GUNDAM WAR

-Confusion of SEED-

第6章

 

 

 医務室で眠っていたシンが、ゆっくりと目を開いた。
「シンさん、気が付いたんですね・・!」
 ソラが彼を見て喜びの声を上げた。
「オレ、また気絶してしまったのか・・・」
 シンが体を起こして、記憶を呼び起こす。
「フリーダムとの戦闘の後に倒れて・・ここはミネルバの医務室です。」
「そうか・・オレがキラを追い払ったのは間違いなかったんだな・・」
 ハルが状況を話して、シンが納得する。
「気が付いたようだな。身体チェックをするから、2人は外に出ているように。」
 医務官も来て、シンの診察をするため、ソラとハルに呼びかけた。
「私たちはルナマリアさんに知らせてきます。」
 ソラがシンに言って、ハルと共に医務室から出た。
「本当にムチャをしすぎだぞ・・そのムチャに助けられたのも確かだが・・」
「ご心配をおかけしてすみません・・ただ、大切な人を失いたくなかったので・・・」
 医務官から注意されて、シンが謝る。
「今度こそ体調を万全にするんだ。たとえ戦いを終わらせても、死んでしまったら意味はないからな。」
「それは分かっています・・オレが戻らなかったら、悲しむ人がたくさんいますから・・・」
 医務官から休息を言われて、シンが聞き入れた。

 シンが目覚めたことを、ソラとハルは艦長室にいるタリアに伝えた。そこにはルナマリアの姿もあった。
「シン、無事で何よりだわ・・今はゆっくり休んだ方がいいわ。」
「はい。同じ診断が出ています。」
 安心するタリアの言葉に、ハルが頷く。
「ルナマリアさん、交代です。シンさんのそばにいてあげてください。」
「えぇ。艦長、行ってきます。」
 ソラの呼びかけに答えて、ルナマリアはシンのところへ向かった。
「2人とも、付き添い感謝するわ。あなたたちも休みなさい。」
「了解、艦長。失礼いたします。」
 タリアに敬礼して、ソラはハルと共に艦長室を後にした。
(みんながまた集まった・・レイ、あなたもいたなら・・・)
 シンたちが戻ってきてくれたこととレイがいない悲しみを感じて、タリアは吐息をつく。

 シンが医務官からのチェックを終えたところで、医務室のドアがノックされた。
「シン・・」
 ルナマリアが声を掛けて、ドアを開けて医務室に入ってきた。
「ルナ・・みんなに迷惑かけてしまった・・・」
「そんなことないよ・・シンがいなかったら、私たちは助からなかった・・・」
 謝意を示すシンに、ルナマリアが弁解する。
「心身に異常はない。今は休んで万全を期すことだ。」
「分かりました。ありがとうございました。」
 結果を報告した医務官にお礼を言うシン。彼はルナマリアと一緒に医務室を後にした。
「オレは部屋に戻る。グラディス艦長とレイ、部屋をそのままにしてくれてたんだ・・」
 シンがかつて使っていたミネルバでの自室のことを話して、ルナマリアが当惑を浮かべる。
「オレたちが出ていっても、オレたちがデュランダル議長を裏切っても、レイはオレたちのこと、完全に敵だと思っていなかったのかもしれない・・」
「対立したときに、シンの思いがレイに伝わったってことなのかな・・・」
「そうだな・・・でもレイは、もういない・・・あのときに、これだけの力が出せていたら・・・」
「シン、悔しいのはあなただけじゃないわ・・私もあの場に行くこともできなかったし、あなたにも敵わない・・」
 レイが死んだことを悔やむシンとルナマリア。
「もうこれ以上、大事なものを失いたくない・・オレがこの手で守ってみせる・・ステラのことも・・ルナ、君のことも・・・」
「守りたいと思っているのは、私も同じよ・・私も、あなたやステラ、大切な人みんな・・・!」
 シンとルナマリアが互いの想いを口にする。2人はシンの私室に入ったところで、互いに抱きしめ合った。
「みんなを守って、みんなのところに帰る・・それがオレたちの戦いだ・・・!」
「この戦いを終わらせて、私たちはステラのところへ帰る・・戦いが終わったことを、みんなで分かり合うために・・・!」
 シンとルナマリアがこの戦いにおける決意を口にする。
(大切な人をこれ以上死なせない・・そのためにフリーダムを、キラを倒す・・それがオレの戦い・・・)
 シンが心の中でキラ打倒を誓う。キラは完全な世界の敵になっていると、シンは確信していた。
(レイ、これでお前も納得するだろうか・・・)
 シンがレイのことを考えて、悲しい顔を浮かべた。
「ルナ、オレは休むよ・・次の戦いに備えて・・・」
「えぇ・・私も自分の部屋で休むよ・・」
 シンがベッドに横になり、ルナマリアも部屋を後にした。
(シン・・メイリン・・ステラ・・・みんなで生き残ろう・・・)
 大切な人のことを想い、ルナマリアは決意を強めた。

