽電子砲を同時に発射した。

 2つの光線がぶつかり合うが、アークエンジェルの砲撃がミネルバの砲撃に押されていく。

「出力が足りない・・損傷が深すぎた・・・!」

 絶体絶命を痛感して、マリューが声を振り絞る。

(ごめんなさい、キラくん、ラクスさん・・あなたたちに追いつきたかった・・・ムウ・・・!)

 合流できずに心の中で詫び、想いを募らせるマリュー。ミネルバの砲撃に押し切られて、アークエンジェルの艦体が光線に貫かれた。

 アークエンジェルが落下しながら爆発して消えた。

(ラミアス艦長・・・!)

 タリアが沈痛さを感じながら、アークエンジェルの消えた場所に向けて、敬礼を送った。

「本艦は1度前線から離脱し、体勢を立て直します・・!」

 タリアが落ち着きを保って、アーサーたちに指示を出す。

「レジェンドの行方は分かった・・?」

「いえ・・捜索隊からの連絡もないです・・・!」

 タリアが問いかけて、メイリンが顔を横に振る。

「捜索と状況把握を続けて。」

「はい・・」

 タリアの言葉にメイリンが答える。ミネルバが後方に下がり、体勢を立て直すのだった。

 

 シンたちの戦いの状況は、メサイアにも伝わっていた。

「ミネルバはアークエンジェルを撃墜後、後方に移動しました。」

「デスティニーはフリーダムと交戦!インパルスはエターナルを追っています!」

 オペレーターたちがギルバートに方向をしていく。

「デスティニーにはこのままフリーダムと戦ってもらう。我々はインパルスを援護する。エターナルをメサイアに近づけさせるな。」

「はっ!」

 ギルバートの命令にオペレーターたちが答える。ジェネシスがエネルギーチャージをほぼ完了し、後は移動して狙いを定めるのみとなっていた。

 

 アロンダイトを構えて、デスティニーがフリーダムに向かって突っ込んできた。デスティニーが振り下ろすアロンダイトを、フリーダムが素早くかわす。

 フリーダムがデスティニー目がけてビームライフルを発射する。デスティニーが残像を伴った動きでビームをかわして、フリーダムとの距離を詰めていく。

 フリーダムが2つのビームライフルを組み合わせて、再びデスティニーに向けて発射する。デスティニーはこのビームの連射もかいくぐる。

 フリーダムがビームライフルを左手で持って、右手でビームサーベルを持った。デスティニーが距離を詰めてきた瞬間、フリーダムがレールガンを展開してビームを放った。

 デスティニーが加速してビームをかわす。キラがその動きを捉えて、フリーダムも加速してビームサーベルを振りかざした。

 シンも反応して、デスティニーがビームシールドを発してビームサーベルを防いだ。

 その瞬間を狙っていたキラ。フリーダムが左手に持っていたビームライフルを構えて、銃口をデスティニーの胴体に向けた。

 次の瞬間、デスティニーがアロンダイトを1度放して、ビームライフルを右の手のひらではたいた。フリーダムがそのビームライフルを上に上げて、デスティニーが放とうとしたパルマフィオキーナを回避した。

 デスティニーがアロンダイトを手にして、フリーダム目がけて振りかざす。

「やられるわけにはいかない・・!」

 キラが感覚を研ぎ澄ませて、フリーダムが回避行動をとる。しかしアロンダイトの一閃で、フリーダムが左足を切り落とされた。

 フリーダムがその直後にビームライフルを発射して、デスティニーの右足を討ち抜いた。負傷した2機が離れて距離を取る。

「これだけの力があるのに、どうして自分たちのことばかり優先させるんだ・・綺麗事ばかり並べて、自分たちは正しいように振る舞って・・!」

「違う!僕たちはみんなを守りたくて・・!」

 憤りを口にするシンに、キラが言い返す。

「そのみんなっていうのは誰なんだ!?地球とプラントにいるみんなのことを、ちゃんと考えてるのか!?自分たちのことしか考えてないのに、みんなを守ってるつもりになってるんだ、アンタは!」

「それでも僕は、みんなを守りたいんだ!」

「それで答えになっていると思ってるのか!?結局アンタは、自分の力と考えを押し付けているだけなんだ!」

「そんなことは・・・!」

 怒りをぶつけてくるシンに、キラがさらに言い返そうとする。

 フリーダムがドラグーンを射出して、デスティニーを包囲して射撃する。シンがドラグーンの動きを捉えて、デスティニーが正確にビームをかいくぐっていく。

「そんなやり方を続けていても、戦いが終わらない!ちゃんとした平和の形を示してないからだ!」

「そうだとしても、戦いを終わらせることができるはずだ!その気持ちは、みんなも同じだ!」

「同じじゃない!アンタも議長も、結局は自分の考えを押し付けているだけなんだ!」

「それでも・・それでも僕たちは!」

 シンからの非難に、キラはひたすら言葉を返す。フリーダムがさらにドラグーンを操作してビームを放つが、デスティニーにかわされて距離を詰められる。

「“でも”、“それでも”、“だけど”、“違う”・・アンタの言い分はそればかり・・しかもどれも中身のない言葉だ!それじゃ何も伝わらないし、何も理解できない!」

 キラの言動に対する不満を口にするシン。彼のこの非難に、キラが言葉を詰まらせる。

「綺麗事は終わらせる・・アンタたちのも、オーブも!」

 シンが言い放ち、デスティニーがアロンダイトを1度手放して、両肩からビームブーメランを手にして投げつけた。回転するビームブーメランがフリーダムのドラグーンを切り裂いていく。

