GUNDAM WAR

-Destiny of Shinn-

PHASE-41「選ばれた未来、選ぶ未来」

 

 

 エターナルを守ろうとするドム3機を、インパルスが迎え撃つ。ルナマリアがドムを狙うが、インパルスのビームライフルからの射撃を、ドムたちは回避していく。

「速い・・しかも3機とも連携が合ってる・・!」

 ルナマリアがドムの動きに毒づく。

「まずはアイツをやる!遅れるなよ、マーズ、ヘルベルト!」

「おう!」

「あいよ!」

 ヒルダの呼びかけに、マーズとヘルベルトが答える。

「ジェットストリームアタック!」

 ドムたちがスクリーミングニンバスを起動して、インパルスに向かっていく。

「うあっ!」

 加速するドムたちにインパルスが突撃されて、ルナマリアが悲鳴を上げる。

「お姉ちゃん!」

 彼女の危機に、ミネルバにいるメイリンが叫ぶ。

「インパルスを援護する!ミサイル発射!」

「ってぇ!」

 タリアが指示を出して、アーサーが号令を掛ける。ミネルバからミサイルが放たれて、ドムたちに向かっていく。

「ヘルダート、ってぇ!」

 そのとき、マリューの号令とともにアークエンジェルからヘルダートが放たれて、ミネルバのミサイルを破壊した。

「アークエンジェル・・・私たちは、あの艦と一騎打ちをしなければならないようね・・・!」

 近付いてくるアークエンジェルに毒づくタリア。ミネルバはアークエンジェルとの攻防に向かうこととなった。

「艦長、あの3機は任せてください!必ず討って、エターナルも止めます!」

「分かったわ、ルナマリア。アークエンジェルは私たちが止める。」

 ルナマリアが呼びかけて、タリアが聞き入れた。

 インパルスがビームライフルを発射するが、ドムのスクリーミングニンバスから発するビームの膜に射撃が弾かれた。

「ビームを当てても通じない・・それなら・・!」

 ルナマリアが思い立ち、インパルスがビームサーベルに持ち替えて、ドムたちを迎え撃つ。

 ドムたちがビームバズーカを発射していくが、インパルスが砲撃をかわしてドムたちに近づいていく。

「突っ込んでくるとは・・そんなに撃たれたいか!」

 マーズが言い放って、ドム1機もビームサーベルを手にしてインパルス目がけて振りかざす。インパルスは身を翻してビームサーベルをかわして、ヒルダのドムを踏みつけた。

「アイツ、あたしを踏み台に!?