 地球でのシンとキラの交戦が行われてから3日が過ぎた。
 シンが身体チェックをして万全だと判断されて、ルナマリアたちのところへ来た。
「シン、もう大丈夫なんだな!」
「はい。ご心配をおかけしました。体はもう何ともありません。」
 アーサーが喜び、シンが落ち着きを払って答えた。
「デスティニーの整備は完了していますか?」
「はい。ヨウランさんたちが全力で直しました。」
 シンが問いかけて、マイがデスティニーのことを答える。
「これでフリーダムを迎え撃つことができますね、艦長!」
「アーサー、少し落ち着きなさい。相手はフリーダム。楽観視できる状況ではないわ。」
 歓喜するアーサーをタリアが注意する。
「シン、あなたとデスティニーがフリーダムを止められる1番の希望よ。でもあなたに頼りきりになるつもりはないわ。」
「フリーダムに敵わないばかりか、今のシンを助けられる自信もないけど・・この戦いを終わらせて、平和な世の中になってほしいって気持ちは、私たちにもあるよ・・!」
 タリアとメイリンがフリーダムと戦う決意をシンに伝える。
「ありがとうございます、艦長。フリーダムを討つのはもちろんですが、生き残ることも大切にしていきましょう。」
 シンが礼を言って、自分の考えを口にした。
「それが最善の結果ね。そうなるように、全力を尽くしましょう。」
 タリアが頷いて、シンたちに激励を送った。
「それでキラの・・フリーダムの行方は分かりましたか・・?」
 シンがキラのことを気にして聞いてきた。
「私たちも他の部隊も捜索しているのですが、まだ見つかっていないです・・」
 マイがレーダーに目を向けて、現状を話す。
「早く見つけて討たないと・・またどこかで被害が出ている・・・!」
「焦っても見つかるわけじゃないよ・・みんな捜しているんだから・・・」
 キラの捜索を急ぐソラを、ハルがなだめる。
「そうよ。デスティニーだけじゃなく、インパルスもファルコンも修理が完了しているわ。」
「だから我々も、いつでも戦えるように万全を整える必要がある。」
 タリアとアーサーが励まして、ソラが落ち着きを取り戻していく。
「フリーダムもキラ・ヤマトも、完全に世界の破壊者と化している。止めなければ、プラントも地球も全て滅びることになる・・この戦いは、決して負けは許されないわ。」
 タリアがこれからの戦いについて言って、シンたちが真剣に聞く。
「キラを倒し、生きて戻ること。それが私たちの勝利となるわ。」
「はい!」
 タリアが激励を送り、シンたちが返事をした。
「ソラ、デスティニーの操縦の練習をするから、アドバイスをしてくれないか?」
「えっ?・・は、はい・・」
 シンからの頼みごとに、ソラが戸惑いながら答える。
「ルナ、ハル、シミュレーションを手伝ってほしんだけど・・」
「それはいいですけど・・僕なんかじゃシンさんには全然敵いませんよ・・」
 シンがさらに頼んで、ハルが自分への不安を口にする。
「そんなことはない。あのフリーダムと戦って生き残ったんだから、自信を持っていい。」
「シンさん・・・」
 シンに励まされて、ハルが不安を和らげていく。
「それに、1機の強力な機体を数で打ち勝つこともあるからな。オレたちのシミュレーションも、これからのために重要になってくる。」
「つまりこれからやるシミュレーションは、ファルコンとインパルスでデスティニーに挑戦する、と・・」
 シンがやろうとしているシミュレーションの意図を、ハルが理解する。
「分かったわ、シン。ハル、ソラ、やるわよ。」
「はい!」
 ルナマリアが賛同して、ソラとハルが答えた。

