GUNDAM WAR

-Confusion of SEED-

第4章

 

 

 メサイア攻防戦にてシンたちと激闘を繰り広げたキラたち。
 キラのフリーダムはシンのデスティニーによって貫かれ、炎上するエターナルに押し込まれて爆発した。その巨大な炎の中でキラは果てたと思われていた。
 だがキラは死んでいなかった。宇宙に流されたのをクライン派の残党に救われた。
 手術を受けて一命を取り留めたキラ。しかし救出された時点で体の損傷が激しく、生命維持のための器具を体に埋め込めることになった。
 療養と回復で、キラは人並みの身体機能を取り戻すことができた。だが瀕死の重傷だった体以上に、彼の心に刻まれた傷は深かった。
 アスラン、カガリ、マリュー、ラクス。自分の大切な人たちを失い、キラはかつてない絶望に襲われた。
 戦いのない世界のため、みんなのため、平穏のために力を振るっただけなのに、なぜこのような苦痛を強いられなければならないのか。キラは心の中でひたすら問いを投げかけたが、答えは返ってこなかった。
 自分に突き付けられた現実が理不尽だと感じて、キラが感情を募らせていく。憎悪を膨らませた彼は、ついに心を凍てつかせることになった。
 キラは世界の全てを敵だと認識するようになった。自分の大切な人を奪った全てを滅ぼすことしか、彼は考えなくなっていた。
 不憫なく体を動かせるようになり、さらに運動やMSの操縦もこなせるようになったキラは、救出してくれたクライン派に、新たなフリーダムの製造を申し出た。
 申し出を聞き入れたクライン派は、今まで以上の性能と戦闘力を備えたフリーダムを完成させた。さらにジャスティスの武装の一部や、ビームサーベルの高周波も導入された。
 ラクスやアスランたちの思いと力を集約させた最高のフリーダム「アークフリーダム」が誕生した。
 キラの操縦技術と思いに依存させたストライクフリーダムと違い、アークフリーダムは狙ったもの全てを破壊することに特化している。まさに破壊の使者である。
 新たなフリーダムに乗ったキラは、自分に理不尽を押し付けた世界、特に自分の思いと大切な人を直接手にかけたシンへの憎悪を心身に宿らせた。
 メサイア攻防戦から1年後にキラは行動を開始し、世界への攻撃を開始したのだった。

 クライン派によるフリーダムの修理と整備を終えるまでの間、キラは休息を取っていた。今の自分に押し寄せる悪夢の現実を振り払おうとしながら、彼は修復が完了したフリーダムを動かす。
「みんなを奪ったこの世界を、僕が滅ぼす・・・」
 弱々しく呟くキラの起動により、フリーダムが飛翔する。
「そのための力、そのための思い、そのための決意が、今の僕にはある・・・」
 心を凍てつかせ、迷いや情を捨てたキラが、再び戦いに赴く。
「今の世界を壊して、僕が本当の平和を取り戻す・・・」
 キラが目つきを鋭くして、フリーダムが加速して移動していった。

 翌朝になり、ミネルバは地球に向けて発進しようとしていた。
「本艦、各機、チェック完了。システム、オールグリーン。」
「クルーもシン以外全員乗艦しています。」
 メイリンとアーサーがタリアに現状を報告する。
「シンはアンジュさんに任せます。すぐに追いつくはずです。」
「アンジュさんは今はシンさんのところにいます。」
 タリアとマイがシンとアンジュのことを口にする。
「本艦はこれより地球へ向かい、ルナマリアと合流します。」
「了解!」
 タリアが指示を出して、アーサーが答える。ミネルバがアプリリウスを発進して、地球へと向かった。