 キラが残りのドラグーンを操作して、ビームブーメランを撃ち抜いて破壊した。

 デスティニーがアロンダイトを手にして、エネルギー砲を展開してビームを放つ。残りのドラグーンもビームを受けて破壊されていく。

(フリーダム、キラ、アンタは先の大戦を終わらせた英雄になっているけど、今は戦いを起こす元凶だ・・!)

 キラへの怒りを募らせるシンが、これまでのフリーダムの行動や戦いを思い返していく。

(戦いを終わらせるために1番討たなければならなかったのは、連合でもロゴスでもない・・アイツだったんだ・・・!)

 キラが戦いの元凶であると、シンが確信する。

(だからオレがやる・・キラは、オレが倒す!)

 シンが激情を高まらせて、デスティニーがフリーダムに向かっていく。デスティニーが振りかざしたアロンダイトを、フリーダムが下がってかわす。

 フリーダムとデスティニーがカリドゥスとエネルギー砲を同時に発射する。2つのビームがぶつかり合い、相殺される。

 その爆発が消えた瞬間、キラの視界からデスティニーが消えていた。デスティニーはこの瞬間に、フリーダムの懐に飛び込んでいた。

 デスティニーがアロンダイトを突き出して、フリーダムの持っていたビームライフルを切り裂いた。フリーダムがビームライフルを手放して、もう1本のビームサーベルを手にした。

 フリーダムが2本のビームサーベルを振りかざす。シンが回避しようとするが、ビームサーベルの1本が、デスティニーの頭部を切り裂いた。

 それでもデスティニーは怯まず、フリーダムが振りかざすビームサーベル2本にアロンダイトをぶつける。

「正確な攻撃はそっちが上でも、パワーとスピードはこっちが上だ!」

 シンが言い放ち、デスティニーがアロンダイトを押し込んだ。フリーダムのビームサーベルがねじ曲がり、2本ともはじき飛ばされた。

 フリーダムがレールガンとカリドゥスを同時に発射する。デスティニーがビームシールドを展開して防ぐも、押されてフリーダムから引き離される。

「分かっていける・・変わっていける・・そんな未来があるって分かっているから、僕は戦うんだ・・・!」

 キラが声を振り絞り、フリーダムが残された全ての銃砲を展開して、デスティニーを迎え撃った。

 

 追跡するインパルスが、メサイアに向かうエターナルの前に回り込んだ。デスティニーから受け取ったビームライフルを、インパルスが構えた。

「観念しなさい、ラクス・クライン!あなたたちの暴挙を、これ以上見過ごすことはできないわ!」

 ルナマリアがラクスたちへ忠告を送る。

「下がりなさい!あなた方は、夢を見ることも希望を見つけることもできない、ただ生きているだけの人形になりたいのですか!?

「それはあなたたちの思い通りになっても同じことよ!」

 ラクスが警告を言い返すと、ルナマリアが反発する。

「誰かの言葉に従うしかないというなら、私はシンを信じる・・私を信じてくれたシンを・・!」

 ルナマリアは自分に言い聞かせながら、シンへの想いを募らせる。

「これが最後よ!投降しなさい!反抗や戦闘を続けるなら、私はエターナルを討つわ!」

「私たちは、何があっても引き下がるわけにはいきません。たとえあなた方を殺めることになっても、我々はデュランダル議長を止めます。」

 さらに忠告するルナマリアだが、ラクスは引き下がらず、エターナルが前進しようとする。

「戦場の歌姫・・戦いを呼ぶ姫になってしまったのね・・・!」

 ラクスに対する歯がゆさを噛みしめるルナマリア。ビームを放つエターナルに、インパルスもビームライフルの引き金を引いた。

 

 デスティニーがアロンダイトを構えて、フリーダムに向かって突っ込む。フリーダムが銃砲を一斉は射してビームを放射する。

「シン!」

 シンに向かって叫ぶキラが、デスティニー打倒の意思を示す。フリーダムのビームが、デスティニーの右肩と左足を撃ち抜いた。

 それでもデスティニーはスピードを弱めることなく、ビームの合間をかいくぐり突っ込んでいく。

「キラ!」

 シンが叫び、デスティニーがアロンダイトを突き出した。フリーダムが再び銃砲の一斉発射を行った。

 デスティニーとフリーダムが激突によって起こった閃光に包まれた。

 

 

次回予告

 

戦争によって起こった数々の悲劇。

無慈悲な戦いは終わらせなければならない。

そして2度と起こしてはならない。

その願いを抱いた少年が、過去との決着を果たす。

 

次回・「真の平和へ」

 

呪縛の鎖、断ち切れ、デスティニー!

 

 

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