GUNDAM WAR

-Confusion of SEED-

第7章

 

 

 包囲網を敷くザフトを迎撃するキラ。抗戦を続けるフリーダムに向かうミネルバからデスティニー、インパルス、ファルコンが出撃した。
「シン・・シンたちも来たのか・・・!」
 デスティニーたちを目撃して、キラが憎悪を募らせていく。
「やらせない・・これ以上君たちに・・・!」
 キラが目つきを鋭くして、フリーダムがデスティニーに向かって飛び出す。彼の接近を、デスティニーのレーダーとシンが捉えた。
「フリーダム!・・やっぱり出てきたか、キラ!」
 シンのデスティニーがインパルスたちから離れて、フリーダムを迎え撃つ。2機が同時に手にしたビームライフルを発射して、ビームがぶつかり合い相殺する。
「シンさん!」
 ソラとハルがシンに向かって声を上げる。
「みんなは先に行け!オレがキラを食い止める!」
 シンがルナマリアたちに呼びかけて、デスティニーとフリーダムが同時にビームサーベルの銃口を向け合う。
「シン!・・ソラ、ハル、先を急ぐわよ!」
「ルナマリアさん・・分かりました!」
 戸惑いを感じるのをこらえて、ルナマリアが呼びかけて、ソラが答える。インパルスたちが加速して先を急ごうとする。
「行かせない・・・!」
 キラが目つきを鋭くして、フリーダムが翼を展開して、搭載されているドラグーンを射出した。
 ドラグーンはインパルスたちに向かってビームを放ってきた。デスティニーがビーム砲を発射して、ドラグーンのビームをかき消した。
「シン!」
「ここはオレに任せろ!みんなはキラの仲間を追うんだ!」
 声を荒げるルナマリアに、シンが指示を送る。
「キラはオレが止める!みんなは先に行ってくれ!」
「シン・・分かった!後で合流しましょう!」
 シンに答えて、ルナマリアが基地のある方へ目を向ける。
「ソラ、ハル、ついてきて!」
「はい!」
 ルナマリアが指示して、ソラとハルが答える。インパルスが基地へ向かい、ファルコンも続く。
「みんなに手出しはさせない・・・!」
 キラがルナマリアたちを追おうとする。しかしフリーダムの前にデスティニーが回り込む。
「アンタの相手はオレだ!ここから先へは行かせないぞ!」
「それは僕のセリフだ・・・!」
 シンとキラが言い放ち、フリーダムがドラグーンを動かしてデスティニーを狙う。ドラグーンによるビームの包囲を、デスティニーは素早く正確に回避していく。
「宇宙にいるから有利などと思ったら、大間違いだ!」
 言い放つシンの中で何かが弾けた。彼の感覚が研ぎ澄まされて、視界がクリアになる。
 フリーダムのドラグーンがさらにビームを放つが、シンが即座に反応し、デスティニーが素早くかわしていく。
 デスティニーがシュペールアロンダイトを手にして、フリーダムに詰め寄る。キラが反応し、フリーダムがスピードを上げてシュペールアロンダイトをかわす。
「その武器は受けるわけにはいかない・・・!」
 キラが言いかけて、フリーダムがレールガンを発射する。デスティニーはこの砲撃もかわす。
 そしてデスティニーとフリーダムが、ビーム砲とカリドゥスを同時に発射して、ビームを相殺する。
「シン、僕の全てを奪った君を、決して許さない・・・!」
「許さないと思っているのはオレの方だ!これ以上、アンタに暴れさせてたまるか!」
 互いに怒りをぶつけ合うキラとシン。フリーダムが2本のビームサーベルの柄を組み合わせて、イペールラケルタにした。
 デスティニーとフリーダムが加速し、シュペールアロンダイトとイペールラケルタをぶつけ合う。フリーダムがレールガンを展開した瞬間、デスティニーもビーム砲の砲門をフリーダムの胴体に突き付けた。
 デスティニーとフリーダムが後ろに下がり、ビーム砲とレールガンを同時に発射する。ビーム砲のビームがレールガンのビームを破り、フリーダムが回避する。
「オレがキラを倒す・・オレしかいない・・・!」
 キラを倒せるのはもう自分しかいないと言い聞かせて、シンはデスティニーを動かした。