 ミネルバが地球へ向かう中、ハルはファルコンを見上げていた。
「夜の睡眠を含めて、今朝までやってきたね、私たち。」
 ソラも来て、ハルに声を掛けてきた。
「ソラ・・僕たち、これで少しは強くなれたのかな・・・」
「ファルコンの操縦のシミュレーションをやって、うまくやれるようになった。そのくらいは強くなったんじゃないかな・・」
 強さについて考えるハルに、ソラが笑みをこぼす。
「僕は強くなりたくてザフトに志願した。それより前にそばで戦闘が起こったことはなかったけど、戦争が続く世界に何もできないのかって思って・・」
 ハルがザフトに入った経緯を、ソラに話していく。
「ソラみたいに国や戦争に直接かかわる家柄というわけでも、戦争で家族や友達をうしなったわけじゃない。だから詳しいことは何も分かっていなかった・・それでも何もできないことが、辛かったんだ・・」
「ハル・・・それでもいいと思うよ・・何も知らなくても、知っていて馬鹿げたことをするよりは全然いい・・」
 無知だったことを責めて軍人になることを決めたハルに、ソラが好感を持つ。
「確かに私はブルースカイの人間。国や世界を動かせる人を知ることができる立場にあった・・それでも私は、国や世界の本質が分かったとは思えなかった・・」
「そんな・・ソラでも分からないなんて・・・」
「分からないことも多いよ・・上の立場っていうのは、一般のことがよく分からないことが多いし・・」
「分からないのはお互い様ってことなのか・・・」
 戦争のこと、世界のことを考えて、ソラとハルが苦笑をこぼした。
「僕たち、生き残れるかな・・・」
「みんなが生き残らなくちゃいけないし、生きたいよ・・ハルも、一緒に生きて・・・」
 不安を口にするハルに、ソラが想いを伝える。
「あなたが一生懸命で、いつも訓練をこなして強くなろうとしていた・・それを見て、私はまだまだだって思うようになった・・」
「ソラ・・・僕よりもソラのほうがうまいって・・ファルコンのシミュレーションのときだって、僕よりもソラのほうがうまく立ち回っていたし・・」
「そんなことないよ・・それでもそんなことあるっていうなら、それはハルがいたからだよ・・」
「こんな僕でも、誰かの力になれたってこと・・・?」
 ソラの想いを聞いて、ハルが戸惑いを覚える。
「少なくても、私の力にはなれてる・・私も、あなたや誰かの力になりたい・・・」
「僕も・・今度は僕たちが、この戦いを終わらせなくちゃ・・・!」
 もっと強くなること、戦いを終わらせることを強く心に決めて、ソラとハルが抱きしめ合った。2人は顔を近づけて、口付けを交わした。
 互いの想いを確かめ合ったソラとハル。2人は再びファルコンをチェックして、次の戦いに備えた。

 アプリリウスの医療施設で療養を受けていたシン。彼は施設の病室で意識を取り戻した。
「シンさん、気が付きましたね・・!」
 病室に来ていたアンジュが安心を見せた。
「あなたは?・・オレはいったい・・・?」
 シンがアンジュに問いかけて、記憶を呼び起こしていく。
「フリーダムにやられて・・・レイ!」
 シンがレイのことを思い出して、周りを見回す。
「あなた、アーモリースリーでの出来事を知っているか!?どうなったか分かるか!?」
 シンが問い詰めてきて、アンジュが表情を曇らせた。
「ホントだったのか・・レイがオレを庇って死んだのも・・デュランダル議長が討たれたのも・・・」
「はい・・その直後にフリーダムは撤退。そのためミネルバは無事でしたが、あなたが乗ってきたデスティニーも大破しました・・」
 真実を理解して愕然となるシンに、アンジュが現状を話す。
「自己紹介が遅れました。私はアンジュ・ブルースカイ。ソラ様のお世話役をしています。」
 アンジュが落ち着きを払って、シンに挨拶する。
「ソラ・・オレたちがプラントを離れた後にミネルバに入った1人か。」
 タリアとの連絡の中で聴いた話を思い出して、シンはソラとハル、マイのことを考える。
「ミネルバはルナマリアさんと合流するため、地球へ向かいました。」
「あの後、艦長はルナと連絡を取ったんだな・・・オレも追いかけたいが、今のオレは戦うことができない・・デスティニーがないオレじゃ・・・!」
 アンジュがタリアたちのことを言って、シンは今の自分の無力さを痛感して苦悩する。
「機体はあります。あなただけの新しい力が。」
「えっ・・!?」
 アンジュが口にした言葉に、シンが当惑する。
「ブルースカイ家では、新たな機体の開発を極秘裏に進めてきました。1機はソラ様とハルさんが搭乗していますが、もう1機はあなたとあなたがこれまで乗った機体の戦闘データに基づいて開発と調整をしています。」
「オレの戦いのデータを・・・もしかして、その新しい機体というのは・・・!」
 アンジュの話を聞いて、シンがその機体について予想する。
「彼を連れ出してもよろしいですか?意識が戻ったばかりなのにそうするのはよくないのは分かっていますが・・」
 アンジュが医師にシンの外出を求める。
「身体チェックをさせてください。負担を掛けて緊急事態になるかもしれないのを看過できません。」
「分かりました。早速お願いします。」
 医師が検査を進言して、アンジュが微笑んで頷いた。
「シンさん、早く済ませて行きましょう。」
「あ、あぁ・・」
 アンジュに急かされて、シンは身体チェックに向かった。
「体の各所に負傷なし。内部にも脳にも異常はありません。精神の乱れが少しありますが、この状況下では当然の状態でしょう・・」
 シンの状態を確かめて、医師は特に問題はないと判断した。
「ですが意識が戻ったばかりです。操縦や戦闘行為といった激しい行動は避けた方がいいと、私たちは思います・・」
「手当てをしていただき、ありがとうございます。そしてご迷惑をおかけします・・」
 医師が注意を言って、シンが謝意を示した。
「オレ、生きます。みんなに追いつかないといけないので・・」
 シンは医師に言って、アンジュと一緒に医療施設を後にした。

