GUNDAM WAR Complication of Thought-

PHASE-03「復讐」

 

 

 戦闘から戻ってきたシンたちは、ナトーラから話を聞いていた。ヴェイガンに関する詳しい話だけでなく、フリットやキオのことも彼らは聞いてきた。

「アスノさんとキオくんのあの様子・・ただ事ではないように思えます・・」

「何があったっていうんですか、2人に・・・?」

 アスランとシンが訊ねると、ナトーラが深刻な面持ちを見せる。

「私も詳しいことは知りません。私が分かっているのは、アスノ司令がヴェイガンによって家族や仲間たちを殺されていることと、キオくんが1度ヴェイガンに拉致されたことぐらいです・・」

「拉致された!?・・ヴェイガンに・・・!?

 ナトーラの話を聞いてアスランが驚きを覚える。

「1度ヴェイガンに捕まって、救出されたのですが・・それからキオくんの様子が変わったのです。ガンダムで発進しても、倒すための攻撃をしようとせず、戦いをやめるように呼びかけるばかりで・・」

 ナトーラの話を聞いて、キラが思いつめた面持ちを浮かべる。キオが戦いをしないで戦いを終わらせようとしていることに、彼は共感していた。

「ヴェイガンを殲滅しようとするアスノ司令と、戦わないで話し合おうとするキオくん。2人の溝はすっかり大きくなってしまっているのです・・」

「そうだったのですか・・しかし、2人とも・・・」

 ナトーラの話を聞いて、アスランも思いつめる。そしてシンも。

「オレも2人には納得がいかない・・司令のやり方は味方まで巻き込むようなやり方だったし、キオのやり方でも、それで戦いが終わるとは思えない・・」

「シン・・・」

 自分の考えを口にするシンに、アスランが戸惑いを見せる。

「オレも許せないものを簡単に許そうとは思っていません。だけど、助かる命を一方的に傷つけようとするのには・・」

「でも、みんなが傷つくのを黙って見ていることはできない・・誰だって、戦いが終わってほしいと思っている・・」

 シンに続いてキラも自分の考えを口にする。すると彼の言葉にシンが憤ってきた。

「アンタだって十分勝手じゃないか。戦いを止めるとか言って、相手かまわず攻撃して・・!」

「でも、それは・・」

「アンタたちの勝手で、ハイネも、ステラも・・・!」

 言い返そうとするキラに、シンが鋭い視線を向ける。キラによる武力介入によって、シンはザフトの上官や自身が守ろうとしていた大切な人を失った。そのため、シンはキラや自分たちを裏切ったアスランを快く思っていなかった。

