GUNDAM WAR

-Confusion of SEED-

第9章

 

 

 シンのデスティニーが戻るまでの間、キラのフリーダムを食い止めようとするルナマリアたち。しかしタンホイザーのビームを、フリーダムはイペールラケルタで切り裂いてみせた。
「僕を止めることは誰にもできない・・僕から逃げることも・・・」
 キラが呟くように言って、フリーダムがカリドゥスを発射した。ミネルバのタンホイザーの砲門が、ビームを受けて爆発した。
「ミネルバ!」
 ミネルバが揺さぶられ、ハルが叫ぶ。
「ミネルバは後退を!プラントの防衛に専念してください!」
「分かったわ・・本艦は後退し!消火を急ぎ、体勢を整える!」
 ルナマリアの呼びかけを聞き入れて、タリアが指示を出す。ミネルバがプラントに近づくいて、前方部の消火に当たる。
「私たちでキラを止めるしかないわ・・せめて、シンが戻ってくるまで・・・!」
 ルナマリアが言いかけて、ソラとハルが頷く。
「敵わないのは分かっています・・でも・・!」
「それでも僕たちだって、やれることはあるはずです・・!」
 ソラとハルが自分たちの力でキラを止めようと考える。大きな力の差があることを強く理解した上で。
「敵わなくても、やれることがある・・・私にも・・・!」
 ルナマリアも突き動かされて、諦めずに戦って生き残る決意を強くする。
「僕は戦う・・君たちを必ず滅ぼす・・・!」
「そうはさせない!絶対にあなたを止める!」
 低く告げるキラにハルが言い返す。ファルコンがビームサーベル、ビームライフルを構える。
「僕を止めることはできない・・誰にも・・・!」
 キラが言いかけて、フリーダムがレールガンを発射する。インパルスとファルコンが回避するが、直後にフリーダムがファルコンに近づいてきた。
「くっ!」
 ファルコンがビームサーベルを振りかざして、フリーダムのビームサーベルを受け止める。しかしフリーダムがもう1本のビームサーベルを振りかざしてきた。
 ハルがとっさに判断し、ファルコンがビームライフルを構えるが、フリーダムによって左腕ごと切り裂かれた。
「しまった!」
 ファルコンを損傷され、ハルが声を上げる。フリーダムがファルコンに追撃をしようと、ビームサーベルを振り上げる。
「ハル!」
 ルナマリアが呼びかけて、インパルスがビームライフルを発射する。キラが気付き、フリーダムがファルコンから離れてビームをかわす。
「ハル、今のうちに離れて!」
「ルナマリアさん!」
 呼びかけるルナマリアにハルが答える。インパルスがさらにビームライフルを連射する。
「向かってきても倒すだけ・・・!」
 キラが呟き、フリーダムがレールガンを発射して、インパルスのビームライフルを右腕ごと破壊した。
「ミネルバ、チェストフライヤー、フォースシルエット!」
 ルナマリアがミネルバに向けて呼びかけてきた。
「させない・・!」
 キラがミネルバに目を向けて、フリーダムがカリデュスを発射する。ビームがミネルバのインパルス専用のカタパルトに直撃した。
「ミネルバが!」
「これじゃフライヤーもシルエットも出せない・・・!」
 ミネルバが攻撃されたことに、ハルとルナマリアが声を上げる。これでインパルスはミネルバの援護で再合体での修復が不可能に近くなってしまった。
「突撃したのが仇になった・・このままじゃ・・・!」
 危機感を一気に募らせるルナマリア。インパルスが左手でビームサーベルを手にする。
「これで終わりだ・・僕が終わらせる・・・!」
 キラが言いかけて、フリーダムがビームサーベルを構えてインパルスに飛びかかる。
「フリーダム!」
 ハルが言い放ち、ファルコンがビームライフルを構える。そこへドラグーンのビームが飛び込み、ファルコンがインパルスの援護を妨害される。
「これじゃルナマリアさんのところへ行けない・・!」
「ルナマリアさん!」
 ファルコンが回避を取る中、ソラとハルが叫ぶ。
「まずは君を討つことになる・・インパルスを・・・」
 キラがインパルスを狙い、フリーダムがイペールラケルタを構える。インパルスが構えを取るが、ルナマリアは抵抗できないことを痛感している。
 フリーダムがインパルスを狙って、全ての銃砲を展開した。ルナマリアが回避しようと身構える。
「ルナ!」
 そのとき、シンの呼び声がルナマリアに飛び込んできた。デスティニーが戻ってきて、フリーダムに向けてビーム砲を発射してきた。
 キラが気付き、フリーダムがビームをかわして、1度インパルスから離れる。
「大丈夫か、ルナ!?」
「ありがとう、シン・・私は大丈夫だけど、インパルスはもう・・」
 心配の声をかけるシンに、ルナマリアが深刻さを込めて答える。シンもインパルスが負傷し、ミネルバもハッチを攻撃されて射出できない状態にあることに気付いた。
「ルナはミネルバのそばに付いていてくれ・・もうオレはやられたりしない・・・!」
「シン・・・分かった・・ゴメン・・・」
 呼びかけるシンに答えて、ルナマリアが謝る。インパルスがミネルバの近くまで下がる。
「これで終わらせる・・アンタは、オレがこの手で止める!」
「終わらせるのは僕のほうだ・・全てを、僕がこの手で・・・!」
 シンとキラが言い放ち、デスティニーとフリーダムがそれぞれビームソードとビームサーベルを手にする。2機が加速してビームの刃をぶつけ合う。
 さらに激化するデスティニーとフリーダムの攻防に、ソラとハルは動揺を隠せなかった。
「ここまでのパワーとスピードを発揮してる・・スピードもファルコンを超えてきている・・・!」
「もう僕たちでも、シンさんとキラの戦いについていけないのか・・・!」
「まだ何かあるよ!シンさんを手助けする方法が何か!」
「悔しいけど・・もうこれ以上は、僕たちが介入できるレベルじゃなくなってるよ・・・!」
 シンを助けようと思考を巡らせるソラだが、ハルは手を出せる状況でないことを痛感して、加勢に踏み出せなかった。
「シンさんが危ないと、ちょっとでも思ったら、すぐに駆けつける・・いつでも踏み出せるように、僕たちは準備する・・!」
「うん・・私たちができるのは、そのくらいかもしれないね・・・」
 ハルがいつでも援護に出られるように備えて、ソラが小さく頷いた。
(今の私に何もできないのが悔しい・・シン、あなたに任せ切りになるのが辛い・・・)
 インパルスの損傷を痛感して、ルナマリアは体を震わせていた。

