GUNDAM WAR –Complication
of Thought-
PHASE-06「正義」
シンのデスティニーとアセムのダークハウンドは、迫り来るガフランたちを迎撃していた。
「ディーヴァのフォトンブラスターで中央ががら空きになった。連邦のMSが中央突破している。」
「だったらオレたちも・・今がチャンスだ・・!」
呟くアセムにシンが呼びかける。
「お前がどうしたいのかは断定しないが、オレの目的はヴェイガンと連邦、どちらかを壊滅させることではない・・父さんたちのように突撃する必要はない・・」
「アセム・・・」
「だが、オレにはお前たちを止める権利はない。キオのように、しっかりと答えを見出しているなら、それを貫けばいい・・」
戸惑いを覚えるシンに、アセムが言葉を投げかけていく。
そのとき、デスティニーとダークハウンドのレーダーが、接近してくる熱源を捉えた。向かってきたのはレギルスとフォーンファルシアだった。
「ここにいたか、アセム!」
「ゼハート!」
呼びかけるゼハートに、アセムが声を上げる。レギルスとダークハウンドが、ビームサーベルを手にしてぶつけ合う。
「ここでヴェイガンの戦いは終わる!アセム、お前との決着も同じだ!」
「オレはお前たちと戦うつもりはない!この愚かな戦いを止めるために来た!」
「愚か?戦いを止めることそのものが愚かな行為だ!」
「お前の言うその愚かな行為を、オレの息子は真剣に成し遂げようとしている・・!」
言葉を交わし、憤りを覚えるゼハートに対して、アセムが笑みを浮かべる。レギルスとダークハウンドがつばぜり合いをしたまま移動する。
「アセム!」
「あなたも排除対象よ!」
声を上げるシンに向かって、フラムが叫んでくる。フォーンファルシアがフォーンファルシアバトンから放ったビームを、デスティニーが素早くかわす。
「スピードが速い・・なら!」
フラムが目つきを鋭くして、フォーンファルシアがファルシアビットを射出する。デスティニーはビットをかいくぐり、高エネルギー長射程ビーム砲を展開して、フォーンファルシア目がけて発射する。
フラムが反応して、フォーンファルシアがデスティニーのビームをかわす。
「あなたたちは何者なの!?あなたたちも、地球種の味方をしようというの!?」
「オレはお前たちと連邦、どっちの味方にもならない!」
問いかけてくるフラムに、シンが自分の考えを言い放つ。
「アンタたちのように、誰かを犠牲にするようなやり方は許せない・・だからって、自分の目的のために家族の気持ちを踏みにじるのにも納得できない・・だから、オレはオレの答えを貫く!」
シンが決意を伝えて、デスティニーがアロンダイトビームソードを手にして構える。
「オレは戦う・・戦いの運命を背負い、戦いの運命を切り開く!」
シンが言い放ち、デスティニーがフォーンファルシアに飛びかかり、ビームソードを振りかざす。フラムが反応して、フォーンファルシアが後ろに回避するが、けん制のために出したファルシアビットの2機を叩き切られる。
(パワーだけでなくスピードも・・私では太刀打ちできないの・・・!?)
