GUNDAM WAR

-Destiny of Shinn-

PHASE-42「過去との決着」

 

 

 行く手を阻んできたジャスティスと、デスティニーが対峙する。

「アスラン、アンタとも決着を付けないといけないっていうのか・・!?

 シンがアスランのことを考えて毒づく。しかしシンはアスランと戦うことへの迷いは振り切っていた。

「シン、どうしても議長の側について戦おうというのか・・!?

 アスランはシンが立ちはだかることを危惧する。

「お前は何のために戦うんだ!?世界から生きる希望を奪うことに、お前も賛成しているのか!?

「違う!オレはアンタたちの勝手な戦いを止めるために戦っている!これ以上、アンタたちの自由に戦わせるわけにいかない!」

 問い詰めてくるアスランに、シンが自分の意思を告げる。

「そのために議長が築こうとする、生き方が決められている世界になってもいいというのか!?オレたちは、世界をそんな形にさせてはいけないと思って、議長を止めようとしている!」

「だからって、アンタたちの勝手や綺麗事が許されるわけじゃない!アンタだって、結局オーブやキラの味方になって、オレたちの敵に回っているじゃないか!」

「オーブもキラも、今までの自分の過ちを後悔している!その上で議長を止めようと決断しているんだ!」

「そんなのは見せかけだ!アンタもそんな綺麗事に賛同するなんて・・!」

 自分たちの意思を伝えるアスランだが、シンは不信感を募らせる。

「オレは戦いを終わらせる・・戦いを広げるアンタたちを倒して・・他のみんなが、オレたちみたいな思いをしないために・・家族や仲間を失わないために!」

 決意を言い放つシンが、これまでの自分の悲劇や戦いを思い返していく。

 戦争に巻き込まれて両親とマユが亡くなり、力を求めてザフトに入った後も、ハイネを失った。ステラを助けることはできたが、ただ力を求めるだけでなく、何のために戦うべきなのかを考えさせられた。

 自分が受けた悲劇を自分たちで終わらせる。ギルバートもキラたちも正しいとは言えないが、どちらが悲劇を止められるか、どちらが世界を混乱させることになるか、シンは判断していた。

「よく考えろ、シン!過去に囚われたまま戦うのはやめろ!そんなことをしても、何も戻りはしない!」

「よく考えてないのはアンタたちだ!過去のことを忘れて、未来をよくしていくなんてできるわけがない!」

 呼びかけてくるアスランに、シンが反発する。

「力がないのが悔しかった・・誰も守れない自分が許せなかった・・だから軍人になって、こうして力を手にして戦っている・・戦いを2度と起こさせないようにするために・・だから過去と向き合って戦ってきたことを、オレは間違っているとは思わない!」

「その力に呑まれているのが分からないのか!?お前はその思いを、議長に利用されているんだぞ!」

「たとえ議長の思惑通りだとしても、アンタたちを野放しにしていいことにはならない!それにこの力、戦いを終わらせるために、戦いを仕掛けてくるヤツらを倒すために使っている!オレ自身の意思で!」

「お前にそのつもりがなくても、そのデスティニーは、議長の世界のための力!世界の全てを殺し、未来をも殺す力だ!お前がほしかったのは、本当にそんな力か!?

「デスティニーが議長の世界のための機体だとしても、どう使うかはオレ自身だ!戦いを終わらせる!2度と戦いを起こさせない!そのためにオレが使う!オレ自身で、そう決めたんだ!」

