GUNDAM WAR
-Destiny of
Shinn-
PHASE-31「舞い戻る自由」
シンの駆るデスティニーがミネルバから発進し、オーブに向かって加速する。
「あれは・・!」
「ザフトの新型か!」
ムラサメのパイロットたちがデスティニーの接近に気付く。迎撃に出たムラサメに対して、デスティニーがビームライフルを手にして射撃する。
シンによる正確なビームの射撃が、ムラサメを貫いていく。
「何という攻撃だ・・スピードも速い・・!」
デスティニーの攻撃力とスピードに、ムラサメのパイロットたちが脅威を覚える。
デスティニーが右肩のビームブーメランを左手で取って投げつける。ムラサメが回転するビームブーメランに切られて、撃墜していく。
「ジブリールを守ろうとするオーブ・・許さないぞ!」
シンがオーブへの怒りを噛みしめて、デスティニーがムラサメに向けてビームライフルを発射していく。
「助かったぞ、デスティニー、ミネルバ・・!」
「このまま一気に押し切り、ジブリールをオーブから引きずり出すぞ!」
周りにいたグフのパイロットたちが落ち着きを取り戻して、ムラサメたちへの攻撃を再開した。
“カガリ様、ザフトの新手が!”
オーブ軍の兵士からの通信が入り、カガリが視線を移す。彼女もムラサメたちを倒していくデスティニーを目撃した。
「あれは・・・!」
デスティニーが今のオーブの脅威になると直感したカガリ。アカツキがビームライフルを手にして、デスティニーに向かった。
シンも気付いて、デスティニーがビームライフルを向けて、アカツキと同時にビームを放つ。ビームがぶつかり合って弾け飛ぶ。
アカツキが連結式のビームサーベルを手にして、デスティニーに飛びかかる。デスティニーが加速して回避するが、アカツキが追走してビームサーベルを振りかざす。
デスティニーが左腕を掲げて、ビームシールドを展開してアカツキのビームサーベルを受け止めた。
「その機体に乗っているのは・・シンか・・!?」
「これは・・アスハが乗ってるのか・・!?」
アカツキとデスティニーの激突の瞬間、カガリとシンは互いの存在に気付いた。デスティニーがアカツキを突き放して距離を取る。
「そんな機体に乗ってるとは・・綺麗事ばかりのアンタにはお似合いだな!」
シンがカガリに向けて不満を言い放つ。アカツキがビームライフルを発射するが、デスティニーに素早くかわされる。
「大した腕もないくせに、いつもいつも綺麗事ばかり!」
シンが怒りを募らせて、デスティニーがビーム砲を展開してビームを放つ。ビームがアカツキの胴体に直撃したが、そのビームが跳ね返された。
「何っ!?」
シンが驚き、デスティニーが素早くビームをかわす。デスティニーは即座にビームライフルを発射するが、そのビームもアカツキの胴体に跳ね返された。
アカツキは鏡面装甲を備えていて、敵のビーム攻撃を鏡のように反射するのである。
「ビームを弾く!?・・だったら!」
シンが毒づき、デスティニーがアロンダイトを手にして構えた。アカツキが右手にビームサーベル、左手に盾を持って、デスティニーを迎え撃つ。
デスティニーが振り下ろしたアロンダイトを、アカツキが紙一重でかわす。直後にアカツキがビームサーベルを振りかざして、アロンダイトの刀身とぶつけ合う。
「シン、やめろ!お前たちが求めているのは、ジブリールだろう!?ヤツは私たちが必ず見つけ出して引きずり出す!だから戦闘を・・!」
「ふざけるな!ジブリールを匿おうとするアンタたちの綺麗事なんか、信じられるか!」
呼びかけるカガリだが、シンは信じようとしない。
「ジブリールの味方をするアンタたちは、オレたちが倒す!そして力ずくでも、ジブリールを引きずり出して捕まえる!」
シンが言い放ち、デスティニーがアカツキを突き飛ばす。デスティニーが振りかざしたアロンダイトが、アカツキの持つビームサーベルをはじき飛ばし、さらに盾を真っ二つに切り裂いた。
「まずい・・!」
カガリが危機感を覚えて、アカツキがビームライフルを持って発射して、デスティニーをけん制しようとする。デスティニーが左手でビームブーメランを持って投げつけて、アカツキが左でを切り裂かれた。