デスティニーの戦闘力に気圧されるフラム。フォーンファルシアがデスティニーから離れて距離を取ろうとする。
「待て!」
シンがフラムを追ってデスティニーを駆る。
デスティニーとフォーンファルシア、ダークハウンドとレギルスが交戦を続けていく。4機はAGE-FXとフリーダム、ザムドラーグの交戦へと飛び込んだ。
「ゼハート!?私の戦いに直接飛び込んでくるとは!」
ゼハートたちが近づいてきたことに、ザナルドが毒づく。シンたちとゼハートたちの攻防は、混迷を深めていく。
「小賢しいわ!1機ずつこの手で仕留めてくれる!」
ザナルドがいきり立ち、ザムドラーグがデスティニーに向かっていく。
「コイツ!」
シンが目つきを鋭くして、デスティニーがビームライフルを手にして発射する。が、ザムドラーグの胴体にビームが弾かれる。
「ビームが効かないなんて、なんて頑丈なヤツだ!」
「パワーもスピードもある・・捕まったらやられてしまう・・!」
毒づくシンにキラが呼びかける。ザムドラーグがザムドラーグキャノンをデスティニーとフリーダム目がけて発射してきた。
デスティニーとフリーダムはビームを回避するが、左右に分断されてしまう。
「今度は貴様の相手をさせてもらう!」
迫り来るザムドラーグに対して、デスティニーがビームソードを構える。身の丈ほどもあるビームソードを目の当たりにして、ザナルドが警戒を覚える。
「ヤツの攻撃力、このザムドラーグすらも上回るパワーを発揮するだろう・・ならば!」
ザナルドは遠距離で攻め立てることを選び、ザムドラーグがビームバルカンの連射でけん制して、ザムドラーグキャノンで仕留める行動に出る。この2つの射撃を、デスティニーは素早く回避していく。
「コイツ、オレを近づかせない気か!?」
ビームソードで斬りかかることができず、シンは焦りを募らせる。そんなデスティニーに、レギルスがレギルスビットを飛ばしてきた。
「アイツまで!」
レギルスにまで攻撃を仕掛けられて、シンとデスティニーは徐々に追い込まれつつあった。
セカンドムーンに向かうフリットと、彼を追走するアスラン。
ジャスティスがビームブーメランを投げ放ち、AGE-1が即座に回避する。その間にジャスティスがビームブーメランをキャッチして、AGE-1の前に回り込んだ。
「もうこれ以上、自分の憎しみのためだけに戦うのはやめてください!」
「お前・・お前もそこまで我々の邪魔をするつもりか・・・!?」
呼びかけるアスランにフリットが憤りをあらわにする。
「ヴェイガンは倒すべき大敵!殲滅以外の末路は私が許さん!1人残らず、自分たちが犯した大罪を償わせる!」
「それが、あなたの正義ですか・・・!?」
ヴェイガンへの憎悪を募らせるフリットに、アスランが問いを投げかける。
「みんな各々の正義がある!平和を求める正義がある!ヴェイガンへの憎しみこそが、今のあなたの正義・・!」
アスランが投げかける思いに、フリットが眉をひそめる。
「だが正義はあなただけにあるんじゃない!キオにもキラにもシンにも、そしてオレにもある!あなたが敵だと、悪だと決めているヴェイガンにも!」
「ふざけるな!ヴェイガンに正義などない!あるのは身勝手に侵略を行い、罪のない者たちに悲劇をもたらす愚かさと罪だけだ!」
「そのあなたの考えも、ヴェイガンからしたら悪なんだ・・だから、勝手な理屈と考えで力を振るうことは、破壊者のやることだ・・!」
怒鳴りかかるフリットに、アスランがさらに呼びかける。
「今あなたがやるべきなのは、過去に縛られることじゃない!キオやエイナス艦長、あなたを思う大切な人たちの思いを受け止めることだ!」
「何も分かっていないのに・・ヴェイガンは、その大切な人を奪った悪魔なのだぞ!」
「その大切な人の願いも、怒りや憎しみのままにヴェイガンを、敵と定めた相手を滅ぼすことだというのか!?」
互いに憤りをぶつけ合うフリットとアスラン。
「ならオレは、オレの正義を貫くために、あなたを討つ!」
決意と信念を言い放つアスラン。彼の中で何かが弾け、感覚が一気に研ぎ澄まされた。
ジャスティスとAGE-1がビームサーベルとシールドライフルを振りかざして、ビームの刃をぶつけ合う。だがAGE-1がジャスティスに押されて突き飛ばされる。
「何っ!?」
押されたことに驚くフリット。ジャスティスが続けてビームサーベルを振りかざしてきて、AGE-1が回避する。
(パワーが一気に上がった!?・・この一瞬でここまで力を上げることなど・・!)
ジャスティスの戦闘力、アスランの力の飛躍にフリットが疑念を抱く。
(動揺するな!ヴェイガンではないが、アイツも我々の戦いを阻む敵に回った!撃退するのみだ!)
