GUNDAM WAR
-Destiny of
Shinn-
PHASE-09「インド洋の戦い」
インド洋を目指し移動を続けるミネルバ。しかしそのレーダーが、接近する艦隊を捉えた。
「針路方向に艦隊あり!連合軍です!」
メイリンが報告して、タリアとアーサーがモニターを注視する。モニターには前方で待ち構えている連合の艦隊が映し出されていた。
「こちらの動きを読んでいたようね・・先回りして待ち伏せして、攻撃しようという算段ね・・」
タリアが連合の動きを推測して呟く。
「ここまで接近していては、旋回しても回り込まれるだけよ。打って出て撃退します。」
「了解です、艦長!」
指示を出すタリアに、アーサーが敬礼して答える。
「コンディションレッド発令!各モビルスーツ、発進準備!」
「コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機してください。」
タリアが呼びかけて、メイリンが命令を伝達する。ミネルバが連合に対して臨戦態勢に入った。
格納庫に集合したシン、レイ、ルナマリア。3人はアスランの前に整列した。
「今度の相手は連合軍だ。先日の包囲網突破を受けて、敵は本腰を入れてこちらを潰しにかかるだろう。」
アスランがシンたちに向けて檄を飛ばす。
「オレたちの目的は連合の艦隊を撃退し、この海域からのミネルバの脱出を援護すること。各々の即断即決も重要だが、この命令から外れる勝手な行動は慎むように。」
「了解!」
アスランが投げかけた言葉に、レイとルナマリアが答える。
「シン、お前もいいな?」
「は、はい・・」
アスランに言われて、シンが遅れて答える。彼の態度を気にしながらも、アスランはこれから起こる戦いに集中する。
「よし。全員機体に乗って発進だ。」
「はい!」
アスランの号令を受けてシン、レイ、ルナマリアがコアスプレンダーとザクに乗り込んだ。アスランもセイバーに乗り込んで発進に備える。
「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」
「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」
「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」
シン、ルナマリア、レイがコアスプレンダー、ガナーザクウォーリア、ブレイズザクファントムでミネルバから出撃した。コアスプレンダーがチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットと合体して、フォースインパルスとなった。
「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」
アスランの駆るセイバーも続けて発進した。セイバーは戦闘機形態からモビルスーツ形態に変形した。
「オレとシンで先行する!レイとルナマリアはミネルバの防衛だ!」
「はい!」
アスランが指示を出して、ルナマリアが答える。
「こちらから先に仕掛けるな、シン。まずは相手の出方を見計らう。」
「そんな悠長なことする必要はないですよ。アイツらは敵なんですから、さっさと片付けちゃえば・・」
続けて呼びかけるアスランに、シンが不満げに言い返す。
「そんな野蛮な行動は慎め。オレたちは任務で出ているんだ。ケンカをしているんじゃない。」
アスランが注意を投げかけ、シンが不満を感じながらも黙る。連合の艦隊に向かっていたインパルスとセイバーが、スピードを落とす。
「こちらの針路を開けてもらいたい。戦闘することなく進行できるなら最善のはずだろう。」
アスランが連合に向けて呼びかける。彼は警戒心を強めて、連合の出方をうかがった。
アスランからの呼びかけは、ネオたちにしっかりと届いていた。
「向こうは道を開けろと言ってきてますが・・?」
「それで、はいそうですかと聞いてたら、こっちの面目丸つぶれだ・・」
オペレーターが言いかけると、ネオが呟きかける。
「敵モビルスーツに向けて砲撃!その後すぐにスティングたちを出す!」
「了解!目標、前方、敵モビルスーツ!砲撃開始!」
ネオが号令を出して、戦艦がインパルスとセイバーに向けて砲撃する。シンとアスランが反応して、インパルスたちが回避する。
「カオス、アビス、ガイア、発進!」
オペレーターが呼びかけてカオス、アビス、ガイアが発進準備に入る。