 シンたちの戦闘シミュレーションが始まった。シミュレーターにはそれぞれの搭乗機のデータが入っており、シンのデスティニーがルナマリアのフォースインパルス、ソラとハルのファルコンを迎え撃つことになった。
「遠慮するな!隙があればためらわずに撃っていけ!」
「はい!」
 シンが呼びかけて、ソラとハルが答える。
「まずは遠距離からけん制して・・!」
 ソラが判断して、ファルコンがビームライフルを手にして発射する。シンが反応し、デスティニーが難なくビームをかわす。
「お前たちだけじゃなく、ルナとも息を合わせるんだ!」
「そうよ!私たちでうまく追い込んでいくのよ!」
 シンが注意を言って、ルナマリアも続けて指示する。
 インパルスもビームライフルを手にして、ファルコンと共にビームを撃つ。デスティニーはスピードを上げてビームをかわす。
「私たちが注意を引き付けます!」
 ソラがルナマリアに声を掛けて、ファルコンが戦闘機形態へと変形してデスティニーに突っ込んだ。
 ファルコンがスピードを上げながらビームを発射する。シンは冷静に反応し、デスティニーがビームを回避する。
 デスティニーが両肩にあるビームブーメランを手にして投げつける。スピードを出していたファルコンだが、ビームブーメランがかすめて体勢を崩す。
「スピードはオレやキラの前では確実に有利になるものじゃないぞ!」
 シンがソラたちに檄を飛ばしていく。
「相手の動きを予測して、確実に狙うようにするんだ!」
「はい!」
 シンからの助言を聞いて、ソラとハルが答える。
(スピードよりも正確な攻防を重視・・・!)
(さすがのファルコンでも、デスティニーやフリーダムのスピードを超えるまでにはいかない・・スピード負けするなら、そのスピードを封じて狙い撃ちするしかない・・・!)
 ハルとソラが確実に攻撃を当てることに集中する。ファルコンが再び人型となる。
「私がライフルで遠距離攻撃をして・・・!」
「近づいてきたら、サーベルで攻撃を当てる・・!」
 ソラとハルがデスティニーが近づいたところを攻撃する作戦を練った。
 インパルスが移動しながらビームライフルを発射する。デスティニーが残像を伴った動きで、ビームをかいくぐる。
「デスティニーの動きは、光の翼の効果で残像が残る・・でもそれに惑わされちゃいけない・・・!」
 ソラが残像に惑わされず、ビーム攻撃と接近に注意する。ファルコンもビームライフルを左手に持ち替えて、右手でビームサーベルを持つ。
 ファルコンとインパルスがビームライフルを連射して、デスティニーがかいくぐって近づいてくる。
「来た・・!」
 デスティニーが右手を突き出してパルマフィオキーナを放つのをソラが見切って、ファルコンが回避した。
「ソラ、今だ!僕に操縦権を!」
 ハルがソラに言ってファルコンを動かそうとした。しかしソラは操縦を交代しない。
 デスティニーが直後にビームブレイドを発した右足を振り上げてきた。ソラはそれを予測していてあえて操縦を交代せず、ファルコンがビームサーベルでビームブレイドを受け止めた。
「遠くても近くても、デスティニーは本当に対処できる・・・!」
「ファルコンだけなら全然勝ち目がない・・でも・・・!」
 ソラがデスティニーの性能を改めて把握して、ソラがインパルスに目を向ける。
「みんなと連携して、逃げられないようにして追い込めば、絶対に勝てないってわけじゃない・・・!」
 ルナマリアも言って、ソラたちが頷く。インパルスも左右の手でそれぞれビームライフルとビームサーベルを手にする。
 インパルスとファルコンが同時に動き出し、ビームライフルを発射する。回避するデスティニーを、2機が接近しながら追い打ちする。
 デスティニーが両腰にある柄を手にして、ビームサーベルと同じ大きさの刃を発した。インパルスとファルコンが振りかざしたビームサーベルを、デスティニーがビームサーベルで受け止める。
 両足からビームブレイドを発して振り上げようとしたデスティニーだが、インパルスたちが至近距離からビームライフルを放った。
 ビームを当てられて、デスティニーが押された。
「やった・・デスティニーに攻撃が当たった・・・!」
「強力な相手でも、力を合わせれば何とかなる・・・!」
 ソラとハルが手応えを感じて自信を持つ。
 その直後、吹き飛ばされたデスティニーが体勢を整え、ビーム砲を展開して砲撃した。ソラとルナマリアが反応し、ファルコンとインパルスがビームをかわした。
「戦いは一瞬の油断も許されない。特に強敵相手ならな・・」
「シンさん・・・」
 シンが励まして、ソラが戸惑いを膨らませる。
「この調子で腕を磨いて、息を合わせてこの戦いを終わらせるぞ。」
「はい!」
 シンが投げかけた言葉に、ハルが微笑んで答えた。
「力を合わせれば強敵にも負けない・・私たちで、この戦いを終わらせなくちゃ・・・」
 ルナマリアが決意を新たにして、シンたちと共にキラとの戦いに備えた。

