GUNDAM WAR
–Destiny
of Shinn-
PHASE-05「世界が終わる時」
地球に向けて進行するユニウスセブン。ジュール隊が破砕作業を進める中、シンたちがジンたちを迎撃していた。
「こちらの打ち込み、完了しました!」
「よし、次だ!オレたちが援護するから急げよ!」
ザクのパイロットにディアッカが呼びかける。ザク2機が新たなメテオブレイカーを受け取りに向かう。
「赤いザクの援護射撃も、頼りにさせてもらうぞ!」
「はいっ!」
ディアッカがさらに呼びかけて、ルナマリアが答える。2機のガナーザクウォーリアが次の破砕地点へ向かった。
ユニウスセブンの破砕作業のために、他のザフトの部隊が救援に駆けつけていた。
「各部隊も破砕とサポートを行っています。」
メイリンがユニウスセブン付近の状況を報告する。
「これなら落下する前に破壊することは可能ですね。」
「安心するのは早いわよ、アーサー。何が起こるのか分からないのだから、用心に越したことはないわ。」
笑みをこぼすアーサーに、タリアが注意を口にする。彼女は警戒を絶やしてはいない。
「ユニウスセブンに接近する艦あり!これは・・ボギーワンです!」
「えっ!?」
そのとき、メイリンがガーティルー接近を告げて、タリアが警戒を強める。ミネルバのモニターにガーティルーの艦影が映った。
「アイツら・・まさか、アイツらもユニウスセブンの破壊に・・・!?」
「そうならいいのだけれど・・この機に乗じて、私たちを攻撃してくる可能性もあるわ・・・」
動揺を見せるアーサーに答えたタリアは、ガーティルーに対する警戒を絶やさなかった。
ガーティルーからユニウスセブンを目撃していたスティング、アウル、ステラ。出撃準備を整えた3人の前に、ネオがやってきた。
「あれ、ユニウスセブンだろ?地球に向かってるってホントなのか?」
「そうだ。このままだとあれが地球にぶつかることになる。」
アウルが聞いてきて、ネオが落ち着いた口調で答える。
「それじゃ、地球にいる人、みんな・・・」
「それ以上言うな、ステラ・・そうさせないために、悪いヤツをやっつけないとな・・」
不安を見せるステラをネオがなだめる。
「ネオ、その悪いヤツらって?」
「ザフトだ。ザフトが地球にあれを落とそうとしている・・」
アウルが投げかけた疑問に、ネオが答える。
「スティング、アウル、ステラ、出撃だ!ユニウスセブンにいるヤツらは、全てザフトだ!」
ネオが指示を出して、スティングたちがカオス、アビス、ガイアに乗り込んだ。
「スティング・オークレー、カオス、発進する!」
「アウル・ニーダ、アビス、出るよ!」
「ステラ・ルーシェ、ガイア、出る・・」
スティング、アウル、ステラの乗るカオス、アビス、ガイアがガーティルーから発進した。
「あれは、アーモリーワンで強奪された新型・・!?」
ディアッカがカオスたちに気付いて声を荒げる。
「おいおい、ふざけたマネしちゃってさ!」
アウルが不満の声を上げて、アビスが両肩のビーム砲を発射する。2機のザクが左右に動いて、ビームを回避する。
「こんなときに出てくるなんて・・・!」
ルナマリアが不満の声を上げて、ザクがビーム砲を構えて発射する。しかしアビスに軽々とビームをかわされる。
「邪魔しないで!今はアンタたちの相手をしてる暇はないのよ!」
「ヘッ!コイツを落とそうとしてるザフトが!」
言い放つルナマリアに、アウルが不満を叫ぶ。アビスがビームランスを手にして、ザクに迫る。
そこへもう1つビームが飛んできて、アビスがとっさに全身を止めてビームを回避した。撃ったのはディアッカのザクだった。
「そんなに相手がしたいんなら、オレが狙い撃ちしてやるよ!貫通されたくなかったら、おとなしく帰りな!」
「コイツ・・なかなかやるじゃんか・・!」
ディアッカが言い放って、アウルが毒づく。ディアッカのザクを警戒して、アビスは突撃を仕掛けられなくなった。
スティングのカオスとステラのガイアが、シンのインパルスに向かっていく。
