GUNDAM WAR
-Destiny of
Shinn-
PHASE-25「強襲と決死行」
フリーダム撃墜で気絶をしたキラ。アークエンジェルの医務室で、彼は意識を取り戻した。
「キラ、気が付いたか・・!」
医務室にいたカガリが、キラが目を覚ましたことに安堵を覚える。
「カガリ・・・僕は・・・」
「ザフトに、インパルスにやられたんだ・・お前は軽い傷で済んだけど・・フリーダムは・・・」
当惑を見せるキラに、カガリが深刻な表情で状況を説明した。彼女の話を聞いて、キラはフリーダムが再起不能となったと思い知った。
「フリーダムが破壊された・・・あれがなければ、僕は・・・」
「言うな・・今は休むことだけを考えるんだ・・・!」
気落ちするキラをカガリが励ます。気分が晴れないまま、キラはベッドに横たわった。
(キラも戦えなくなって、オーブを守る力が少なくなってしまった・・それでもやらなくちゃいけない・・オーブを守る戦いを、戦いを終わらせる戦いを・・・!)
カガリは危機感を募らせながらも、オーブや同士たちのために戦う決意を新たにしていた。
キラのいる医務室を出たところで、カガリがアスランと対面した。
「アスラン・・・」
「カガリ、キラの様子は・・?」
当惑を見せるカガリに、アスランが聞く。
「フリーダムがやられたことで落ち込んでいる・・戦えなくなった自分を気にしている・・・」
カガリが深刻な面持ちを浮かべて、キラのことを話す。
「ただ戦いを止めようとしたために、勢力問わずに攻撃して・・戦いを止めるどころか、シンやみんなの怒りを買うことになった・・・」
「アスラン!キラはオーブ軍を討たせたくなかった!他の軍も・・だからあの戦い方をしてきたんだぞ!」
アスランの苦言に反論するカガリ。
「そんな戦い方で戦いを終わらせることができたのか?戦いを一時的に止めただけで、怒りや悲しみを増やすだけだった・・」
「それは・・・!」
アスランの投げかける問いに、カガリが口ごもる。
「オレもまだ、戦いを止めるためにどうすればいいのかはハッキリしていないが、今のお前たちの戦い方を認めるわけにはいかない・・・!」
アスランはそう告げて、カガリの前から去っていった。
(私もどうすればいいんだ!?・・オーブを守ることが、悪いことのはずがないのに・・・!)
オーブを守るため、戦いを終わらせるために必死になるも、アスランとのすれ違いにカガリは苦悩を深めていた。
ロゴスのメンバーが次々と拘束されていく中、ジブリールは地球連合の最高司令部「ヘブンズベース」に逃げ込んでいた。
「おのれ、デュランダル・・我々をここまで追い込むとは・・・!」
ジブリールがデュランダルに対して、怒りと屈辱を募らせていく。
「だがこれで勝ったと思うなよ、デュランダル・・最後に笑うのは貴様らではない!我々だ!」
ジブリールが笑みを浮かべて見上げる。彼のいる格納庫には、巨大な機影があった。
その頃、ザフトの調査部隊はジブリールたちの行方を追っていた。ロゴスのメンバーの大半を拘束、連行するには至ったが、ジブリールや他のメンバーの逃走先はまだ発見できていなかった。
「ロゴスの他のメンバーはまだ見つからないのか?」
「申し訳ありません!総力を挙げて捜索しているのですが・・!」
ギルバートが声を掛けて、オペレーターが答える。
「ロゴスとつながりのある場所は、数を減らしつつある。可能性が高いのは・・」
ギルバートが考えを巡らせて、レーダーを見渡していく。
「ヘブンズベース・・地球連合の最高司令部だ。」
「連合軍の監視が強化されている可能性が高いと思われますが、そちらへの捜索を強化します。」
ギルバートの言葉を受けて、オペレーターが答えた。彼らはヘブンズベースとその近辺に、捜索の重点を置いた。
キラとの戦いでの消耗で眠りについていたシン。彼は意識を取り戻して、ベッドから体を起こした。
「シン、意識が戻ったか・・!」
「ここは・・・」
医務官が声を上げて、シンが周りを見回す。
「ステラ・・・!」
隣のベッドにステラがいることに気付いて、当惑を見せる。
「ここで打てる手は全て打った。しかし薬や調整、それらによる後遺症がひどく、ここで治療することはできない。プラントに運んで、精密な検査をしなければ・・」
「そんな・・・ステラを、プラントに・・・!」
医務官の話を聞いて、シンが動揺を見せる。
「グラディス艦長が申請して、デュランダル議長もシャトルでプラントに運ぶよう手配している。無事にプラントに行くことはできる。」
「そうですか・・よかった・・・」
医務官が話を続けて、シンが安心を見せる。
「シン、君はまだ休んだほうがいい。任務や激しい運動は避けるんだ。」
「ですが、ザフトやミネルバはこれから新しい任務や戦闘があるんじゃ・・・!」
「それはレイたちに任せるんだ。それに、ミネルバに新しく機体が導入されたそうだ。」
「新しい機体・・・!?」
医務官の話を聞いて、シンが戸惑いを覚える。
「その中の1機にレイが乗ることになった。もう1機には君が乗ることになるだろう・・」
「オレが・・だったら戦いに備えて慣れておかないと・・!」
「だから今の状態での戦闘は厳禁だと・・」
次の戦いに備えようとするシンを、医務官が呼び止める。
「艦長やみんなを信じるときだ。分かってくれ、シン・・」
「・・・はい・・・」
医務官に咎められて、シンは聞き入れるしかなかった。
「シン・・・シン・・・」
そのとき、ステラが声を振り絞って、シンが振り向いた。
(ステラ・・こうしてステラを助けられたけど・・このままだと死んでしまうかもしれない・・そうならないために、ステラみたいな子をこれ以上増やさないために、オレは戦わなくちゃならない・・・!)