 キラの動きを警戒しながら、ミネルバは宇宙を進み、地球に降下した。さらに移動を続けて、ミネルバはルナマリアの来た港に到着した。
「グラディス艦長、お久しぶりです。」
「ありがとう、ルナマリア。あなたも協力してくれて・・」
 ルナマリアとタリアが声を掛け合って、互いに敬礼する。
「シンはまだプラントなのですね・・」
「えぇ・・出発するときに意識が戻らなかったから・・でも先ほど連絡があって、意識を取り戻し、心身に問題はないそうよ。」
 ルナマリアがシンのことを気にして、タリアが話す。
「シン・・よかった・・・」
 それを聞いて、ルナマリアが安心する。
「今はアンジュさんから新しい機体を受け取っているはずよ。それまでは私たちでフリーダムを食い止めなければならないわ・・」
「分かっています・・あまりにも力の差があるのは分かっていますが・・・」
 タリアが話を続けて、ルナマリアが死ぬかもしれない覚悟を噛みしめる。
「現時点での主力はファルコンとインパルスよ。あなたも頼りにしてしまうけど・・」
「私もやります。せめてシンが来るまでは、フリーダムを食い止めて、生き残ってみせます。」
 すがるような気分を感じて申し訳ない気持ちを見せるタリアに、ルナマリアが決心を伝える。
「ありがとう、ルナマリア。あなたとシンに感謝します。」
 タリアがまた感謝して、ルナマリアが笑みをこぼした。
「それで艦長、フリーダムの行方は・・?」
「ここに来るまでの間、ミネルバのレーダーにフリーダムの反応は探知されなかったわ。他の部隊も発見したという連絡はなかった・・」
 ルナマリアの質問に、タリアが深刻な面持を浮かべて答える。彼女もザフトもフリーダムの行方をつかめてはいなかった。
「フリーダムを発見するまでに、あなたも出撃に備えて。」
「はい、艦長!」
 タリアの指示を受けて、ルナマリアが答える。彼女はミネルバに乗り込み、収容されたコアスプレンダーに乗ってチェックを行う。
「あの・・あなたが、ルナマリア・ホークさんですか。」
 ソラがハル、マイと一緒に来て、ルナマリアがコアスプレンダーから顔を出した。
「あなたが新しくミネルバに入った3人ね。」
 ルナマリアがソラたちの顔を確かめる。
「はい。ハル・ソーマです。」
「私はマイ・ヤヨイと言います。」
 ハルとソーマが自己紹介して、ルナマリアに向けて敬礼する。
「私はソラ・アオイ。これからハルと共に、ファルコンのパイロットを務めることになりました。」
 ソラも続けてルナマリアに名乗った。
(彼女があのブルースカイ家のソラ・・)
 ルナマリアがソラを見て、心の中で呟く。彼女はタリアからブルースカイ家のことも聞いていた。
「ソラ、ハル、このミネルバの中でフリーダムを迎撃できる戦力は私たちだけよ。私たちで戦わないといけないと、考えないといけないわね・・」
「もちろん私たちもこの戦いを終わらせるつもりで出撃します。でもシンさんも必ず戻ってくるとも思っています。」
 ルナマリアが檄を飛ばして、ソラは同意しながらもシンへの信頼も示した。
「私もそう思っているわ。でもだからといって甘えるのはよくないわ。」
「はい!僕たちの力でやってみせます!」
 ルナマリアからの注意を受けて、ハルが答える。
「その意気よ。私もできる限りのことはするから、お互い全力を尽くすわよ。」
「はい!」
 ルナマリアが呼びかけて、ソラたちが答えた。
(私たちは戦うよ、シン・・だからあなたは、今は休んで・・・)
 シンへの想いを胸に秘めて、ルナマリアはキラとの決死の戦いに臨もうとしていた。