「よせ、シン、キラ・・オレたちまでいがみ合ってどうするんだ・・」

 アスランが呼び止めて、シンとキラをなだめる。彼らの様子にナトーラは困惑するばかりになっていた。

 そんな艦長室にフリットが入ってきた。

「お前たち・・ここにいたのか・・」

 不満げに言いかけるフリットに、シンも不満の表情を見せる。

「ディーヴァはヴェイガンの本拠地“セカンドムーン”に向かう。ヤツらとの決着のときが来た。」

「そのために、また人を・・」

 次の戦闘について告げるフリットに、キラが歯がゆさを浮かべる。そんな彼をアスランが制する。

「キラ、シン、先にキオくんのところへ行っていてくれ・・オレがアスノさんと話をする・・」

「アスラン、でも・・」

 呼びかけてきたアスランに、キラが困惑を見せる。するとアスランが無言で首を横に振ってきた。

「分かった・・オレが話を聞いてくる・・・」

 シンがアスランにそういうと、艦長室から出ていく。キラも戸惑いを抱えたまま、続いて外に出ていった。

「アスノさん、あなたはヴェイガンを倒すために戦い、キオくんは戦うことにためらいを持っている・・そうですね・・?」

「私はそうだ。わたしだけでなく、地球連邦の者たち全員がヴェイガン打倒を誓っているはずだった・・」

 アスランの問いかけに、フリットが深刻な面持ちで答える。

「だがキオは戦いをしようとしない・・ヴェイガンを倒し、地球と宇宙に平和をもたらす救世主にならなければならないというのに・・」

「敵であるものを全て滅ぼすことが救世主だというのですか?・・もしもヴェイガンがオレたちと同じ人間だとしたら・・」

「ヴェイガンは人間ではない!人の皮をかぶった悪魔だ!ヤツらを倒すことで、オレたちは地球と宇宙を救うのだ!」

「戦争はヒーローごっこじゃない!」

 頑なな意思を言い放つフリットに、アスランも激高する。

「力を持ったなら、その力の意味と重さを理解していないといけない!守ることができる力なら、逆に傷つけることもできてしまうということだ!」

「私はヴェイガンのようなことはしない!ヤツらを倒すことが、私たちにとって正しい力の使い方だ!」

 言い放つアスランだが、フリットは考えを変えない。アスランは高ぶる感情を抑えてから、自分たちのことを打ち明けてきた。

「オレとシンは、戦争によって家族を失っています・・家族を奪った戦争が憎かった、力がないのが悔しかった・・それらがきっかけで軍に入ったのです・・」

「君たちも・・・!?

 アスランの話を聞いて、フリットが眉をひそめ、ナトーラが当惑を覚える。

「ですが、敵を倒すだけでは戦争は終わらないことを、オレは思い知らされました・・アスノさん、あなたは昔のオレたちと同じなんです・・」

「私はそれが間違いだなどとは思わない。ヴェイガンは我々からことごとく大切なものを奪うからだ!」

 自分たちのことを打ち明けても、フリットが考えを変えようとせず、アスランは歯がゆさを募らせるばかりになっていた。

「ともかく、セカンドムーンへの攻撃は軍の決定事項だ。変更はない。」

 フリットがディーヴァの次の行動を告げると、アスランが不満を抱えたまま艦長室から出ようとする。

「次に邪魔をしてきたなら、お前たちも敵と見なす。他の2人にも言っておいてくれ・・」

 フリットが投げかけた言葉を背に受けて、アスランは外に出た。

 

 先に艦長室を出たシンとキラ。2人は廊下の真ん中で宇宙を眺めていたキオを見つけた。

「キオくん・・」

「あなたたちは・・キラさん、シンさん・・」

 キラが声をかけると、キオが2人に振り向いてきた。

「納得してないのか、戦うことに・・?」

 シンが問いかけると、キオが小さく頷く。

「オレたちはヴェイガンのことをよく知らない。お前以外のこの艦の人たち以上に・・」

「君はヴェイガンに捕まったことがあるそうだね。そこで何かあったの・・?」

 シンが言いかけて、キラがキオに問いかける。キオは深刻な面持ちを浮かべたまま、話を打ち明けた。

「僕は火星圏で暮らしているヴェイガンの人たちの状況を知りました。ヴェイガンも地球に住んでいる僕たちとあまり変わらない。誰もが一生懸命に生きているんです・・」

「それじゃ本当に、ヴェイガンの人たちは、人間・・・!?

 キオの話を聞いて、キラが緊張を覚える。

「イゼルカントさんのやろうとしている、人類の選別にはもちろん反対です。だけどじいちゃんのような、敵を一方的に倒すような人間にもなりたくない・・」

 ヴェイガンのかつての最高指導者、フェザール・イゼルカントのことを思い出すキオ。地球への帰還と人類存続のための選別を図るフェザールと、ヴェイガンを滅ぼすことが正義と平和であると考えているフリット。キオは2人とは違う、話し合いによる和解を願っていた。

「戦わないで済むなら、それに越したことはない。誰だって傷つくことはないんだ・・」

「だけどそれで戦いが終わるなら、オレたちは何で辛い思いをしなくちゃならないんだ・・・!?