 シンのデスティニーとキラのフリーダムの攻防は、激化が極まったものとなっていた。
 ビームの刃、ビームブレイド、ビームの射撃がぶつかり合い、激しい衝撃をもたらして相殺される。それでもシンとキラ、デスティニーとフリーダムの激闘の勢いは衰えない。
「君は僕が倒す・・今の世界を、僕が壊す・・僕からみんなを奪ったこの世界を、僕が・・・!」
「そんなことはさせない!アンタの・・アンタたちの思い通りにはさせない!オレが戦いを終わらせて、世界を守る!」
 キラが敵意を、シンが決意を言い放つ。デスティニーとフリーダムがシュペールアロンダイトとイペールラケルタをぶつけ合い、つばぜり合いを演じる。
 デスティニーがフリーダムから離れると同時に、ビームブーメランを投げつける。フリーダムがイペールラケルタでビームブーメランを弾く。
 そこへデスティニーが飛び込み、シュペールアロンダイトを突き出してきた。
「何度も同じ攻撃は受けない・・・!」
 キラがデスティニーの動きを注視する。フリーダムが屈んで、デスティニーの突撃をかわした。
 直後、フリーダムが振り向きざまにイペールラケルタを振りかざす。シンが即座に反応し、デスティニーが加速しつつ、シュペールアロンダイトでイペールラケルタを防いだ。
 デスティニーが加速したまま、フリーダムと距離を取る。
「紙一重でかわすか・・それでオレに勝てると思うな!」
 シンが言い放ち、デスティニーが再びフリーダムに突っ込む。デスティニーが勢いに乗せてシュペールアロンダイトを突き出す。
 キラが反応し、フリーダムがシュペールアロンダイトをかわす。だがその瞬間、彼はデスティニーが片手でシュペールアロンダイトを突き出していたのを目にした。
 次の瞬間、デスティニーがビームブレイドを発した右足を振りかざしてきた。フリーダムもビームブレイドを出した右足を振りかざして、激しくぶつけ合う。
「ぐっ!」
「うっ!」
 デスティニーとフリーダムが衝撃の相殺で互いに突き飛ばされ、シンとキラがうめく。
 フリーダムがドラグーンを操作して、デスティニーに射撃を仕掛ける。デスティニーがビームライフルに持ち替えると同時に、高速で動いてドラグーンのビームをかわす。
 デスティニーはフリーダムに弾かれて宙を漂っていたビームブーメランを手にして、フリーダム目がけて再び投げつける。続けてデスティニーがビームライフルを発射して、ビームブーメランにぶつけてビームを拡散する。
 拡散されたビームによって、展開していたドラグーンが破壊されていく。
「これ以上は・・・!」
 キラが目つきを鋭くして、フリーダムがイペールラケルタを構えて飛びかかる。高速で飛び込んだフリーダムの一閃が、デスティニーのビームライフルを切り裂いた。
 デスティニーがシュペールアロンダイトを振りかざして、フリーダムのイペールラケルタとぶつけ合う。フリーダムが力負けして、デスティニーに突き飛ばされる。
(機体のエネルギーはお互い無限だけど、パイロットまではそうはいかない・・それなのに動きが衰えない・・・!)
(思いの強さが体を、モビルスーツを突き動かしている・・・!)
 シンとキラが互いの底力を痛感する。しかし焦りにのまれることなく、2人も戦いに集中する。
 デスティニーがシュペールアロンダイトを、フリーダムがイペールラケルタを振りかざす。2機の刃が立て続けにぶつかり合い、火花を散らす。
 デスティニーとフリーダムが、ビームブレイドの発する足を振りかざし、ぶつけ合う。2人とも、2機とも攻撃の勢いを緩めない。
 フリーダムがデスティニーとの距離を取り、レールガンを発射する。デスティニーがビームシールドでビームを防ぎながら、フリーダムに突っ込む。
 デスティニーが左手を前に出して、パルマフィオキーナを放つ。左手からの射撃が、フリーダムの左のレールガンを破壊した。
「くっ!」
 キラがうめきながらも、フリーダムが即座にイペールラケルタを振りかざす。この一閃がデスティニーの左のビーム砲を切りつけた。
「ぐっ!」
 シンがうめきながらも、デスティニーを動かして体勢を整える。
 双方力が拮抗した一進一退の攻防。負傷し始めても、デスティニーもフリーダムも勢いが衰えなかった。

