GUNDAM WAR

-Destiny of Shinn-

PHASE-26「新しき力」

 

 

 ヘブンズベースに向けて発進したミネルバ。ジブリールが指揮する部隊との距離を、ミネルバは徐々に縮めていた。

 レイとルナマリアは出撃に備えてレジェンド、コアスプレンダーに乗り込んでいた。

「艦長、自分が先陣を切ります。ロゴスの部隊を押し返してみせます。」

“分かったわ。でもくれぐれも深追いはしないように。強力な新型だけど、最初はほとんど1機で戦う状況になることを忘れないで。”

 連絡を送るレイにタリアが呼びかける。

「もちろんです。ロゴスの部隊を殲滅し、生きて戻ってきます。」

 レイが冷静に答えて、発進に備える。ミネルバのハッチが開き、レジェンドが発進体勢に入った。

(戦います、ギル・・そしてシンは必ず、ギルの意思に答えてくれます・・!)

「レイ・ザ・バレル、レジェンド、発進する!」

 ギルバートへの思いを胸に秘めて、レイがレジェンドを駆ってミネルバから発進した。

 

 ロゴスの部隊、デストロイたちがジブラルタルに向けて進攻する。そのパイロットたちがミネルバとレジェンドを視認した。

「ミネルバ!・・あれはもしや、ザフトの新型か!?

「何が出てこようと、こちらはデストロイが5機もいるのだ!負けることはない!」

 パイロットたちが声を荒げて、レジェンドに狙いを定める。

「我らはあの新型を討つ!他はミネルバを落とせ!」

「分かった!」

 パイロットたちが声をかけ合って、デストロイたちがレジェンドに向けてビームを放つ。レジェンドは加速して、ビームをかいくぐる。

(たとえ巨体でパワーと攻撃力があろうと、レジェンドのスピードには追いつけない。)

 レイは冷静にデストロイの射撃を見定めていく。

(それにこの機体、オレに馴染む・・!)

 レイはレジェンドが思い通りに動かせていることに、不思議を感じていた。

 レジェンドは先の大戦で投入されたプロヴィデンスの後継機である。レジェンドはプロヴィデンスの性能だけでなく、操縦性も向上がされている。

 ところがレイはその高まった操縦性以上の扱いやすさを感じていた。

(大気圏内なので“ドラグーン”は使えない。だが、通常のビーム兵器としても十分威力はある。)

 レジェンドに搭載されているビーム兵器、ドラグーンは遠隔操作可能なビーム端末兵器である。ドラグーンを展開して全方位からの射撃を行えるが、それは重力のある大気圏内では使えない。

 それでもレイは動じることなく、レジェンドがドラグーンを背部に装備したまま操作して、ビームを発射していく。デストロイ2機がビームを受けて怯むが、すぐに踏みとどまる。

「強力なビームだが、これでやられるデストロイではない・・!」

 デストロイのパイロットが毒づきながらも、レジェンドに向けて言い放つ。

 デストロイ2機がスーパースキュラを発射する。レジェンドが巨大なビーム2本を、素早くかいくぐる。

「攻撃で包囲するんだ!性能が高くてもたった1機だ!」

 パイロットたちが呼びかけて、デストロイがレジェンドへの攻撃を続ける。

「どけ、お前たち!そいつはオレが倒す!」

 そこへデストロイの1機に乗っているパイロットが呼びかけてきた。ベルリンでカオスを破壊されたスティングである。

 生き延びていたスティングも、デストロイの1機に乗り込んで出撃していた。

「やっとオレもコイツに乗れたんだ・・思う存分やらせてもらうぞ!」

 スティングが歓喜を込めて言い放つ。彼の駆るデストロイが、レジェンドを狙って進行する。

「1機向かってくるか・・ならばヤツをまず叩く・・!」

 レイはスティングのデストロイの撃破に集中する。迫ってくるデストロイに、レジェンドが背部のドラグーンのビームを発射した。

 