 キラとシンが自分たちの考えを口にする。

「それでも、戦いをしたって何の解決にもならない・・呼びかけて、話し合わないと・・」

「それで他のヤツらが、みんなおとなしく話をしてくれるのか?自分が戦いをやめても、他のヤツらが戦いをやめてくれると本気で思っているのか?」

 キオがさらに呼びかけるが、シンは彼の考えを受け入れようとしない。

「戦うべきときは戦わないと・・どんな理由があっても、誰1人、自分さえも守れない・・・」

「でも・・それでも僕は・・戦うことに意味があるとは・・・」

 自分の意思を口にするシンだが、キオは敵を手にかけたくないという意思を変えなかった。

 深刻さを感じているシンたちのところへ、アスランが合流してきた。

「ディーヴァはヴェイガンとの最後の戦いに臨む、とのことだ。オレとしては、アスノさんの考えには納得していないが・・」

 アスランが報告をすると、シンもキラも深刻な面持ちを見せた。

「戦うなんてダメだよ・・絶対に止めないと・・・!」

 キオが戦いを止めること、倒すための攻撃をしないことを口にする。

「そうやってやめろと呼び続けるつもりなのか、君は?やめろを呼びかけても、やめなかったときは・・?」

「それは・・」

 アスランに問い詰められて、キオが答えることができず口ごもる。

「確かに戦いをやめるように呼びかけて、それで戦いが終わるのなら最高の形なのだろう・・だがオレたちが経験してきた戦争は、その言葉に耳を貸したのはほんのひとにぎりだ・・」

「でも、だからって・・」

 アスランに言いとがめられるが、キオはそれでも納得がいかなかった。

「結局、オレたちは自分たちが見つけた答えを貫いている・・貫くために戦っている・・そうしないと答えと一緒に押しつぶされてしまうから・・」

 シンが自分たちの皮肉を口にする。自分たちが見出した答えと、その先にある平和のために、誰もが立ち向かっている。その衝突の集約が、戦争という形となってぶつかり合っていた。

「僕たちの願いは本当は同じなのかもしれない・・同じだからこそ戦いが起こる・・戦いが終わらない・・・」

 キラも皮肉を口にして、窓から宇宙を眺める。シンもアスランも、何が正しいことになるのかを考えて、苦悩していた。

 

 フリットへの復讐のため、地球連邦に反旗を翻したローグ。彼はフラムと連絡を取っていた。

「邪悪の権化だったのは地球連邦。その根源はフリット・アスノ。私の父を死に追いやった大敵だ・・」

“あなたが私たちに寝返ってくるとは、正直驚きでした。ディーヴァとそのMS撃破の先陣、あなたに任せてもよろしいですか?”

「フリットはオレの獲物だ。お前たちの側に着くと決めたのは、全てヤツを地獄に叩き落とすためだ・・」

 フラムに対してもローグは態度と頑なな意思を変えようとしない。

“ともかく、先陣はお任せいたします。”

「言われるまでもない・・アイツを・・フリット・アスノをこの手で・・・!」

 フリットへの憎悪を募らせながら、ローグはフラムとの通信を終えた。

(フリット・アスノ、お前はヴェイガンに対して激しい憎しみを抱いていた・・だが今のオレのお前への憎しみは、それを大きく上回る・・・!)

 ローグが手を強く握りしめて、怒りを噛みしめていく。

(怒りをぶつけてきたお前が、今度は怒りをぶつけられるのだ・・・!)

