GUNDAM WAR
-Destiny of
Shinn-
PHASE-12「戦士の意志」
ミネルバがディオキア基地に到着してから一夜が過ぎた。
シンとアスランはコアスプレンダー、セイバーのチェックに付き合っていた。彼らのいるドックにレイとルナマリアがやってきて、続けてハイネも現れた。
「みんな、おはよう!アスランもおはよう!」
ハイネがシンたちやアスランに気さくに挨拶する。
「そういえばちゃんと挨拶をしてなかったと思ってな。ちょっとこっちに来てくれ。」
ハイネが手招きをして、シンとアスランが彼のそばに来た。
「改めて自己紹介だ。オレはフェイスのハイネ・ヴェステンフルス。デュランダル議長のご意向で、オレもミネルバに乗艦することになった。」
ハイネがシンたちに挨拶をする。
「ミネルバのレイ・ザ・バレルです。」
「ルナマリア・ホークです。」
「シン・アスカです。」
レイ、ルナマリア、シンがハイネに挨拶をする。
「同じくフェイスのアスラン・ザラです。よろしくお願いします。」
アスランも続けてハイネに挨拶する。
「1回ザフトを抜けて、最近復隊したんだったな。前はクルーゼ隊だったか。」
「あ、はい。」
ハイネが投げかける話に、アスランが答える。
「オレはホーキンス隊所属だった。ヤキン・ドゥーエではすれ違ったみたいだな。」
ハイネが2年前の大戦のことを振り返って語っていく。
「これからよろしくお願いします、ヴェステンフルス隊長。」
ルナマリアが微笑んで、ハイネに敬礼する。
「“ハイネ”でいいよ。そういう堅っ苦しいのは好きじゃないから。」
ハイネは気さくな態度のまま答える。
「それでザラ隊長、これからの現場の指揮はどちらが・・?」
レイがアスランに質問を投げかける。
「それはフェイスの先任のヴェステンフルス隊長が・・」
「ハーイーネ。そりゃアスランだろ。ミネルバでの先任はアスランだし、コイツらの指揮も議長から言われてるんだから。ま、オレもサポートするつもりだけどな。」
アスランが言いかけると、ハイネが口を挟む。
「それにしてもアスラン、お前、“隊長”って呼ばれてんの?」
「隊長は我々の上官で、ミネルバでの戦闘指揮官でもありますので・・」
ハイネがアスランに問いかけて、レイが答える。
「なるほどな。けど、隊長だから、部下だからって距離作っちゃうのも、どうかと思うんだよなぁ・・」
ハイネは頷く素振りを見せるも、腑に落ちない態度も見せる。
「でも隊長は私たちの上官。位が上な相手にそれなりの態度を取るのは・・」
「だからそれが堅苦しいっていうんだよ・・」
当惑を見せるルナマリアに、ハイネがため息をつく。
「オレたちパイロットは、戦場に出ればみんな同じだろ?フェイスだろうが赤服だろうが緑だろうが、戦いになればみんな同じ1パイロットじゃないか。」
「それは、そうですが・・・」
ハイネの語ったことに、シンがただただ頷く。
「だからみんな同じでいいんだよ。隊長とか部下とかさん付けとか、そういうのはなしだ。」
ハイネは話を続けて、アスランに目を向ける。
「だからお前ら、オレとアスランのことを隊長とか言わずに、呼び捨てでいいからな。あ、議長とかお偉いさんの前のときは呼んだほうがいいか・・」
自分たちのことを気軽に呼んでほしいことを、ハイネはシンたちに伝えた。
「いや、いくらなんでもそういうわけには・・」
「何言ってんのよ。シン、士官学校のとき、いつも上官に反発してたくせに・・」
困った顔を浮かべるシンを、ルナマリアがからかってくる。
「ルナ、余計なこと言うなよ・・!」
シンが彼女に対して不満を口にする。
「何だよ。反抗期ってヤツか。だったらお前も堅苦しいのはいいと思ってないんじゃないか、シン。」
するとハイネがシンに向かって笑い声を上げた。
「でもだからって、失礼になってしまいますよ、隊長!」
「“ハイネ”だって言ってるだろ・・お前もガンコだな・・」
