GUNDAM WAR –Complication of Thought-
PHASE-05「漆黒」
ディーンに忠告を送って立ち去ったアセムと、彼を追いかけてきたシン。バロノークの廊下の真ん中で、アセムが立ち止まってシンに振り返った。
「アンタ、キオの父親なんだろ?・・だったら何でアイツから離れて、海賊になってるんだよ・・・!?」
シンがアセムに疑問を投げかける。アセムは表情を変えずにシンに答える。
「このビシディアンに救われた恩義もあったのだが、ヴェイガンに対しても連邦に対しても、オレ自身が知られてはならない情報を握っていたからだ・・」
「知られてはならない情報・・?」
アセムが語りかけた言葉に、シンが眉をひそめる。
「ヴェイガンにはもちろん利用されるわけにいかないが、父さんもあの性格と考えだ。ヴェイガン殲滅のために利用されるのが関の山だ・・キオや家族には申し訳なかったが、愚かな事態を引き起こさないために・・」
「だから、すぐに帰らずに、この艦に留まって・・」
「それに、今ヴェイガンのトップにいるゼハート・ガレットは、オレの友だ。アイツもアイツなりの正義と心を持っている・・」
アセムがシンに向けて、自分が経験してきたことを打ち明けていく。
「オレはオレの正義を貫くことを決めた。父さんの言うような、ヴェイガン全てが悪ということではない。父さんや連邦にも過ちがある。だから連邦とヴェイガン、双方のバランスを保つように、妨害や戦闘行為を行ってきた・・」
「それで今までずっと、海賊をやってきたのか・・・」
シンが言いかけると、アセムが真剣な面持ちのまま頷く。
「だがオレは、戦いをやめて手を取り合おうとしていることまで否定してはいない。答えを見つけて決意を貫いていくのなら、それでも構わない・・」
キオのことを案じていくアセム。彼はキオの父親として、息子が答えを見出して突き進もうとしていることを喜ばしく思っていた。
「そういえば、お前たちのことを聞いていなかったな・・」
アセムがシンに対して話題を切り替えてきた。
「お前たちは何者なんだ?お前たちのMS、連邦でもヴェイガンでもない。戦闘力も武力も高いが、AGEタイプでもない・・」
「オレたち自身もよくは分かっていませんが、ここはオレたちがいた世界とは違うみたいなんです・・」
疑問を投げかけるアセムに、シンが自分たちのことを話す。
「オレたちのいた世界でも、MSや戦争は行われていました・・オレはその戦争で家族を亡くして、何もできなかった自分が悔しかったから、軍に入ったんです・・」
「家族、仲間、大切な人・・お前も、大切な人を死に追いやった相手を憎いと思ったことはあるのか・・?」
「はい・・守ると約束した大切な人を殺した相手を、オレは許せなかった・・だけどオレは、アスノ司令の考え方も許せなかった・・大切なものを奪われた怒りと憎しみを、オレも抱えてたのに・・」
「お前は、敵勢力の一員だからと言って、無慈悲に打ち倒そうとは思っていなかったのだろう・・?」
「それは・・・あの子も・・ステラも、オレたちの敵の1人だった・・いや、敵の戦いのために利用されていた・・・」
「そうか・・友や、大切な者が敵側にいるのはやるせないな・・今の父さんには、それを理解しようともしていないが・・」
シンの戦いや経験を聞いて、アセムも彼の辛さを共感していた。
「お前たちの本来の世界ではないこの宇宙で、お前たちはこれからどうするつもりだ・・?」
アセムが真剣な面持ちに戻って、シンに問いかける。
「オレは海賊として、地球とヴェイガンの拮抗状態を維持する。ただ、ゼハートの決着はつけないといけないようだ・・」
「オレも戦う・・たとえオレに関係がないものだとしても、この世界で戦争が続いているなら、終わらせてやる・・オレの手で・・・!」
アセムとともにそれぞれの決意を口にして、シンが手を握りしめる。彼はこの世界でも、自分の手で戦いを終わらせようとしていた。