 キラの味方である男たちが小型艇に乗って、基地から脱出する。それをルナマリアたちが見つけて、インパルスとファルコンが向かう。
「私が前に出るわ!向こうが大きく動いたら、遠慮せずに撃って!」
「はい!」
 ルナマリアの声にソラたちが答える。ファルコンが追走して、インパルスが小型艇の前に回り込んだ。
「止まりなさい!こちらの指示に従うなら、危害は加えないわ!」
 ルナマリアが呼びかけて、インパルスがビーム砲「ケルベロス」を展開して構える。
「ザフト・・ラクス様を手にかけた悪魔が・・・!」
「逃げるしかない・・ここで屈すれば、ラクス様とキラ様の思いを踏みにじることになる・・・!」
「しかし、ザフトに見つかって、逃げ切れるとは・・!」
 男たちがインパルスを前にして緊迫を募らせる。小型艇でインパルスたちから逃げ切るのは不可能に近いと、彼らは痛感していた。
「他に船はないのですか!?ポッドでも何でもいいです!」
 そのとき、青年の1人が声をかけてきた。
「お前、何をするつもりだ!?・・まさか、1人で・・!?」
「よせ!わざわざ命を捨てるつもりか!?」
「そうしなければ、我々は全滅です!みなさんは同時に、全速力で脱出を!」
 男たちの反論に言い返して、青年が小型艇に乗っているポッドに乗り込もうとした。だが男の1人に殴られて、気絶させられる。
「こいつを頼む!特攻は私がする!」
 男の1人が呼びかけて、青年の代わりにポッドに飛び乗った。
「よせ!」
 呼び止めを聞かずに、男はポッドを発射させてインパルスに向かって突っ込む。
「行け!」
「お、おのれ!」
 ポッドの中の男が叫び、同時に小型艇が転回して逃走する。
「待ちなさい!」
 ルナマリアが言い放つが、インパルスにポッドが直撃する。
「これ以上、お前たちに世界は乱させない!」
 ポッドにいた男が絶叫を上げて爆発の中に消えた。
(自分の望む理想のためなら、自分の命まで・・そこまでキラのことを・・・!)
「止まりなさい!従わないのなら撃つ!」
 クライン派の理念に心を揺さぶられながらも、ルナマリアが言い放ち、インパルスが小型艇にケルベロスを向ける。ロックオンされても、小型艇は止まることなく進行していく。
(私はやれる・・シンには敵わなくても、射撃の腕も上がっているんだから・・・!)
 ルナマリアが心の中で呟き、小型艇を狙う。インパルスがケルベロスを撃って、小型艇にビームがかすめた。
「うっ!」
 小型艇がバランスを崩し、船内が揺さぶられて男たちがうめく。小型艇はその先のデブリに直撃した。
「うわあっ!」
 小型艇が爆発を起こして、男たちが巻き込まれて悲鳴を上げた。
「拘束できなかった・・他のクライン派の情報を聞き出すことが・・・」
「でもラクス・クラインのことを心から信じている連中だから、死んでも口を割るようなことはしなかったと思う・・・」
 男たちを捕まえられなかったことを悔やむハルに、ソラが男たちに対する憤りを口にする。
「みんな、他にもクライン派が近くにいるはずよ!捜索を続けて!」
 ルナマリアが声を掛けて、ソラとハルが再び集中する。
 そこへビームが飛び込み、インパルスとファルコンが回避する。ディンと「ドムトルーパー」が現れて、攻撃をしてきた。
「あの機体・・オーブやメサイアの戦いで3機で出てきたヤツ・・・!」
「他にも量産されていたってこと・・!?」
 ソラとハルがドムを見て声を上げる。ドムはかつてラクスに心酔する3人のパイロットがそれぞれ搭乗していた機体である。
「また連携して“ジェットストリームアタック”を仕掛けてくるかもしれない・・気を付けよう!」
 ハルが過去の戦いを思い出し、ソラが頷く。
「ミネルバ、他の船や機体の反応は!?」
「基地の反対側から船で脱出しています!」
 ルナマリアが聞いて、マイがレーダーを見て答える。ドムたちがインパルスたちと対峙している間に、他の小型艇が基地から発進していた。
「ソラ、ハル、あなたたちはクライン派を押さえて!この機体の相手は私がするわ!」
 ルナマリアがソラたちに指示を送る。
「ファルコンならインパルスよりも速い!絶対に逃がさないようにして!」
「了解!」
 彼女にハルが答えて、ファルコンが戦闘機形態に変形して動き出した。
「ミネルバ、デュートリオンビームを!」
「了解!デュートリオンビーム、照射!」
 ルナマリアが呼びかけて、メイリンが答える。ミネルバからデュートリオンビームが放たれて、受けたインパルスのエネルギーが回復した。
 ドムとディンがインパルスにムカッテ突っ込んできた。インパルスがランチャーからミサイルを発射する。
 ディンのうちの2機がミサイルを受けて爆発した。他の機体がインパルスに向かっていく。
 ドムがビームバズーカを発射して、インパルスが回避する。
「オレたちもあのお三方のように操縦できるよう特訓した・・!」
「あの方々のようにやれるはずだ・・・!」
「我々で連携して、まずはインパルスを仕留めるぞ!」
 ドムのパイロットたちが自信を強めて、インパルス打倒に集中する。
「ジェットストリームアタック!」
 ドム3機が左胸部にある攻性防御装置「スクリーミングニンバス」を起動する。ドムたちからビーム粒子が発生して光の壁となる。
 ドムたちが加速して、インパルスに向かって突っ込む。インパルスがケルベロスを発射するが、ドムたちの発する光の壁にビームが軌道を反らされる。
 スクリーミングニンバスの効果で射撃、砲撃を寄せ付けず、突撃しながら射撃、砲撃を行うドムの連携攻撃「ジェットストリームアタック」である。
「これじゃ通じない・・うっ!」
 毒づくルナマリアがドムの突撃に揺さぶられてうめく。
(あの状態にビーム攻撃は効かない・・直接攻撃を当てるしかない・・・!)
「ミネルバ、ソードシルエットを!」
 ドムを倒す術を見出し、ルナマリアが呼びかける。
「はい!」
 メイリンが答えて、ミネルバからソードシルエットが射出された、インパルスがブラストシルエットを外してソードシルエットと合体して、近接戦闘に特化した「ソードインパルス」となった。
 インパルスがエクスカリバーを手にして、ドムたちを迎え撃つ。
「そのような大きな武器、回避してやる!」
「今度こそジェットストリームアタックで!」
 パイロットたちがいきり立ち、ドムたちがスクリーミングニンバスを起動させながらインパルスに突っ込む。
(連続攻撃に惑わされず、1機ずつ仕留めていくだけ・・・!)
 ルナマリアが冷静にドムの動きを見る。インパルスがエクスカリバーを構えて、ドムの中の1機に狙いを定めた。
「そこよ!」
 ルナマリアが見切り、インパルスがエクスカリバーを振りかざした。エクスカリバーが光の壁ごとドムの胴体を切り裂いた。
「バカな!?こうもたやすくジェットストリームアタックが・・!」
 絶叫を上げるパイロットが、ドムの爆発に巻き込まれた。
「同じ手に何度もやられるほど、私は弱くはないわ!」
 ルナマリアが言い放ち、クライン派のパイロットたちが緊迫を募らせる。
「まだだ!まだ我々もいる!」
「援護するから、攻撃を続けるんだ!」
 ディンのパイロットたちがドムのパイロットたちに激励を送る。
「分かった・・徹底的にやってやるぞ・・!」
「たとえ刺し違えても、ザフトを必ず仕留める!」
 パイロットたちがいきり立ち、ディンとドムがインパルスを包囲する。
「たとえ囲んできても、突破してみせるわ・・!」
 ルナマリアは気圧されることなく、インパルスがエクスカリバーを構える。
 ディンが繰り出す射撃を、インパルスがかいくぐる。
「今だ!もう1度!」
 ドムのパイロットが掛け声を上げる。ドムたちがスクリーミングニンバスを発動し、インパルスに突っ込む。
 ドムは今度はビームバズーカといった遠距離攻撃でインパルスを攻め立てていく。
「接近戦をさせないようにしている・・この連携を破るには、スピードしかない・・・!」
 ルナマリアは冷静にドムたちの動きを読んで、対処法を考える。
「ミネルバ、フォースシルエットを!」
「了解!」
 ルナマリアが呼びかけて、メイリンが答える。インパルスがエクスカリバーを手から放したと同時に、ミネルバからフォースシルエットが射出された。
 インパルスはソードシルエットを切り離して、フォースシルエットと合体してフォースインパルスとなった。
 インパルスがエクスカリバーとビームライフルを手にして、ドムたちを迎え撃つ。
 インパルスがビームライフルを撃ちながらドムとの距離を止める。ビームは光の壁に阻まれるが、インパルスがドムの1機に詰め寄った。
「やらせるか!」
 他のドムがビームバズーカを発射して、インパルスを引き離す。
「オレたちもインパルスに攻撃だ!」
「はい!」
 ディンのパイロットたちが声を掛け合い、インパルスを狙う。しかし別方向から飛んできたビームに行く手を阻まれた。
「インパルスを援護する。敵モビルスーツへの攻撃を続けるのよ!」
「トリスタン、イゾルデ、ってぇ!」
 タリアが指示を出し、アーサーが号令をかける。ミネルバからビームとミサイルが放たれ、ディンが当てられて爆発する。
「ミネルバ!・・おのれ!」
 パイロットが毒づき、ディンがミネルバに反撃する。
「ミネルバはやらせないわ!」
 ルナマリアがミネルバのことを気にしながら、ドム撃破に専念する。
 ビームバズーカの砲撃をかわして、インパルスがドムの1機に詰め寄った。
「インパルス!」
 他のドムがビームを連射して引き離そうとするが、インパルスはドムの上を超えて、ビームをかわすと同時に後ろに回り込んだ。
「今度こそ終わりよ!」
 ルナマリアが言い放ち、インパルスがエクスカリバーを振り下ろした。この一閃がドムを切り裂いた。
「キラ様・・ラクス様・・・!」
 キラたちに心酔するパイロットが、ドムの爆発の中に消えた。
「おのれ・・おのれ、ザフト!」
 パイロットがいきり立ち、ドムがディンと共にインパルスに特攻を仕掛ける。
「負けははっきりしているのに、向かってくるなんて・・・!」
 ルナマリアがやるせなさを感じて、インパルスがエクスカリバーを振りかざす。ドムを引き離して、ディンが切り裂かれていく。
「いい加減に観念しなさい!死んだほうがマシだっていうの!?」
 ルナマリアが怒号を放ち、インパルスがビームライフルを連射して、ディンたちを撃つ。
 ドムがビームサーベルを手にして、インパルスに突っ込んできた。
「このっ!」
 ルナマリアが言い放ち、インパルスがエクスカリバーを突き出す。ビームサーベルに左肩を貫かれるも、インパルスはドムの胴体をエクスカリバーで貫いていた。
「我らが力尽きても・・・キラ様が・・お前たちを・・・!」
 パイロットが声を振り絞って力尽き、ドムがエクスカリバーを引き抜かれた直後に爆発した。
「私たちはあなたたちの思い通りにはならない・・フリーダムの力にも屈しない・・・!」
 キラたちによる理不尽を跳ね除けようとするルナマリア。シンに支えられていると思い、彼女は意思を強く持てるようになった。
「私はソラたちと合流します!」
「分かったわ。私たちは基地の中に入る。」
 ルナマリアが呼びかけて、タリアが答える。
 インパルスはミネルバから再びデュートリオンビームを受けて、ファルコンを追いかける。
「本艦は敵基地に近づき、内部に潜入します。」
「はい!武装を整え、突入します!」
 タリアの指示に答えて、アーサーが装備を準備して、基地への突入に備えた。