あくまで礼儀を尽くそうとするシンに、ハイネはため息をついた。
「それじゃ、改めてよろしくお願いします、ハイネ。アスラン。」
「あ、あぁ。よろしく、ルナマリア。」
ルナマリアとアスランが手を差し伸べて、握手を交わした。
「では自分は、自機のチェックへ行きます、ハイネ、アスラン。」
レイはハイネたちに告げて、自分の搭乗するザクへと向かった。
「オ、オレも失礼します・・!」
シンも敬礼をしてから、アスランたちから離れていった。
「やれやれ、強情なヤツだな・・」
シンの態度にハイネが肩を落とす。ハイネの気さくな振る舞いに、アスランも戸惑いを感じていた。
ミネルバに返り討ちにされたことに、連合の部隊の司令官はいら立ちを感じていた。
「おのれ、ザフト・・ヤツらにやられたままでいるものか・・!」
不満を口にする司令官。オペレーターたちもパイロットたちも、同様に怒りを感じていた。
「攻撃を仕掛けましょう、司令!ザフトを、ミネルバを野放しにするわけにいきません!」
「ヤツらに我々の力を見せつけてやりましょう!」
「あのファントムペインもあの体たらく!我々がやるしかありません!」
パイロットたちが司令官に進言する。彼らの言葉を受けて、司令官が頷く。
「よし!本艦はこれよりディオキア基地へ攻撃を仕掛ける!」
司令官がパイロットたちに命令を下す。連合の戦艦がディオキアへの進攻に踏み切った。
指令室にてミネルバの今後の針路と連合の動向への推測を、タリアとアーサーは話し合っていた。そこへアスランとハイネが来て、2人に敬礼を送る。
「これからの針路と敵の出方ですね。」
「えぇ。私たちはこれからジブラルタルへ行くことになったけど、連合軍がそこを狙うか、こちらへ来るか・・」
ハイネが聞いてきて、タリアが推測を口にする。
「連中の動きを警戒しつつ、出発の準備も行う、ということですね。」
「それだけじゃなく、連合軍に増援が合流するという情報もあるのよ。」
ハイネが言いかけて、タリアが話を続ける。
「増援?この前に部隊以外の連合の戦力が加わると・・」
「違うわ。連合と同盟を結んだ国・・オーブよ。」
言いかけたアスランにタリアが告げる。連合と同盟を結んでいるオーブ軍も、ザフト打倒のために乗り出そうとしていた。
「オーブが・・!?」
タリアの言葉を聞いて、アスランが動揺を覚える。彼の様子を気にして、ハイネが深刻さを覚える。
「こちらに接近する艦隊あり!連合軍です!」
そのとき、メイリンがレーダーで連合軍の接近の反応を見て、タリアに報告する。映し出されたモニターに、ディオキアに向かって進む連合の艦隊が映された。
「どうやら連中はこっちに直接乗り込んできたみたいだな。」
ハイネが真剣な面持ちを浮かべて言いかける。
「発進準備を。シンたちにも知らせて。」
「はいっ!」
タリアが呼びかけて、メイリンが答えて指示を伝達する。
「オレたちも行きます。」
アスランが言いかけて、ハイネとともに敬礼して、タリアが頷く。アスランとハイネは指令室を出て、ドックへと向かった。
ドックにいたシンたちも、連合の艦隊の接近に気付いて、出撃準備に入っていた。
「アイツら、性懲りもなくまた・・!」
「今度は逃がさずに落としてやるんだから・・!」
シンとルナマリアが連合の部隊への不満を口にする。
「2人とも行くぞ。今度こそヤツらを叩く。」
「あぁ、分かってる・・!」
レイが呼びかけてシンが答える。3人がそれぞれ発進準備を整えた。
「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」
「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」
「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」