同じ頃、キオはこれからのことを考えていた。戦いを止めるためにどう行動すればいいのか、彼は整理していた。
窓から外を見つめて考えを続けていたキオに、ディーンが声をかけてきた。
「キオ、やっぱりオレも戦う・・キオばかりに戦わせるなんてできない・・・」
「ディーン・・でも、もしディーンに何かあったら・・・」
自分の決意を言うディーンに、キオが不安を浮かべる。
「オレが死んだら、それこそルウに合わせる顔がない・・でもだからって、キオたちに甘えても・・」
「それでいいよ・・僕はもう、戦いが行われてほしくないんだ・・・」
「キオ・・何を考えているんだ・・・?」
「ディーン・・僕は戦いを止めたいんだ・・戦わないで、話し合って仲直りすれば、そのほうが・・」
キオの決心に対して、ディーンは複雑な気分を感じた。
「オレはルウのために戦っている。脱走するまではヴェイガンのために戦おうとしていた。きっとみんなも何かのために戦ってるはずだ。そいつらが戦わないで話をしようと言われて、簡単に戦いをやめられるわけないだろ・・」
「だけど・・戦ったら傷ついて、命を落とす人だって出てくるんだ・・そうなるぐらいなら・・」
「オレたちはオレたちが願っている平和のために戦ってる!たとえキオの考えとやり方が正しいことだとしても、おとなしく言う通りにするわけにはいかないんだ!」
「ディーン・・それでも、僕は・・・!」
ディーンに言いとがめられるも、キオは自分の出した答えを変えようとしない。
「それでも、みんなを守りたい、傷つけたくないっていうのは間違いかな・・?」
その2人にキラが声をかけてきた。
「誰も傷つけたくない、誰も死なせたくない、みんなを守りたい・・2人にも、ううん、みんな誰もが願っている夢のはずなんだ・・」
「キラさん・・・」
キラが投げかけた言葉に、キオとディーンが戸惑いを覚える。
「みんなの願いは同じはず・・だから、争って、戦争が行われてしまう・・」
「だから、みんな戦いをやめて、話し合わないと・・そして仲直りしないと・・」
「そうだね・・でもその前に、戦いを止めないと・・戦いの中にいたら、届く言葉も届かなくなってしまう・・」
「それでも、戦いを止めるためでも、戦いをしてしまったら・・」
「戦いを止めるための戦いもあると思う・・おかしなことだけど・・・」
「それでも僕は戦いをやめるように呼びかける・・傷つけるためにガンダムを使うつもりはない・・」
キラが呼びかけてもキオは考えを変えない。傷つけ合うことなく戦いを止めようと、キオは決意を頑なにしていた。
「あなたも、本当に平和を願っているなら・・・」
「僕も本当は戦いたくない・・だからどうしても死なせない・・そのための力と剣を、僕は今手にしている・・」
キオと決意を言い合うと、キラは彼とディーンの前から去ろうとした。
「あ、あの・・」
そのとき、キオがキラを呼び止めてきた。
「ファンネルの使い方、教えてもらえないでしょうか?・・うまく使いこなせれば、確実にみんなを守ることができるかもしれない・・」
「僕たちのはドラグーンっていうんだけどね・・・それに、僕に教えられることはそんなにないと思う・・」
「それでも、みんなを守るために、僕は・・・」
キラに教えを求めるキオ。キオの真剣な眼差しと決意を受け止めて、キラは微笑んだ。
地球連邦の戦力によって、セカンドムーンに追い込まれていたヴェイガン。ゼハートは軍の全ての勢力の集結を確認していた。
「地球連邦の艦やMSがこちらに向かってきています。」
フラムがやってきて、ゼハートの後ろから声をかけてきた。
「それと、おそらくアセムたち海賊も・・いずれにしても、我々に牙を向く存在は全て敵だ。覚悟を決めろ・・」
「ゼハート様・・私は、戦いに身を置いた時から、常に覚悟を決めています・・」
ゼハートの檄にフラムが答える。彼女はゼハートのその呼びかけが、彼自身に言い聞かせているように思えた。
(今度こそ決着をつけるぞ、アセム・・・!)
