GUNDAM WAR

-Destiny of Shinn-

PHASE-11「黄昏の戦士」

 

 

 連合軍による待ち伏せと挟撃を受けることとなったシンたち。ミネルバに向かってカオスが飛行し、アビスとガイアも直立可能な機動飛行体に乗って駆けつけた。

「アビスとガイアは自力の飛行が持続しないから、深追いするなよ!」

「うん・・」

 スティングが呼びかけて、ステラが頷く

「これじゃスティングがいいとこ取りじゃんかー・・」

「文句を言うな。好きでこんなことになっているんじゃないんだから・・」

 不満を口にするアウルに、スティングが言い返す。

「そういうことだ。わがまま言っている状況じゃないんでな。」

 ウィンダムで出撃したネオも、スティングたちに呼びかける。

「オレとスティングが先行する!アウルとステラは援護射撃だ!」

「分かった、ネオ・・!」

「うん、ネオ・・・」

 ネオが指示を出して、スティングとステラが答える。

「チェ!暴れられないなんてなぁ〜!」

 アウルは不満を口にしながらも、ネオの指示に従うことにした。

 

「連合の別部隊、後方から接近中!」

 メイリンがウィンダムたちの接近を報告する。

「シンは後方の部隊を迎撃。レイも援護して。」

 タリアが戦況を分析して、シンたちに指示を出す。

「アイツら、性懲りもなくまた・・!」

 シンがウィンダムたちを見て感情をあらわにする。

「シン、ヤツらをミネルバに近づけさせてはいけない。撃ち落とすぞ。」

「分かってる!オレが全機、叩き落としてやる!」

 レイの呼びかけにシンが答えて、インパルスがウィンダムたちを狙ってケルベロスを発射する。ウィンダムとカオスが素早く動いて、アビスとガイアが左右に動いて、ビームを回避する。

「今まで散々悪い気分を味わわされてきたが、今度はそれをお前らが味わう番だ!」

 スティングが言い放ち、カオスがビーム砲を発射する。インパルスもケルベロスを発射して、両者のビームが相殺された。

「チッ!大振りの攻撃じゃダメか・・!」

「だがスピードはこっちが上だ。回避しながら近づけばいい。」

 舌打ちするスティングに、ネオが言いかける。

「このスピードについてこれるかな、ザフトのエースくん!」

 ネオが言い放って、ウィンダムが加速してミネルバに近づいていく。インパルスがレールガンを発射するが、ウィンダムはこのビームもかわす。

 レイのザクがビーム突撃砲を構えて、迫るウィンダムを狙撃する。ネオが回避しようとするが、ビームはウィンダムの左腕をかすめた。

(あの時と同じだ・・!)

(アイツの動きが、手に取るように分かる・・!?

 ネオとレイが互いに対して違和感を感じていく。

(今は戦いに集中しなくては・・油断すれば、オレたちは一気に叩かれる・・・!)

 レイは動揺を抑えて、戦いに意識を戻す。

 ザクとインパルスがビームを発射し続けるが、ついにウィンダムが距離を詰めてきた。

「もらった・・!」

 ネオが言いかけて、ウィンダムが手にしたビームサーベルを振りかざす。

「くそっ!」

 シンが激情を募らせ、インパルスがビームジャベリン「デファイアント」を手にして、ビームサーベルを受け止めた。

 インパルスが続けてミサイルランチャーを発射する。ネオが気付いて、ウィンダムがインパルスから離れてミサイルをかわす。

「くらえ、新型!」

 スティングが言い放ち、カオスが再びビーム砲を発射する。インパルスが再びケルベロスを発射してビームを相殺するが、爆発の衝撃に揺さぶられる。

「くっ・・!」

「もうひと息だ・・一気に攻めてやる!」

 シンがうめき、スティングが追撃を狙う。

「早まるな、スティング!