「シン、お前はそこまで・・・!」

 揺るぎない意思を示すシンに、アスランが困惑する。シンが自分の意思で戦いをしていることを、アスランは痛感させられていた。

「ならばなおさら、お前を議長の側にいさせるわけにはいかない・・オレが、お前を止める・・!」

 アスランが鋭く言い放ち、ジャスティスがビームサーベルを手にして、デスティニーに向かっていく。

 デスティニーがアロンダイトを手にして、ジャスティスに向けて振りかざす。ジャスティスが動きを変えてかわして、ビームサーベルを振りかざす。

 デスティニーがアロンダイトを切り返して、ジャスティスのビームサーベルを上に弾いた。

「くっ・・!」

 アスランが目を見開き、ジャスティスが後退してデスティニーから離れる。デスティニーがアロンダイトを背部に収めて、ビームブーメラン2本を投げ飛ばした。

 ジャスティスが両端にビームの刃を発したビームサーベルで、ビームブーメランを弾いた。デスティニーがその隙を狙って、ビーム砲を展開して発射した。

 ジャスティスが盾からビームシールドを展開してビームを防ぐが、押されて体勢を崩す。ビームブーメランをつかんで両肩に収めたデスティニーが、ビームライフルを手にしてジャスティスを追う。

 デスティニーがビームライフルを発射して、ジャスティスをけん制する。

(オーブで戦ったときよりも動きがよくなっている・・しかも迷いがなく、冷静さも失っていない・・オレを討つことさえもためらわないというのか・・!?

 デスティニーの動きとシンの心境に、アスランが脅威を覚える。

(シンのこの意思さえも、デュランダル議長に利用されている・・しかもシンはそれを自覚し、覚悟してる・・その上で戦っている・・オレたちのほうが間違っていると考えて・・・!)

 シンの戦い方に、アスランは危機感を募らせていく。

(お前は強い・・力があるだけじゃなく、心も・・だからこそ、お前も止めなくちゃならないんだ・・!)

 アスランが改めて決意を固めて、ジャスティスがビームライフルを手にする。

(たとえ、お前を討つことになっても!)

 ためらいを振り切ったアスランの中で何かが弾けた。彼の感覚が研ぎ澄まされ、ジャスティスがビームライフルを撃つ。

 紙一重でビームをかわしたデスティニーだが、ジャスティスの攻撃がより正確になったことに、シンが緊張を覚える。

 ジャスティスが盾からビームブーメランを手にして、デスティニー目がけて投げつける。回避行動をとるデスティニーだが、ビームブーメランが鋭く曲がり、デスティニーに迫ってきた。

 シンが反応し、デスティニーがビームシールドを発して、ビームブーメランを防いだ。しかしぶつけられた衝撃で、デスティニーが体勢を崩す。

 ジャスティスがデスティニーを狙って、ビームライフルを発射した。

(オレは戦う・・戦いを仕掛けてくるヤツと、オレは戦い続ける!)

 決意を強めたシンの中で何かが弾けた。彼の感覚が研ぎ澄まされ、デスティニーがビームを紙一重でかわした。

 動きがさらに機敏になったデスティニーに、アスランが緊迫を募らせる。

 デスティニーとジャスティスがビームライフルを発射して、ビームがぶつかり合う。2機が再びビームを放ち、互いのビームライフルを撃ち抜いた。

「くっ・・!」

 ビームライフルが爆発して、シンとアスランが毒づく。デスティニーがアロンダイトを、ジャスティスがビームサーベルを手にして加速する。

 ジャスティスがビームブーメランを付けた盾を、ビームサーベルと同時に振り下ろす。デスティニーがアロンダイトを振り上げて、2つのビームの刃を受け止めた。

 力があるデスティニーのアロンダイトだが、2本のビームの刃に力を込めていることで、ジャスティスは押されずにいた。

 ジャスティスが右足にビームブレイドを発して、デスティニーに向けて振りかざす。デスティニーが左手を出して、パルマフィオキーナでビームブレイドを受け止めた。

 デスティニーとジャスティスが攻撃をぶつけ合う衝撃で、互いに押されて引き離された。

「このまま議長が築く管理された世界になってしまったら、オレたちもお前たちも自由を失うんだぞ・・お前がどれだけ自分の意思で決めようとしても、それが許されなくなる!服従させられるか、反逆者として処罰されることになる!」

「だからって、アンタたちの過ちを野放しにして、それを正しいことにするのが、認められていいことにはならない!」

 説得しようとするアスランだが、シンの意思は揺るがない。

「オレたちを正すために、世界がどうなってもいいっていうのか!?