 ザフトが各隊と連携して続けられたキラの捜索。捜索の1部隊が、デブリ帯に差し掛かった。
「気を付けろ。デブリや隕石にぶつかったら、ひとたまりもないぞ。」
 パイロットが注意を言って、ザクたちが探索をしていく。
「この岩、何かおかしくないか?」
「何?」
 パイロットたちが巨大な隕石の1つに目を向けた。
「他の岩とは違う・・もしやこれは・・!?」
 パイロットが声を荒げ、その1人がセンサーを見る。
「金属反応が多い・・ここにヤツらの基地が・・!?」
「すぐに他の部隊に連絡を!」
 パイロットたちがキラたちの居場所である基地を見つけたと判断した。
 そのとき、隕石の陰からビームが放たれ、ザク2機が貫かれて爆発した。
「攻撃された!?やはりここがヤツらの隠れ家か!」
「ここでは不利だ!1度離れるぞ!」
 不意を突かれたパイロットたちが撤退を考える。彼らが周囲への警戒をして、ザクたちがデブリ帯から離れる。
「気付かれた、ヤツらに・・・!」
 基地から出た機体「ディン」のパイロットが、基地の居場所が知られたことへの焦りを噛みしめた。

 キラたちのいる基地の情報は、ザフトの他の部隊にも伝達された。地球に滞在していたミネルバにも。
「シドル隊からの通信です!クライン派の残党と思しき集団の隠れ家を見つけたとのことです!」
 基地に関する連絡を受けて、マイが報告する。
「場所はエリアKL88!デブリ帯に紛れて潜んでいた模様!」
「デブリに紛れて潜んでいたのか・・総がかりで捜索しても見つけられなかったはずだ・・・!」
 彼女が報告を続けて、アーサーが毒づく。
「本艦の発進準備、武装と機体の整備は完了しているわね?」
「はい。本艦も各機も発進可能です。」
 タリアが問いかけて、メイリンが答える。
「本艦はこれよりキラ・ヤマト、及び彼の味方をする勢力との戦闘に向けて発進します。」
 タリアがミネルバにいるクルーに向けて呼びかける。
「ミネルバ、目的のエリアに向けて発進!」
 アーサーの号令で、ミネルバが発進して地球を飛び出した。