 ネオがスティングを呼び止めた瞬間、ミネルバが機関砲を発射して、カオスを迎撃する。

「くっ・・小賢しいマネを・・!」

 カオスが後退して、スティングがミネルバに毒づく。

「今のうちに体勢を整えるぞ、シン・・!」

「分かってる、レイ!」

 レイの呼びかけに答えて、シンが気を引き締めなおす。ザクとインパルスが突撃砲とレールガンで応戦する。

 アスランのセイバーも牽制を続け、ルナマリアのザクが狙撃してミネルバの活路を開きつつあった。

「このままでは、別部隊が持たなくなる・・!」

 ネオが劣勢を感じて焦りを噛みしめる。

「だったらさっさとケリつけりゃいいだけのことだ!」

 スティングがいきり立ち、カオスがミサイルを発射する。インパルスがレールガンを発射して、ミサイルを破壊した。

 そのとき、その爆発の煙の中から、機動飛行体に乗っているアビスが、ビームランスをにして飛び出してきた。

「もらった!」

「何っ!?

 アウルが叫んで、シンが驚愕する。アビスが振り下ろしたビームランスを、インパルスがデファイアントで受け止める。

「ぐっ!」

 インパルスがアビスにデファイアントをはじき飛ばされてしまう。

「シン!」

 レイが叫び、ザクが突撃砲を発射してアビスを引き離す。そこへカオスが間髪置かずに迫ってきた。

「まずはお前だ、新型!」

 スティングが言い放ち、カオスがインパルスに向けてビームサーベルを突き出してきた。シンが回避行動を取ろうとするが、インパルスは回避が間に合わない。

 そのとき、1つのビームが飛び込み、ビームサーベルを持つカオスの右手を撃ち抜いた。

「何っ!?

 突然の襲撃にスティングが驚愕する。損傷したカオスがインパルスたちから離れる。

「な、何だっ!?

 アウルが声を上げて、ビームの飛んできたほうに目を向ける。

 ミネルバの上方から、1機の機体が降下してきた。オレンジカラーのブレイズザクファントムである。

「オレンジのザク・・!?

「ザクということは、オレたちの・・」

 シンとレイがザクを見て声を上げる。

「ミネルバ、応答してくれ。オレはフェイスのハイネ・ヴェステンフルスだ。貴艦に加勢する。」

 オレンジのザクのパイロット、ハイネが呼びかけてきた。

(フェイスの・・議長の仰っていた・・・!)