 基地を脱出した男たちの乗るシャトルを追って、ファルコンが回り込んだ。
「止まりなさい!もう逃げられないよ!」
 ソラが言い放ち、ファルコンがビームライフルの銃口を小型艇に向ける。
「我々はここで立ち止まるわけにも、貴様らに屈するわけにもいかない・・!」
「貴様らに捕まるくらいなら、このまま押し通る!」
 男たちが言い放ち、小型艇が再び前進を始めた。
「止まらないと撃つよ!そんなに死にたいの!?」
 ソラが怒鳴っても小型艇は止まらない。彼女が憤りを強めて、ファルコンがビームライフルを発射した。
 小型艇の1隻がビームを当てられて撃墜した。他の小型艇もファルコンに射撃されて爆破されていく。
 そして残った1隻の小型艇を、ファルコンが左手で押さえた。
「もう逃げられないぞ!大人しくこっちの指示に従うんだ!」
 ハルも男たちに向かって警告する。
「このままザフトやプラントの思い通りにされるくらいなら・・・!」
 男の1人が言いかけて、他の男たちと覚悟を決める。彼が小型艇の自爆スイッチを押した。
「全てはキラ様と、ラクス様のために!」
 男たちが断末魔を上げて、小型艇が爆発した。
「うっ!」
 ファルコンが爆発に押されて、ハルがうめいた。
「こっちの言うことを聞くくらいなら、死んだほうがいい・・自分から死を選ぶなんて、馬鹿げているよ・・・!」
「それだけ信じ込んでたってことなのね・・ホントに、馬鹿げてる・・・!」
 男たちの行動に、ハルもソラも憤りを募らせていた。
「ソラ、ハル・・」
 インパルスがファルコンに追いついて、ルナマリアが声を掛けてきた。
「ルナマリアさん・・・すみません・・クライン派、全員死亡しました・・・」
「彼らは本当に頑なだった・・ラクス・クラインに対する忠誠が強かった・・・」
 ハルが深刻な面持ちを浮かべて報告して、ルナマリアも歯がゆさを感じていく。
「シンさんを追いましょう・・せめて、シンさんの戦いを見届けないと・・・!」
「そうね・・でも深入りはしないように・・」
 ソラがシンと合流することを言って、ルナマリアが頷く。
「ミネルバがクライン派の基地の調査をしているから、私は援護に戻るわ。」
「分かりました!シンさんは任せてください!」
 ルナマリアがミネルバに戻ることを言って、ソラが答えた。インパルスが後退し、ファルコンはデスティニーを追っていった。

