GUNDAM WAR
-Destiny of
Shinn-
PHASE-27「運命の翼」
ロゴスの機体に包囲されて、ミネルバは窮地に追い込まれていた。そこへルナマリアの乗るインパルスが戻り、ビームライフルでウィンダムとザムザザーを射撃した。
「艦長、大丈夫ですか!?」
ルナマリアが呼びかけて、タリアたちがインパルスに目を向ける。
「ミネルバの護衛に回ります!デュートリオンビームを!」
「分かったわ・・援護、感謝するわ!」
さらに呼びかけるルナマリアに、タリアが感謝する。
「デュートリオンビーム、照射!」
メイリンが声を上げて、ミネルバから放たれたデュートリオンビームをインパルスが受ける。インパルスが消耗していたエネルギーを回復させた。
「これ以上、ミネルバには近づけさせないわ・・!」
ルナマリアが戦意を強めて、インパルスがビームサーベルを手にして、ザムザザーに向かっていく。
(あの機体がいる限り、ミネルバはタンホイザーで突破口を開くことができない・・私がやらなくちゃいけないけど、捕まったら確実にやられる・・!)
ザムザザーを優先して倒すことを考えるルナマリア。
インパルスが加速して、ビームサーベルを振りかざす。ザムザザーが上昇して、サーベルをかわす。
「ザムザザーの機動力を甘く見るな!」
パイロットが言い放ち、ザムザザーがインパルスに向けて、ハサミを伸ばしてきた。インパルスが加速して、ハサミをかわした。
インパルスがビームサーベルを突き出して、ザムザザーの前方部に突き立てた。サーベルを引き抜かれたザムザザーが、落下して爆発した。
「やったわ!このままやってやるわよ!」
ルナマリアが自信を浮かべて、インパルスが勢いに乗って、ビームサーベルを構えてウィンダムやゲルズゲーたちに向かっていく。
そこへ別のザムザザーが駆けつけて、インパルスの前に立ちはだかった。
「ザムザザーは1機だけではない!まだまだいるぞ!」
「貴様らに活路などない!ここで滅ぼしてやるぞ!」
ザムザザーのパイロットたちが強気に言い放つ。
「あの機体がこんなに・・でもやるしかない・・!」
ルナマリアが焦りを噛みしめて、戦いに集中する。
(今度は私が守る・・シンもミネルバも、みんな・・!)
彼女は思いを募らせて、インパルスがザムザザーたちに向かっていった。
ロゴスの部隊が徐々にミネルバを追い詰めつつあることに、ジブリールが歓喜を感じていた。
「いいぞ、いいぞ!さすがのミネルバも、これだけの機体が相手では手を焼かざるをえまい!」
笑い声を上げて、ジブリールがさらに戦況を見届ける。
「このまま押し切り、ミネルバを落とせ!そうすればザフトの指揮系統も乱れ、こちらの進撃もたやすくなる!」
「はっ!」
ジブリールが下した命令に、オペレーターが答えた。オペレーターたちがパイロットたちにジブリールの命令を伝えた。
「思い知るがいい、デュランダル・・最後に笑うのは、お前たちコーディネイターではなく我々であることを・・青き清浄なる世界のために!」
ジブリールが野心をむき出しにして、ザフトの打倒という決意を強めていた。
ビーム攻撃が主体であるレジェンドは、ビームを弾くデストロイやザムザザーに苦戦を強いられていた。
(ソードインパルスのような強力な物理攻撃ができれば・・さもなければ、デスティニーが使えれば・・・!)
デストロイたちに力のある打撃を与えられないことに、レイが毒づく。
(シンは必ず戦いに出てくる・・今はオレたちが全ての力を使って戦い抜くしかない・・・!)