 ドムを踏みつけられて、ヒルダが声を荒げる。インパルスがその勢いで前転しながら、ビームサーベルを振りかざしてドム1機の背中を切りつけた。

「ぐっ!」

「マーズ!」

 ドムの損傷にマーズがうめき、ヘルベルトが叫ぶ。

「貴様、調子に乗るんじゃないよ!」

 ヒルダが怒りをあらわにして、ドムがビームバズーカのビームと砲撃を同時に放つ。インパルスが加速して回避して、ドムに向けてビームサーベルを振りかざす。

 ヒルダのドムもビームサーベルを手にして、インパルスのサーベルとぶつけ合う。

「ラクス様に手出しはさせない!平和をもたらすのは、あの方以外にはいないんだよ!」

「戦いを仕掛けてくる人たちが、平和を作れるわけがない!」

 言い放つヒルダにルナマリアも言い返す。

「ラクス様に逆らおうだなんて、つくづくいい度胸してんじゃんか!」

「あの人が絶対正しいって考え方で、本当の平和なんてくるはずない!」

 あくまでラクスに従おうとするヒルダに、ルナマリアが憤りを覚える。インパルスのビームサーベルが、ドムのビームサーベルをはじき飛ばした。

「しまった!」

「もらった!」

 うめくヒルダにルナマリアが言い放つ。インパルスがドムを狙って、ビームサーベルを振り上げた。

「ヒルダ!」

 マーズがヘルベルトともに叫んで、マーズのドムがインパルスに突っ込んで、ヒルダのドムから引き離す。

「ヒルダ、今のうちに体勢を整えろ!」

 マーズがヒルダに向かって叫んで、彼のドムが至近距離からビームバズーカを発射する。インパルスが紙一重で砲撃をかわして、ドムにビームサーベルを突き立てた。

「がはぁっ!」

 ドムがビームサーベルに貫かれて、コックピットにも爆発が及び、マーズが絶叫を上げた。

「ヒルダ・・ヘルベルト・・・ラクス・・さま・・・!」

 声を振り絞るマーズが、爆発を起こしたドムとともに消えた。

「マーズ・・マーズ!」

 ルナマリアに倒されたマーズに、ヒルダが叫んだ。

「コイツ、よくもマーズを!」

 ヘルベルトが怒りをあらわにして、彼のドムがインパルスに飛びかかる。

「落ち着け、ヘルベルト!1人で突っ走るんじゃ・・!」

 ヒルダが呼び止めるのをヘルベルトは聞かず、ドムがビームバズーカを連射する。ルナマリアが反応し、インパルスが加速して砲撃と射撃をかわす。

 インパルスがドムに近づいて、ドムのビームバズーカの砲門を切り裂いた。

「おのれ!」

 ヘルベルトが毒づき、ドムがビームサーベルを右手で持って突き出す。だがインパルスにかわされて、逆にビームサーベルで右腕を切り裂かれる。

「このままやられてなるものか・・!」

 ヘルベルトが声と力を振り絞り、ドムがインパルスに組み付いた。

「オレとともにくたばりやがれ・・!」

 インパルスを道連れにして、ドムを自爆させようとするヘルベルト。

「アンタと心中するつもりは・・ない!」

 ルナマリアがいきり立ち、インパルスがドムの胴体にビームサーベルを突き立てた。ドムはインパルスを押さえられなくなり、サーベルを抜かれると同時に引き離された。

「オレたちは・・ラクス様の・・ために・・・」

 ラクスのことを思い続けるヘルベルト。インパルスから遠ざかるドムが爆発を起こして、彼とともに消滅した。

「ヘルベルト!・・やってくれたね・・アンタ!」

 ヒルダが怒りをあらわにして、ドムがビームサーベルを手にしてインパルスに向かっていく。ドムが振りかざしたビームサーベルを、インパルスが上昇してかわす。

「逃がさないよ!」

 次の瞬間、ヒルダがインパルスに動きを捉えて、ドムがビームバズーカを発射した。

「うっ!」

 インパルスが砲撃を受けて爆発に巻き込まれて、ルナマリアが衝撃を受けてうめく。ヒルダが攻撃を当てた手応えを感じて、爆炎の中にいるインパルスの姿を確かめようとした。

 だがインパルスは損傷していなかった。インパルスは盾で砲撃と爆発を防いでいた。

「そんなマネで、あたしの攻撃まで・・・!?

 的確に攻防を行うインパルスに、ヒルダが驚きを隠せなくなった。

「シンもみんなもこの戦いに生きて勝つ・・だから私も負けられないのよ!」

 ルナマリアがシンたちのことを思い、インパルスがドムに向かって突っ込む。

「くそっ!」

 ヒルダが焦りを噛みしめて、ドムがビームバズーカを発射する。インパルスが砲撃をかわして、ビームサーベルでドムのビームバズーカを切り裂いた。

「このっ!」

 ヒルダが怒鳴り、ドムもビームサーベルを手にして突き出した。インパルスは左腕を切り裂かれたが、ドムの胴体を貫いた。

「まさか、あたしたちが倒されるなんて・・・けど、平和を作れるのは・・・ラクス様だけ・・・」

 ルナマリアに向かって声を振り絞るヒルダ。ビームサーベルを引き抜かれたドムが爆発して、ドム3機が全滅した。

「あの3機に勝てた・・連携を崩せば、勝てない相手じゃない・・・!」

 ルナマリアが勝利を実感して、気分を落ち着かせる。彼女はアークエンジェルと交戦しているミネルバに目を向ける。

「ミネルバ、チェストフライヤーとフォースシルエットを!援護します!」

「ルナマリア、あなたはエターナルを追いなさい!アークエンジェルは私たちで押さえるわ!」

 呼びかけるルナマリアに、タリアが指示を出す。

「了解です!エターナルを追います!」

「チェストフライヤー、フォースシルエット、発進!」

 ルナマリアが答えて、メイリンがチェストフライヤー、フォースシルエットを射出させる。インパルスが1度分離して、レッグフライヤー、そして新しいチェストフライヤー、フォースシルエットと合体した。