 激情に駆り立てられて、ローグは動き出した。自分自身の復讐のために。

 

 ローグとの通信を終えたフラムは、彼の態度と意思に呆れて肩を落としていた。

「滑稽ですね、あのような直情的な者は・・捨て駒とするには十分でしょうけど・・」

「そのような言い方はやめろ。仮初めとはいえ、地球への帰還のための戦力となったのだから・・」

 フラムが口にした言葉に、ゼハートが言葉を返す。

「そろそろヤツらが来る頃だ。次で連邦との戦いにも終止符が打たれる。我々が地球に戻るときが来る・・」

 ゼハートが決意と責任を強く募らせて動き出す。

「全部隊、第一級戦闘配備。連邦やガンダムだけではない。あの3機のMSも敵として処理する。」

「了解しました、ゼハート様・・」

 ゼハートが投げかける指示にフラムが答える。

「大変です、ゼハート様!」

 そこへ1人の兵士が慌ただしく駆け込んできた。

「MSパイロットの1人が脱走!ジルスベインで部隊を抜け出しました!」

「何だと!?

 兵士の報告にゼハートが驚きを覚える。

「すぐに追跡しろ。存在そのものが情報漏えいにつながる。」

「分かりました!」

 ゼハートの指示を受けて、兵士が行動を開始した。

「私も追跡に出る。直接思いとどまらせる。」

「ゼハート様が赴かれることはありません!ここは私たちに・・!」

 自分も出撃に向かおうとするゼハートに、フラムが声を荒げる。

「この事態を生じさせたのも私の責任だ。これは私自身が取る・・」

 ゼハートはフラムに言うと、追跡のために行動を開始した。

「ゼハート様、私も行きます!」

 フラムも慌ててゼハートを追いかけていった。

 

 セカンドムーンに向けて前進するディーヴァ。クルーたちはそれぞれの思いを抱えて、次の戦闘に備えていた。

「もうすぐでヤツらの本拠地だ。今まで以上に万全を期さなくてはならない。」

「はい・・」

 フリットが真剣な面持ちで言いかけると、ナトーラが深刻な面持ちで頷いた。

「こちらに向かってSOS信号です!」

 そのとき、ディーヴァがSOS信号を受信した。

「信号を送ってきた相手は?」

 ナトーラが聞くと、信号の送信者の特定が行われる。

「ヴェイガンのMSからの信号です!」

「ヴェイガンがSOS?どういうことなのです・・?」

 報告を受けたナトーラが疑問を募らせていく。一方でフリットは憤りを感じていた。

「ヴェイガンが何をしてこようと関係ない。こちらがヤツらの言葉に耳を貸す必要はない。」

「ですが、もしも本当にSOSだとしたら・・」

「聞く必要はない。明らかに罠だ。我々を油断、混乱させるための・・」

 ナトーラが言いかけるが、フリットは聞く耳を持たない。困惑を感じたナトーラだが、迷いを振り切って意を決した。

「SOS信号の内容はどのようなものですか?」

「エイナス艦長、聞く必要はないと言ったはずだ。」

 問いかけるナトーラにフリットが口を挟む。しかしナトーラは意思を変えない。

「内容を確認してから判断しても遅くはないです。」

「そんな必要はないと何度も言わせるな!お前のやっていることは・・!」

「反逆行為というなら報告して構いません。責任は全て私がとります・・!」

 つかみかかろうとしたフリットに、ナトーラが真っ直ぐな視線を投げかける。

「信号の暗号、解読できました!」

 信号の解読が完了して、ナトーラが目を通す。

“こちらはディーン・アノン。部隊からの追撃を受けています。救助をお願いします。”

 信号にはこう表記されていた。

「ディーン・アノン・・それが信号の送信者ですね・・」

「関係ない・・全員まとめてヤツらを一掃する・・!」

 ナトーラが呟いたところで、フリットが迎撃のために出撃に向かった。だが指令室の前にはキオがいた。

「キオ・・!」

「今、ディーンって言ってたよね!?・・・ディーンが来たっていうの・・!?