 ベルリンで生き延びていたのはスティングだけではなかった。ネオも負傷から立ち直って、ウィンダムに乗って戦列に復帰していた。

「ケガが治った途端に駆り出されるとは・・しかしこれも、軍人の運命(さだめ)というヤツだ・・」

 地球連合、ロゴスに従う軍人の皮肉を口にして、ネオが戦況を見ていく。

「そのことについてどうこういう権利はオレにはない・・ただ、上の命令に従って遂行するだけ・・」

 ネオは割り切って、スティングのデストロイに目を向ける。

「お前にまたこんな戦いをさせてすまない・・これで終わらせる・・今度こそ・・!」

 スティングに対して罪の意識を感じながらも、ネオは彼を戦わせたまま、自らも戦いに赴いた。

「アウル、ステラ、お前たちの無念、オレが晴らしてやるからな・・・!」

 自分の部下を思うネオ。彼はステラがまだ生きていることを知らなかった。

「では行くぞ・・ここでザフトを討つ・・!」

 ネオが気を引き締めて、ウィンダムも攻撃を開始した。

 

 レジェンドがビーム攻撃を続けながら、レイはデストロイの動きをうかがっていた。

(やはりパワーがあるが、巨大のためにスピードはない。攻撃は当てやすい。)

 デストロイの弱点を見出すレイ。レジェンドが立て続けにビームを放ち、デストロイに命中させていた。

「ちくしょう・・こうなったら!」

 スティングが声を荒げて、デストロイがモビルアーマー形態に変形した。レジェンドがドラグーンからのビームを放つが、デストロイが展開した陽電子リフレクターに弾かれた。

「ビームを弾く!?オーブに現れた連合の機体と同じものか・・!」

 レイがザムザザーを思い出して毒づく。

「だが、レジェンドの武器は、ビームだけではない。」

 レイが冷静に判断して、レジェンドが2本のビームサーベルを手にして、柄同士を組み合わせた。

 デストロイが放つビームをかいくぐり、レジェンドが詰め寄りビームサーベルを振りかざす。デストロイが傷を負わされて押される。

「物理攻撃までは防ぎ切れない。ビームでも打撃や切断に特化しているものならば、そのバリアは破れる。」

 デストロイの弱点を見抜き、レイは勝機を見出す。

「ちくしょうが・・よくもやってくれたな!」

 スティングがいら立ちを募らせ、デストロイが再び変形してビームを放つ。しかしレジェンドにことごとく回避される。

「スティング!」

 そこへネオのウィンダムが駆けつけ、レジェンドにビームを放つ。レジェンドはこのビームをかわすが、レイは奇妙な感覚を覚える。

(この感じ・・あのときの・・・!)

 レイがウィンダムを見つめて、緊張感を膨らませる。

(これは・・あの白い機体の坊主か・・・!)

 ネオもレイの気配を感じ取っていた。彼はブレイズザクファントムのことを思い出していた。

(新しい機体に乗り込んだか・・それでも引くわけにはいかないな・・!)

 思考を巡らせてから、ネオがレイと戦うことを決める。

 ウィンダムがビームサーベルを手にして、レジェンドに飛びかかる。レジェンドもビームサーベルを振りかざしてぶつけ合う。

 レジェンドとウィンダムが立て続けにビームサーベルをぶつけ合っていく。

(ヤツの攻撃が全て読める・・きっと、ヤツもオレの動きを読めている・・・!)

 レイがネオの動きを直感して、心を揺さぶられる。

(だがこの機体の性能差、さすがに埋めようがない・・・!)