 ギルバートから通達されていたことを思い出すタリア。

「協力、感謝します。インパルスの援護を頼みます。」

「了解!というわけだ、インパルス!気を引き締めなおしてくれよ!」

 タリアに答えたハイネが、シンたちに呼びかける。オレンジのザクがミネルバの上に着艦した。

「白いザク、オレと一緒に他のヤツを引き離す!インパルスはカオスを仕留めろ!」

「は、はいっ!」

 ハイネが呼びかけて、シンが落ち着きを取り戻して答えた。彼が損傷したカオスに目を向けて、インパルスがケルベロスの発射体勢に入る。

「そうはさせるか!」

 ネオが言い放ち、ウィンダムがミサイルを発射する。レイとハイネ、2人のザクが突撃砲を発射して、ミサイルを撃ち落とした。

「お前たちの相手はオレたちだぜ!」

「これ以上は、お前達の好きにはさせない・・・!」

 ハイネが言い放ち、レイが鋭く言いかける。2機のザクが射撃でウィンダムをけん制する。

「くそっ!やられたまま戻れるか・・!」

 スティングがいら立ちを膨らませ、カオスがビーム砲を放とうとする。

「させるか!」

 シンが激情をあらわにして、インパルスがレールガンを発射する。

「うぐっ!」

 カオスのビーム砲の発射口にレールガンのビームが命中して、スティングが揺さぶられてうめく。

「くっそぉ・・アイツ・・!」

「スティング、逃げて!」

 いら立ちを膨らませるスティングに、ステラが呼びかける。ガイアが前進して、ビームライフルを手にして連射する。

「よせ、ステラ!ガイアで特攻はムチャだ!」

 ネオが呼び止めるが、ステラは聞かず、ガイアがさらにビームを放つ。インパルスがケルベロスを発射して迎撃し、ガイアが左腕を撃たれた。

「くっ・・!」

 ガイアも損傷を受けて、ステラがうめく。

「ステラ、お前も戻れ!スティング、ステラを連れていけ!」

 ネオがステラとスティングに呼びかける。カオスがガイアをつかんで、艦へ引き返す。

「こうなったら、オレがアイツらを!」

 アウルがいきり立ち、アビスがミネルバに迫る。アビスが振り下ろしたビームランスを、インパルスは装備していた対装甲ナイフ「フォールディングレイザー」で受け止める。

 しかし小型のフォールディングレイザーでは、ビームランスを受け切ることができない。

「オレがいることを忘れるなって!」

 そこへハイネのザクが飛び出してきて、ビームトマホークを振りかざして、アビスのビースランスを跳ね上げた。

「何っ!?

「今だ!」

 驚愕するアビスと、シンに呼びかけるハイネ。インパルスがレールガンを発射して、アビスの右腕と胴体に命中させた。

「ぐっ!・・コ、コイツら・・!」

「アウル!・・くっ・・!」

 うめくアウルに叫ぶネオが、セイバーたちに対して劣勢を強いられている他の部隊を見て、危機感を覚える。

「全艦撤退だ・・アウル、オレたちも下がるぞ・・!」

 ネオが声を振り絞り、ウィンダムがアビスを連れてミネルバから離れていった。

「アイツら、逃がすか!」

「いや、ヤツらは追わなくていい。今はミネルバの援護に集中だ。」

 ネオたちを追撃しようとするシンを、ハイネが呼び止める。ミネルバの前方を塞いでいた連合の部隊も、撤退を始めていた。

「助かりましたね・・これで前進できます!」

 アーサーが安心と喜びを見せて、タリアが小さく頷いた。セイバーがミネルバに戻り、インパルスたちとともに収容された。

 

 ミネルバのドックにて機体から降りるシンたち。オレンジのザクからもハイネがコックピットから出てきた。

「あなたがオレを・・自分を助けてくれたのですか・・・!?

 シンがハイネに歩み寄り、声をかける。

「お前がインパルスのパイロットか。で、アイツとそこの嬢ちゃんがザクで、アイツがセイバーか。」

 ハイネがシンに答えて、レイ、ルナマリア、アスランへと指を差していく。

「オレはフェイスのハイネ・ヴェステンフルスだ。」

「あなたも、フェイス・・!?

 自己紹介をしたハイネに、シンが驚きを見せる。彼がレイ、ルナマリアとともに敬礼する。

「そんなかしこまらなくてもいいぜ。オレはそういうの、あんまり気にしないほうだからな。」

 ハイネが気さくに答えてから、アスランに歩み寄る。

「お前があのアスラン・ザラだな。デュランダル議長から話は聞いてるぜ。」

「はい。よろしくお願いします、ヴェステンフルス隊長。」

 ハイネが気さくに声をかけると、アスランが真剣な面持ちで挨拶する。

「真面目だな。もうちょっと肩の力を抜けって。」

「は、はぁ・・」

 ハイネが言いかけて、アスランが戸惑いを見せる。

「まぁいいや。グラディス艦長にも挨拶に行かないとな。」

 ハイネは気持ちを切り替えて、ドックを後にした。

「オレンジ色のザク・・もう1人フェイスがここに来るなんて・・・!」

「これでオレたちは無敵も同然だぞー!」

 ヨウランがオレンジのザクを見上げて、ヴィーノが勝ち誇る。

「ヴィーノのヤツ、調子に乗って・・戦うのはオレたちだっていうのに・・」

「でも、フェイスがここに3人も集まるなんて、ホントにすごいことじゃない。」

 ヴィーノ態度に呆れるシンに、ルナマリアが微笑みかける。フェイスが3人もミネルバにいることに、彼女も戸惑いを感じていた。

 