カオスとガイアがビームサーベルを手にして振りかざす。インパルスもビームサーベルを構えて、回避と防御をしていく。
「お前たち・・地球がどうなってもいいっていうのか!?」
「みんなにひどいことをする悪いヤツが・・!」
怒鳴りかかるシンだが、ステラは彼らが悪いことをしていると思い込んでいた。
スティングとステラが敵意を強めて、カオスとガイアがさらにビームサーベルを振りかざす。ビームサーベルで受け止めるインパルスだが、徐々に追い詰められていく。
「シン!」
レイがシンの援護を考えるが、ザクがジンに行く手を阻まれる。
「今度こそお前を仕留められそうだな、ザフトの新型!」
スティングがあざ笑い、ガイアとビームサーベルをぶつけ合っているインパルスに向かってカオスが飛びかかる。ガイアを引き離すインパルスだが、回避が間に合わない。
そこへスカイブルーの胴体をしたザク「スラッシュザクファントム」が飛び込み、ビームアックス「ファルクス」を振りかざしてきた。スティングが気付き、カオスが離れて回避する。
「あれは・・ミネルバにある機体じゃない・・・!」
「貴様も“赤”だというのに何だ、その不様は!?」
声を荒げるシンに、ザクのパイロットであるイザークが怒鳴ってきた。戦況を見かねたイザークはザクでボルテールから発進したのである。
「いつまでもこのような醜態をさらすようでは、赤服が泣くぞ!その機体、自分の手足のように使いこなしてみせろ!」
「は、はい・・!」
イザークが檄を飛ばして、シンが動揺を感じながら答える。
「また悪いのが出てきた・・・悪いものは・・倒す・・・!」
ステラが目つきを鋭くして、ガイアがザクに飛びかかる。
「最新鋭の機体に乗ったところで、オレに勝てると思うな!」
イザークが言い放ち、ザクがファルクスを振りかざしてビームサーベルを弾いて、ガイアを突き飛ばす。
「うぐっ!」
ステラが衝撃に襲われてうめく。
カオスが背部にある機動兵装ポッドを射出して、ザクを狙ってビームを発射する。イザークは反応して、ザクがビームをかわす。
「バカな!?最新鋭の機体が、量産型に押されている!?しかも2対1で!?」
スティングがザクに対して劣勢を強いられていることに驚愕する。
「あれが、ヤキン・ドゥーエで戦い抜いたパイロットの力なのか・・・!」
シンがイザーク、そしてディアッカの戦いを目の当たりにして、戸惑いを感じていた。
イザークもディアッカも2年前の戦争で前線に出ていた。今は機体を乗り換えているが、その百戦錬磨の経験は、スティングたちの駆る新型に勝るとも劣らない実力を発揮させていた。
「貴様、名前は何だ?」
「はい!シン・アスカです!」
イザークに問われてシンが答える。
「オレの動きを頭に叩き込んでおけ、シン・アスカ。そして己の任務を全うしろ!」
「了解!」
イザークに呼びかけられて、シンが答える。イザークとディアッカの戦いを意識しながら、シンはインパルスを駆り、ジンの捜索に向かった。
メテオブレイカーを運ぶザクたち。彼らは次の破砕地点を目指して移動していた。
そこへ1機のジンが飛び出して、ザクの1機が斬機刀に貫かれた。
「おわっ!」
貫かれたザクが体勢を崩して爆発して、残りのザクもメテオブレイカーを支えられなくなり、地表に当てないようにするので精一杯になった。
「しまった・・まだ敵が潜んでいたとは・・!」
「これではメテオブレイカーを運ぶのは・・!」
メテオブレイカーの運搬が困難になり、ザクのパイロットたちが焦りを覚える。さらにジンに追い込まれて、彼らは窮地に立たされた。
そこへシンのインパルスが駆けつけて、ジンの前に立ちはだかった。
「これ以上はやらせないぞ!」
「くっ!ザフトの新型か・・!」
シンが言い放ち、ジンのパイロット、サトーが毒づく。
「早くメテオブレイカーを運んでください!」
「ダメだ!メテオブレイカーを支えきれない!」
シンが呼びかけるが、ザクはメテオブレイカーを運ぶのに手間取っている。
「くそっ!」
シンが毒づき、インパルスがジンを迎え撃つ。ビームサーベルと斬機刀が激しくぶつかり合った。