「アスハを倒す・・そうしなきゃ、オーブは変わらないんだ・・!」
シンは声を振り絞り、デスティニーがアロンダイトを構えて、アカツキにとどめを刺そうと飛びかかる。
そのとき、デスティニーのレーダーに、上方から近づいてくる熱源を捉えた。そのアラームを耳にしたシンが、上から飛んできた光線に気付いた。
突撃を止めたデスティニーの前を、光線が飛び込んだ。このまま前進していれば直撃されていた。
上方の大気圏を突破して、2機の機体が急降下してきた。そのうちの1機がもう1機を手放すと、デスティニーを狙って腰のレールガンを発射した。
シンが反応して、デスティニーが素早く動いてビームをかわした。
「なっ!?」
デスティニーに攻撃をしてきた機体に、シンが目を疑った。その機体はシンが撃破したフリーダムそっくりだった。
「フリーダム!?どうして!?・・アイツは倒したはず・・!」
シンがその機体を見て、驚きを隠せなくなる。
「カガリ、ここは僕が引き受ける!早く国防本部へ!」
「その声、キラか!・・分かった!」
機体からの声にカガリが笑みを浮かべて答えた。アカツキが機体から離れて、オーブの国防本部へ向かう。
デスティニーの前に立ちはだかった機体は「ストライクフリーダム」。フリーダムの後継機となるその機体に乗っているのは、エターナルに合流したキラである。
「ところどころ違う部分がある・・別の、新しいフリーダムか・・・!」
自分が倒したフリーダムと違うのを確かめて、シンが気を引き締めなおす。
デスティニーとフリーダムがビームライフルを手にする。同時に放たれたビームがぶつかり合い、弾け飛ぶ。
デスティニーとフリーダムがさらにビームを放つ。2機は互いのビームを素早くかわす。
その最中、シンはフリーダムの攻撃を見極めていた。フリーダムはデスティニーのコックピットではなく、頭部や武装を狙っていて、デスティニーは紙一重でその射撃をかわしていた。
「戦い方も同じ・・パイロットも同じみたいだ・・あのフリーダムの中で、生きていたっていうのか・・!?」
以前のフリーダムの戦いを思い出して、シンが毒づく。
「強力になったみたいだけど、デスティニーだってインパルス以上のパワーを持ってる・・負けることはない!」
シンが自信を口にして、デスティニーがアロンダイトを手にして構えた。
「あの戦い方・・あの人が乗っている・・・!」
キラもデスティニーに乗っているのがシンだと気付いた。
フリーダムがレールガンを発射するが、デスティニーは残像を伴った高速でかわして、フリーダムに向かっていく。
フリーダムが両手にそれぞれビームサーベルを手にして、デスティニーを迎え撃つ。デスティニーが振りかざすアロンダイトを紙一重でかわして、フリーダムがビームサーベルを振りかざす。
アロンダイトを持つ手を狙われていると思い、シンが反応する。デスティニーが腕を動かして、ビームサーベルをかわそうとした。
だがフリーダムのビームサーベルは、デスティニーの腕をまだ捉えていた。
「何っ!?」
シンが驚きを覚え、デスティニーがビームシールドを展開してビームサーベルを防いだ。しかし衝撃までは防ぎ切れず、デスティニーが突き飛ばされた。
「アイツ、こっちがギリギリでよけるのを先読みして、攻撃をしてきた・・!」
フリーダムの動きにシンが毒づく。フリーダムが腹部のビーム砲「カリドゥス」を発射した。
「くっ!」
シンがさらに毒づき、デスティニーもビーム砲を展開して発射する。2つのビームがぶつかり合って、激しく火花を散らす。
デスティニーとフリーダムの互角の攻防。攻め切れずにいるシンが焦りを噛みしめていた。
キラのフリーダムに助けられたアカツキは、オーブの国防本部を目指していた。だがグフに行く手を阻まれて、カガリが焦りを覚える。
デスティニーとの戦いで負傷しているアカツキでは、グフ相手でも苦戦は避けられないと、カガリは痛感していた。