 ミネルバの指令室に赴いたハイネが、タリアに向けて敬礼を送る。

「ハイネ・ヴェステンフルス、ただ今到着しました。といっても、戦闘中の介入になりましたが。」

「議長から話は聞いているわ。私たちが向かう基地に、あなたの新しい機体もあるということもね。」

 挨拶するハイネに、タリアが事情を語る。

「今回はあなたのおかげで助かったわ。ありがとう、ヴェステンフルス隊長。」

「“ハイネ”でいいですよ。少しの間だけ、オレもミネルバに同乗することになったので、よろしくお願いします。」

 礼を言うタリアに、ハイネが気さくに答える。

「それで、あなたから見てここのパイロットはどう?」

 タリアがハイネにシンたちのことを聞く。

「初々しいけど力があるのは確かです。これからの成長が楽しみですよ。」

 ハイネがシンたちのことを考えて笑みをこぼす。

「特にインパルスのパイロットに期待ですね、オレとしては。」

「シンは日に日に強くなってますよ。アイツのおかげで危機を乗り越えたこともありましたし・・!」

 ハイネがシンのことを口にして、アーサーが笑みをこぼす。

(士官学校での成績は、シンはレイよりも下だった。インパルスのパイロットに選ばれたのがレイではなくシンになったことに、私には疑問があった・・)

 タリアが心の中でシンに関する疑問を感じていた。インパルスのパイロットにシンを選んだのは、ギルバートだった。

(でもその答えが、シンのポテンシャルにあると分かった・・ギルバートは、このことを分かっていたのかしら・・?)

 ギルバートの考えと選定について、タリアがさらなる疑問を感じていく。

 ギルバートは遺伝子工学に深く精通している。シンの潜在能力を遺伝子を調べて見出したのではないかと、タリアは推測した。

「ここのパイロットの指揮はアスランが一任しているわ。ハイネ、あなたもここに滞在するというのなら、アスランのサポートとシンたちの指揮をお願いしてもいい?」

「それはもちろんです。オレもアイツらと一緒に戦えることを嬉しく思ってますので。」

 タリアの投げかけた言葉に、ハイネが笑みを見せたまま答える。

「宇宙からの長旅で疲れているでしょう。すぐに部屋に案内するわ。」

「ありがとうございます、艦長。では、オレはこれで。」

 タリアの言葉に感謝して、ハイネは指令室を後にした。

(これで、シンたちがどう成長していくか・・)

 シンたちのことを考えるタリア。彼らの成長と活躍が作戦や戦局にどう影響するかを、彼女は気に留めていた。

 

 連合の包囲網を突破したミネルバは、黒海沿岸にあるディオキア基地に到着した。そこではハイネの新しい機体が運ばれていた。

「これが、ヴェステンフルス隊長の新しい機体・・!」

 ヨウランがその機体「グフ・イグナイテッド」を見上げて戸惑いを覚える。

「ザクに続く量産型の機体。フォースインパルスやセイバーみたいに、単体で飛行できる機体・・!」

「これで空中戦をできる機体が3機になるってわけだ!」

 ヨウランが続けて呟いて、ヴィーノが喜ぶ。

「オレもこのままミネルバに乗ることになった。というわけでアイツの整備、お前らも頼んだぞ。」

 そこへハイネがやってきて、ヨウランたちに呼びかけてきた。

「は、はいっ!」

 ヨウランとヴィーノが気合を入れて返事をした。

「そしてインパルスとセイバーか・・遜色ない戦力だな。」

 ミネルバの機体のことを考えて、ハイネが呟く。そんな彼を、アスランは遠くから目にして戸惑いを覚える。

 同じく、シンもハイネを見て戸惑いを感じていた。

 

 

次回予告

 

新たに戦線に加わったハイネ。

彼の意思が、シンたちの心に新たな波を打つ。

戦士として、人として、ハイネがシンたちに指し示すものとは?

 

次回・「戦士の意志」

 

心の行き先、指し示せ、グフ!

 

 

作品集

 

TOPに戻る

inserted by FC2 system