GUNDAM WAR
-Destiny of
Shinn-
PHASE-20「慟哭の星空」
フリーダムによってセイバーを撃破されて、直後にキラに救われたアスラン。深く眠り続けていた彼だが、アークエンジェルの医務室のベッドで目を覚ました。
「ここは・・・ミネルバじゃない・・・!?」
もうろうとしている意識の中、アスランが現状を確かめようとする。体を起こそうとする彼だが、体に痛みを覚えて顔を歪める。
(くっ・・そうか・・オレはフリーダムにやられて・・・しかし、生きている・・・!?)
アスランが記憶を巡らせて、疑問を解消しようとする。
(キラたちと話をつけないといけないようだ・・・!)
思い立ったアスランが、痛みをこらえてベッドから起きる。そのとき、キラとカガリが医務室に入ってきた。
「アスラン、まだ起きちゃいけない!」
カガリが慌ててアスランに駆け寄って支える。
「カガリ・・キラ・・・!」
アスランがキラたちを見て声を上げる。
「お前がオレをセイバーから引きずり出したのか・・・」
「うん。こうしてまた、君と話ができるね、アスラン・・」
声を掛けるアスランに、キラが微笑んで頷く。
「こんな勝手なマネをして・・オレはミネルバに戻らなければ・・・!」
アスランがキラたちに不満を感じながら、アークエンジェルから出ようとする。
「待って、アスラン・・このままザフトに戻ったら、オーブと戦うことになってしまう・・」
キラが当惑を見せて、アスランを呼び止める。
「そのオーブ軍をこんな戦いに駆り立てた原因はカガリ、お前にもあるんだぞ!」
「それは、分かっている・・・!」
叱責するアスランに、カガリが自責の念を見せる。
「たとえ感情論と非難されることになっても、地球軍との同盟を結ばせてはいけなかった・・私は何度でも、オーブの軍人や民たちに呼びかけていくつもりだ・・」
「しかし、それで止まるザフトじゃない・・地球軍と共闘したオーブ軍の攻撃で、ザフトにも損害が出ているんだぞ・・!」
自分の責任を果たそうとするカガリだが、アスランは納得していない。
「それにキラもキラだ・・戦いを止めるために戦闘しているモビルスーツや戦艦の武器だけを攻撃しているんだろうが、あんなことをしても戦いが止まるどころか、戦況が混乱するだけだ!」
アスランはキラの戦い方にも苦言を呈した。
「それでもオーブ軍は討たせたくないんだ・・・!」
「それならばザフトも地球軍も壊滅してもいいっていうのか!?」
それでも自分のやり方を貫こうとするキラを、アスランはさらに責める。
「デュランダル議長は、心から戦いのない平和な世界を実現しようとしている・・オレはその理念に共感して、ザフトに戻った・・・!」
「その議長の戦いのない世界・・そのために力や兵器を用いるなんて・・・!」
ギルバートのことを語りかけるアスランだが、キラはギルバートに対して疑念を抱いていた。
「力で無理やり戦いを終わらせようとするのは、前の戦争と同じだよ・・それじゃダメだって思うから、僕は議長を信じることができない・・」
「力で戦いを止めようとしているのは、お前も同じじゃないか・・しかも、相手の事情を聞かずに一方的に・・・!」
「そう言われるのは分かっている・・でも戦いを止めるには、これしかないから・・・」
「・・・結局、お前は言葉ではなく力だけで押し通すというんだな・・・!?」
自分の戦いに頑ななキラに、アスランは不信感を募らせていった。
「これだけは言っておくぞ・・こんな戦いを続けても、戦いは終わらない・・お前に恨みを持つ者や、お前を倒そうとする者が出てくることになる・・・!」
アスランがキラに対して警告を送る。体の痛みをこらえていた彼は、ベッドに戻って横たわった。
「アスラン・・・」
キラが困惑を感じて辛さを浮かべる。
「アスラン、また後で来るからな・・・キラ、行くぞ・・」
カガリがキラを連れて、医務室を後にした。
「アスランは今は気が立っているだけだ。少し休ませよう・・」
「うん・・・」
カガリに言われて、キラが小さく頷いた。
「でも、また話せてよかった・・・」