そのとき、また大気圏を抜けて1つの降下ポッドが降りてきた。外壁が破れたポッドの中から、3機の機体が出てきた。
「何だ、あの機体は!?ザフトの増援か・・!?」
“いいえ、カガリさん。降下ポッドのモビルスーツは敵ではありません。”
機体を警戒するカガリにラクスの声が届いた。フリーダムとともに降下してきた赤い機体「インフィニットジャスティス」に、ラクスが乗っていた。
「ふぅ・・やはり鬱陶しいな、地球の重力は・・」
「文句言うなって。重力に参ってるのはお前だけじゃないんだからな・・」
「ホラ、行くよ、ヤローども。地球へおしゃべりしに来たわけじゃないんだからな。」
3機の機体「ドムトルーパー」のパイロット、ヘルベルト・フォン・ラインハルト、マーズ・シメオン、ヒルダ・ハーケンが声を掛け合う。
「ラクス様のために!」
ヒルダたちが声をそろえて、ドムたちが前進してグフやザクたちをビームバズーカで吹き飛ばしていく。
「今のうちだぜ、オーブのお姫様。」
「ここはオレたちに任せて、さっさと行きな!」
ヘルベルトとマーズがカガリに呼びかける。
「お前たち・・協力、感謝する・・!」
「勘違いするなよ。この国のことも大切に思っているラクス様のためだ。」
感謝するカガリに、ヒルダが自分たちの意思を告げる。アカツキがムラサメたちを伴って、国防本部へ向かった。
「何だ、この機体は!?」
「我々の邪魔をするならば、何者であろうと容赦はせんぞ!」
「必ずジブリールをオーブから引きずり出す!」
ザフトのパイロットたちがドムたちを敵視する。突撃を仕掛けるグフたちを、ザクとグフが迎え撃つ。
「アイツらも鬱陶しいねぇ・・さっさと片付けないとな・・」
「だったらアレをやるしかないよ。」
「アレか・・いいぜ!やってやろうじゃねぇか!」
愚痴をこぼすヘルベルトにヒルダが呼びかけて、マーズが笑みを浮かべた。
「ジェットストリームアタック!」
ドム3機がそれぞれ背中合わせになる陣形を取り、左胸部にある攻性防御装置「スクリーミングニンバス」を起動する。ビーム粒子が発生して光の壁となる。
ドムたちがその状態でビームバズーカを発射して、ザクたちを撃ち抜いていく。ザクたちが反撃に出てビームを放つが、光の粒子の壁にビームが弾かれる。
ドムたちの攻防一体の連携に、ザクたちは悪戦苦闘を強いられることになった。
フリーダムと別れたジャスティスは、遅れて発進したアークエンジェルと合流。艦内に収容された。ラクスからの通信を聞いていたアスランがドックに来て、ジャスティスから降りてきた彼女と対面した。
「ラクス・・まさか君が操縦していたとは・・・!」
「いえ、ただ乗っていただけですわ。エターナルから大気圏を抜けるまではキラが導いてくれて、そこからここまではシュミレーションの通りにやっただけです。」
当惑を見せるアスランに、ラクスが微笑んで答える。ラクスの事情には納得したアスランだが、キラたちや彼女のやり方には納得していなかった。
「戦いを止める、戦いのない世界を目指す。オレもキラたちもプラントも同じ願いのはずだった・・だけどキラたちは間違ったやり方をしている・・ただ戦いを無理やり止めるだけじゃ、何の解決にもならない・・・!」
「それでも戦いを止めたい、皆が幸せでありたいという願いそのものに、間違いはありません。」
「そのやり方が間違っているんだ!君たちのその願いそのものも否定されるくらいに!」
「では、アスランが今やるべきと思うことは何ですか?」
感情を込めて不満をぶつけるアスランに、ラクスが問いかける。
「今のあなたはオーブの人間でも、アークエンジェルやエターナルの一員でもありません。ザフトの一員のままかもしれませんが、あなたのことを決めるのは、あなた自身です。」
ラクスが投げかけたこの言葉に、アスランが戸惑いを覚える。
「この機体も結局は力にすぎません。そしてその力を使う戦士なのかもしれません。ですが、あなたはその前に、アスランという1人の人間です。」
「1人の人間・・・」
「怖いのは、希望や意思が閉ざされてしまうこと。こうなのだと、ここまでなのだと、終えてしまうことです。でも私もキラも、これをあなたに託そうと思っています。」