「アンタたちを放っておくほうが、世界の混乱になるんだよ!」

 問い詰めるアスランにシンが言い返す。

「そうまでして、オレたちを討とうというのか、お前は!?

 シンの決意に対して、アスランが憤りを募らせていく。デスティニーがアロンダイトを構えて、ジャスティスに向かって加速する。

「この、バカヤロー!」

 アスランが激高して、ジャスティスが2本のビームの刃を交差して、デスティニーが振り下ろしたアロンダイトを受け止めた。

「キラたちは今も自己満足に戦いを続けている・・アンタはアイツらに加担した・・オレはアンタを討つことを、ためらわない!」

 シンが敵意をむき出しにして、デスティニーがジャスティスを押し込んでいく。

「ぐっ!」

 ジャスティスが突き飛ばされて、アスランがうめく。デスティニーが加速して、ジャスティスを追う。

 ジャスティスがビームサーベルを振りかざして、デスティニーのアロンダイトとぶつけ合う。だがジャスティスがビームサーベルをはじき飛ばされた。

 ジャスティスがとっさにビームブーメランを投げつけるが、デスティニーが振り上げたアロンダイトに両断された。

 その直後、ジャスティスが射出した背部にあるリフター「ファトゥム-01」が、デスティニーに向かって飛んできた。デスティニーがアロンダイトを振り下ろして、ファトゥムを真っ二つにした。

 ジャスティスが間髪置かずに距離を詰めて、右足のビームブレイドを振りかざしてきた。デスティニーがアロンダイトを左手だけで持って、右手を出してパルマフィオキーナでビームブレイドを受け止めた。

(オレは、ここで倒れるわけにいかない・・ルナが、ステラが、オレを待っているから!)

 シンがルナマリアたちのことを思って、さらに感覚を研ぎ澄ませる。デスティニーが左手で持っているアロンダイトを切り返して、振り上げてジャスティスの右足を切り裂いた。

「なっ!?

 ジャスティスが損傷させられて、アスランが驚愕する。ジャスティスが左足のビームブレイドを振りかざすが、振り下ろされたアロンダイトに切り裂かれた。

 主力の武器を全て破壊されて、歯が立たなくなったジャスティス。デスティニーがアロンダイトを構えて、ジャスティスとの距離を詰めていく。

「シン、やめろ・・ここで議長を止めなければ、世界から夢や希望が失われることになる・・・!」

 アスランが声を振り絞り、シンに呼びかける。

「キラたちに力を貸して、議長を止めるんだ・・・!」

「間違いを繰り返すアイツらのいいようにさせることが、みんなを絶望させることになるんだ!」

 アスランの言葉をはねのけて、シンが言い放つ。デスティニーがジャスティスに向かってアロンダイトを振りかざした。

 ジャスティスが胴体を切り裂かれて、コックピットにまで及んだ爆発にアスランが襲われる。

「シ・・シン・・キラ・・・カガリ・・・」

 負傷したアスランが、映像の乱れる前方にいるデスティニーに向かって手を伸ばす。その彼を巻き込んで、ジャスティスが爆発して閃光とともに消えた。

「アスラン・・・オレは戦う・・オレが、世界から戦いを失くしてみせる・・・!」

 消えたアスランに対して告げて、シンが体を震わせる。割り切ったつもりでいた彼だが、心の奥ではアスランと対立することを、快く思っていなかった。

「キラを・・フリーダムを追う・・・!」

 シンは呟いて、デスティニーがキラのフリーダムを追って移動する。

 キラたちやオーブは自己満足だけでギルバートを止めようとしている。デスティニープランが正とは思えないが、キラたちのやり方と考え方では世界の悲劇が増すことになる。

 シンはキラたちを止める決意を強めていた。

 