 インパルスがエターナルを追っていったのを見届けてから、タリアはアークエンジェルに視線を戻した。

「私たちはアークエンジェルとの決着を付ける!気を引き締めるのよ!」

「了解!」

 タリアが檄を飛ばして、アーサーたちが答えた。ミネルバがアークエンジェルとミサイルとビームの撃ち合いを演じた。

 

 レイの駆るレジェンドが、ラウが載っていたプロヴィデンスと重なって見えたキラ。彼はラウと対峙したときと同じ感覚に襲われて、動揺を膨らませていた。

「ラウ・ル・クルーゼ!?・・・そんな!?・・あの人は、あのとき確かに・・・!」

 2年前のラウとの戦いを思い出すキラ。彼はそのとき、ラウの乗るプロヴィデンスを打ち倒していた。

「人の夢、人の未来、その素晴らしき結果、キラ・ヤマト!最高のコーディネイターとして生まれたお前も、繰り返される闘争と悲劇の根源!だからお前も、今度こそ消えなくてはならない!」

 レイがキラに敵意を向けて、鋭く言い放つ。

「そんな!?・・なぜ君が・・なぜ君がまた!?

「逃れられないもの、それは自分・・そして取り戻せないもの、それが過去・・だから終わらせる、全てを!そしてあるべき正しき姿へと戻るんだ!人は、世界は!」

 問い詰めるキラにレイが言い放つ。

 クローンとして生まれた自分が背負わされた運命を呪い、自分たちと同じ運命の人間を出してはならないという意志。最高のコーディネイターであるキラを討つことで、その運命を終わらせる発端となるという意志を、レイは貫いていた。

「オレはお前を討つ・・この混迷する世界を正す・・ラウ・ル・クルーゼとして!」

「違う!」

 ラウとして戦おうとするレイに、キラが言い返す。

「命は、何にだって1つだ!だからその命は君だ!彼じゃない!」

 言い放つキラの中で何かが弾けて、感覚が研ぎ澄まされた。

 フリーダムがドラグーンを射出して、手にしたビームライフルとともにビームを発射した。レイが反応し、レジェンドが動いて回避しながら、ビームシールドを出してビームを防いだ。

「黙れ!」

 レイが怒りの声を上げて、レジェンドもドラグーンを射出してビームを放った。

「命が1つだというなら、なぜオレたちは長く生きられない!?なぜお前が、のうのうと生き続けることができる!?

 レイがキラに向かって問い詰める。レイは感情とともに、キラへの嫉妬をあらわにしていた。

「いかにお前が否定しようと、お前が最高のコーディネイターであることに変わりはない!闘争と混乱を招く火種であるお前は、この世界にいてはならない!」

 レイが言い放ち、レジェンドがドラグーンを操作してビームを放つ。キラが反応し、フリーダムがビームをかいくぐる。

 フリーダムがレールガンを発射するが、レジェンドはこのビームを回避して、距離を詰めていく。

 フリーダムが両手にそれぞれビームサーベルを、レジェンドがデファイアントを手にして突っ込む。2機が武器を振りかざして、刃をぶつけ合う。

 フリーダムがスピードを上げて、レジェンドの腕を切り裂こうとした。だがレジェンドのドラグーンからのビームを当てられて、フリーダムが怯む。

「ぐっ!」

 キラが衝撃に揺さぶられてうめく。フリーダムはかろうじてビームシールドで防御したが、レジェンドから引き離される。

 レイとキラがさらに感覚を鋭くして、レジェンドとフリーダムのドラグーンがビームを連射する。ビームの撃ち合いにより、互いのドラグーンが破壊されて、数を減らしていく。

(シン、お前がこの先もギルを信じようとしなかったのは許せない・・だが、死の運命に抗って強く生きていけというお前の言葉は受け入れる・・)