アセムとの因縁を終わらせることも、ゼハートは考えていた。
火星圏に向けて進んでいたディーヴァ。他の部隊がその後に続く中、ディーヴァはセカンドムーンを目前としていた。
「ついに来たか・・ヴェイガン・・オレたちの敵の本拠地に・・・」
フリットが火星圏を見据えて、目つきを鋭くする。
「パイロットは出撃準備だ。一気に攻め立てて、今日こそヴェイガンとの戦いに終止符を打つ。」
ナトーラやセリックたちに呼びかけて、フリットは指令室を出てドックに向かった。彼に対してナトーラは困惑を感じていた。
「オレたちは連邦軍の軍人で、ヴェイガンと戦い倒すことを目的としている。そのために戦うだけだ・・」
「アビス隊長・・・」
セリックに小声で励まされて、ナトーラが戸惑いを覚える。
「第一級戦闘配備。パイロットは搭乗機で待機してください。」
ナトーラがディーヴァのクルーに向けて指示を出した。セリックも他のパイロットたちとともに、ドックに向かっていった。
ドックには既にアスランが来ていた。彼はジャスティスの前に立って、自分の決意を確かめていた。
(オレ自身で止めるしかない・・もしかしたら、キラとシンも・・・)
複雑な気分を抱えながらも、アスランは迷いを振り切っていた。
「お前も戦いに出るつもりか?」
ドックに来たフリットがアスランに声をかけてきた。
「もしも我々の邪魔をするならば、お前も敵と見なす。肝に銘じておくのだな・・」
アスランに忠告を送って、フリットはAGE-1に向かっていった。彼の言葉をアスランは受け入れることができなかった。
(オレは戦いを止める・・悲劇につながる終わり方にはしない・・・)
揺るがない決意を心の中で呟いてから、アスランもジャスティスに乗り込んだ。
(キラ、シン、お前たちが敵に回らないことを祈らせてもらうぞ・・)
シンとキラへの信頼を胸に秘めるアスラン。彼の見据えているジャスティスのレーダーが、ヴェイガンのMSや戦艦と思しき熱源を捉えていた。
「まずはフォトンブラスターで活路を作る。そこから一気に中央突破し、ヴェイガンを叩く!」
フリットがセリックたちに指示を送る。AGE-1やクランシェカスタムが発進に備える。
「フリット・アスノ、ガンダムAGE-1グランサ、出るぞ!」
「セリック・アビス、クランシェカスタム、発進する!」
フリットのAGE-1、セリックのクランシェカスタムがディーヴァから発進する。他のクランシェも次々に発進していく。
「アスランさん、また帰ってきてくれますよね?・・もちろん、シンさんとキラさん、キオも一緒に・・」
ウットビットがアスランに向かって呼びかけてきた。
「分からない・・オレ個人としては、キオやキラたちと一緒に帰りたいと思っている・・・」
自分の考えを正直に口にするアスラン。彼の答えにウットビットは困惑を感じていた。
「お願いです・・キオを助けてくれ・・・!」
「オレのできることは、間違った正義を止めること・・・!」
さらに呼びかけるウットビットに、アスランは声を振り絞る。彼は意識を集中して、発進に備えた。
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」
アスランの乗るジャスティスもディーヴァから発進していった。
同じ頃、バロノークもセカンドムーンに向かっていた。シン、キラ、キオ、アセムは出撃の準備に入っていた。
「やはり連邦の連中、先に到着してたか・・」
ラドックがセカンドムーン近辺の宙域に目を向けて言いかける。
「オレたちはオレたちのやり方と意思で、この戦争を終わらせる。ヴェイガンとも連邦とも違うやり方と意思で。」
アセムの呼びかけにラドックたちが意気込みを見せる。
「バロノークの指揮はお前に任せたぞ、ラドック。」
「任せてくれ、お頭!思う存分戦ってくれ!」
呼びかけるアセムに、ラドックが笑みを見せて答える。