 キラのフリーダムが操るドラグーンのビームをかいくぐり、シンのデスティニーは徐々に距離を詰めてきていた。
 フリーダムとデスティニーが同時に、ビームブレイドを発した右足を振りかざしぶつけ合う。
(みんな・・!)
 そのとき、キラは男たちが脱出に失敗して全滅したことに気付いた。
「君たちは・・みんなを・・・!」
「オレたちの大切な人を手にかけて、それを悪いとも思わないアンタがそれを言うのか!」
 怒りを口にするキラに、シンが感情を込めて言い放つ。
「アンタたちが正しいと思ってやったことが、オレたちや世界を混乱させ、悲劇を増した!それを何とも思わないアンタたちは、絶対に許しちゃおかない!」
「世界を混乱させたのはデュランダル議長だ・・君たちがいなければ、僕たちは平和に過ごせていた・・!」
 シンとキラが互いに怒りをぶつけ合う。
「オレは戦いの運命を、オレ自身の選択で受け入れる!そしてオレの手で、アンタを止める!」
「僕は君たちを、僕たちに悲劇を与えたこの世界を許さない・・僕が敵を全て打ち倒す!」
 決意を言い放つシンに、キラが憎悪を募らせる。
「でもみんなのことを思うなら、今は1度引き下がるしかない・・・!」
 キラは歯がゆさを噛みしめながら、フリーダムがデスティニーから離れていく。
「待て!」
 シンが叫び、デスティニーがビーム砲を発射するが、フリーダムはビームを回避して姿を消した。
「逃げられた・・キラを取り逃がすことになった・・・!」
 シンが悔しさを感じて、両手を握りしめる。
「だけどアイツの隠れ家は暴いた・・もうフリーダムを直すことはできないはずだ・・・!」
 彼は気持ちを切り替えようと自分に言い聞かせる。
「シンさん、大丈夫ですか!?」
 ファルコンがデスティニーに追いついて、ソラが声を掛けてきた。
「あぁ・・だけど、キラには逃げられた・・・!」
「基地のほうは押さえました・・ただ、基地にいたクライン派は全滅しました・・」
 シンとハルが互いに状況を伝える。
「アイツにもうサポートはないけど・・次に何を仕掛けてくるか分からない・・・!」
「今まで以上に用心が必要ってことですね・・・」
 キラへの警戒を強めるシンに、ハルが深刻さを膨らませていく。
「1度戻りましょう、シンさん。今、艦長たちが基地を調べています。」
「分かった。戻るぞ・・」
 ソラが呼びかけて、シンが答える。デスティニーとファルコンがミネルバに戻っていった。