 一瞬当惑を覚えるフリットに、キオが問いかける。答えずに進もうとするフリットを、キオが腕をつかんで止める。

「ディーンは僕がセカンドムーンで知り合った友達なんだ!戦うなんてダメだよ!」

「ヴェイガンは邪悪の権化だ!ヤツらと絆を持つなど愚の骨頂だ!」

「そんなこと、じいちゃんが勝手にきめることじゃないよ!」

「目を覚ませ、キオ!ヴェイガンのたわごとを受け入れるな!」

 ヴェイガンの一員であるディーンをも葬ろうとするフリットと、それに反発するキオ。祖父と孫の確執が一気に深まる。

「私はヴェイガンを一掃する・・1人たりとも生かしてはおかん・・・!」

「じいちゃん!」

 振り切って歩き出すフリットに、キオが憤りを感じていた。

「僕が助けないと・・ディーンを・・!」

 1人でもディーンを助けようと、キオもドックへ向かっていった。

 

 先にドックに行って各々の機体のチェックをして整備に立ち会っていたシンたち。そこへフリットがやってきて、AGE-1に乗り込んできた。

「ヴェイガン殲滅のために出撃する!ただしキオは戦闘に参加させるな!」

 フリットがロディたちに呼びかけて、発進に備える。

「今のアイツはヴェイガンに入れ込んでいる!確実に混乱を招くことになる!」

 フリットの言葉にロディもウットビットも困惑を浮かべる。ハッチが開かれ、AGE-1が発進準備を整えた。

「フリット・アスノ、ガンダムAGE-1グランサ、出るぞ!」

 フリットの駆るAGE-1がディーヴァから発進した。その直後にキオがドックに駆け込んできた。

「じいちゃんを止めないと!このままじゃディーンが・・!」

「どうかしたのか!?

 声を上げるキオに、デスティニーのコックピットから顔を出してきたシンが呼びかけてきた。

「僕の親友が逃げてきたんだけど、じいちゃんが・・・!」

「親友・・お前が自分と同じ人間と言ってたヴェイガンか・・!?

 キオの話を聞いて、シンが問いかける。するとキオが真剣な面持ちのまま頷く。

「早くじいちゃんを止めないと、ディーンが・・・!」

「しかし、アスノ司令の命令が・・!」

 AGE-FXに乗り込もうとするキオを、ロディが呼び止める。キオの言葉を聞いて、シンがかつての自分の記憶を思い返していく。

 戦火に巻き込まれて一瞬にして命を落とした両親と妹。そして戦いに駆り立てられていた少女、ステラ。無力だった自分と守りたいという気持ちが、シンの心の中で膨らんできていた。

「オレも出る!ハッチを開けろ!」

 シンが呼びかけて、ロディとウットビットが動揺を覚える。

「出るつもりか!?だが何を・・!?

「キオも行かせろ!そいつが死なせたくないと思ってるなら、助けないといけないじゃないか!」

 声を荒げるロディに、シンがさらに呼びかける。深刻さを募らせているキオを目の当たりにして、ウットビットが意を決する。

「分かったよ、キオ!シンさんも行ってください!」

「待て、ウットビット!命令違反になるぞ!」

 キオに呼びかけるウットビットをロディが呼び止める。しかしウットビットは聞かずに、MSの発進準備を行う。

「詳しいことはよく分かんないけど、キオがそこまで真剣になってるなら、信じないわけにいかないよ!」

「ありがとう、ウットビット・・それじゃ、行ってくるよ・・・!」

 ウットビットの優しさに感謝して、キオがAGE-FXに乗り込んだ。

「キオ・アスノ、ガンダムAGE-FX、行きます!」

「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」

 キオとシンがAGE-FXとデスティニーでディーヴァから発進していった。

「シン!キオ!・・2人とも・・!」

「僕たちも行くしかないよ・・これからディーヴァとヴェイガンがぶつかる・・止めないと・・!」

 憤りを覚えるアスランに、キラが呼びかける。

「仕方がない・・オレたちも行くぞ、キラ!」

 アスランが困惑を振り切って、発進準備を整える。

「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」

「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」

 キラのフリーダム、アスランのジャスティスもディーヴァから発進していった。

 