「スティング・オークレー、カオス、発進する!」
「アウル・ニーダ、アビス、出るよ!」
「ステラ・ルーシェ、ガイア、出る・・」
スティング、アウル、ステラがカオス、アビス、ガイアで発進した。
「ステラ、お前は艦の上で艦を守れ!」
「でも・・・」
スティングからの指示にステラが言い返そうとする。
「ここは宇宙と違って重力があるんだよ。ガイアはカオスみたいに空飛べないし、アビスみたいに泳げないだろ?」
「・・・分かった・・・」
アウルからも言われて、ステラが不満を感じながら答えた。ガイアが艦体の上に乗って、カオスが飛行して、アウルが海に入ってインパルスとセイバーに向かっていく。
「アーモリーワンで強奪された新型・・!」
アスランがカオスとアビスを見て警戒を抱く。
「ミネルバを守ってこの戦域を脱出させるのが最優先だ。深追いして敵の挑発に乗るようなことはするな。」
「分かってますよ、それは!」
アスランが呼びかけて、シンが不満げに答える。カオスがビーム砲を発射して、インパルスとセイバーが左右に動いて回避する。
「また新しい機体が出てきたのか!?」
スティングがセイバーを見て、感情をあらわにする。カオスがビームライフルを手にして、セイバーを狙って射撃を仕掛ける。
「アイツ・・!」
カオスに対していら立ちを噛みしめるシンだが、海を進むアビスがビーム砲を発射してきた。シンが反応し、インパルスがビームをかわす。
インパルスがビームライフルを発射して反撃するが、アビスは海中を自在に動いてビームをかわしていく。
「くそっ!すばしっこいヤツが!」
シンがいら立ちを感じて、インパルスがさらに射撃する。しかしアビスに軽々とかわされていく。
「ヘッ!海にいる相手にビーム攻撃は鈍くなるみたいだな!」
アウルが自信を感じて、インパルスをあざ笑う。
「今度はこっちから行くよ!」
アウルが言い放って、アビスがビーム砲を放つ。インパルスは回避するも、反撃がままならずに防戦一方になる。
アビスがビームランスを手にして、インパルスの真下から飛び出してきた。
「もらった!」
「何っ!?」
言い放つアウルと、毒づくシン。アビスが振りかざしたビームランスを、インパルスが紙一重でかわす。
インパルスがビームサーベルを手にして、アビスが突き出したビームランスを受け止めた。
「コイツ、しぶといヤツだな!」
アウルはいら立ちを感じて、アビスがさらにビームランスを振りかざす。しかしインパルスのビームサーベルに、ビームランスを弾かれる。
「なっ!?」
攻撃が通じないことに驚くアウル。インパルスがビームサーベルを振りかざすが、アビスは降下してかわして、海の中に潜った。
アスランのセイバーとスティングのカオスが、上空でビームサーベルをぶつけ合う。
「コイツと同じ新型というだけあって、なかなかの性能じゃないか・・けどな・・!」
スティングがいら立ちを噛みしめて、カオスがセイバーを追う。
「モビルスーツの性能だけで強さが決まるわけじゃない!」
スティングが言い放ち、カオスが軌道兵装ボッドから誘導ミサイルを発射する。アスランが即座に反応して、セイバーがビームライフルを手にして発射して、ミサイルを撃ち抜く。
カオスが間髪置かずに飛びかかり、ビームサーベルを突き出す。アスランは反応して、セイバーがビームサーベルを振りかざして、カオスのビームサーベルを弾いた。
「何っ!?」
奇襲をかわされたことに、スティングが驚愕する。セイバーがさらにビームサーベルを振りかざして、カオスの左腕を切り裂いた。
「バカな!?・・このオレが・・!?」
自分が追い詰められていることに、スティングは驚愕を募らせていた。
インパルスとセイバーに対して劣勢になっているアウルとスティング。彼らの戦況を見て、ネオも思い立つ。
「オレもウィンダムで出る。ここの指揮は頼むぞ。」
「了解です、大佐。」
ネオが呼びかけて副官が答える。ネオはドックへ向かい、紫色をしたウィンダムに乗った。
「ネオ・ノアローク、ウィンダム、出るぞ!」
ネオの駆るウィンダムが発進して、スティングたちと合流した。
「大丈夫か、お前たち!?」
「ネオ!」
呼びかけるネオに、スティングとアウルが声を上げる。
「その赤い機体はオレが相手をする。スティングはアウルと協力してヤツを落とせ。」
「くっ・・仕方ないな・・・!」
ネオからの指示に、スティングが渋々従う。カオスが離れ、ウィンダムがセイバーの前に立ちはだかる。
「どうやらそちらの隊長機のようだな?隊長同士、決着を着けるとするか。」