 ジャスティスの反応がレーダーから消失した。その事実にマリューが目を疑った。

「アスランくんが!?・・・ミネルバへの攻撃を続けながら、アスランくんの捜索を!」

 マリューが指示を出して、ミネルバとの交戦に集中する。

「私たちは退くわけにはいかない・・デュランダル議長の作る死の世界を止めるために・・・!」

 マリューは自分に言い聞かせて、アークエンジェルがミネルバに向かって前進する。

「ローエングリン、照準!目標、ミネルバ!」

 マリューの指示で、アークエンジェルがローエングリンの発射体勢に入る。

「艦長、アークエンジェルが・・!」

「こちらも迎え撃ちます・・タンホイザー、起動!目標、アークエンジェル!」

 アーサーが声を上げて、タリアが指示を出す。ミネルバがタンホイザーの発射体勢に入り、アークエンジェルと対峙する。

「ってぇ!」

 タリアとマリューの号令で、ミネルバとアークエンジェルが陽電子砲を同時に発射した。放たれた光線がぶつかり合い、爆発のような閃光と衝撃を巻き起こす。

「アークエンジェルに向けて前進!接近して叩きます!」

 タリアが続けて指示を出し、ミネルバが巻き起こる煙を突き抜けて、アークエンジェルとの距離を詰める。だがアークエンジェルも前進して近づいてきていた。

「考えることは同じか・・!」

 タリアが毒づきながら、アークエンジェルへ攻撃を仕掛ける一瞬を見計らう。

「イゾルデ、トリスタン!」

「ゴットフリート、バリアント!」

 ミネルバとアークエンジェルが上部が向かい合った瞬間に、主砲と副砲を発射した。2隻の艦が砲撃を受けて、爆発に襲われる。

「ぐっ・・!」

「トリスタン2番砲、損傷!エンジン出力、60%まで低下!」

 タリアがうめき、メイリンがミネルバの状態を報告する。この相打ちでミネルバ、アークエンジェルともにダメージを大きくしていた。

「トリスタン1番砲、発射!体勢を整える前に討ちます!」

「ヘルダート、発射!ミネルバが撃ってくるわ!」

 タリアとマリューが指示を出し、ミネルバとアークエンジェルが距離を離さないうちに追撃しようとした。

「艦長!」

 そこへシンのデスティニーが駆けつけ、ビーム砲を展開してアークエンジェルを砲撃した。

「うあっ!」

 アークエンジェルが艦体にビームを受けて、マリューたちが揺さぶられてうめく。

「シン!・・アスランは・・・!?

「艦長・・・アスランは、オレが討ちました・・・!」

 タリアが声を掛けて、シンが声を振り絞って答える。

「アスランさんが・・・!」

 この知らせを聞いて、メイリンが表情を曇らせる。

「悲しむのは後よ・・今はこの戦いを終わらせることに専念して・・!」

 タリアが声を振り絞って、アーサーたちに檄を飛ばした。

「デスティニー・・アスランくん、やられてしまったの・・・!?

 アスランの死にマリューは驚愕を隠せなくなっていた。

「シン、あなたはフリーダムとエターナルを追いなさい!ルナマリアも後を追っているわ!」

「艦長・・しかし、ミネルバが・・!」

 指示を出すタリアに、シンが当惑を浮かべる。

「私たちなら大丈夫よ・・デュランダル議長に、彼らを近づけさせてはならないわ・・!」

「グラディス艦長・・・分かりました・・!」

 タリアの言葉を受けて、シンが答える。デスティニーがミネルバから離れて、フリーダムとエターナルのところへ向かった。

「私たちも、アークエンジェルとの戦いに決着を付けるわよ!」

「はいっ!」

 タリアの声にアーサーたちが答えた。

(ギルバート、私はあなたがしようとしていることに納得しているわけではない。でもザフトの一員として、私は最後まで戦い抜くわ・・)

 心の中でギルバートに対して呟くタリア。彼女もギルバートに対する不信感を抱いていた。

 

 

次回予告

 

力を求め、戦う意味と答えを見つけた少年。

先の大戦を経て、戦いを止める戦いとその覚悟をした少年。

シンとキラ。

平和を望む2人が、全てを賭けて刃を交える。

 

次回・「運命と自由」

 

想いの力、貫け、フリーダム!

 

 

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