メテオブレイカーの設置と破砕作業に遅れが出ている状況を、ミネルバも把握していた。ザクが攻撃されて減少したことでメテオブレイカーが運べなくなっていることも。
「まずいですよ・・本当に人手が足りない・・!」
破砕作業が間に合わないと思い、アーサーが困惑を募らせていく。ミネルバにはまだモビルスーツが残っているが、クルーの中のパイロットは出撃して残っていない。
「オレに行かせてください・・!」
そこへ呼びかけてきたのは、カガリとともに指令室に来ていたアスランだった。
「オレも作業に参加させてください!今は1機でも出せたほうがいいときです!」
「しかしあなたはこの艦のクルーではないし、ザフトでもない。それなのにモビルスーツを任せるわけには・・!」
出撃を志願するアスランに、アーサーが苦言を呈する。
「いいえ、あなたがそういうのでしたら、私からお願いします。ミネルバに残っているのはザクだけですが・・」
タリアがアスランの申し出を聞き入れることにした。彼女も1人でも人手を借りたい状況であると考えていた。
「モビルスーツ発進準備。助力に感謝します。」
「いえ、こちらこそありがとうございます・・!」
クルーに指示を出すタリアに、アスランが感謝する。
「アスラン・・・!」
「カガリ、オレは必ず戻る・・待っていてくれ・・・!」
戸惑いを見せるカガリに呼びかけるアスラン。彼は指令室を出て格納庫へ向かい、ザクの1機に乗り込んだ。
“ザク、発進どうぞ。”
「アスラン・ザラ、発進する!」
メイリンのアナウンスの中、アスランの駆るザクがミネルバから発進した。ザクは加速して、インパルスとジンが交戦する近くのメテオブレイカーに駆け寄った。
「援護します!破砕地点へ急ぎましょう!」
「分かった!助かったぞ!」
アスランが呼びかけてパイロットが答える。ザクたちがメテオブレイカーを持ち上げて、改めて破砕地点へ急いだ。
シンのインパルスとサトーのジンが激しい戦いを繰り広げる。性能はインパルスのほうが上だが、サトーは的確にインパルスの動きを読んでいた。
「どうしてこんなことをするんだ・・こんなことをして、どれだけの人が死ぬことになるか、分かってるのか、アンタたちは!?」
シンがサトーたちの行為への怒りをあらわにする。
「そうしなければならんのだ・・我が娘のこの墓標・・落として焼かねば、世界は変わらぬ!」
「娘・・・!?」
サトーの告げた言葉に、シンが動揺を覚える。
「戦いで散った命の嘆きを忘れ、偽りの平和で笑う・・軟弱なクラインの後継者どもに騙され、ザフトは変わってしまった!」
「それは・・・だけど、だからって、こんなことしていいことにはならない!」
サトーの投げかける言葉に、シンが必死に言い返す。
「思い出せ、真の嘆きを!そして心に刻め!我らコーディネイターにとって、パトリック・ザラの取った行動が、唯一正しきものと!」
サトーが言い放って、ジンが斬機刀を振りかざしてインパルスを突き飛ばす。サトーの言葉にシンだけでなく、アスランも動揺を覚える。
パトリック・ザラ。アスランの父で、プラント最高評議会の最高議長だった。ナチュラル、地球連合の殲滅こそが戦争終結につながると考えていたパトリックだが、彼も最終的に命を落とした。
ユニウスセブンの地球への落下を企んだサトーたちは、パトリックの意志に賛同していた。
(父の言うことが・・敵を滅ぼせばいいって考えが・・・!)
アスランが父の考えを否定しようと、心の中で叫ぶ。
「それで関係ない人が死んでいいことになるか!」
シンが怒りと感情をあらわにして、インパルスがビームサーベルを振りかざす。その一閃がジンから斬機刀をはじき飛ばした。
「オレは決めたんだ!戦いのない世の中を取り戻すために、お前たちのような敵に立ち向かうことを!」
シンが自分の考えを口にして、インパルスがビームサーベルでジンの胴体を切り裂いた。
「たとえ我らが倒れても・・この墓標・・必ず地球に・・・」
声を振り絞るサトーだが、ジンが火花を散らして爆発を起こした。
(力がないのが悔しかった・・だから力を求めて、ザフトに入るって志願したんだ・・・!)