アスランと再会できたことを、キラは素直に喜んだ。
戦う決意をさらに強固にしたシンは、さらに強くなろうと躍起になっていた。彼はフリーダム戦の対策に集中していた。
シンは今、自室にてシュミレーション練習をしていた。どうすればフリーダムに勝てるのか、その糸口を見出そうとしていた。
「くそっ!また攻撃された!」
またもフリーダムもやられて、シンがいら立つ。
「何であれだけのスピードと反応が出せるんだよ・・!?」
「落ち着け、シン。相手の動きを見極めれば、対応できないことはない。」
声を荒げるシンを、レイがなだめる。
「そうは言うけど、インパルスの性能もあるんだ・・フリーダムの性能はインパルスより上なんだ・・・!」
シンが焦りを口にして肩を落とす。
「それをここまで使いこなすなんて・・パイロットもそれだけ強いってことなのか・・!」
「だがお前も強い。しかもまだまだ強くなれる可能性がある・・」
フリーダムを駆るキラの強さ痛感しているシンに、レイが激励を送る。
「オレが、フリーダムのパイロットのように・・・!」
「キラ・ヤマト。フリーダムのパイロットで、先の大戦を終結に導いた1人。経歴は目覚ましいものがあるが、今では戦局を混乱させる敵でしかない。」
戸惑いを浮かべるシンに、レイがキラのことを説明する。
「そうだ・・アイツのせいで、ハイネもアスランも・・・!」
フリーダムに討たれたハイネとアスランを思い出して、シンが怒りを増して体を震わせる。
「だからフリーダムへの対策を立てなければ・・これ以上、ヤツにいいようにされるわけにはいかない。」
「分かってる・・分かってるが・・どうすればアイツに勝てるんだ・・・!?」
言いかけるレイだが、シンは打開の策を見出せず、焦りを募らせていた。
そのとき、ミネルバ艦内に警報が鳴り響いた。シンはシュミレーションを中止して、パイロットスーツに着替えて、レイとともに部屋を出た。
「ベルリンで地球軍が・・!?」
タリアがメイリンが告げた報告を聞いて、緊張を覚える。
「はい。巨大な機動兵器が進攻して、ザフトの施設を攻撃しています。その強力かつ広範囲の攻撃で、周辺の町や住民にも被害をもたらしています・・」
メイリンがさらに報告を続ける。モニターにベルリンの映像が映し出され、タリアたちがその惨状を目の当たりにする。
「な・・何ということを・・・!」
「これは戦闘でも攻撃でもないわ・・ただの破壊と殺戮よ・・・!」
アーサーが息をのみ、タリアが静かに憤る。指令室に来たルナマリアも、驚愕を隠せなくなる。
「本艦の状態は?」
「修復は完了しています。航行も戦闘も問題はありませんが、出撃可能な機体はインパルスだけです・・」
タリアが問いかけて、メイリンが報告する。
「分かったわ・・ベルリンに向けて急行。インパルス、発進準備。」
タリアが冷静にクルーたちに指示を出す。ミネルバが全速力でベルリンへ向かった。
ベルリンへと進攻していたファントムペイン。ステラの動かすデストロイが、ザフト、プラントの施設だけでなく、周囲をも蹂躙していた。
「これならコーディネイターを一掃するのも簡単だぞ!」
「それはいいが、これだとオレたちの出る幕がなくなってしまうな・・」
ウィンダムのパイロットたちがデストロイの攻撃を見て言いかける。
「消えて・・・怖いものはみんな・・消えちゃえ!」
ステラが感情を込めて叫び、デストロイが前進しながら砲撃を続ける。逃げようとしていた人々が戦火に巻き込まれる。
死に恐怖を感じていながら多くの人の命を奪っている。そのことをステラは実感していなかった。
ベルリンに急行したミネルバ。タリアたちはデストロイの機影を目の当たりにしていた。
「あれが、地球軍の新しい兵器・・・!」
アーサーがデストロイに対して息をのむ。
「あれを止めなければ、ロシアやベルリンだけでなく、世界中が壊滅状態に陥る・・ここで絶対に食い止め、破壊しなくては・・・!」
タリアが危機感を募らせて言いかける。
「シン、あなたがこの任務のカギよ。私たちも援護するけど、気を引き締めて。」
“了解・・・!”