 ヴェイガンを殲滅するため、先にディーヴァから発進していったフリット。彼はディーンの乗るジルスベインをも敵だと断定していた。

「ヴェイガンは1人たりとも生かしてはおかん・・ここにいるヴェイガン全員も例外ではない・・!」

 怒りの言葉を口にするフリット。AGE-1がシールドライフルからビームを発射して、ディーンの乗るジルスベインがかわす。

「ガンダム・・キオが乗っているんじゃない・・・!」

 ディーンはAGE-1に乗っているのがキオでないことを確信する。AGE-1はライフルシールドをビームサーベルとして振りかざしてくる。

「くっ!」

 ディーンが反応して、ジルスベインもビームサーベルを構えて、シールドライフルのサーベルを受け止める。

「ヴェイガンは存在自体が許されざる罪だ!この手で断罪する!」

「今のヴェイガンだけじゃない・・地球種は自分たちのことしか考えてない!」

 憎しみをぶつけてくるフリットに、ディーンも憤りを感じていく。

「ルウ・・お前の墓を地球に建てたい・・そのためには、今のヴェイガンのやり方でも、地球の連中の言いなりになっても叶わない・・・!」

 病で眠りについた妹、ルウ・アノンの弔いを地球で果たしたいという願いのため、ディーンは軍人に志願した。パイロットの一員となったものの、彼はヴェイガン、イゼルカントやゼハートの意思を知り、彼は自分の願いとは交わらないことを痛感し、脱走を思い立った。

「もうキオに頼るしかない・・キオにしか頼れない・・・!」

「ディーン!」

 感情を込み上げていくディーンに向かって声が響いてきた。交戦するAGE-1とジルスベインに駆けつけてきたのは、キオの駆るAGE-FXである。

「キオ!?

「じいちゃん、やめてよ!ディーンを攻撃しないで!」

 声を荒げるフリットにキオが呼びかける。AGE-FXCファンネルを射出して、AGE-1とジルスベインの間に割って入らせて、攻撃を中断させる。

「キオ!?・・そのガンダムに乗ってるのはキオなのか!?

「ディーン・・本当にディーンなの・・!?

 ディーンとキオが互いに対して困惑を感じていく。

「どけ、キオ!ヤツはヴェイガン!倒すべき敵だ!」

 フリットが言いかけて、AGE-1がライフルシールドからジルスベインに向けてビームを放つ。だがAGE-FXCファンネルにビームを弾かれる。

「邪魔をするな、キオ!お前が倒さないなら、私がヤツらを・・!」

「ダメだよ、じいちゃん!ディーンは敵じゃない!」

 怒鳴るフリットをキオが呼び止める。

「敵だと決めた相手を情け容赦なく倒すのが、じいちゃんの正義なの!?・・それが救世主の姿なの・・・!?

 キオがフリットに対して不満を募らせていく。

「友達を殺すのが正義なら、僕は悪でもいいよ・・それでも僕は、ディーンを、みんなを守る!」

「キオ・・・!」

 決意を言い放つキオに、ディーンが戸惑いを覚える。しかしフリットはヴェイガンへの憎しみを消さず、さらにディーンへの怒りを膨らませていく。

「お前か・・キオを騙して、惑わせたのは・・!?

 フリットが怒号を放ち、AGE-1がライフルシールドからのビームでジルスベインを狙い撃ちする。

「やめてよ、じいちゃん!」

 キオが叫び、AGE-FXCファンネルを操作してAGE-1を取り囲んだ。

「いい加減にしろ、キオ!お前はヤツに騙されているのだ!」

「違う!ディーンは僕の友達だ!セカンドムーンで僕にたくさんのことを教えてくれた親友だ!」

 互いに叫びをぶつけ合うフリットとキオ。

 そこへディーンを追撃に来ていたガフランたちが、ジルスベインに攻撃の矛先を向けた。だがシンのデスティニーの攻撃に妨害され、さらに続けて駆けつけたフリーダムとジャスティスによって行く手を阻まれる。