 クライン派の基地はアーサーたちによって徹底的に調査が行われた。
 基地には地球、プラントの情勢に関する情報と、現在活動しているフリーダムのデータがまとめられた形跡があった。しかしクライン派によるものか、データの大半は消去されていて、断片的なものしか収集することができなかった。
「なるほど。ここでフリーダムの、キラ・ヤマトのバックアップをしていたのか・・」
「私たちが来ると気付いて、情報を取られることを危惧して・・」
 タリアが基地のことを知って頷いて、マイが報告を続ける。
「フリーダムは、レーダーの範囲外に移動しています・・」
「でもフリーダムは修復を受けることはできない。あの機体も特殊な構造と武装がそろっているから・・」
 マイが報告を続けて、タリアが言い返す。
「ここからフリーダムの弱点を得るのは厳しいわね・・」
「どうしてもシンさんに頼るしかないってことなのでしょうか・・・」
「私たちの希望がシンなのは間違いないわ・・でも私たちもこの戦いを終わらせることに全力を注ぐ・・シンをサポートする形でも・・」
「艦長・・・」
 タリアの決意を聞いて、マイが戸惑いを浮かべる。
「メイリンとマイは交代で監視をして。フリーダムだけでなく、他の不穏な動きも見逃さないで。」
「はい!」
 タリアが指示をして、メイリンとマイが答えた。
「シンたちに休息を取るように。整備班は各機のチェックを。」
「了解です!」
 タリアが続けて指示して、アーサーが敬礼する。
「私は少し休むわ。アーサー、向こうに動きがあれば知らせて。」
「分かりました。お休みください、艦長。」
 艦長室に戻るタリアを、アーサーは見送った。
「いつフリーダムが現れるか分からない!今のうちに万全を整えるぞ!」
 アーサーが代わりに指揮をして、ミネルバの修繕を促した。