フリットが迷いを振り切り、AGE-1がジャスティスに向かっていく。ジャスティスのビームサーベルをシールドライフルの盾部分で受け止めて押しのける。
シールドライフルで即座に射撃しようとしていたのに、アスランが気づく。ジャスティスがビームブレイドを発した左足を振り上げるが、フリットもこれに反応して、AGE-1がシールドライフルからビームを放ち、その反動でジャスティスから離れてビームブレイドをかわす。
「私は立ち止まるわけにはいかない!私が立ち止まれば、ヴェイガンに無惨に命を奪われた者たちが浮かばれない!」
「それが、その人たちの望んでいることだと、本気で思っているのか!?」
「ならばなぜ死ななければならない!?ヴェイガンに殺されなくてはならない!?」
アスランとフリットが怒号を言い放ち、AGE-1のシールドライフルから放たれるビームをジャスティスがかわしていく。
「母さんもルシェルもウルフも、何も悪くない!それなのにヴェイガンがみんなを殺した!ヤツらのような悪魔は、この宇宙に存在してはならない!」
「その悪魔のような姿に、あなたもなるつもりなのか!?怒りや憎しみに身を任せたあなたを見て、その人たちがどう思うのかを考えるんだ!」
「考えている!その考えの末のこの決意!ヴェイガン殲滅こそが、みんなへの弔いと手向けとなる!」
アスランが呼びかけても、フリットの意思は頑なだった。
「私は戦う・・ヴェイガンを1人残らず倒さなければ、地球と宇宙に平和は訪れはしない!」
フリットがAGE-1を駆り、アスランのジャスティスに飛びかかる。AGE-1がシールドライフルとビームダガーを、ジャスティスがビームキャリーシールドに搭載されているビームブーメランのビームの刃とビームサーベルを振りかざし、ぶつけ合う。
ビームの刃が入り混じり火花が散る。その反動の衝撃で、ジャスティスとAGE-1が押される。
次の瞬間、ジャスティスが右足を振り上げて、ビームブレイドでAGE-1の左腕を切り裂いた。同時にAGE-1がライフルシールドからビームを発射して、ジャスティスの頭部を撃ち抜いた。
「くっ!」
同時に毒づくアスランとフリット。ジャスティスがとっさに背部に搭載されている「ファトゥム-01」を射出する。向かってきたファトゥム-01にシールドライフルを振り下ろすAGE-1だが、ライフルシールドのビームがファトゥム-01に食い込んで持っていかれる。
ライフルシールドを突き立てられたことで損傷して、ファトゥム-01はライフルシールドとともに爆発を起こした。
「もうやめるんだ・・これ以上オレたちが戦っても意味がない・・・!」
アスランがフリットに向けて呼びかける。AGE-1が損傷しても、フリットは戦いをやめようとしない。
「私は引かない・・ヴェイガンを倒すまでは・・平和を取り戻すまでは・・・!」
フリットが戦意を募らせて、ディーヴァに通信をつなげた。
「ディーヴァ、プラズマダイバーミサイルをこちらに渡せ!」
“アスノ司令、ですがプラズマダイバーミサイルは・・!”
フリットの命令に、ディーヴァにいるナトーラが反論する。
「ヴェイガン殲滅のための切り札だ!今こそそれを使うときだ!」
“司令・・・!”
「プラズマダイバーミサイルをこっちへ!でなければ戦いを終わらせられない!」
困惑するナトーラにフリットが呼びかける。
「ダメだ!渡してはいけない!」
アスランが呼び止めるが、ディーヴァからプラズマダイバーミサイルが射出された。ディーヴァに接近していたAGE-1が、プラズマダイバーミサイルを手にする。
「これで・・これでヴェイガンを!」
フリットがいきり立ち、AGE-1がセカンドムーンに向かって前進しながら、プラズマダイバーミサイルを構える。だがその狙いの先にジャスティスが立ちはだかる。
「それは破壊と破滅しかもたらさないもの・・敵味方問わず命を奪う殺戮者になるつもりか!?」
「私は世界を救う・・今、地球で生きる者たちのために、ヴェイガンに無惨に命を奪われた者たちのために・・・!」
問い詰めるアスランだが、フリットは退こうとしない。
「最後の警告だ!そこをどけ!我々の邪魔をするな!でなければ、ヴェイガンを庇うためにお前がプラズマダイバーミサイルの直撃を受けることになるぞ!」
「いい加減目を覚ませ!愚かとしか言いようのない憎悪を、世界中にまき散らす気か!?」
ヴェイガン打倒を貫こうとするフリットに、アスランが激高する。ジャスティスが一気にスピードを上げて、AGE-1に詰め寄る。
フリットは即座に反応して、AGE-1がジャスティスの横をすり抜ける。そしてそのままセカンドムーンに向かっていく。
(あれがもし撃たれたら、ヴェイガンだけでなく、向かっているアビス隊長たちも巻き添えに・・!)