 ミネルバが大気圏を抜けたところでシン、ルナマリア、ソラ、ハルが集合した。
「次の戦いは、今まで以上に絶対に負けられない戦いとなる。負けるのはもちろん、アイツらを逃がせば取り返しのつかないことになる・・」
 シンが次の戦いの重要性をルナマリアたちに告げる。
「せっかくアジトを見つけたのに、また別のところに隠れられてしまうということですね・・」
「あぁ。だから今回で必ずキラを倒す。アイツを討たなきゃ戦いも悲劇も終わらない・・」
 ハルが覚悟を決めて、シンが頷く。
「オレとデスティニーを相手にしても、お前たちは負けてなかった。フリーダム相手でもやれるはずだ。」
「シンさん・・・訓練に付き合ってくれて、ありがとうございました!」
 シンが励まして、ソラが笑顔で感謝する。
「シン、あなたとデスティニーがこの戦いの勝利のカギ・・私たちは全力であなたを援護するからね・・・!」
 ルナマリアが真剣な面持ちで、シンに信頼を送る。
「オレたちでアイツを倒して、戦いを終わらせる・・そしてみんなで生きて帰るんだ・・・!」
「えぇ!」
「はい!」
 シンが檄を飛ばして、ルナマリア、ソラ、ハルが答えた。
(オレたちはアンタに何度もかき乱され、大切なものも奪われた・・アンタによって悲劇が繰り返される。そんなこと、誰にとっても耐えられないことだ・・・!)
 シンが上を見上げて、キラへの怒りを感じていく。彼はこれまでの戦いを思い返していく。
 マユたち家族が戦火に巻き込まれ、力を求めてザフトに入ったシン。戦いを終わらせる戦いを続け、彼はキラの乗るフリーダムと戦い続けた。
 1度は戦いを終わらせたが、再びキラは現れた。キラは全てを憎むようになり、レイたちをも手に掛けた。
 戦いの元凶はキラ。シンは今、そのことをより強く確信していた。
(オレはアンタを討つ・・アンタがいるから、戦いが繰り返される・・・言い訳ばかりで力で押し通そうとするアンタがいるから・・・!)
 キラがいる限り、戦いを終わらせることはまずできない。シンはその考えを貫く。
(これで本当に戦いが終わるかは分からない・・でもそれを考えるのは、アイツを討ってこの戦いを終わらせてから考えるべきこと・・・!)
 キラを倒すことが最優先であることを、シンは信念にしていた。
“エリアKL88へ間もなく到着します!”
 マイからの報告がシンたちのいるドックにも響き渡った。
「みんな、出撃準備よ!」
「はい!」
 ルナマリアが呼びかけて、ソラとハルが答える。3人がそれぞれコアスプレンダーとファルコンに乗り込んだ。
(行くぞ、キラ・ヤマト・・これで終わりにするぞ・・・!)
 シンが心の中で言って、デスティニーに乗った。
 ミネルバの他、ザフトの他の部隊も急行して包囲網を敷いていた。