 ファルコンがミネルバに戻り、ソラとハルはひと息ついていた。
「キラをサポートしていた人たち・・捕まえることはできなかった・・詳しい話を聞き出したかったのに・・・」
 クライン派を誰も捕まえられなかったことに、ソラが悔しさを感じていく。
「でも、残りはフリーダムだけ・・そう思った方がいい・・」
 ハルが割り切って気持ちを切り替えようとする。
「でも他にキラの仲間がいたとしたら・・・!」
「いるかもしれないし、いないかもしれない・・どっちにしても、フリーダムを何とかすれば、戦いを終わらせられる・・そう思わないと、希望が見えなくなってしまうよ・・・」
 不安を膨らませていくソラを、ハルが励ましていく。
「まずはフリーダムを倒すことに専念する・・いつものソラならそういうはずだよ・・」
「ハル・・・そうだよね・・私、ちょっと気を張り詰めすぎていたかも・・・」
 ハルに言われて、ソラが落ち着きを取り戻していく。
「フリーダムを、キラ・ヤマトを倒せば、この戦いを止められる・・大きな脅威をなくせる・・・!」
「この先どうなるか分からないけど・・フリーダムがいなければ悲劇が少なくなるのは間違いない・・」
「やるしかない・・私たちだって、シンさんを援護できる・・・」
「僕と君が力を合わせて、ファルコンをうまく動かすことができれば・・・!」
 決意を口にするソラとハルが、互いを抱きしめ合う。
「これからも一緒にいてほしい・・戦いが終わった後も・・・」
「ハル・・・私と一緒でいいの・・・?」
「僕は君と一緒にいたいと思っている・・君が僕のことがイヤなら、話は別だけど・・・」
「そんなことない・・・私も、ハルと一緒にいたいよ・・戦いのときも、そうじゃないときも・・」
 ハルとソラが気持ちを伝え合い、互いの顔を見つめ合う。
「ソラ・・・ありがとう・・・」
「お礼を言うのは私の方だよ、ハル・・私とアンジュだけだったら、今回のキラの暴挙を止められなかった・・・」
「僕も力になれてよかった・・・」
「うん・・シンさんたちの力になれた・・・」
 感謝の言葉を口にして、ハルとソラが唇を重ねた。2人の互いに対する想いが高まった。