アスランがさらに感覚を研ぎ澄ませて、ジャスティスがAGE-1を追いかける。セカンドムーンに接近して、AGE-1がプラズマダイバーミサイルを構える。
(これで終わる・・ヴェイガンとの戦いが終わり、死んでいったみんなに安らぎが訪れる・・・!)
フリットがこれまでのヴェイガンとの戦いを思い返していく。長く苦しい戦いを経て、戦いを悲劇を終わらせられることを、彼は噛みしめていた。
(母さん・・ウルフ・・ルシェル・・・やっと・・やっとこれで・・・!)
“もういいよ、フリット・・”
決意を募らせていたときだった。フリットに向けて声が響いてきた。聞き覚えのある声を聞いたとき、フリットは動揺を覚える。
次の瞬間、ジャスティスが追いついていて、ビームブレイドを発した右足をAGE-1目がけて振りかざしてきた。それに気づいたフリットが反射的にプラズマダイバーミサイルの発射動作を取った。
プラズマダイバーミサイルが発射される一瞬前に、ジャスティスのビームブレイドあAGE-1の腕を切り裂いていた。その衝動でプラズマダイバーミサイルの軌道がわずかにずれた。
プラズマダイバーミサイルは徐々にセカンドムーンより上方へと飛んでいく。そして付近のデブリとぶつかったことで巨大な爆発が起こった。
「ぐっ!」
「うあっ!」
プラズマダイバーミサイルの爆発による衝撃がジャスティスとAGE-1を襲い、損傷を引き起こす。アスランもフリットも揺さぶられて苦痛を覚える。
「やったのか・・それたのか・・・!?」
声を振り絞るアスラン。プラズマダイバーミサイルの余波を受けたことで、ジャスティスは速く動くこともできないほどの損傷を受けた。
そしてAGE-1も、ジャスティスの攻撃によって戦闘が行えなくなっていた。
(とどめを刺せなかった・・ヴェイガンに・・私の手で・・・)
自らの手でヴェイガンを倒しきれなかったことに、フリットは絶望感にさいなまれる。彼は自分が今までしてきたことが何だったのか、分からなくなっていた。
(これだけ手を尽くしても、これだけ願っても、私では平和は取り戻せないというのか・・・ルシェル・・みんなは何のために死んでいったのか・・・)
込み上げてくる悲痛さを抑えることができず、フリットはAGE-1のコックピットで涙していた。
シンたちがザナルドたちに劣勢になっているのを、ディーンはバロノークから目にしていた。
「まずい・・このままじゃキオたちが・・・!」
思い立ったディーンがジルスベインに乗り込んで発進しようとする。
「おい、お頭からお前を出すなって言われてんだ!おとなしくしてろ!」
バロノークのクルーがディーンを呼び止める。
「そうはいかない!キオはオレを命懸けで助けてくれた!今度はオレがアイツを助ける番だ!」
「だから待てって!オレらがお頭にどやされちまう!」
「だから何だっていうんだ!もしもアンタのボスが危ない目にあってて、アンタらはほっとけるのかよ!?」
怒鳴りかかるクルーたちにディーンが言い返す。
「すぐにオレに発進させろ!でないとこの艦に風穴をあけるぞ!」
「いい加減にしろ、小僧!縛り付けて独房に叩き込むぞ!」
怒号を放つディーンとクルー。その間にもシンとキオはザナルドに対して打開の糸口を見出せないでいた。
「オレはここを出る!キオを助けに行く!」
ディーンは言い放ち、ジルスベインが胸部にある「ビームバスター」をハッチに向けて発射しようとした。
「ダメだ!ハッチを開けるしかねぇ!」
クルーが毒づいて、やむなくハッチを開くことにした。
(待っててくれ、キオ・・今度はオレが・・・!)