ラクスの告げる言葉に、アスランが戸惑いを感じていく。
「このジャスティスをあなたに託しますが、私もキラも、アスランが自分の思うようになってほしいとは思っていません。たとえまたザフトに戻り敵対することになっても、私たちは後悔はしません。」
「ラクス・・・」
「ただ、あなたがあなた自身の意思で戦って、生きてほしい。それだけです・・」
自分たちの意思を伝えるラクスに、アスランが小さく頷いた。
「アスラン、あなたがやろうとしていることは何ですか?」
「オレは・・・」
ラクスが改めて問いかけて、アスランが迷いを振り切る。彼はジャスティスに乗り込んで、システムをチェックした。
(システムも武装も前のジャスティスに近い。しかもシステムも前のジャスティスを参考にして調整されているようだ・・ラクスたちは、そこまでオレにこれに乗ると考えて・・・)
ラクスたちからの施しに、アスランが戸惑いを募らせる。インフィニットジャスティスは、彼がかつて乗っていたジャスティスの後継機である。
(それでもオレは今のキラたちに協力することはできない・・オレがやるべきと考えるのは・・・)
「ラミアス艦長、ハッチを開けてください!オレも出ます!」
決意を固めたアスランが、通信でマリューに呼びかける。
“出るって・・どの機体に乗っているの!?”
「ラクスが乗ってきたジャスティスに。オレにはやらなければならないことがあります・・」
声を荒げるマリューに、アスランが自分の意思を伝える。
「アスランなら大丈夫です。どうか、彼の思う通りに・・」
ラクスがアスランへの信頼をマリューに伝える。
“アスランくん、私たちに味方するの?それとも・・”
「状況次第ですが、今あなた方と敵対するつもりはありません。」
“・・・分かったわ。私もあなたの意思を信じるわ。ただ、決して死なないようにね・・”
「はい。ありがとうございます、ラミアス艦長・・」
信頼を寄せたマリューに、アスランが感謝した。ジャスティスが発進準備を整えて、その先のハッチが開かれる。
(オレがやるべきなのは、ジブリールを捕まえること・・そして、その目的のためにオーブを攻撃している、ザフトを止めること・・・!)
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」
自分のやるべきことを確かめたアスラン。彼の乗るジャスティスがアークエンジェルから発進した。
乱入してきたフリーダムに対し、攻め切れずにいるデスティニー。その攻防をレイとルナマリアも見ていた。
「まさかまたフリーダムが出てくるなんて・・・!」
「ヤツはシンの戦い方に対応しつつあるようだ。それでもシンは負けはしないだろうが、時間をかけている余裕はない。」
ルナマリアが深刻な面持ちを浮かべて、レイが状況を告げる。
「オレも出る。シンを援護して、一気に押し切る。」
「それなら私も・・!」
「まだジブリールが見つかっていない。オレたちが全員出て、その隙を狙ってヤツが逃げる可能性は十分ある。ルナマリアはそれに備えて待機しているんだ。」
「分かったわよ・・シンのこと、任せたからね・・・!」
的確な指示を出すレイに、ルナマリアが腑に落ちない素振りを見せて答えた。
「艦長、自分も出撃して、シンの援護に向かいます。」
レイがタリアに向けて連絡を取った。
“分かったわ。レジェンドで出撃して。”
「了解。」
タリアの言葉に答えて、レイがドックへ向かう。彼の乗り込んだレジェンドが、発進準備を整える。
(ギルの理想は必ず実現させる・・どんな手段を使ってでも・・・!)
「レイ・ザ・バレル、レジェンド、発進する!」
揺るぎない意思を心の中で呟くレイが、レジェンドでミネルバから発進した。
次回予告
何が正しくて、何が平和への道なのか?
まだ誰もその答えを見つけられずにいる。
大切なもの、守りたいものはそれぞれ。
混迷と錯綜の現実を目にして、アスランが見出した答えとは?
己の意志、貫け、ジャスティス!