GUNDAM WAR

-Destiny of Shinn-

PHASE-24「混沌の先へ」

 

 

 戦場を脱しようとするアークエンジェルに向けて、ミネルバが陽電子砲を発射した。インパルスとフリーダムが互いにエクスカリバー、ビームサーベルを突き立てた。

 海上で爆発が起こり、さらにインパルスとフリーダムの激突による爆発が起こった。

「シン!」

「キラ!」

 ミネルバにいたルナマリア、アークエンジェルのアスランが叫び声を上げた。

 

 インパルスとフリーダムは激突の果てに海の中に落ちた。タリアたちがインパルスの行方を追い、メイリンがシンに呼びかけていた。

「インパルス、発見しました!シンからの応答がありません!」

 メイリンがレーダーに映ったインパルスの反応を見て、タリアたちに報告する。

「インパルスの回収を急いで!」

“私がシンを連れ戻してきます!”

 タリアが指示を出したところで、ルナマリアが呼びかけてきた。

“インパルスを、シンを連れ戻すだけなら、ザクでもできます!”

「ルナマリア・・分かったわ。ザク、発進準備!シンの救出に向かって!」

“はいっ!”

 タリアが呼びかけて、ルナマリアが答えた。1機のザクが発進準備を整えた。

「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」

 ルナマリアの乗ったザクウォーリアがミネルバから発進した。ザクがインパルスとフリーダムの激突があった地点の下の海中へ入った。

 

 同じ頃、カガリはマリューの制止を振り切って、ストライクルージュでキラのフリーダムの救出に出た。

 カガリが海中に沈んだフリーダムを見つけて、ストライクルージュが向かう。フリーダムは破損していて、自力で動くことができなくなっていた。

「キラ、無事か!?返事をしてくれ、キラ!」

 カガリが呼びかけるが、キラからの返事はない。ストライクルージュがフリーダムを抱えて、アークエンジェルに戻っていった。

 

 同時にルナマリアも破損したインパルスを発見した。ザクがインパルスに近づいて支える。

「シン、応答して!シン!」

 ルナマリアが呼びかけるが、シンからの応答がない。ザクがインパルスを連れて海上へ上昇した。

 ルナマリアもカガリも、互いの機体の姿が見えていなかった。そのため、互いに気付くことなく、シン、キラの救出に専念することになった。

 

 インパルスを連れてミネルバに戻ってきたザク。ルナマリアがザクから降りて、インパルスのハッチを開けて、コックピットからシンを引きずり出した。

 シンは外傷は見られなかったが、意識を失っていた。

「シン、大丈夫!?答えて、シン!」

 ルナマリアが呼びかけるが、シンは目を覚まさない。

「医務室に連れていくわ!みんな、手伝って!」

「わ、分かった!」

 ルナマリアが呼びかけて、ヴィーノが慌てて答える。彼とヨウラン、他の整備士たちがルナマリアを手伝う。

 残りの整備士たちは、インパルスの修繕を始めた。

 駆けつけた医務官とともに、ルナマリアたちはシンを医務室に運んだ。ベッドに横たわったシンを、医務官が診察する。

「シン・・・」

 医務室の前でルナマリアがシンの心配をする。

「ルナマリア、ここは医務官に任せよう。オレたちは艦長の指示を仰ごう。」

 レイが呼びかけてきて、ルナマリアが当惑を覚える。

「シンに対してできることはやった。オレたちはオレたちがこれからすべきことをやるんだ。」

「レイ・・・」

「艦長のところへ行こう。シンが戻るまで、オレたちが戦うんだ・・」

「分かった・・行くわ・・・」

 レイの言葉を受けて、ルナマリアが頷く。2人はタリアたちのいるブリッジに向かった。

 

 ストライクルージュはフリーダムを連れて、アークエンジェルに戻った。カガリにフリーダムから出されて、キラは彼女とアスランに連れられて、医務室に向かった。

 キラとフリーダムの状態について、マリューたちにも伝わった。

「キラくんの負傷は軽かったけど、フリーダムは起動不能になってしまったわ・・」

 マリューからの言葉を聞いて、アスランとカガリが深刻な面持ちを浮かべる。

「オレが、シンやミネルバに呼びかけていれば・・・!」

 アスランが何もできなかった自分を責める。

「あの状況であなたが出ていったら、余計に戦況が混乱することになったわ・・キラくんに任せるしかなかったけど・・」

「そのキラとフリーダムを・・・シン、オレがミネルバから離れてから、かなり力を付けたということか・・・」

 マリューが言いかけると、アスランがシンのことを考える。

「でも、その力の矛先がオーブに向けられるなんて・・・!」

 カガリはシンやザフトの動向に、不満と危機感を感じていく。

「シンはオーブに対して強い怒りを抱いている・・結果的に戦況を混乱させたキラたちにも・・」

「しかし、オーブ軍が討たれていいわけがないだろう・・!」

「それはそうだが、だからって、あんなやり方で全てが解決するわけがないだろう!」

 不満を見せるカガリに、アスランが苦言を呈する。

「あくまでオーブを守ることに専念しない限り、オレはカガリやキラに協力する気にはなれない・・・!」

「アスラン・・・!」

 納得のできないアスランに、カガリは困惑するばかりだった。

「とにかく、本艦はこのままオーブへ向かいます。そこで修繕と補給、休息を。」

 マリューが気を落ち着けて、アークエンジェルのこれからの針路を告げた。

「仮にアークエンジェルが直って、キラも回復したとしても、インパルスに対抗できる機体がない・・新しい手を考えなくてはならない・・・」

 カガリがオーブやアークエンジェルの未来への打開の手を模索する。

(キラたちにも疑念があるが、デュランダル議長の声明で、世界が混乱している。各地でロゴスへの怒りに駆り立てられた人々が暴徒化している・・)