レイが気を引き締めなおして、レジェンドがビームサーベルを構えて、迫り来るザムザザーを切りつけていく。
「へっ!近づかなきゃ、切られてやられるなんてことはない!」
スティングが言い放って、デストロイがレジェンドに向かってビームを一斉発射する。レジェンドが加速してビームをかいくぐる。
そのとき、レジェンドの後ろにネオのウィンダムが回り込んできた。
「卑怯者と罵っていいが、オレも後がないのでな・・!」
ネオが言いかけて、ウィンダムがビームサーベルを振りかざす。レイが反応して、レジェンドがビームサーベルを構えて、ウィンダムの一閃を受け止めた。
「隙あり!」
他のパイロットが言い放ち、ゲルズゲーがビームを連射する。レジェンドが加速して、ウィンダムのビームサーベルを押し返して、飛び込んできたビームをビームシールドで防いだ。
「そこだ!」
ネオがレジェンドの動きを見据えて、ウィンダムが再びビームサーベルを振りかざしてきた。レジェンドがとっさにビームサーベルを掲げた。
だがレジェンドのビームサーベルが手元から弾かれた。
「くっ・・!」
レイが危機感を覚えて、レジェンドがドラグーンからのビームを放ちながら、ウィンダムたちを引き離す。
(これではロゴスの機体を殲滅できない・・!)
劣勢を強いられて、レイが毒づく。
ビームサーベルを拾いに行けば、攻撃を受ける隙を見せることになる。レジェンドはビームを使って牽制する以外の手立てを失くしていた。
ベッドから立ち上がったシンは、1人で医務室から出ようとしていた。
「待ちなさい!まだ戦闘を行える状態ではない!」
医務官が慌ててシンを呼び止める。
「行かせてください・・オレがやらなければ、ミネルバもみんなも助けられない・・!」
シンが言いかけて、ドックへ向かおうとする。
「たとえこの戦いに勝利できても、命を落とすことになりかねないぞ・・!」
「オレは死なない・・みんなを悲しませたくないから・・・!」
警告する医務官に、シンが自分の意思を口にする。彼の脳裏に微笑むステラの顔が浮かぶ。
自分が死ねばステラを悲しませることになる。シンの中で、生きようとする思いが強くなっていた。
「オレは行きます・・オレが、みんなを守る!」
シンが医務官の手を振り払って、ドックに向かって走り出した。体に痛みを感じていたシンだが、痛みに耐えて前進する。
そしてシンはドックにたどり着いた。そこで彼はコアスプレンダーがないことに気付く。
「シン!お前、起きてて大丈夫なのか!?」
ヴィーノが声を上げて、ヨウランとともにシンのところへ駆けつける。
「ヴィーノ、ヨウラン、コアスプレンダーはどうしたんだ・・!?」
シンが動揺を浮かべながら、ヴィーノたちに問いかける。
「インパルスは今、ルナマリアが乗ってるんだ・・お前の代わりに、インパルスで出て・・!」
「ルナが、インパルスに!?」
ヴィーノの答えを聞いて、シンが驚愕する。彼らがドックにあるモニターを見て、ルナマリアの駆るインパルスを目にした。
「ルナはずっとインパルスの戦闘シュミレーションを続けてきた。インパルスで戦うことは大丈夫だけど・・」
ヨウランがルナマリアのことを口にする。この言葉を聞いて、シンは心を揺さぶられた。
(ルナ・・オレの代わりに、インパルスで・・・!)