 レイがシンに対する感情を思い返していく。

(オレは生きる・・たとえわずかな命だと分かっていても・・そしてオレは、ギルのために、ギルの作る世界のために戦う・・この戦いの後に、シン、お前と戦うことになっても、オレはためらわない・・・!)

 自分の答えを見出して、レイは戦いに勝ち残る決意を強めた。

 フリーダムがカリドゥスを発射して、レイが回避したところで続けてレールガンを撃つ。レジェンドはビームシールドでビームを防いで、フリーダムとの距離を詰めていく。

「キラ・ヤマト、お前たちを倒し、戦いのない世界を実現させてみせる・・2度と争いを起こさせはしない!」

 レイが言い放ち、レジェンドがフリーダム目がけてディファイアントを突き出す。

「それでも、自由のない世界を作らせるわけにいかない!」

 キラがレイの言葉をはねつけて、自分の考えを貫こうとする。フリーダムが紙一重でディファイアントの突きをかわした。

 フリーダムが振りかざしたビームサーベルが、ディファイアントを持つレジェンドの右腕を切り裂いた。

「ぐっ・・!」

 レイがうめき、レジェンドが左手でディファイアントを持って振りかざした。フリーダムがビームシールドで防ぐも、力に押されて突き飛ばされた。

 次の瞬間、フリーダムが体勢が整わない状態の中、両手にビームライフルを持って、残ったすべての銃砲を展開した。

「なっ・・!?

 この瞬間にレイが目を見開いた。レジェンドがドラグーンからのビームを放つが、フリーダムが銃砲を一斉放射した。

「ぐあぁっ!」

 レジェンドがビームに撃たれて爆発を起こして、コックピットにまで及んだ爆発でレイが絶叫を上げる。損傷したレジェンドがフリーダムから力なく遠ざかっていく。

「ゴメン・・でも、行かなくちゃならないんだ・・・!」

 キラが声を振り絞り、メサイアに目を向けた。

「ラクス、ミーティアを!メサイアに突入する!」

「分かりました。」

 キラが呼びかけて、ラクスが答える。エターナルから射出されたミーティアを、フリーダムが装備した。

 

 アークエンジェルと交戦するミネルバのレーダーから、レジェンドの反応が消えた。

「レジェンド、シグナルロスト!レイから応答がありません!」

「なっ!?

 メイリンからの報告を聞いて、アーサーが驚愕する。

「別部隊に捜索と救出をお願いして!メイリンはこのまま呼び続けて!」

「はいっ!」

 タリアが指示して、メイリンが答えてレイに呼びかける。

(あなたたちの無事を信じているわ・・レイ、ルナマリア、シン・・・!)

 タリアが心の中でシンたちの身を案じて、アークエンジェルとの戦いに専念した。

 

 シンたちとの戦いの状況は、ギルバートたちにも伝わっていた。レイがキラにやられたことも。

(レイが討たれたというのか・・・!?

 ギルバートが危惧して、進行するフリーダムとエターナルを映したモニターに目を向ける。

(だがこのデスティニープランは必ず実行に移す。明確なビジョンを持たず、正義や使命を振りかざす愚行を続けるお前たちに、邪魔をされるわけにはいかない・・)

 自分の信念を貫こうと考え、ギルバートがキラたちの討伐を強く誓った。

(たとえプラントから慕われているクイーンであろうと、この罪、償ってもらうぞ・・・!)

 

 

次回予告

 

様々な対局を経て見出した正義。

それでも確固たる正義と言えるのだろうか?

過去からの因縁と、生きるための正義。

尊ぶべきなのはどちらなのか?

 

次回・「過去との決着」

 

己の正義、貫け、ジャスティス!

 

 

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