「ハル・・ソラ・・・」
 2人が想いを伝え合っている姿を、シンはただただ見守っていた。彼はソラたちも純粋に想いを寄せ合っていると思っていた。
「ソラもハルも、それぞれの思いを打ち明けているのね・・」
 そこへルナマリアも来て、シンに声をかけてきた。
「ルナ・・」
「シンも、これからも戦っていくの?・・戦い続けるって運命を、ずっと背負っていくつもりなの・・!?」
 戸惑いを見せるシンに、ルナマリアが寄り添ってきた。
「ルナ・・今、キラを倒すことができるのはオレだけだ・・ヤツを倒しても、他に戦争を仕掛けてくるヤツが出てくるかもしれない・・そのときのために、オレが・・・」
「そうやって、責任も運命も、何もかも背負って、シンは・・・」
 決意を口にするシンに、ルナマリアが寄り添って抱きしめた。
「私も戦い続ける・・みんなのために、あなたやステラのために・・・」
「ルナ・・ルナまで背負う必要はないんだ・・これはオレが背負うと、オレが決めたことだから・・」
「だったらこれは、私自身で決めること・・シン、私も戦い続けることを背負う・・・」
「ルナ・・・」
 自分のことを自分で決めているルナマリアに、シンは複雑な心境を感じていた。
「だったら、生きてみんなで帰ろう・・失うことの悲しみを、オレたちは知っているから・・・」
「シン・・・うん・・・」
 シンが投げかけた言葉にルナマリアが頷く。2人も抱きしめ合って、互いの想いを確かめ合っていた。
「そろそろ行こう、ソラたちのところへ・・」
「あぁ・・」
 ルナマリアの声にシンが答える。2人がソラとハルのところへ行った。

 

 

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