 キラを陰から支えていたクライン派。プラント、地球に見つからないように身を潜めながら行動していた彼らだが、ついに基地を発見されることになった。
「とうとう見つかってしまったか・・・!」
「ザフトの各部隊がこちらに向かっている・・!」
 男たちが危機感を募らせて、周辺への警戒を強める。
「フリーダムの修復は!?」
「完了しています!」
 彼らが声をかけ合い、修復されたフリーダムに目を向ける。
「僕が敵を全滅させてきます。」
 キラが男たちのところへ来て、出撃することを伝えた。
「キラ様、あなたならどんな敵が来ても勝てると信じています・・しかし・・」
「以前に新たなデスティニーにフリーダムを負傷されています・・互いに同等の力があると思わざるを得ません・・・!」
 男たちがキラのことを心配する。しかしキラは表情を変えない。
「あのときはそこまでの力だとは思っていなかった・・でももうそんな油断はしない・・僕はデスティニーを・・シンを討つ・・・」
 決して油断しないことを自分に言い聞かせるキラ。彼のシンに対する敵意に、男たちは息を呑む。
「フリーダムの修理はできていますね・・?」
「はい・・キラ様のチェックを残すだけでした・・」
 キラが問いかけて、男の1人がフリーダムのことを答える。
「ザフトがここを包囲し、乗り込んできます。僕が撃破しますので、その間に脱出してください・・」
「そんな!?我々も戦います!」
 キラが指示をして、男たちが納得できず声を荒げる。
「みなさんには、平和な世界を実現する力になってほしいのです・・ここで倒れてしまったら、未来がありません・・」
「しかし・・・!」
「これ以上、大切な人を失いたくないのです・・分かってください・・・!」
「キラ様・・・どうか、ご武運を・・・!」
 キラの願いを聞き入れて、男たちは基地からの脱出を決断した。キラが頷いてから、フリーダムに乗り込んだ。
「フリーダムの発進準備を完了したら、我々はシャトルに乗り込み脱出する!」
 男たちがフリーダムを見届けてから、シャトルに乗り込んでいく。
(この戦いで終わらせる・・僕がシンを討って、悲劇を終わらせる大きな飛躍にする・・・)
 キラがシンや世界への憎悪を募らせていく。
「キラ・ヤマト、フリーダム、行く・・・!」
 彼の駆るフリーダムが基地から飛び出していった。

 ミネルバが着くよりも先に、ザフトの他の部隊が基地に接近し、モビルスーツが出撃していた。
「フリーダム・・今まで散々我々に被害をもたらしてきた巨悪・・・!」
「せめてヤツらの仲間を一掃しなければ・・・!」
 ザク、グフのパイロットが一矢報いようと躍起になる。
 そのとき、ザクたちに向けて四方八方からビームが飛んできた。
「ぐあっ!」
「何っ!?」
 ザクたちが撃たれてパイロットたちがうめく。
「フリーダムだ!ヤツが出てきたぞ!」
 他のパイロットたちが警戒を強める。しかし射出されたドラグーンから放たれたビームが、ザクたちを貫いた。
 キラの操縦するフリーダムに、ドラグーンが戻っていく。
「僕は死なない・・僕を追い詰める世界を、僕が壊す・・・」
 キラが低い声で言って、憎悪を募らせていく。フリーダムがビームライフルを手にして、他のザクたちを追っていく。
「くそっ!撃て!フリーダムを押さえろ!」
 パイロットたちが緊迫を募らせ、ザクたちがビームライフルを発射する。グフもビームウィップを振りかざすが、フリーダムはその全てをかいくぐる。
 フリーダムがビームライフルを連射して、ザクたちを次々に撃破していく。
「フリーダムを止めることもできないのか、オレたちには!?」
 絶叫するパイロットが、機体の爆発に巻き込まれた。
「ミネルバも、シンもすぐに来る・・必ずこの手で、シンを討つ・・・」
 宇宙に広がる戦火を見つめて、キラはシンが来るのを待った。

 進行を続けるミネルバの指令室のモニターに、フリーダムの映像が映し出されていた。
「フリーダム!・・間違いなくこのエリアに、ヤツの隠れ家が・・!」
 アーサーがフリーダムを見て、緊張を膨らませる。
「フリーダムを逃がさず、必ずこの戦いに勝利しなければならない。やり遂げれば、フリーダムの脅威を止めることができる。」
 タリアが冷静さを保って、アーサーたちに呼びかける。
「必ずフリーダムを倒し、全員で戻りましょう。」
「はい!」
 タリアの言葉にアーサーたちが真剣な顔で答えた。