シンが自分の決意を確かめながら、気分を落ち着かせようとした。サトーたちとは違うと、シンは自分に言い聞かせていた。
そのとき、ユニウスセブンが大きく揺れ出した。地球の引力圏に引っかかったのである。
「まずい!早く離れないと!」
自分たちも引力に捕まってしまう。シンはインパルスを駆り、ユニウスセブンから離れようとした。
ユニウスセブンの落下が近づき、ガーティルーにいたネオたちも決断を下した。
「そろそろ頃合いか・・撤退だ!3人とも戻ってこい!」
ネオがスティングたちに帰艦を呼びかける。
「このままやられっぱなしで終わりなのかよ・・!」
「戻るぞ・・このままだとオレたちも巻き込まれるぞ・・!」
不満の声を上げるアウルを、スティングがなだめる。カオス、アビス、ガイアがレイたちとの戦闘を中断して引き上げた。
「逃がさんと言いたいところだが、オレたちも離れなくてはならんようだな・・・全機、今運んでいるメテオブレイカーを設置次第、ユニウスセブンから離れろ!」
イザークが毒づきながら、ディアッカたちに撤退を呼びかける。ザクたちがボルテールへ戻り、レイとルナマリアのザクもミネルバへ引き上げた。
メテオブレイカーの設置が完了して、中へ打ち込もうとしたアスランたち。しかし彼以外のザクが、ユニウスセブンから崩れて飛んできた岩石が当たって、メテオブレイカーから引き離された。
「くっ・・早く打ち込まないと、完全に砕くことはできない・・・!」
アスランが毒づき、彼のザクがメテオブレイカー発射を試みる。しかし1機で作業をしなければならない状況になった上に、揺れが大きくなり、アスランは作業に手間取ることになった。
そこへシンのインパルスが駆けつけて、メテオブレイカーを支えた。
「何をやってるんです!?このままだと脱出できなくなりますよ!」
「せめてこれだけでも打ち込まなくては、完全に砕くには至らない・・この後に戦艦が主砲を撃ったとしてもだ・・!」
シンが呼びかけるが、アスランは作業を完遂しようとする。するとインパルスもメテオブレイカーを支えた。
「だったらさっさとやって、さっさと離れますよ!」
「あ、ああ・・分かった・・!」
シンが呼びかけて、アスランが頷く。最後のメテオブレイカーの投下に成功し、インパルスとザクが加速してユニウスセブンから離れる。
「アンタはプラントを裏切ってオーブに就いた・・ザフトのエースだったアンタが・・・!」
「プラントもオーブも関係ない・・地球や多くの命が危機にさらされているのに、何かできるかもしれないのに、何もしないわけにはいかない・・そう思ったんだ・・・!」
疑念を投げかけるシンに、アスランが自分の正直な気持ちを口にする。
「あなたみたいな人が、何でオーブなんかに・・・!」
ザフトの一員だったのにオーブに味方するようになったアスランに、シンは不満とやるせなさを感じていた。
(オレはこのまま、オーブに身を置いていていいのだろうか・・・?)
アスランは心の中で、自分のあり方について疑問を感じていた。
そのとき、ザクの動きに異変が起こった。ザクがユニウスセブンから離れるどころか、徐々に引き寄せられていく。
「まさか、ザクも地球の引力に・・!?」
アスランが緊迫を覚えて、ザクを加速させようとする。しかしザクは上昇できない。
シンが毒づきながら、インパルスが手を伸ばしてザクの手をつかんだ。
「な、何をしている!?いくら新型でも、他のモビルスーツを引っ張って、この引力を抜け出すことは・・!」
「だからって、地球を守ろうとしたアンタを、ほっとけるわけないでしょう!」
呼びかけるアスランにシンが言い返す。ザクを引っ張っていくインパルスだが、スピードが遅くなって引力に引かれていく。
インパルスたちがまだ脱出できないまま、ユニウスセブンは地球への落下に向かって加速していた。
次回予告
地球へと進む墓標。
その結末の先に人々は見たものとは?
束の間の休息の中、苦悩を抱えるシン。
悲しみの地で、新たな邂逅が果たされる。
広がる悲しみへ立ち向かえ、インパルス!