 アスランが今の地球やプラントの様子について考える。

(議長ならこの事態が起こることは分かっていたはずなのに・・まさか、こうやって自分への支持を高めようとしているんじゃ・・!?

 ギルバートに対する不信感を、アスランも持ち始めていた。

 

 アークエンジェルとの戦いを終えたミネルバは、「ジブラルタル」に到着した。ロゴス討伐の任務を帯びた他の部隊が、ジブラルタル基地に集結しつつあった。

 ジブラルタル基地にはギルバートがプラントから赴いていた。ミネルバから降りたタリアとレイが、彼と対面していた。

「デュランダル議長、ミネルバ、ただ今到着しました。」

 タリアが挨拶をして、レイとともに敬礼する。

「やぁ、待っていたよ。ここのところのミネルバの活躍には、驚かされてばかりだよ。」

 ギルバートが微笑みかけて、タリアたちに向けて頷く。

「しかし、インパルスを除く主力を失い、ハイネが死亡。アスランも生死不明に・・シンもフリーダム撃破を果たしましたが、現在、意識を失っています。」

 タリアが深刻な面持ちで現状を報告する。

「ハイネとアスランのことは私も残念に思う。シンたちの成長の大きなカギになると考えていたのだが・・」

 アスランたちのことを考えて、ギルバートが辛さを見せる。

「自分もそう思います。ですが2人のことを思うからこそ、これからの戦いを乗り越えなければならないと思います。」

 レイが真剣な面持ちのまま、ギルバートに告げる。

「戦力の補充ということになるが、新しい機体を導入してもらいたいのだ。」

「新しい機体?」

 ギルバートが切り出した話に、タリアが聞き返す。

「まずは2人に見せておくよ。新しい機体の1機はレイ、君が乗る機体だ。」

「議長・・・」

 案内するギルバートの言葉に、レイが戸惑いを募らせる。彼らが基地の奥のドックに向かった。

 そのドックには2機の機体が収容されていた。

「これは・・!」

 タリアがその機体を見て目を見開く。

「プラントにて開発していた2種の機体、“デスティニー”と“レジェンド”だ。」

 ギルバートが2体の機体について語り始める。

「プラントで開発を進めていた最新鋭の機体だ。デスティニーに関しては、特殊部隊の主力を想定していた。」

「特殊部隊・・そのパイロットの中にハイネが・・・」

 彼の話を聞いて、タリアがハイネのことを思い出して悲しみを覚える。

「デスティニーは元々はハイネが乗るはずだった。しかしハイネが亡くなり、彼の遺言でシンの新しい機体として調整を施すことになった。」

「ハイネの遺言・・ハイネが、自分に何かあったときには、シンが乗るようにと・・」

「あぁ。ハイネはシンの能力とその将来性を高く評価していた。彼ならデスティニーも乗りこなすことができると。」

「では、デスティニーのパイロットはシンに・・」

 デスティニーとハイネのことを告げるギルバートに、タリアが納得して頷いた。

「そしてレジェンドは、先の大戦で導入された“プロビィデンス”の発展型の機体だ。性能はプロビィデンス以上であるが、操縦しやすいようにもなっている。」

 ギルバートがレジェンドに目を向けて、話を続ける。

「最初はシンかアスランに乗ってほしかったが、シンがデスティニーに乗る以上、レイ、君に託そうと思う。」

「ありがとうございます、議長。新しい機体でロゴスを討ち、戦いを終わらせてみせます。」

 ギルバートからレジェンドを託されて、レイが感謝して一礼した。

「グラディス艦長、デスティニーとレジェンドをミネルバへ。シンが目を覚ましたら、デスティニーのことを伝えてくれ。」

「分かりました。シンにこのことを伝えておきます。ハイネの意思とともに・・」

 ギルバートからの言葉を、タリアは聞き入れた。

「しかし本当に残念だ。アークエンジェルとフリーダム・・もしも我々と力を合わせることができたなら、戦いのない世界にもっと早く近づけたはずだ・・」

 ギルバートがキラたちのことを語り出して、思いつめた面持ちを見せる。

「今のこの世界では、我々は誰もが本当の自分を知らず、その力も役割も知らず、ただ時の流れに翻弄されて生きている。もしも本当の自分を知ることができたなら、無益な争いをすることも、互いに手を取り合うこともできたのに・・」