これからもステラやみんなを守り、戦いを止めなければならない。シンは決意と信念を強めて、次の戦いに備えようと考えていた。
ヘブンズベースに対する包囲網を、ザフトは狭めつつあった。それに気付いたジブリールが、いら立ちを募らせていく。
「おのれ、デュランダル・・・我らの戦力はそろっているか!?」
「はい!デストロイ5機、ザムザザー、ゲルズゲー各10機、他の量産型も多数そろえています!」
ジブリールが問いかけて、兵士が報告をする。
「では全機出撃だ!コーディネイターに、デュランダルに思い知らせてやるぞ!我々の目指す道こそが、真に正しき道であることを!」
ジブリールが野心を募らせて、部隊の出撃の命令を下した。デストロイたちがザフトを迎え撃つべく出撃した。
ロゴスの仕向けた機体によって、ヘブンズベースを包囲していたザフトの部隊は、壊滅的な被害を受けることになった。その知らせはギルバートやタリアたちに届いた。
「これは、ベルリンに現れた巨大兵器・・!」
「それが今回は5機も・・・これでは、並の兵力では太刀打ちできないわ・・・!」
デストロイを始めとしたロゴスの戦力に、ギルバートもタリアも危機感を募らせていく。
「敵部隊、ヘブンズベース領外へ進行し、こちらへ向かっています!」
管制官がギルバートたちに状況を報告する。
「すぐにミネルバで発進してくれ!進行を食い止め、迎撃するんだ!」
「分かりました!ミネルバ、発進します!」
ギルバートが呼びかけて、タリアが答える。
「シンが助けた彼女は我々に任せてくれ。シンのことは君の判断に任せる。私としては、シンが戦おうとするなら、それに応えたいと思っている・・」
「了解です・・・!」
ギルバートからシンのことを言われて、タリアは一瞬表情を曇らせてから答えた。
(レイにはレジェンドを与えているが、1機の力が高くても多勢に無勢だ。やはりシンとデスティニーの力も必要になる。)
シンが戦いに向かうことを信じて、ギルバートは笑みを浮かべた。
ミネルバが発進に備える中、ステラは基地に運ばれることになった。弱々しい意識のステラに、シンが声を掛けた。
「ステラ、オレたちは行くよ・・離れ離れになってしまうけど、必ず帰ってくるよ・・」
「シン・・・」
微笑んで呼びかけるシンに、ステラが返事をする。
「戻ってきたときには、一緒に話をしたりどこかに出かけたりしよう・・」
「シン・・・シンと、お話・・みんなと、お出かけ・・・」
約束を投げかけたシンに、ステラが微笑んで頷いた。
「待っていてくれ、ステラ・・・死んだりしない・・君も、オレも・・・」
「うん・・・」
シンの言葉を受け入れたステラ。彼女は安らぎを感じて、眠りについた。
「この子はお任せください。君も気を付けて・・」
「はい・・・!」
医師たちが呼びかけて、シンが真剣な顔で頷いた。医師たちがステラをミネルバの外へ連れ出した。
「シン、君もミネルバで行くことになるが、艦長の指示なしで出撃はできないからね。」
医務官が注意を投げかけて、シンは小さく頷いた。しかしシンは状況次第で、独断でも出撃することも考えていた。
ミネルバの新たな戦力としてデスティニー、レジェンドがミネルバに収容された。その2機を目の当たりにして、ヨウランとヴィーノが戸惑いを感じていた。
「これが新しい機体、デスティニーとレジェンドか・・!」
「インパルスとかよりも強力なんだよなぁ・・すごいよなぁ〜・・・!」
ヨウランとヴィーノがデスティニーたちに驚きと動揺を感じていた。
「この2機もオレたちが整備していくんだよなぁ〜・・シンたちも頑張ってるんだから、オレたちもしっかりやらなくちゃな!」
「だけど、そのシンはまだ戦える状態じゃないんだろ?・・レジェンドに乗ることになっているレイだけじゃ、いくらなんでも・・」
意気込みを見せるヴィーノに、ヨウランが不安を浮かべる。
「それでもオレたちは戦わなければならない。議長の目指す平和な世界を脅かす敵と・・」
そこへレイがやってきて、ヨウランたちが振り返る。
「オレはどんな状況でも戦っていくし、シンも戦うはずだ。シンも、戦いのない世界を願っているから・・」
「レイ・・・」
レイの告げた言葉に、ヨウランが戸惑いを見せる。
「そうだよな・・シンのことだから、ケガが治る前に無理やり出撃してくるかもしれない・・そうなって、整備不良でやられたなんてことになったら、アイツに合わせる顔がないって・・!」