 レジェンドはウィンダムを超えていると、レイは確信する。ビームサーベルのつばぜり合いの中で、レジェンドがウィンダムを押し込む。

「ぐっ!・・なんという力だ・・!」

 レジェンドの力を痛感して、ネオがうめく。

「このヤロー・・お前の相手はこのオレだ!」

 スティングがいきり立ち、デストロイがビームを放つ。レイが回避が間に合わないと判断して、レジェンドがビームシールドを展開してビームを防ぐ。

「隙を見せたな・・こっちにも運が回ってきたか・・!」

 ネオが呟いて、ウィンダムもミサイルを発射してレジェンドを攻め立てる。

「くっ・・!」

 レジェンドが防戦一方となり、レイが毒づく。

「あの2人だけに任せるな!」

「ザフトの新型を撃ち落とせ!」

 他のパイロットたちが互いに檄を飛ばす。他のウィンダムやデストロイたちが、レジェンドを狙って進撃してきた。

 

 レジェンドが集中攻撃にさらされているのは、タリアたちも確認していた。

「艦長、レイが追い込まれてます!援護しないと・・!」

 アーサーが言いかけて、タリアが頷いた。

「ルナマリア、準備はいいわね?」

“はい。発進準備、完了しています。”

 タリアが呼びかけて、ルナマリアが答える。

「インパルス、発進!レイ機を援護して!」

「ハッチ開放!コアスプレンダー、発進どうぞ!」

 タリアが指示を出して、メイリンが呼びかけた。

 

 コアスプレンダーで発進に備えるルナマリア。

(シン、今度は私がやるよ・・シンみたいにはいかないかもしれないけど、それでもインパルスを使いこなせるんだから・・・!)

 ルナマリアが心の中で呟いて、シンへの思いを膨らませていく。

(私が、私たちが、ロゴスを討つ・・!)

「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」

 ルナマリアの乗るコアスプレンダーが、ミネルバから発進する。続けてチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットが射出されて、コアスプレンダーと合体してフォースインパルスとなった。

 インパルスがビームライフルを手にして、レジェンドに迫るウィンダムを狙って射撃した。ウィンダムの1機がビームを当てられて落ちる。

「レイ、大丈夫!?

「ルナマリア、お前も出てきたか・・」

 ルナマリアが呼びかけて、レイが言いかける。

「あの機体・・エースくんも出てきたか・・!」

 ネオがインパルスを見て、警戒心を強める。

「あの機体の相手、私がする!他は新型を攻め続けろ!」

「了解!」

 ネオが呼びかけて、他のウィンダムのパイロットが答える。

「では行くぞ、エースくん!」

 ネオが言いかけて、ウィンダムがインパルスに迫る。インパルスもビームサーベルを手にして、ウィンダムのビームサーベルとぶつけ合う。

「ん!?・・お前、今までのエースじゃないな・・!?

 その瞬間、ネオはインパルスのパイロットが変わっていることを直感した。インパルスとウィンダムが押し合って、互いに距離を取る。

「違うパイロットでも、あのエースくんみたいな力が果たして出せるかな・・!」

 ネオが言いかけて、ウィンダムが飛びかかる。インパルスも迎え撃ち、再びビームサーベルをぶつけ合う。

 ウィンダムが間髪置かずにミサイルを発射する。インパルスが盾を構えて、ミサイルを防ぐ。

「なかなかの腕だな。だが、あのエース君ほどじゃない・・!」

 ネオがシンのことを考えて、ウィンダムがスピードを上げて旋回する。縦横無尽に動き出したウィンダムに、ルナマリアが一瞬動揺を覚える。

「ルナマリア、飛行していれば下からも攻撃されることを忘れるな!」

 レイが呼びかけて、ルナマリアが頷く。彼女が冷静さを取り戻して、インパルスがビームライフルに持ち替えて構える。

 インパルスとウィンダムがビームライフルを発射して、互いのビームを回避していく。

「ノアローク隊長、援護します!」

 他のウィンダムのパイロットたちが、ネオに呼びかける。ウィンダムたちがビームライフルで射撃を仕掛けるが、ルナマリアが気付いて、インパルスが回避して反撃する。

「ぐおっ!」

 ウィンダム数機がビームに貫かれて、絶叫するパイロットを巻き込んで爆発した。

「今のパイロットもやるな・・油断はできんぞ・・!」

 ネオはさらに警戒心を強めて、彼のウィンダムがインパルスへの攻撃を再開した。

 