 プラントの防衛に回ったルナマリアが、レーダーでシンとキラの位置を確認して、戦況を見届けていた。
「ルナマリアさん、1度ミネルバに戻ったほうが・・・!」
 マイがインパルスにいるルナマリアに呼びかける。
「ありがとう、マイ。でももうインパルスじゃ、シンの戦いについていけない・・足手まといになるだけだと、分かっているから・・」
「ルナマリアさん・・そんなことは・・・」
 答えるルナマリアにマイが弁解しようとする。
「プラントはまだ、住民の避難が完了していない・・被害が拡大しているわ・・・」
「私たちは満身創痍ですが、これ以上フリーダムの攻撃をプラントに通すわけにいかないですね・・私たちで必ず守らないといけないです・・」
 タリアがプラントの状況を伝えて、ルナマリアが覚悟を強める。
「残された力と武器で、フリーダムの攻撃を通さない・・・!」
「それが、僕たちに残された手段・・・!」
 自分たちがプラントと人々を守る盾になる覚悟も秘めて、ハルとソラが防衛に備えた。
「2人とも、守ることもだけど、生き残ることも忘れないで・・」
 ルナマリアが注意を言って、ソラとハルが頷いた。
(シン・・あなたも必ず生きて戻ってきて・・・!)
 ルナマリアが心の中でシンに向けて呼びかけた。