「ディーンがどうして軍に入って、どうしてヴェイガンを抜けてきたのかは分からない・・それでも僕はディーンを信じる!」

「キオ・・お前・・・!」

 あくまでディーンを守ろうとするキオに、フリットが感情を高ぶらせていく。

「どけ、キオ!ヴェイガンを倒して、お前の目を覚まさせる!」

 フリットが言い放ち、AGE-1がライフルシールドを発射して、AGE-FXをジルスベインから引き離す。

「じいちゃん!」

 ディーンの撃墜を強行しようとするフリットに、キオが叫ぶ。それを目の当たりにして、シンが感情を揺さぶられていく。

 そのとき、シンの脳裏に悲劇の記憶がよみがえっていく。目の前で命を落とした家族、戦争の中で戦死した仲間、守ることを約束するも命を散らしたステラ。様々な悲劇が、シンの心を突き動かした。

「ディーン、逃げて!逃げるんだ!」

「キオ!?

 呼びかけてくるキオに、ディーンが戸惑いを覚える。

「ディーヴァにいても危ない!すぐにここから離れるんだ!」

「キオ・・すまない!」

 キオにさらに呼びかけられて、ディーンが離れていく。

「逃がすか!」

 フリットがいきり立って、AGE-1がライフルシールドのビームサーベルを振りかざして、AGE-FXを引き離す。そしてAGE-1がジルスベインを追って、ライフルシールドを振りかざす。

「うっ!」

 ジルスベインがビームサーベルで受け止めるも、AGE-1の勢いを止めることができずに押される。その衝撃でディーンがうめき、ジルスベインが体勢を崩す。

「もらった!」

 フリットが言い放ち、AGE-1がライフルシールドを発射する。体勢を整え切れず、ジルスベインが回避できない。

 そのとき、デスティニーが飛び込んで、左腕から発したビームシールドを振りかざしてビームを弾いた。

「何っ!?

「えっ!?

 突然のことにフリットもディーンも驚きの声を上げる。デスティニーはジルスベインではなく、AGE-1と対峙してきていた。

「くっ!・・どういうつもりだ、お前・・!?

 フリットが憤り、AGE-1がライフルシールドをデスティニーに向ける。

「アンタこそ、あれだけ孫が呼びかけてるのに、聞かずに一方的に攻撃を仕掛けて・・!」

 シンが怒りの言葉を口にして、デスティニーがAGE-1に向かっていく。

「家族より自分のほうが絶対正しいと思っているのか!?

 デスティニーがアロンダイトビームソードを手にして振りかざし、AGE-1が後方に動いてかわす。

「キオはアイツを心から信じてる!それを分かってるアイツも心のある人間だ!同じ人間を死なせたくないっていうのが、いけないのか!?

 シンが言い放ち、デスティニーが右肩に備わっているビームブーメランを左手で取って投げつける。

「ヴェイガンは人間ではない!人の皮をかぶった悪魔だ!」

 フリットは言い返し、AGE-1がライフルシールドを振りかざして、ビームブーメランを弾く。

「悪魔に救いの手を差し伸べる必要はない!抹殺される以外に、ヤツらの末路は許されない!」

「アンタ、どこまで身勝手な・・!」

「それにお前も戦争で家族を殺されたそうだな!?敵は決して許してはおけないという思いは、お前の中にもあるはずだ!そのお前に、なおさら私を止める権利はない!」

「だからって・・だからって!」

 頑ななフリットにさらなる怒りを覚えるシン。デスティニーが飛びかかり、左手のパルマフィオキーナを繰り出すが、AGE-1に紙一重でかわされる。

「そこまで私の邪魔をするなら、お前も敵として倒す・・・!」

 妨害をするシンを敵と見なすフリット。AGE-1がライフルシールドからビームを発射しながら、デスティニーに詰め寄っていった。

 

 

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