「ディーン・アノン、ジルスベイン、出るぞ!」
キオへの友情を胸に秘めて、ディーンがジルスベインで出撃していった。
混迷を深めていくシンたちとゼハートたちの攻防。
心を揺さぶられたまま、フラムはフォーンファルシアでキラのフリーダムと交戦していた。
「私はあのMSに臆してしまった・・だからもう、2度も怯えるわけにはいかない・・・!」
フラムが恐怖を振り払い、フォーンファルシアがフリーダムに向けてファルシアビットを飛ばして、フォーンファルシアバトンからビームを放つ。
キラが意識を集中させると、彼の中で何かが弾けた。彼の感覚が一気に鋭くなり、フリーダムがさらに加速してビットとビームをかわしていく。
「もう戦いはやめるんだ!傷つけ合うだけだ!」
キラが呼びかけるが、フラムは攻撃の手を止めない。
「私はゼハート様に全てを捧げた!私たちは死を待つだけの火星圏から地球へと戻るのよ!」
フラムが言い返し、フォーンファルシアがさらにフォーンファルシアバトンからビームを放つ。だが何度ビームを放っても、フリーダムに素早くかわされる。
フリーダムがドラグーンを射出してビームを放つ。フラムが反応して、フォーンファルシアがビームをかいくぐる。
「こんな戦いをしなくても、地球に行くことはできる!戦わないで手を取り合うことができるはず!」
「そんなきれいごと、よく口にできるな!」
キラの呼びかけにフラムがいら立ちを覚える。フォーンファルシアがさらにファルシアビットを動かして、フリーダムを狙っていく。
「私たちと地球の連中との戦争は長年続いている!それだけ私たちが受けてきた悲しみと憎しみもまた大きい!それをやめろの一言でやめられるとでも・・!」
「それでも、それでも僕たちは、平和を目指して手を取り合うことができるはずだ!」
感情をあらわにするフラムに、キラがさらに呼びかける。
「どうすればいいのか、具体的なことも何1つ言わずに、そんなことを言っても何の意味もない!」
「でもだからって、戦いは止めないといけないんだ!」
「それで止められるものか!」
「止める・・僕が止めてみせる!」
フラムの不満の叫びにキラが言い返す。フリーダムがドラグーンでファルシアビットを撃ち抜いて、さらにビームサーベルを手にしてフォーンファルシアに飛びかかる。
フォーンファルシアがフォーンファルシアバトンからビームを放つが、フリーダムに素早くかわされ、さらにビームサーベルでバトンを腕ごと切り裂かれた。
「そんな・・私の力が・・ゼハート様のために尽くすを決めた、この力が・・・!?」
フォーンファルシアを損傷させられて、フラムが愕然となる。
「ここで倒れたら・・私は何のために・・・!」
声と力を振り絞るフラム。フォーンファルシアが傷ついた状態のまま、フリーダムに向かっていって胸部からビームを放つ。
フリーダムはこれをもかわし、全ての砲門を展開して一斉に発射する。放たれた複数のビームがフォーンファルシアに命中した。
「キャアッ!」
フォーンファルシアが損傷して、その衝撃がコックピットにも及び、フラムが悲鳴を上げた。フリーダムのこの攻撃で大破して、フォーンファルシアは行動不能に陥った。
「僕たちは、どうしても分かり合えないのだろうか・・・」
力ずくでしか戦いを止めることができないのか。キラは苦悩を抱えたまま、シンたちのところへ戻っていった。
デスティニーを果敢に攻め立てるレギルス。ビームソードを振りかざすことができず、シンはゼハートに追い込まれていた。
「くそっ!オレに攻撃をさせないつもりか!?」
「私はここで果てるわけにはいかない!イゼルカント様の信念、火星圏に住む者たちのため、私は戦う!」
毒づくシンにゼハートが信念を言い放つ。
「邪魔するものは全て排除する・・行く手を阻むなら、貴様も例外ではない!」
ゼハートが戦意を強めて、レギルスがビームサーベルを突き出す。シンが反応して、デスティニーがビームソードでビームサーベルを受け止めるが、そこから振り切ることができない。
「シン!ゼハート!」
アセムが呼びかけ、ダークハウンドが「アンカーショット」からフックを射出する。ゼハートが気づいて、レギルスがデスティニーから離れて回避する。
「大丈夫か、シン!?」
「あ、あぁ・・助かった・・!」
アセムの声にシンが答える。