インパルスを動かして必死に戦っているルナマリアに、シンは戸惑いを感じていた。
「あの機体・・新しい機体・・・!?」
シンはレジェンドも目にして、さらに戸惑いを感じていく。
「新しく導入された新型、レジェンドだ・・レイが乗っている・・!」
「レイが・・!」
ヨウランがレジェンドとレイのことを話して、シンが戸惑いを募らせていく。レジェンドもロゴスの機体を相手に、決死の攻防を繰り広げていた。
「新型はそれだけじゃないぜ!あのデスティニーもそうだよ!」
ヴィーノがデスティニーのことを話して、シンが振り返る。彼はドックに収納されているデスティニーの姿を目の当たりにした。
「デスティニーはシンの新しい機体だ。操縦データもシンに合わせて調整されていた・・」
「それじゃ、オレがこのままこの機体に乗っても・・・!」
ヨウランからの話を聞いて、シンが改めて決意を固めた。
「オレも出撃する!すぐに機体のチェックをするぞ!」
シンがヨウランたちに呼びかけて、デスティニーに向かう。
「ダメだって、シン!まだ戦える体じゃ・・!」
「オレが行くしかない・・オレに行かせてくれ!」
ヴィーノが止めに入るが、シンは彼の手を振り切って、デスティニーに乗り込んだ。
“シン、発進は許可できないわ。今の状態では、あなたには戦闘はムリよ・・!”
シンのいるデスティニーのコックピットに向けて、タリアが通信で呼びかけてきた。
「オレが行くしか、ミネルバを守ることはできません!レイもルナも・・!」
シンがタリアに言い返して、デスティニーで発進しようとする。
「オレは必ず生きて戻ります・・レイたちと一緒に・・!」
“シン・・・”
揺るがない意思を示すシンに、タリアが戸惑いを浮かべた。
“もしも様子が違うと判断したら、撤退を指示する。分かったわね・・?”
「艦長・・はい!」
タリアの言葉を受けて、シンが笑みを浮かべて頷いた。
「シン、必ず帰ってこいよ!」
「ロゴスをやっつけて、みんな一緒に戻るって信じてるぞ!」
ヨウランとヴィーノが呼びかけて、シンが真剣な顔で頷いた。
(ありがとうございます、艦長・・ありがとう、ヨウラン、ヴィーノ・・・!)
シンが心の中でタリアに感謝する。
(オレの代わりに戦ってくれてるルナもありがとう・・・ステラ、オレたちも死なない・・君も死なせない・・・そのために、オレは今を戦う・・!)
ルナマリアとステラのことも考えて、シンが決意を強めていく。ミネルバのハッチが開かれ、デスティニーが発進準備を整えた。
「シン・アスカ、デスティニー、いきます!」
シンの駆るデスティニーがミネルバから発進した。デスティニーの背中の両翼から光の粒子が発せられて、光の翼を成していた。
インパルスを必死に動かすルナマリア。ビームサーベルを振りかざすインパルスだが、ザムザザーたちに悪戦苦闘していた。
「そろそろ終わらせてやるぞ・・その胴体をバラバラにしてやる・・!」
ザムザザーのパイロットがいきり立つ。ザムザザーがインパルスを狙って、ハサミを振りかざす。
そこへデスティニーが駆けつけて、ザムザザーに向かって右手を突き出した。デスティニーの手のひらには、砲門「パルマフィオキーナ」が搭載されている。
デスティニーが右手をザムザザーの胴体に当てた。パルマフィオキーナが発射されて、ザムザザーが吹き飛ばされて、インパルスから引き離される。
「あれは、もう1機の新型・・でも、誰が・・・!?」
ルナマリアがデスティニーを目の当たりにして、動揺を覚える。
「大丈夫か、ルナ!?」
「シン!?・・乗ってるのはシンなの!?」
呼びかけてきたシンに、ルナマリアが驚きの声を上げる。
「体は大丈夫なの!?・・完治してないのに出撃したら・・!」
「周りにいる敵機はオレが倒す!ルナはミネルバの護衛をしてくれ!」
心配するルナマリアに、シンが指示を出す。
「ありがとう、ルナ・・オレの代わりに、インパルスで戦ってくれて・・・!」
「シン・・・」
感謝するシンに、ルナマリアが戸惑いを募らせていく。