タリアの呼びかけにシンが答えた。
ドックに来ていたシンは、込み上げてくる苦悩を抑えようとしていた。
(まだフリーダム対策は見つけてない・・でも今はこの戦いに集中するんだ・・・!)
デストロイとの戦いに専念しようとするシン。そこへレイとルナマリアがやってきた。
「シン、1人で大丈夫・・・?」
「大丈夫だ・・それに、そんなことを言われても、今のミネルバで出られるパイロットはオレしかいないんだから・・・」
心配の声を掛けるルナマリアに、シンが憮然とした態度で答える。
「私もインパルスが動かせたらよかったのに・・・」
「どっちみちその腕じゃ出られないって・・オレがやってやるから・・・」
自分の無力を責めるルナマリアに、シンが言いかける。彼は真剣な面持ちで頷いてから、コアスプレンダーに乗り込んだ。
レイとルナマリアが離れて、コアスプレンダーが発進準備を整えた。
「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」
シンの乗るコアスプレンダーがミネルバから発進した。続けて射出されたチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットとコアスプレンダーが合体して、フォースインパルスとなった。
「やめろ!」
シンが叫んで、インパルスがビームライフルを手にして射撃を仕掛ける。放たれたビームはデストロイに向かっていく。
しかしデストロイから発せられている陽電子リフレクター「シュナイドシュッツ」に、ビームが弾かれた。
「くっ・・ビームが通じないのか・・!」
射撃が効かないことに、シンが毒づく。インパルスの登場に対して、スティングがいら立ちを覚える。
「お前を・・お前を今度こそ始末してやるぞ!」
スティングがいきり立ち、カオスがインパルスに飛びかかる。2機がビームライフルを撃ち合い、ビームをかわしていく。
「早くアイツを止めないと・・これ以上やらせてたまるか・・!」
デストロイの暴挙に危機感を募らせるシン。
「アイツも倒す・・今度こそ・・今度こそ・・・!」
ステラがインパルスに気付き、敵意を向ける。デストロイが進行を止めて、インパルスに狙いを変えた。
キラたちもデストロイの進攻に気付いていた。アークエンジェルもベルリンに駆けつけた。
「あれが例の兵器ね・・既にミネルバが来て戦闘を行っているわ。」
マリューが戦況を確かめて言いかける。
「僕が行きます・・カガリはオーブ軍と一緒にここにいて・・・!」
キラが彼女に答えて、カガリに呼びかけてから指令室を飛び出した。
「キラ・・・!」
キラを見送るカガリが戸惑いを感じていく。キラがフリーダムに乗って、発進に備える。
「キラ・ヤマト、フリーダム、いきます!」
キラの駆るフリーダムがアークエンジェルから発進する。フリーダムがデストロイに向けてビームライフルを発射するが、シュナイドシュッツにビームが弾かれる。
「フリーダム、アークエンジェル・・アイツら・・!」
シンがフリーダムの介入にいら立ちを覚える。
“シン、今はあの巨大な兵器を止めることに専念して!向こうが攻撃してこない限り、今は無視して!”