バロノークをラドックたちに任せ、アセムはドックに向かった。そこにはシン、キラ、キオ、ディーンがいた。
「みんな、準備はいいようだな・・出撃する準備も、戦う理由と覚悟も・・」
アセムの呼びかけにシン、キラ、キオが頷いた。ところがディーンはアセムやキオから戦いに出ないでほしいと釘を刺されて、不満な面持ちを浮かべていた。
「やはり納得していないようだな・・」
「当たり前だ・・いくらキオのためだからって、オレだけのけ者にされて、指をくわえて見てるだけなんて・・!」
アセムが声をかけると、ディーンがさらに不満を見せる。するとアセムがディーンの肩に手を乗せてきた。
「何かあればお前を頼りにしたいと思っている。オレ以上に、キオがそう思ってる・・」
アセムが投げかけた言葉を聞いて、ディーンが戸惑いを感じてキオに目を向ける。キオも真剣な面持ちを浮かべて、ディーンに小さく頷いた。
「ディーンもみんなも守りたいと思っているけど、みんなのことも頼りにしたいと思っているから・・」
「キオ・・・何かあればすぐに飛んでくるからな・・」
「ありがとう、ディーン・・僕は君を信じているよ・・」
ディーンが投げかけた言葉を受けて、キオが笑みを見せて頷いた。
「オレはヴェイガンを倒す・・憎いからじゃない・・悲劇を終わらせるためだ・・」
「僕も終わらせたい・・誰も傷つけさせない・・」
シンもキラもそれぞれの決意を口にする。
「オレたちの思惑は違うのかもしれない・・それでもオレたちは、自分が見出した答えを貫く・・」
アセムがシンたちに呼びかけると、黒い機体「ガンダムAGE-2ダークハウンド」に乗り込んだ。
ダークハウンドはアセムが地球連邦に所属していたときの搭乗機「ガンダムAGE-2」を元に作られた機体である。消息不明となった際にAGE-2は大破してしまったが、ビシディアンに身を置いてからはダークハウンドに乗り込んでいた。
シンとキラも続いてデスティニーとフリーダムに乗り込む。
「ディーン、行ってくるよ・・・!」
キオはディーンに声をかけてから、AGE-FXに乗り込んだ。
「見えた・・連邦とヴェイガン、戦おうとしてる・・・!」
シンが連邦とヴェイガンが交戦に入ろうとしているのを目撃する。
“発進準備、完了だぜ、お頭!”
ラドックがアセムたちに呼びかけて、バロノークのハッチが開く。
「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」
「キャプテン・アッシュ、ガンダムAGE-2・ダークハウンド、出るぞ!」
シン、キラ、アセムがデスティニー、フリーダム、ダークハウンドでバロノークから発進していった。
(僕は行く・・この戦い、必ず止める・・・!)
「キオ・アスノ、ガンダムAGE-FX、行きます!」
キオが決意を秘めて、AGE-FXで発進していった。
次々に出撃してくる連邦のMSを見据えて、ゼハートはヴェイガンの部隊の指揮を行っていた。
「地球連邦が攻撃を開始しました。」
フラムがゼハートに向けて声をかけてきた。
「既にベイハート様の部隊が迎撃に出ています。私たちも出撃の準備を・・」
「いや、出撃するのは少し後だ。部隊にすぐに、ディーヴァの主砲の射線軸上から退避するよう伝えろ。」
出撃しようとしたフラムをゼハートが呼び止めてきた。
「ヤツらは手法を発射して活路を作ろうとしている。射線軸上にいれば、撃墜されるのは確実だ。」
「分かりました。通達いたします。」
ゼハートの言葉を受けて、フラムは改めて出ていった。
(部下や同胞を死なせたくない・・指揮官や指導者としては甘いのかもしれない・・それでも、オレはヴェイガンのために、イゼルカント様の夢のために・・)
心の中で呟いて、ゼハートは迷いを振り切る。
(ヴェイガンの未来を、オレが切り開く・・!)