シンのコアスプレンダー、ルナマリアとレイのザクがミネルバから発進した。続けて射出されたフォースシルエット、チェストフライヤー、レッグフライヤーがコアスプレンダーと合体して、フォースインパルスとなった。
「艦隊と敵機をディオキア基地にこれ以上近づけさせないで!」
「了解!」
タリアの出した指示にルナマリアが答える。シンのインパルスが先行して、連合の艦隊とウィンダムを迎え撃つ。
インパルスがビームライフルを手にして、ウィンダムを射撃していく。ウィンダム2機がビームに貫かれて落とされるが、他はスピードを上げて回避する。
「そう何度もやらせてたまるか!」
「今度こそ破壊してやるぞ!ザフトの新型もミネルバも!」
ウィンダムのパイロットたちが、シンたちを倒そうといきり立つ。ウィンダム数機がビームライフルのビームやミサイルで射撃を仕掛け、残りがビームサーベルを手にしてインパルスに向かっていく。
インパルスが射撃とサーベルをかわして、ビームライフルで反撃する。ルナマリアのザクもビーム砲を発射して、ウィンダムを攻める。
「私たちがいることも忘れないでよね!」
ルナマリアが自信を込めて言い放つ。
「ナイス、ルナ!オレも負けてられるか!」
シンが気を引き締めなおして、インパルスが攻撃を再開する。
(オレだってやれる・・戦いを起こす敵を倒して、戦争で苦しんでいる人を助ける・・これが、間違っているわけがない!)
シンは心の中で叫んで、戦意を強めていく。インパルスが加速して、ウィンダムたちに向かって突っ込んでいった。
アスランとハイネもそれぞれの機体に乗って発進準備に入る中、シンたちの戦況を気にしていた。
「張り切ってるな、アイツら。だけどシンのヤツ、ちょっと功を焦ってるみたいだな・・」
ハイネがインパルスの戦いを見て呟く。
「オレたちがサポートしてやらないとな、アスラン。」
「ハイネ・・はい・・!」
彼が呼びかけて、アスランが当惑を感じながら答える。
「アスラン、お前も今は戦いに集中しろ。迷いや動揺は、戦いじゃ命取りだぞ・・」
「ハイネ・・すみません・・・!」
ハイネが注意を呼びかけて、アスランが謝る。
「気を引き締めなおしたところで、オレたちも行くとするか。」
ハイネが言いかけて、アスランが頷いた。
「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」
アスランの乗るセイバーがミネルバから発進した。
(さて、お前の初陣だ。頼りにさせてもらうぜ。)
「ハイネ・ヴェステンフルス、グフ、行くぜ!」
ハイネは心の中で信頼を寄せたザクで、続けて発進した。セイバーとグフがウィンダムたちと交戦しているインパルスに向かって飛行する。
「シン、無闇に突っ込むな!いくらインパルスでも、1機で倒し切れるものじゃない!」
「そうだぜ!オレたちがいることを、忘れてもらっちゃ困るぜ!」
アスランとハイネがシンに呼びかける。
「オレたちはプラントのために戦うザフトだ!みんな、息合わせてバッチリいこうぜ!」
「り、了解!」
ハイネが気さくに呼びかけて、シンが戸惑いを感じながら答える。インパルスが体勢を整えて、セイバーがビームサーベルを手にする。
「ザフトの機体がまた出てきたか・・!」
「しかもまた新しい機体が出てきたぞ・・!」
「何機出てこようと同じことだ!撃墜してやればいいだけだ!」
ウィンダムのパイロットたちが、セイバーとグフを見て声を荒げる。
「行くぞ!オレたちでコーディネイターどもを滅ぼすぞ!」
ウィンダムたちがセイバーとグフにも攻撃を仕掛ける。
セイバーが加速して、ウィンダムの腕をライフルやサーベルごと切りつけていく。グフもビームソード「テンペスト」を振りかざして、ウィンダムたちを切りつけていく。
「コイツも手ごわいぞ・・!」
「だったら遠距離から攻めればいい!」