タリアがシンに向けて呼びかける。
「くっ・・了解です・・・!」
シンが渋々聞き入れて、デストロイを止めることを優先させる。
「アイツらも・・やっつける・・・!」
ステラはフリーダムにも敵意を向ける。直後、デストロイが変形して、人型へと変わった。
「怖いものはみんな、やっつける・・・!」
ステラが声を振り絞り、デストロイがインパルスとフリーダムを同時に狙う。
デストロイが胸部にあるエネルギー砲「スーパースキュラ」を発射する。インパルスとフリーダムが動いてビームをかわす。
「フリーダムはオレがやる!ステラはザフトのヤツをやれ!」
「分かった・・・!」
スティングが呼びかけて、ステラが頷く。カオスがビームを放って、フリーダムを狙う。
「今度こそオレが仕留めてやるよ、フリーダム!」
スティングが言い放ち、カオスがビームを連射する。さらにウィンダムたちも駆けつけ、フリーダムに射撃を仕掛ける。
デストロイが両手を分離、射出して指先のビームガンを発射する。インパルスが紙一重で、縦横無尽に飛び交うビームをかわしていく。
「よけてばかりじゃやられる・・一気に倒すしかない!」
シンが思い立ち、インパルスがビームサーベルを手にして加速する。デストロイの両手からのビームとスーパースキュラの砲撃をかいくぐり、インパルスがデストロイに詰め寄った。
インパルスが振りかざしたビームサーベルが、デストロイの胴体を切りつけた。
「キャアッ!」
インパルスの一閃がデストロイのコックピット手前まで及び、ステラが悲鳴を上げる。
「よし!胴体を集中攻撃だ!」
シンが思い立ち、インパルスがデストロイを追撃しようとした。
そのとき、デストロイのコックピットの中をシンが目撃した。デストロイの中にステラがいたことに、シンが目を疑う。
「ステラ!?・・どうして君が・・!?」
シンが声を振り絞り、ステラに呼びかける。
「私を・・私をよくも・・・!」
ステラがいら立ちを浮かべて、インパルスに敵意を向ける。デストロイがインパルスに向けてビームを放つ。
シンが動揺しながらも反応し、インパルスが紙一重でビームをかわす。
「やめるんだ、ステラ!シンだ!シン・アスカだ!」
「怖いもの、なくす・・怖いもの、やっつける・・!」
シンが呼びかけるが、ステラはインパルスを討とうとする。
「ダメだ、ステラ!こんなことをしたら!」
「消えろ、消えろ!消えちゃえ!」
シンがさらに呼びかけるが、ステラはインパルスを攻撃することしか考えていない。
「何をやっている!?的になりたいのか!?」
キラがインパルスに向かって呼びかける。インパルスは構えを取ることもなく、デストロイと向き合っている。
「よそ見をしているとあっという間に撃ち抜いてやるぞ!」
スティングが言い放ち、カオスがビームを連射する。キラが反応し、フリーダムが素早くビームをかわしてビームサーベルを構える。
“こんな戦いを続けても、戦いは終わらない・・お前に恨みを持つ者や、お前を倒そうとする者が出てくることになる・・・!”
キラの脳裏にアスランの言葉がよぎる。
(それでも・・それでも僕は、戦いを止めたいんだ・・!)
キラが苦悩を振り切って、フリーダムがビームサーベルを振りかざす。同じくビームサーベルを構えたカオスを、フリーダムが切り裂いた。
「ぐっ!ぐあぁっ!」
カオスが腕と足を切り裂かれて落下して、スティングがうめいた。地上に落ちたカオスを見てから、キラはインパルスとデストロイに目を向けた。
「早く止めないと、町が・・みんなが・・!」
キラがデストロイを止めようと考え、フリーダムが動き出した。
次回予告
怖さから抜け出そうとする少女。
死に怯える少女の目に、新たな光が差し込む。
それは希望か?破滅の結末か?
果てなき悲しみ、終わらせろ、デストロイ!