ネオが言いかけて、ウィンダムがビームサーベルを手にする。セイバーもビームサーベルを構えて、ウィンダムを迎え撃った。
海中のアビスに悪戦苦闘のインパルス。そこへカオスが加勢し、インパルスにビームライフルを発射してきた。
「あの人、何をやってるんだよ!?」
シンがアスランへの不満を口にして、インパルスが続けてビームライフルを発射する。カオスとアビスはスピードを上げて、ビームを回避する。
「1機でオレたちの相手が務まると思ってるのか!?」
「今までの借り、今日で返してやるよ!」
スティングとアウルが高らかに言い放つ。カオスが誘導ミサイルを、アビスがビーム砲を発射する。シンがビームは回避しようと考えるが、インパルスはミサイルを当てられる。
「ぐっ!」
インパルスが体勢を崩して、シンがうめく。
「もらった!オレが仕留めるぞ!」
スティングがいきり立ち、カオスがビームサーベルを構えて、ふらつくインパルスに向かって加速する。
「シン!」
シンが窮地に追い込まれていることに、ルナマリアが叫ぶ。しかし彼女とレイのザクは、ミネルバに迫るウィンダムたちの迎撃に手が離せない。
(やられるわけにいかない・・オレはもう、力のないオレじゃない!)
激情を膨らませた瞬間、シンの中で何かが弾けた。彼の感覚が研ぎ澄まされ、インパルスが胴体を屈めて、カオスの突き出したビームサーベルをかわした。
「何っ!?」
攻撃をかわされたことに驚愕するスティング。次の瞬間、インパルスがビームサーベルを振りかざして、カオスの右腕を切り裂いた。
「バカな!?・・こんなことで、このオレが・・!?」
「スティング!・・アイツ!」
愕然となるスティングと、叫んでインパルスへの怒りを浮かべるアウル。アビスが両肩のビーム砲を発射するが、インパルスは素早くかわしてアビスに詰め寄ってきた。
「なっ!?」
アウルも攻撃をかわされて驚く。インパルスがビームサーベルを突き出して、アビスの左肩を貫いた。
「ぐっ!」
アウルが衝撃に揺さぶられてうめき、アビスがとっさに後ろに下がってインパルスから離れる。アビスは落下して、海の中に潜ってやり過ごそうとする。
「ここにいれば、いくらアイツがすごくてもうまく当てられは・・!」
アウルは海中でやり過ごして体勢を整えようとした。するとインパルスがビームライフルを構えて撃ってきた。
ビームはアビスの右肩に命中した。
「何だとっ!?」
またも攻撃を当てられたことに、アウルは目を疑う。
「アウル、引き上げろ!このままじゃ撃墜されるぞ!」
スティングが危機感を覚えて、アウルに呼びかける。
「ちくしょう・・今度は必ず仕留めてやるからな・・!」
彼の言葉を聞き入れて、アウルはインパルスに向けて捨て台詞を吐く。カオスとアビスがインパルスから離れていく。
「逃がすか!」
シンが目つきを鋭くして、インパルスがカオスたちを追いかけていった。
「スティング!アウル!」
インパルスに追い詰められるカオスとアビスを見て、ステラが声を荒げる。
「アイツ・・倒す・・!」
彼女が敵意を浮かべて、ガイアがスラスターを使って浮遊して、カオスたちに向かっていく。
「ス、ステラ!?」
ガイアの突撃にスティングが驚きの声を上げる。ガイアがビームライフルを手にして発射しながら、海岸のほうへ向かっていく。
「ステラ、やめろ!今のアイツは今までのアイツじゃない!」
スティングが呼び止めるが、ステラのガイアは攻撃をやめない。
「アイツも・・ここで討つ!」
シンがガイアにも鋭い視線を向けて、インパルスが追いかける。インパルスはビームをかわして、ガイアに一気に詰め寄った。
インパルスが振りかざしたビームサーベルが、ガイアのビームライフルを切り裂いた。
「そんな!?・・・コイツ・・コイツ!」
驚きの声を上げたステラが、インパルスへの怒りを募らせる。ガイアがビームサーベルを手にして振りかざすが、インパルスのビームサーベルの一閃に力負けする。
ステラが怒りをさらに膨らませて、ガイアが4足歩行型のモビルアーマー形態に変形して、背部からビームブレイドを発してインパルス目がけて突っ込む。
「もらった!」
ステラが言い放ち、ガイアがインパルスを切り裂こうとする。しかしインパルスはガイアの真上を飛び越えた。
インパルスがビームサーベルを突き出し、ガイアの背中を切りつけた。
「キャッ!」
ガイアが地に伏して、ステラが衝撃に揺さぶられて悲鳴を上げる。
“ステラ、下がれ!もう十分だ!”