ウィンダムのパイロットたちが焦りを噛みしめて、ウィンダムがグフとの距離を取り、ビームライフルを発射しようとした。
そこへグフが電磁鞭「ビームウィップ」を伸ばして、ウィンダムのビームライフルを絡め取った。
「ザクとは違うんだよ・・ザクとは!」
ハイネが言い放ち、グフがウィンダムからビームライフルを引っ張って爆破する。
「何てヤツだ、あの機体も・・!」
ウィンダムのパイロットたちがグフにも気圧されていく。
「うろたえるな!ヤツらに敵わず負け犬になるつもりか!?」
戦艦にいる司令官から、パイロットたちに向かって檄が飛んだ。
「は、はいっ!」
パイロットたちが気を引き締めなおして、ウィンダムたちがインパルスたちへの攻撃を再開する。
「このまま尻尾巻いてにげられん・・ヤツらを撃墜するまでは・・!」
戦況を見つめる司令官がいら立ちを募らせる。
そのとき、司令官たちのいる艦に爆発と衝撃が起こった。司令官とオペレーターたちがこの大きな揺れに揺さぶられる。
「何事だ!?」
「本艦右舷で爆発!垂心の維持に支障が・・!」
司令官が呼びかけて、オペレーターが答える。
「機体の熱源反応あり!これは、ミネルバの機体です!」
「まさか、空中の機体に気を取られすぎたか・・・!」
別のオペレーターの報告も聞いて、司令官が焦りを噛みしめる。艦に接近して攻撃を仕掛けたのは、レイのザクだった。
「艦の足を止める・・お前たちは、ここで終わりだ・・・!」
レイが低い声音で告げて、ザクがビームトマホークで艦体を切りつけた。艦にさらなる爆発が起こって、体勢を崩す。
「司令、このままでは撃墜されます!早く脱出を!」
「脱出したところで、ザフトに捕まるだけだ!可能な限り攻撃を続け、敵モビルスーツを撃ち落とせ!」
動揺するオペレーターに、司令官が呼びかける。
「このままでは司令たちが・・!」
「おのれ・・おのれ、ザフト!」
ウィンダムのパイロットたちが怒りを膨らませる。ウィンダムがインパルスたちを狙って加速して、攻め立てる。
「どこまでもしつこくして・・そんなに戦争がしたいのか、アンタたちは!」
シンも連合軍に対して、怒りを募らせる。インパルスがウィンダムをビームサーベルで切り付け、セイバーとグフもウィンダムを迎え撃つ。
「このぉっ!」
ルナマリアも戦意を強めて、ザクがビーム砲で連合の艦隊に向かって砲撃する。
セイバーもビームサーベルを振りかざして、ウィンダムの胴体を切りつける。この一閃がウィンダムのコックピットのハッチを削ることになり、中にいたパイロットの姿をアスランが目撃する。
恐怖を浮かべているパイロットの様子を目の当たりにして、アスランがためらいを覚える。セイバーがビームサーベルの切っ先を突きつけながら、ウィンダムを刺さない。
その一瞬の隙にパイロットが気付き、ウィンダムがビームサーベルでセイバーのビームサーベルを払った。
「しまった!」
アスランが驚き、ウィンダムがセイバーに反撃を仕掛けようとした。だが伸びてきたグフのビームウィップに、ウィンダムがビームサーベルを持った右腕を切り裂かれた。
「何やってんの、アスラン!?」
「ハ、ハイネ・・!」
ハイネが注意を呼びかけて、アスランが動揺したまま返事をする。グフがテンペストでウィンダムの胴体を貫いた。
「ぐあぁっ!」
パイロットが絶叫を上げて、ウィンダムの爆発に巻き込まれた。敵とはいえまた命が失われたことに、アスランは心を揺さぶられていた。
「おのれ、ザフト・・おのれ、プラント!」
絶叫を上げる司令官が、艦の爆発に巻き込まれた。シンたちの攻撃を受けて、連合の艦隊は全滅を被った。
次回予告
戦いを終わらせるために、敵を倒し人々を救うことに意識を傾けるシン。
オーブ軍参戦の戦況に、迷いを抱くアスラン。
2人に投げかけられるハイネの意思とは?
新たな戦場に赴いた彼らを待ち受けるものとは?
果てなき戦場へ、蘇れ、フリーダム!