 ミネルバにもロゴスの機体が攻撃を仕掛けてきた。ミネルバも武装をフル稼働して、迎撃をしていた。

「トリスタン、イゾルデ、ってぇ!」

 アーサーが指示を出して、ミネルバが攻撃を続ける。ウィンダムやゲルズゲーたちを撃退していく。

「タンホイザー、起動!敵部隊を一掃する!」

 タリアが呼びかけて、アーサーとメイリンが頷いた。ミネルバがタンホイザーを起動して、発射体勢に入る。

「目標、敵部隊!タンホイザー、ってぇ!」

 タンホイザーから光線が放たれて、ロゴスの部隊に向かっていく。

 そこへザムザザーが浮上して、陽電子リフレクターを起動して、タンホイザーの光線をはじき飛ばした。

「あれは、オーブに出てきた!?

「あれでは、タンホイザーが通じないわ・・!」

 アーサーが驚きの声を上げ、タリアが焦りを覚える。タンホイザーによる活路の確保ができなくなり、ミネルバは劣勢を強いられることになった。

 

 ミネルバが窮地に追い込まれていることに、レイもルナマリアも気付いた。

「このままじゃミネルバが・・!」

「あの機体がいるために、タンホイザーで突破することができないのか・・!」

 ルナマリアとレイが焦りを噛みしめる。しかしインパルスもレジェンドも、デストロイたちに行く手を阻まれていた。

「お前らの相手はこのオレだ!まとめて落としてやるぞ!」

 スティングが言い放って、デストロイがスーパースキュラを発射する。巨大なビームをかわすばかりで、レジェンドとインパルスはミネルバに近づくことができない。

「いけない・・インパルスのエネルギーが・・!」

 インパルスのエネルギー残量が少なくなり、ルナマリアが焦りを膨らませる。

「オレが援護をする!お前はミネルバに戻れ!」

「レイ・・分かったわ・・!」

 レイが呼びかけて、ルナマリアが戸惑いを感じながら答える。

「ここはオレだけで十分だ・・お前はそのままミネルバを守るんだ・・!」

 レイの言葉を受けて、ルナマリアが小さく頷いた。

 レジェンドが背部のドラグーンからビームを発射して、デストロイたちをけん制する。その隙にインパルスが加速して、ミネルバへ向かった。

「新型だけが残ったか!」

「ならば集中攻撃で一気に叩くぞ!」

 パイロットたちがレジェンドに狙いを絞る。

「いくら新型でも、たった1機で我々から逃げ切れるものか!」

 デストロイたちがレジェンドに向けてビームを連射する。

(ドラグーンのビームで他の機体を迎撃し、サーベルで巨大モビルアーマーを斬る・・!)

 レイが思考を巡らせて、レジェンドがドラグーンのビームでウィンダムたちを狙撃しながら、デストロイに向かってビームサーベルを振りかざす。

 デストロイが胴体を切りつけられてふらつく。

「コイツ!・・いつまでも調子に乗れると思うなよ!」

 スティングがいきり立ち、デストロイがレジェンドへ執拗に攻撃を仕掛けるのだった。

 

 ロゴスの部隊との攻防で、ミネルバは揺さぶられていた。その振動は、シンのいる医務室にも伝わっていた。

(行かないと・・オレも、戦いを終わらせるために戦うんだ・・・!)

 ベッドに横たわっていたシンが、意思を強める。彼は体を起こして、ベッドから立ち上がった。

(もう何も失わない・・みんな、オレが守る・・・!)

 

 

次回予告

 

求めたのは力。

大切なものを守るための力。

そして、戦いを終わらせるという決意と意思。

少年は今、新たな剣を手にして、戦場に舞い戻る。

 

次回・「運命の翼」

 

新たな世界へ、飛び立て、デスティニー!

 

 

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