「ネオ・・・うん・・・!」
ネオが通信で呼びかけて、ステラが頷く。ガイアが走り出してインパルスから離れていく。
「逃がすか!」
シンがいきり立ち、インパルスがガイアを追いかける。するとセイバーと交戦していたネオのウィンダムが、インパルスに向けて短剣型爆弾「ステイレット」を発射してきた。
「くっ!」
インパルスが盾で防ぐも、ステイレットの爆発に押されて、シンがうめく。その間にウィンダムがガイアを連れて離れて、カオスたちとともに艦に戻った。
「ちくしょう・・逃げられた・・・!」
離れた連合の艦隊を見失い、シンがいら立ちを募らせていた。
「連合が撤退するか・・シン、オレたちもミネルバに戻るぞ。」
アスランが呼びかけ、シンがミネルバに引き返そうとした。
そのとき、シンは近くの施設から逃げ出そうとしている人々を目撃した。壁に阻まれて逃げられなくなる人々を、施設を管理している連合の軍人が追いかけて捕まえて連れ戻そうとする。
「やめろ!」
シンが怒りを覚えて、インパルスが人々と軍人たちに迫る。軍人たちが捕まえている人たちを放して、慌てて銃を構えて発砲する。
しかしインパルスには通用せず、軍人たちは悲鳴を上げて逃げ出していく。インパルスに対して恐怖を覚える人々だったが、インパルスが壁を壊して逃げ道を作ったことで、戸惑いを覚える。
「人を平気で傷つけ、命を弄ぶヤツがいるから・・・!」
連合の軍人たちに対して、シンが怒りを膨らませる。彼は施設を破壊しようと考え、インパルスがビームサーベルを振り下ろす。
「やめろ!」
アスランが叫び、セイバーがインパルスに向かって加速する。その瞬間、アスランの中で何かが弾けた。
セイバーが駆けつけてビームサーベルを出して、インパルスのビームサーベルを受け止めた。
「なっ!?」
攻撃を止められたことに、シンが驚愕する。
「何をやっている!?オレたちの相手は連合の艦隊だ!この施設を攻撃することじゃない!」
「だけど、殺されそうになっているんですよ!そんなことをするヤツも、それを見捨てることも、許せることじゃない!」
呼びかけるアスランに、シンが反論する。インパルスがビームサーベルを押し込もうとするが、セイバーに押し返される。
次の瞬間、インパルスの胴体に、セイバーが左手で持ったビームライフルの銃口が付きつけられた。
「オレたちはザフト、軍人だ・・感情に任せた勝手な行動は、部隊や軍に悪い影響を及ぼすことになる・・!」
「でもだからって・・・!」
「すぐに戻れ!さもないと攻撃するぞ・・!」
言い返すシンにアスランが警告する。不満を感じながらも、シンはアスランに従うしかなかった。
インパルスとセイバーもミネルバへ引き返していった。
次回予告
何をすることが正しいことなのか?
どのような形が、戦士の条件なのか?
不満と怒りを抱えるシンの、アスランとのすれ違い。
衝突と対話の中、シンが見出すのは・・・
黄昏の空、駆け抜けろ、ミネルバ!