 デスティニーとフリーダムの攻防は続く。シンとキラの体力は大きく消耗していたが、2人とも感覚を研ぎ澄ませたままだった。
(ドラグーンは全て破壊した・・レールガンも1つ・・それでも戦闘力が衰えない・・・!)
 シンがキラの底力を痛感して毒づく。
(これがフリーダム・・これがキラか・・だけど、それだけの強さを、自分たちのために振るっている・・そのために世界を混乱させている・・・!)
「そんなこと、絶対にさせない!オレが絶対に止めてやる!」
 それでもシンは引かずに、感覚の鋭利を維持してキラに立ち向かう。デスティニーが振りかざすシュペールアロンダイトを、フリーダムが素早くかわす。
 デスティニーとフリーダムが同時にビーム砲とカリドゥスを発射する。出力のあるビームがぶつかり合い相殺される。
 フリーダムが2つのビームサーベルを手にして、連結させてビームを放つ。デスティニーは残像を伴った高速でビームをかわし、左手を突き出してパルマフィオキーナでビームライフルを破壊した。
 フリーダムが直後にビームブレイドを発した右足を振りかざした。デスティニーも同時に右足を振りかざして、ビームブレイドをぶつけ合う。
「まだだ・・まだオレはやられないぞ!」
「くっ!」
 言い放つシンと毒づくキラ。デスティニーとフリーダムがシュペールアロンダイトとイペールラケルタをぶつけ合う。
「オレは終わらせる!この戦いを!アンタの暴走を!」
「終わらせるのは、この世界の愚かさ・・悲劇は、僕が止める・・・!」
 シンとキラが感情をもぶつけ合う。2機のビームの刃が立て続けに衝突して、宇宙に衝撃がまき散らされていく。
(オレは戦う・・戦い続ける・・この戦いが、この先終わることのないものだとしても、オレは・・・!)
 心の中で決意を強めていくシン。どのような状況になろうと、どうあっても戦いが終わらないと言われても、シンの決意は揺るぎなかった。
(全てを滅ぼす・・僕たちの全てを奪った、この世界の全てを・・この僕の手で、必ず・・・!)
 キラも世界の打倒への意思を強固にしていた。デスティニーとフリーダムの激闘がさらに続く。
 デスティニーもフリーダムも、徐々に損傷が多くなっていく。それでも2機の動きは衰えず、ビームの刃をぶつけ合う。
 デスティニーとフリーダムが左足のビームブレイドをぶつけ合う。
「くそっ!」
 シンが叫び、デスティニーがフリーダムと共に力を強める。ぶつかり合った2機の左足が爆発して破損した。
 シンとキラが毒づきながらも、デスティニーとフリーダムはすぐに右足を振りかざす。再びビームブレイドがぶつかり合うが、2機の右足も爆発を起こした。
「機体のほうが限界に来たか・・・!」
「いくらエネルギーが尽きなくても、装甲までは・・・!」
 搭乗機の胴体に限界が来ていることに、シンもキラも毒づく。デスティニーもフリーダムも損傷が大きくなっていた。
「それでも・・オレは退くわけにはいかない!」
「たとえバラバラになっても、この世界を必ず・・!」
 それでもシンもキラも戦いをやめない。デスティニーとフリーダムは負傷した胴体を突き動かして、加速して突撃を仕掛けた。

 プラント周辺に展開しているザフト部隊が、防衛線の確認を取る。
「ビームやデブリが飛び火してくる可能性がある!絶対にプラントへの直撃を阻止しろ!」
 部隊の指揮官がパイロットたちに指示を出す。
「デスティニーの救援にも手を回したほうが・・!」
「ダメだ!我々が手を出しても足手まといになる!命取りになりかねないぞ!」
「しかし、このまま手をこまねいているようなこと・・・!」
「託すしかない・・ザフトが開発し、さらに進化を遂げたデスティニーを・・その力を強固な意思で振るうシン・アスカを・・・!」
 声を荒げるパイロットたちに、隊長が呼びかける。彼はシンに全てを託すしかないと思っていた。

 デスティニーとフリーダムの損傷は、ルナマリアたちも確認していた。それでも戦闘力が衰えない2機に、彼女たちは驚くばかりだった。
「シンさん・・キラも、あんな状態になっても戦っている・・・!」
「あれでも、援護に行くことができない・・逆にシンさんの足を引っ張ることになる・・・!」
 ソラとハルがシンたちの攻防を見つめて、緊張を募らせる。
「信じるしかない・・シンが勝つって・・・」
 ルナマリアがシンへの信頼を口にする。
「ルナマリアさん・・シンさんだけです・・キラを倒すことができるのは・・・!」
 彼女の言葉を受けて、ソラが小さく頷いた。ハルもシンを信じて待つことにした。