 彼が語りかける話に、タリアが疑問と深刻さを覚える。

「それはフリーダムのパイロット、キラ・ヤマトくんにも言える。実に不幸だと思う。」

「キラ・ヤマトくん・・アークエンジェルのクルーとして、先の大戦を終結させた1人・・」

 ギルバートの話を聞いて、タリアがキラのことを思い出す。

「あの高い資質、力・・彼は本来戦士なのだ。モビルスーツパイロットの腕は、これまでのパイロットの中でもトップクラスだ・・なのに誰1人、彼自身すらもそれを知らず、そのためにそう育たないまま、時代に翻弄されて生きてしまった。あれほどの力、正しく使えばどれだけのことができたか分からないというのにね・・」

 語りかけるギルバートに、タリアとレイが深刻さを感じていた。

「先の大戦の英雄だった彼が、今回は戦いが起これば現れて、好き勝手に攻撃を仕掛けて戦火を広げる。そのような相手、ザフト最高責任者として野放しにはできない・・」

「それは私も同じです・・できることなら、和解して力を合わせて戦いを終わらせたかったのが本音でしたが・・・」

「もしももっと早く、高い力を持っていることを知っていたら、その力の正しい使い方を知っていたら、彼自身悩み苦しむことなく、幸福に生きられただろうに・・・」

 自分の考えを口にするタリアに、ギルバートがさらに語りかける。

「彼のような不幸な英雄を出してはならない。そのためにも今の戦いを終わらせ、新たな世界を実現させなければならない。」

「はい。そのために、我々は戦っていきます。シンも同じ気持ちのはずです。」

 決意と自分の思い描く未来について告げるギルバートに、レイが表情を変えずに答える。

「ロゴスのメンバーは次々に拘束されています。もしもヤツらが武力を用いるなら、そのときに私たちは出撃します。」

「そのときが来たら知らせる。君たちの力、頼りにしているぞ。」

 現状と決意を口にするレイに、ギルバートが言いかける。彼から信頼を寄せられて、いつも冷静だったレイが微笑を浮かべていた。

 

 シンとステラが医務室で眠り続けている中、ルナマリアはシュミレーション練習をしていた。インパルスの操縦を想定してのシュミレーションである。

 ルナマリアはシンがステラを保護したときの少し後から、インパルスのシュミレーションを始めていた。

「うまくいかない・・シンみたいに動かせない・・・!」

 インパルスをうまく動かせないことに、ルナマリアが焦りを口にする。

「何やってるんだ、ルナマリア?」

 そこへヴィーノがヨウランとともにやってきて、ルナマリアに声を掛けた。

「インパルスのシュミレーションよ。シン以外にもインパルスを動かせる人がいたら、作戦もうまくいきやすいでしょ。」

「あぁ、なるほど・・」

 ルナマリアが答えて、ヴィーノが納得する。

「だけど、さすがにシンみたいにとは・・」

「さすがにシンみたいにとはいかないけど、敵に負けないくらいに強くなることはできるはずだから・・」

 ヨウランが苦言を呈するが、ルナマリアは練習を続けようとする。シンに敵わないのは承知の上で、彼女はそれでもシンのために強くなろうとしていた。

「シンのヤツ、ホントにすごくなっちゃたよなぁ。あのフリーダムをやっつけたんだからなぁ・・」

 ヴィーノがシンの活躍を思い出して、驚きと感心をするばかりになっていた。

「機体の性能はインパルスよりも上。それをあそこまで動かせたパイロットも多分シンより上だったかもしれない・・そのフリーダムに勝っちまったんだからなぁ・・」

「それだけシンの力がすごくなっているってことだな・・」

 ヴィーノとヨウランがシンの高まっている強さについて語っていく。

「しかもシンとレイ、新しい機体のパイロットになるってことだ。」

「インパルスやセイバーより強力らしいな。オレたちもしっかり整備できるようにならなくちゃ・・!」

 ヨウランがデスティニーとレジェンドのことを口にして、ヴィーノが気を引き締めなおす。

「シンもレイも強くなっている・・私も強くならなくちゃ・・せめて、足手まといにならないように・・・!」

 ルナマリアは気を引き締めなおして、シュミレーション練習を再開した。彼女の中にシンに対する想いが芽生えていた。

 

 ミネルバの医務室にて、シンとステラは眠り続けていた。心身の負担を抑えるのに精一杯の状態のステラに対し、シンは落ち着きを取り戻していた。

「シンは意識が戻るのを待つだけだ。しかし彼女は投与された薬の影響が強い・・」

 医務官がシンとステラの状態を確かめる。

「ここでの設備だけでは治療は難しい・・プラントに運んで集中治療を行う必要がある・・」

 医務官は判断を下して、タリアが戻ってくるのを待つことにした。

 

 

次回予告

 

世界の敵となったロゴス。

追い詰められた死の商人は、敵を討つべく強硬手段に打って出る。

持てる力の全てを費やすロゴスに、ザフトの反撃が開始する。

 

次回・「強襲と決死行」

 

野望の業火でなぎ払え、デストロイ!

 

 

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