 タリアからの激励は、シンたちにも届いていた。
「これで終わらせるわよ。フリーダムとの、キラ・ヤマトとの戦いを・・」
「はい、ルナマリアさん!やってみせます!」
 ルナマリアが檄を飛ばして、ソラが答えた。
「みんな、フリーダムは、キラはオレが相手をする・・」
 するとシンがルナマリアたちに声を掛けてきた。
「フリーダムに対抗できるのはデスティニーだけだ。アイツを野放しにすれば、世界がもっと混乱することになる・・」
 シンが状況と戦力を考慮して語りかける。
「最低でも、オレがキラを食い止める。その間にみんなはアイツに協力している連中を叩いてくれ・・」
「シン・・・」
 シンの呼びかけにルナマリアが戸惑いを覚える。
「分かりました・・協力者は僕たちで押さえます・・・!」
 ハルがシンの意思を受け止めて、自分たちのやるべきことを口にした。
「シンさん、ルナマリアさん、1つお願いしてもいいですか・・?」
 ソラが気持ちを落ち着けて、シンたちに声を掛けた。
「私も、ステラという人に会ってもいいですか・・?」
「えっ・・!?」
 ソラのお願いにシンとルナマリアが一瞬驚いた。
「この戦いが終わったら、オレたちはまた地球に向かう。そのときに一緒に来るか?」
「シンさん・・・はい!」
 シンが誘って、ソラが喜んで答えた。
「生きて帰らないといけない理由がもう1つできたね・・」
「うん・・帰りを待っている人がいるのは、嬉しいことだよね・・」
 ソラが言いかけて、ハルが笑みをこぼす。
「私たちもやるよ・・私たちだってやれるってところを証明する・・・!」
「うん、ソラ・・!」
 ソラが決意を口にして、ハルが頷く。2人がハッチが開かれるのを見て、発進に備える。
(これで決着をつける。そしてルナやみんなと一緒に、ステラのところへ帰る・・)
 シンも決意と思いを確かめていく。
(この戦いの後、世界がどうなっていくかは分からない・・でも、2度と戦いを起こさせないようにする・・この力を使ってでも・・・)
 戦いのない世界を目指して、戦いの力を使う。この矛盾と戦う運命を背負うことを、シンは心に決めていた。
“それがお前の戦う理由か、シン・・”
 シンは目の前にレイの姿が現れたと感じた。
(レイ、オレはやっぱり、デュランダル議長の示す世界には従えない・・オレはオレの意思で、戦いのない世界を実現していく・・どうすればいいのか、答えはまだ見つけていないけど・・)
“最悪、終わりのない戦いを続けることになるぞ・・それはお前が望んでいたのと逆の世界だ・・”
(そうだとしても、オレは戦う・・戦いを終わらせられると信じて・・大切な人を守るために・・・!)
“それがお前の信念なんだな・・・”
 決意を告げるシンに、レイは納得する。
(お前と議長のこと、守ることができなかった・・・ゴメン、レイ・・・)
“オレたちのことはいい・・お前たちが悲劇のない世界を実現してくれるなら・・・”
 謝るシンにレイが言葉を返す。姿を消していく彼に、シンは小さく頷いた。
「みんな、行くぞ・・これで、キラとの戦いを終わらせる!」
 シンがルナマリアたちに向けて檄を飛ばし、発進に備えた。
「シン・アスカ、デスティニー、いきます!」
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、いくわよ!」
「ソラ・アオイ・・」
「ハル・ソーマ・・」
「ファルコン、出ます!」
 シン、ルナマリア、ソラ、ハルがデスティニー、コアスプレンダー、ファルコンで発進する。コアスプレンダーがチェストフライヤー、レッグフライヤー、砲撃型の「ブラストシルエット」と合体して、「ブラストインパルス」となった。

 

 

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