ヴィーノが気を引き締めて、シンやレイたちのために頑張る決意を口にする。
「そうだな。ここまで厳しい戦いをやってきたんだ。オレもとことんやらないとな。」
ヨウランも頷いて、デスティニーたちの整備に向けて意気込んだ。
「2人もミネルバの、ザフトの戦力だ。ともに戦うぞ。ロゴスを始めとした敵を倒すために。」
レイの送った言葉に、ヨウランとヴィーノが頷く。2人は整備データを元にデスティニー、レジェンドのチェックを始めた。
ミネルバの指令室に戻ったタリアとアーサー。指令室にはメイリンたち管制官が既に着席して、情報をまとめていた
「ヘブンズベースからロゴスのモビルスーツ、モビルアーマーがこちらジブラルタルに向かって進行しています。」
メイリンがタリアたちに現状を報告する。
「ジブラルタルに到達されたら終わりだわ。ミネルバは直ちに発進。極力、ヘブンズベースに近い地域で、敵部隊を討ちます。」
タリアがミネルバのクルーに指示を出す。
「艦長・・・!」
「こちらから打って出ます。ヤツらをこちらに近づけさせることなく、撃破します!」
戸惑いを見せるアーサーと、さらに呼びかけるタリア。
「コンディションレッド、発令!ミネルバ、ヘブンズベースに向けて発進!」
アーサーも指示を出して、ミネルバがジブラルタル基地から発進した。
ミネルバが発進したことを、医務室で横になっていたシンも感じ取っていた。
(ステラ、オレは戦い続ける・・ステラやみんなが平和で暮らせる世界を作るために・・・!)
別れることになったステラのことを思うシン。彼は自らが出撃する瞬間に備えて、体を休めることにした。
ドックにて待機していたルナマリアも、出撃のときを待っていた。
(インパルスのシュミレーションも重ねてきた・・シンみたいにとはいかないけど、私もインパルスで戦えるはず・・・!)
うまくインパルスを動かせる自信を感じていたルナマリア。
「今度の戦い、オレが先陣を切る。」
そこへレイがやってきて、ルナマリアに声を掛けてきた。
「レイ・・もしかして、新しく入った新型に・・?」
「あぁ。レジェンドに乗る。シンはもう1機、デスティニーに乗ることになる。」
ルナマリアが問いかけて、レイが答える。
「ルナマリアには乗る機体がない。今回もミネルバで待機して・・」
「ううん、私も行くわ。インパルスに乗ってね。」
呼びかけるレイに、ルナマリアが自分の意思を口にする。
「私はインパルスの戦闘シュミレーションを繰り返してきた。レイたちの足手まといにはならないはずよ・・」
「ルナマリア・・・分かった。インパルスを任せるぞ。」
戦いに身を投じようとするルナマリアに、レイが頷いた。
「レジェンドとデスティニーは、核エンジンとデュートリオンシステムのハイブリッドが動力となっている。活動時間に限りはない。」
レイがルナマリアにレジェンドたちのことを話す。
「オレがレジェンドで先行する。ルナマリアは艦長の指示で出撃するんだ。」
「分かったわ、レイ。私もやってやるわ。」
レイの呼びかけに、ルナマリアが真剣な面持ちで頷いた。
「今までシンに頼ってばかりになってた・・だから今度は、私がシンを、みんなを守る・・!」
「そうだ・・オレたちで守るんだ、みんなを・・そして終わらせる・・戦いを・・・」
シンのことを思って、決意を新たにするルナマリアとレイ。2人は出撃に備えて、搭乗機のチェックに向かった。
ジブラルタルに向けて前進していくロゴスの部隊。デストロイたちの放つビームで、先行していたザフトの部隊が撃退されていく。
「ハッハッハ!どうだ、ザフト!どうだ、コーディネイター!これが我らの力!我らの信念だ!」
ジブリールがデストロイたちの攻撃を見て、高らかに笑う。
「デストロイの1機目はフリーダムに再起不能にされてしまったか、そのフリーダムももはやいない!ミネルバを叩けば、世界は我らの思い通りになったも同然!」
勝利を見出して、ジブリールが期待と野心を膨らませていく。
「思い知るがいい、デュランダル!真に世界を導くのは我々だ!」
ジブリールが勝ち誇って、高らかに笑う。デストロイたちはザフトの部隊をなぎ払って、進攻を続けていた。
次回予告
追い詰められたロゴスは、総力を挙げての反撃に打って出た。
それを迎え撃つミネルバの戦力。
世界のため、仲間のため、大切な人のため。
レイとルナマリアは決戦に臨む。
新たな乗り手で、飛び上がれ、インパルス!