「その機体は大振りの武装ばかりだと、ゼハートは判断している。だから距離を詰めて、攻撃に出れないようにしているんだ。」
「なめてくれて・・・だけど、デスティニーは大振りばかりじゃない!」
アセムの注意に対して、シンが言い放つ。レギルスがまたデスティニーに向かってきた。
「誰にもオレたちを阻むことはできない!アセムも、貴様たちも!」
ゼハートが言い放ち、レギルスがビームバルカンを連射しながらデスティニーに迫る。
「このっ!」
シンがいきり立ち、デスティニーがビームソードを振りかざそうとするが、またもレギルスの構えたビームサーベルに一閃を阻まれる。
「なめるな!」
シンが叫び、デスティニーが左手を突き出してパルマフィオキーナでレギルスに迎撃に出た。
「くっ!」
ゼハートが毒づき、レギルスがレギルスビットの1つを操作して、デスティニーの左の手のひらにぶつける。パルマフィオキーナを受けて、そのレギルスビットが破壊される。
「まだオレは、貴様の力を侮っていたということか・・・!」
力を見誤っていた自分に腹を立てて、ゼハートが気持ちを切り替える。
「ゼハート様!」
そこへガフランたちが駆けつけて、デスティニーとダークハウンドに向けて射撃を仕掛けてきた。
「どこの馬の骨とも知らぬヤツらと!」
「海賊風情が!」
ヴェイガンのパイロットが言い放ち、ガフランたちがデスティニーとダークハウンドに向かっていく。
「よせ!お前たちの敵う相手ではない!」
ゼハートが呼び止めるのも間に合わず、デスティニーにビームソードがガフランたちを切り裂き、ダークハウンドの「ハイパードッズライフル」がドラドたちを撃ち抜いていく。
「ムダな戦いはやめろ・・お前たちのどちらかが勝とうと、地球や宇宙には平和は戻りはしない・・!」
「そんな世迷言を聞き入れると思っているのか!?オレはヴェイガンとイゼルカント様の理想と信念、願いを引き継ぎ貫くことを決めた!地球をこの手で取り戻すまでは、オレにもみんなにも平和は訪れない!」
アセムの呼びかけにゼハートが言い返す。
「オレたちが目指す平和が平和でないというなら、アセム、お前の力で覆してみせろ!」
「ゼハート・・オレたちは戦わなくてはいけないのか・・オレたち2人とも、生き延びることはできないのか・・・!?」
戦意を見せるゼハートに、アセムは歯がゆさを感じていく。
「だったらオレが覆してやる!この運命の力でな!」
そんなゼハートにシンが言い放つ。デスティニーがレギルスと対峙して、ビームソードを構える。
「オレは負けない・・お前たちも、オレたちの平和を阻む敵だ!」
ゼハートがシンにも戦意を見せる、レギルスがレギルスビットを飛ばすが、デスティニーは素早く動いてビットをかわす。
そのスピードのままデスティニーがレギルスに向かっていってビームソードを振りかざす。レギルスも加速してデスティニーの一閃をかわす。
レギルスが胸部からビームを放つ。デスティニーもビーム砲を発射して、ビームを相殺する。
「オレは戦う・・戦う運命を背負って、悲劇の運命を切り開く・・どの世界にいても、それは変わらない!」
揺るぎない決意を言い放つシン。レギルスと対峙するデスティニーが、ビームソードを構えて、紅い光の翼を広げていた
「うわあっ!」
そのとき、シンとアセムの耳にキオの声が聞こえてきた。AGE-FXがザムドラーグに追い込まれていた。
「キオ!」
アセムがキオを助けようとダークハウンドを駆る。シンのデスティニーも続くが、レギルスの放つレギルスビットに行く手を阻まれる。
「ゼハート!」
「お前との因縁は、ここで終わらせる!」
声を上げるアセムに、ゼハートが敵意を見せる。レギルスが振りかざすビームサーベルを、ダークハウンドがビームサーベルで受け止める。
「シン、お前がキオを助けに行ってくれ!」
アセムがゼハートと対峙したまま、シンに呼びかける。
「本当は父親であるオレが行くべきなのだが、ゼハートはオレを1番に敵視してきている!オレがヤツを食い止めている間に、お前にキオを任せる・・!」
「アセム・・・分かった!すぐに戻ってくるからな!」
アセムの言葉を聞き入れて、シンが頷く。ダークハウンドがレギルスを食い止めてる間に、デスティニーがAGE-FXのところへ向かった。
「オレも、お前との因縁に目をそむけていられないようだな、ゼハート・・!」
アセムが目つきを鋭くして、ゼハートとの対決に専念するのだった。