ゼハートも自分の出撃に備えるため、行動を開始するのだった。
セカンドムーンから出撃してきたガフランたちを、アスランとフリットたちは迎え撃っていた。
「ヴェイガンも、自分たちの追い求める平和と正義のために戦っているのだろうか・・だとしたら、こんな戦いそのものを止めないと・・!」
アスランが戦況を見定めて、自分の正義を貫く決意を強めていく。
「貴様か、アンノウンのMSは?」
そこへ声をかけられるアスラン。振り返ったジャスティスの前に、巨体のMS「ザムドラーグ」が現れた。
「地球のヤツらはもちろんだが、我らの任務遂行を阻む貴様もここで排除する。」
ザムドラーグのパイロット、ザナルド・ベイハートがアスランに呼びかける。
「オレは討たれるわけにはいかない・・ムダに命を奪わせたりしない・・!」
「ほざけ!貴様もヴェイガンの力に屈せよ!」
声を振り絞るアスランにザナルドが言い放ち、ザムドラーグがジャスティスに迫ってきた。両手の指先のビームバルカンの射撃を、ジャスティスは素早くかわす。
「お前は何のために戦う!?自分たちの平和のためか!?」
「知れたこと!全てはイゼルカント様のご意思のため!あの方のために、私はこの身を捧げる!ゼハートなどという若造にその未来、任せるわけにはいかぬ!」
問い詰めるアスランをザナルドがあざ笑う。彼は若くしてイゼルカントの願いと理念を託されたゼハートを快く思っていなかった。
「だが全ては地球の愚か者どもを一掃してからだ・・もちろん貴様もな!」
ザナルドが言い放ち、ザムドラーグがジャスティスに突っ込んで、尻尾を振りかざす。ジャスティスが左足にビームブレイドを発して振りかざして、尻尾を弾く。
続けてジャスティスがビームライフルを手にして発射する。だが放たれたビームはザムドラーグの強靭な胴体に弾かれる。
「ムダだ!その程度の攻撃、このザムドラーグには通じん!」
ザナルドが笑みを浮かべて、ザムドラーグが手を伸ばしてジャスティスを捕まえようとする。ジャスティスがスピードを上げて、ザムドラーグとの距離を取る。
そこへクランシェたちが駆けつけて、ザムドラーグに向けてビームライフルを発射する。ザムドラーグにはビームは効かないが、ザナルドがクランシェに注意を向ける。
「小うるさいうじ虫どもが・・消えろ!」
ザナルドがいら立ち、ザムドラーグが腹部のビーム砲「ザムドラーグキャノン」を発射する。放たれたビームがクランシェを一気に破壊した。
辛くも生き延びたクランシェの1体も、すぐにザムドラーグの伸ばした手に捕まってしまう。ザムドラーグキャノンの発射口からビームの針「ビームスパイク」が放たれて、クランシェを串刺しにした。
「やめろ!今のお前の行為は、ただの破壊だ!」
アスランが呼びかけ、ジャスティスがビームサーベルを連結させて構える。ザムドラーグの繰り出すビームスパイクと尻尾を、ジャスティスがビームサーベルではじき返していく。
「これは我々が下す正義!地球の連中や弱者は、我々の正義の前に葬り去られるのだ!」
「そんな正義、オレが止めないといけないようだ・・!」
あざ笑ってくるザナルドの攻撃を、アスランは食い止めないといけないと決心する。
ジャスティスがビームサーベル、ビームブレイドを振りかざすが、ザムドラーグの硬い胴体に弾かれてしまう。
「硬いボディのMSだ・・弱点を狙わないと・・・!」
アスランが打開の糸口を見出そうと思考を巡らせる。回避を続けるジャスティスに、ザムドラーグが迫る。
そのとき、ジャスティスとザムドラーグの間をビームが割って入ってきた。2機の前に、キラの駆るフリーダムが現れた。
「キラ!」
キラの登場にアスランが声を上げる。
「アスラン、大丈夫!?」
「あぁ・・それより今まで何をしていたんだ!?シンたちは!?」
キラの心配の声に答えるも、アスランが彼に問い詰める。
「ビシディアンの、海賊のところにいた・・あの人たちも戦いを止めるために動いているそうだよ・・」
「海賊!?・・連邦やヴェイガンとは別に、独自に行動していたのか・・・!」
「シンとキオも来ているよ。一緒に発進してきたから・・」
キラの言葉を聞いて、アスランがモニターでシンのデスティニーとキオのAGE-FXを確かめる。
「アンノウンのMSがもう1機か・・何がどれだけ出てこようと、阻む敵は全滅以外の末路はない!」
ザナルドが言い放ち、ザムドラーグがザムドラーグキャノンを発射する。フリーダムがジャスティスとともに回避して、翼のドラグーンを射出する。
「ビット?ファンネルか・・そんなもので!」