「早くミネルバのところに戻るんだ・・!」
「シン・・気を付けてね・・・!」
シンの呼びかけに、ルナマリアが小さく頷いた。インパルスがミネルバのそばまで移動して、デスティニーがロゴスの部隊に向かっていく。
デスティニーがビームライフルを手にして、ウィンダムたちに射撃を当てていく。デスティニーはインパルス以上のスピードとパワーを発揮し、シンも正確に攻撃の狙いを定めていた。
「あれもザフトの新型か・・!」
「ヤツの戦闘力も並外れているぞ・・!」
ロゴスのパイロットたちがデスティニーの戦いに対して、緊迫を募らせる。
「だがビーム攻撃ばかりでは、我々に勝つことはできないぞ!」
ザムザザーのパイロットが臆せずに言い放つ。
ザムザザーがデスティニーに向かってビームを放出する。デスティニーは光の翼を広げて、加速してビームをかわす。その動きは被翼の光に込められている粒子「ミラージュコロイド」の効果により、残像を伴っていた。
「小賢しいまやかしを・・だが素早いばかりでは・・!」
パイロットが毒づきながらも、ザムザザーの勝利を確信する。
デスティニーが右背面に装備されているビームソード「アロンダイト」を手にした。デスティニーが構えると同時に、折りたたまれていたアロンダイトの刀身が展開された。
「直接攻撃のできる武器・・しかもあのような巨大なものを!?」
ザムザザーのパイロットがアロンダイトを見て驚く。陽電子リフレクターを展開しているザムザザーに向けて、デスティニーがアロンダイトを振り下ろす。
陽電子リフレクターが防ぐこともできずに、ザムザザーがアロンダイトに真っ二つにされた。
「ギャアッ!」
パイロットの絶叫が響く中、ザムザザーが落下しながら爆発して消えた。
「なんという機体だ・・ザムザザーを簡単に落とすとは・・!」
ロゴスのパイロットたちがデスティニーの力に危機感を覚える。
「こうなれば、取り囲んで動きを封じるしかない!一斉攻撃をすれば、いくらヤツとて・・!」
パイロットたちがいきり立ち、ウィンダムたちがデスティニーを取り囲んで距離を縮めていく。
「そんなことで・・!」
シンが言いかけて、デスティニーが左背面に装備されているビーム砲を展開して発射する。出力の高いビームが放たれ、ウィンダムやゲルズゲーたちが撃ち抜かれた。
「ごあぁっ!」
パイロットが絶叫を上げて、ウィンダムたちが次々に爆発していく。
「本当に武器が多彩・・いずれも強力なものばかり・・!」
「力も武器もあまりに違いすぎる・・!」
パイロットたちがデスティニーに脅威を感じて、冷静さを保てなくなっていた。
「うろたえるな!ここでザフトを討たねば、我々に未来はない!」
他のパイロットが怒鳴って、デスティニー打倒に意識を向ける。
(オレは戦う・・戦いのない世界のために・・・それを壊そうとするロゴスを、オレは倒す・・!)
シンが心の中で決意を固めていく。
(もう、あんな悲劇は繰り返させない・・・!)
彼の脳裏に家族やハイネの死、アスランの撃墜の瞬間がよぎる。
あのような悲劇を繰り返させない。そのための力を求め、シンは戦いを終わらせる戦いをする決意を固めた。
デスティニーも自分の確固たる力であると、シンは思っていた。
デスティニーの登場をレイも、ネオもスティングも気付いていた。
「あれもザフトの新型か!?・・ザフトはこのような新型を作っていたとは・・!」
「何が出てきても、オレが全部吹き飛ばしてやるよ!」
ネオが毒づき、スティングがいきり立つ。
(シン、やはりお前も来たか。デスティニーに乗って・・)
レイがシンのことを考えて笑みをこぼす。
「ここにいるヤツもアイツも、オレが倒してやるよ!」
スティングが高らかに言い放ち、デストロイがレジェンドに向かってビームを発射した。
次回予告
新たな運命の幕が上がった。
シンの駆るデスティニーが、ロゴスへの反撃を仕掛ける。
彼の心身を支えているのは、ルナマリアの思いと、レイの意志。
その宿命に終止符を打て、レジェンド!