 満身創痍に陥るデスティニーとフリーダム。シンもキラも精神が限界に達していたが、退こうとしない。
(オレは戦う・・戦いのない世界を取り戻すために・・たとえアンタが、何度オレの前に出てきても・・・!)
 シンが戦意を強めたまま、キラを、フリーダムを見据える。
(アンタはいつも、オレの前にいた・・アンタはオレたちに、何度も悲劇を振りまいた・・・!)
 シンの脳裏に、これまでの自分の記憶がよみがえってくる。
 オーブで家族とともに平穏に暮らしていたシン。オーブが、家族が戦火に巻き込まれた戦場に、キラの駆るフリーダムはいた。
 戦いのない世界のためにザフトに入って戦いを続けていたときにも、フリーダムが立ちはだかった。
 デストロイを動かすステラを救おうとする中、シンはキラと交戦した。ステラは救い出したが、シンはキラを止めるために討つ決意を強くした。
 シンが戦闘シュミレーションを重ねたことで、インパルスがフリーダムを貫き打ち倒した。
 だがフリーダムは新たな姿と力となって、またもシンの前に立ちふさがった。
 シンが新たに乗ったデスティニーと、キラの駆るストライクフリーダム。
 強い意思と力の激突の末、デスティニーがフリーダムを討ち、クライン派はメサイア攻防戦でその主力が全滅したかに思われた。
 しかしキラは生きていた。瀕死の重傷から復活を果たし、世界を滅ぼそうとする破壊の使者となって。
(何度現れても、オレはもうアンタに屈しない・・この先アンタが何度立ちふさがろうと、オレは戦い続ける・・この戦いの運命を、オレは受け入れる!)
「オレ自身の意思で!」
 シンが声を振り絞り、デスティニーがシュペールアロンダイトを構えて飛びかかる。フリーダムもイペールラケルタを手にして、デスティニーが振りかざすシュペールアロンダイトとぶつけ合う。
「僕は全てを滅ぼす・・僕の大切な人を奪った全てを・・・!」
 世界への憎悪を募らせるキラ。フリーダムとデスティニーがさらにイペールラケルタとシュペールアロンダイトをぶつけ合い、衝撃で互いに突き飛ばされる。
 フリーダムが残された全ての銃砲を展開して一斉発射する。デスティニーはスピードを上げて、ビームをかいくぐる。
 詰め寄ろうとするデスティニーに対し、フリーダムは距離を取って射撃、砲撃を狙う。
「逃がさない!アンタの暴挙を、オレがここで終わらせる!」
「僕は終わらない・・終わるのは君たち・・この世界だ・・!」
 強い意思と敵意をぶつけ合うシンとキラ。デスティニーがスピードを上げて、フリーダムとの距離を詰めようとする。
(オレはもう、大切な人を失いたくない・・今のこの世界を、みんなを守るために・・・!)
「オレは戦う!戦い続ける!その運命を、オレ自身の意思で受け入れる!」
 シンが言い放ち、デスティニーがさらにスピードを上げてフリーダムに迫る。デスティニーが振りかざしたシュペールアロンダイトを、フリーダムが正確にかわす。
「君が僕たちの全てを奪った・・絶対に許さない・・君たちも、君たちのいるこの世界も・・・!」
「オレはアンタにはやられない!オレには大切なものと、自ら背負った使命がある!」
 憎悪を募らせるキラにシンも言い放つ。フリーダムが放つビームを、デスティニーがかいくぐり突っ込む。
「シン、君の存在を僕は許さない・・・!」
 キラが声を振り絞り、フリーダムがイペールラケルタを分割して、両手でビームサーベルを持つ。
「何度でも、オレはアンタを倒して、戦いのない世界を取り戻す!」
 シンも言い放ち、デスティニーがシュペールアロンダイトを構えて飛び込む。フリーダムが残された全ての銃砲を発射してビームを放つ。
 デスティニーは高速で飛び込み、ビームをかいくぐる。
「今度は逃がさない!」
 シンが言い放ち、デスティニーがビームをかいくぐり突っ込む。デスティニーが突き出したシュペールアロンダイトが、フリーダムに迫る。
「絶対に倒す・・君は、この手で!」
 デスティニーのシュペールアロンダイトが捉える瞬間、フリーダムがビームサーベルを突き出した。シュペールアロンダイトとビームサーベルが互いに命中する。
 シュペールアロンダイトはフリーダムの胴体を、ビームサーベルはデスティニーの頭部と左わき腹を貫いていた。
 2機のビームとエネルギーの閃光が2機自身を、そして周辺の宙域をも包み込んだ。