ザナルドがあざ笑い、ザムドラーグがドラグーンのビームを回避していく。命中もしたが、ザムドラーグの硬い胴体はビームをはじき返していく。
「フリーダムでも通さない防御力の高さ・・攻撃力のほうも高いはずだ・・・!」
「捕まったら確実にやられる・・!」
アスランとキラがザムドラーグの戦闘力に毒づく。ザナルドがフリーダムとジャスティスに攻撃を仕掛けようとしていた。
展開していくヴェイガンの戦艦とMS。その陣形をフリットとナトーラが見定めた。
「今だ、ディーヴァ!フォトンブラスターを!」
「フォトンブラスター、発射!」
フリットが呼びかけると同時に、ナトーラが指示を出す。ディーヴァからフォトンブラスターが発射されて、放たれた光がヴェイガンのMSと戦艦をのみ込んでいく。
「退避だ、退避!」
各艦の艦長が声を張り上げて命令を下す。一部の戦艦とMSは撃たれ、ディーヴァの先に活路ができた。
「よし!一気に中央突破だ!」
「クランシェ隊、このまま直進するぞ!」
フリットとセリックが呼びかけて、セカンドムーンに向かって進んでいく。
「待って、じいちゃん!みなさん!」
そこへAGE-FXが飛び込んできて、キオがフリットたちに呼びかけてきた。
「キオ、無事だったか!」
「じいちゃん、もうやめよう・・戦っても、辛くなるだけだよ・・!」
声を上げるフリットをキオが呼び止める。するとフリットが憤りをあらわにする。
「ヴェイガンのたわごとに惑わされるな、キオ!ヴェイガンを倒さなければ、平和は訪れない!」
「傷つけ合うのが平和だっていうの!?」
フリットの怒号にキオも反発する。
「今は戦闘中だ!いがみ合っている場合ではないでしょう!」
そこへセリックが呼びかけて、キオとフリットを止める。
「司令、今のこの好機を逃せば、相手はこちらへの警戒を強めます。止まらずに前進を。」
「分かっている!すぐに突撃するぞ!」
セリックの言葉にフリットが答える。だがAGE-1とクランシェの前にAGE-FXが立ちふさがる。
「戦うことなんてない・・話し合えば気持ちも通じ合う・・僕とディーンが友達になれたように・・!」
「そこまで言い張り、我々の邪魔をしようというなら・・キオ、たとえ孫のお前でも!」
あくまで行く手を阻もうとするキオに対して、フリットが攻撃の矛先を向ける。AGE-1がAGE-FXにシールドライフルの銃口を向ける。
「お前たちは先に行け!セカンドムーンを制圧しろ!」
「じいちゃん!」
セリックたちに呼びかけるフリットに、キオが声を荒げる。2機のAGEガンダムが対峙する中、クランシェたちがセカンドムーンに向かって前進する。
「キオ、お前の間違いはもう罪の域に達してしまった・・せめて私が、お前を断罪する・・・!」
「じいちゃん・・・!」
敵意を向けてくるフリットに、キオは困惑するばかりとなっていた。
「そこにいたか、ガンダム!」
そこへザナルドのザムドラーグが飛び込んできた。ザナルドはAGE-FXを探知して、標的を変えて駆けつけてきたのである。
「2機まとめて、このザムドラーグの餌食としてくれる!」
「くっ!こんなときに!」
言い放つザナルドにフリットが毒づく。ザムドラーグを追って、フリーダムとジャスティスが駆けつける。
「ここはセリックたちに続くしかない・・!」
フリットが思い立って、AGE-1がセカンドムーンに向かう。キオを気にかけずにあくまでヴェイガンに憎しみを込めて打倒しようとする彼に、アスランが憤りを覚える。
「アスノ司令・・あなたは、そこまで・・・!」
ジャスティスがAGE-1を追っていく。AGE-FXとフリーダムの前に、ザムドラーグが立ちふさがる。
「まずはお前たちから始末してくれる!」
ザナルドが不敵な笑みを浮かべて、AGE-1とフリーダムに敵意を向ける。
「あなたもやめて!戦っても傷つけ合うだけで、何にもならないよ!」
「この期に及んで世迷言を!」
キオが呼びかけるが、ザナルドはあざ笑うだけだった。ザムドラーグがAGE-1とフリーダムに迫る。
「キオ、離れて!僕が止める!」
キラがキオに呼びかけて、フリーダムが2つのビームライフルを手にする。搭載されている全ての砲門を展開して、ザムドラーグに向けて一斉発射する。
フリーダムの一斉放射はザムドラーグに命中したように見えた。しかしザムドラーグはそのビームをも弾いて耐え抜いた。
「そんな!?」
「かなりの威力を誇っているが、強力にビームコーティングを施しているこのザムドラーグには通じんぞ!」
驚愕を覚えるキラに対して、ザナルドが勝ち誇っていた。