 光の粒子で満ちあふれた精神世界。その空間の真っ只中で、シンとキラは向かい合っていた。
「キラ・・・!」
「シン・・・!」
 互いの姿を視認するシンとキラ。2人は互いに向けて鋭い視線を向け合う。
「全てはアンタが、オレの全てを奪ったことから始まった・・しかもアンタは戦いを繰り返して、自分を押し付け続けていった・・・!」
「それでも僕は、戦いを止めないとって思った・・僕がやるしかないと思って・・・」
「それでオレや他のヤツの命や、大切なものを奪っていいことにならない・・・!」
「それでも僕は、戦いを止めるために・・・!」
「そのつもりでいるアンタは、戦いを生み出す敵になってしまったんだよ・・・!」
 言い返そうとするキラに、シンが強い意思を持って言い放つ。
「オレは戦う・・アンタのような世界の敵と・・アンタが何度出てきても、オレが何度でも倒す・・!」
 シンが決意を口にして、右手を強く握りしめる。
「オレは、オレの意思で・・戦う運命を受け入れる!」
 シンが飛びかかり、キラに拳を叩き込んだ。その瞬間、キラは自分の何かが壊れたような感覚を覚えた。
「こ・・これが・・君の、感情・・・」
 シンの意思と決意を痛感して、キラが揺さぶられる。
「君の全てを・・ううん・・この世界の全てを壊したのは・・僕だった・・・そう思っているの・・・!?」
 憤りを募らせるキラが、シンから離れていく。
「アンタがまた現れても、オレは何度でもアンタを倒す・・オレが戦い続ける限り、アンタの思い通りにはさせない・・・!」
 揺るぎない決意を口にするシンから、キラは力なく遠ざかっていった。
(違う・・僕はみんなを守るために戦っただけだ・・アスランもカガリもマリューさんも、ラクスも・・・)
 キラの脳裏に、アスランたち仲間たちとこれまでの自分の思い出と戦いがよみがえってくる。
(僕は死なない・・この馬鹿げた世界を正すまでは・・・!)
 キラは死に抗い、力を振り絞る。彼は自分たちを追い込む世界を滅ぼすため、シンへの憎悪を募らせた。

 互いの攻撃で損傷したデスティニーとフリーダム。フリーダムがビームサーベルに力を入れて、デスティニーを押さえ込む。
「アンタ、何を・・!?」
「僕が死ぬしかないとしたら、僕だけでは死なない・・君も連れていく・・・!」
 声を荒げるシンに、キラが鋭く言い放つ。キラはシンを道連れにしようとしていた。
「そこまでオレや世界を殺そうっていうのか!?・・そこまで自分が正しいと思ってるのか、アンタは!?」
 自分の考えを押し付けようとするキラに、シンが怒号を放つ。デスティニーがシュペールアロンダイトを押し付けるが、フリーダムはビームサーベルをデスティニーから離さない。
「絶対に逃がさない・・絶対に許さない・・僕が死んで、君が生き残るのは・・・!」
「アンタの思い通りにはならない!オレはアンタを討って、みんなのところに帰るんだ!」
 憎悪を強めるキラに、シンが決意を込めて言い返す。デスティニーが加速して、フリーダムを押し込む。
 それでもフリーダムはビームサーベルをデスティニーに刺したまま、強引に銃砲を展開して撃とうとする。
「それでオレはやられはしない!」
 シンが言い放ち、デスティニーがフリーダムを隕石の1つに押し付けた。直後にデスティニーが右手を突き出して、パルマフィオキーナをフリーダムの胴体に押し当てた。
 同時にフリーダムがデスティニーにビームサーベルを食い込ませたまま、レールガンとカリドゥスを発射した。
 カリドゥスのビームはデスティニーに直撃されず、右手だけを破壊した。レールガンのビームがデスティニーの両肩に命中した。
「ぐあぁっ!」
 デスティニーが損傷の爆発を起こし、それがコックピットに及んでシンがうめく。爆発の弾みでデスティニーがフリーダムから離れた。
「待て・・逃がしはしない・・君は必ず、僕が・・・!」
 キラがシンに向けて声を振り絞り、フリーダムを動かそうとする。しかしフリーダムは彼の思うように動かず、デスティニーから遠ざかっていく。
「僕は死ねない・・みんながいないこの世界を壊さないまま・・・」
 シンや世界への憎悪を強めたまま、キラはフリーダムの爆発の光に包まれた。爆発は閃光となって広がり、後退していくデスティニーの中でシンはそれを見つめていた。

 

 

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