 アンジュに連れられて、シンはブルースカイ家の地下施設に向かった。
「ここが、ブルースカイ家・・」
 車がブルースカイ家の秘密のルートを通り、シンが言いかける。
「はい。1階から上はみなさんが考える豪邸の構造となっています。」
 戸惑いを見せるシンに、アンジュが説明をしていく。
「この地下で私たちは密かに新型の開発を進めてきました。1機は既にソラ様とハルさんに渡しました。もう1機はシンさん、あなたに・・」
 彼女の話を聞いて、シンが頷く。2人は地下の格納庫に来て、新型の前に来た。
「これは・・・!」
 シンはその機体を目の当たりにして驚きを見せる。その機体の造形は、彼が乗っていたデスティニーと酷似していた。
「シンさん、これがあなたの新しい機体。デスティニーの発展型と言える“マークデスティニー”です。」
「マークデスティニー・・」
 アンジュが説明をして、シンが戸惑いを見せる。
「デスティニーが使っていた武装を強化しただけでなく、不憫のないように扱える形になっているのです・・ただし・・」
「ただし・・」
「パイロットへの負担も、他の機体を超える大きさです。マークデスティニーのテストを行おうとしましたが、乗りこなせた人は今までで誰もいません。私もユメ様も・・」
 アンジュがシンに注意を投げかける。
「マークデスティニーにはハイパーデュートリオンにさらに核エンジンが1つ搭載されていて、それにより他の機体を凌駕するエネルギーを発揮しますが、その巨大なエネルギーがパイロットにも負担をかけるのです・・」
「だからみんな、乗りこなすことができなかったのか・・・」
 アンジュの話を聞いてシンは納得する。
「私たちは信じることにしました。あなたがこの機体を乗りこなし、世界を救ってくれると・・」
「アンジュさん・・・」
 信頼を寄せるアンジュに、シンが戸惑いを覚える。
「調整と発進準備は完了しています。あなたが最終チェックを済ませていただければ・・・」
 アンジュに言われて、シンが真剣な面持ちを見せて頷いた。彼はデスティニーのコックピットに乗り、システムをチェックする。
(本当にデスティニーの発展型のようだ。コックピットもデスティニーと似ていて、さらに操縦技術を求められる・・・!)
 新たなるデスティニーの操作と性能を実感していくシン。アンジュの指示でその上の天井のハッチが開かれた。
(お願いです・・どうかシンさんの力に・・・!)
 自分たちの思いをシンに託し、アンジュが天井の先の空を見上げた。
(オレは守るんだ・・この本当の平和を・・オレの大切な人たちを・・・!)
「シン・アスカ、デスティニー、いきます!」
 決意を胸に秘めるシンの乗るデスティニーが動き出し、飛び上がる。ブルースカイ家から飛び出したデスティニーは、プラントから地球へ向かった。
 その動きはかつてのデスティニーをもはるかに超えていた。

 再び行動を起こしたキラは、軍の基地や施設を次々に破壊して回っていた。その軍の勢力を問わず、彼の駆るフリーダムは無差別に攻撃していた。
「ミネルバは地球に向かった・・僕も、地球に・・・」
 キラが呟き、地球のある方向に目を向ける。フリーダムが攻撃を続けながら、高速で移動していく。
 その最中、1つのビームが飛んできた。キラが反応し、フリーダムがビームをかわす。
 白いボディのグフを始めとしたザフトのモビルスーツが、フリーダムの前に姿を現した。
「そのフリーダムに乗っているのは、キラ・ヤマトだな・・!?」
 白いグフのパイロットであるイザークが、キラに問いかける。
「その声・・イザーク・・・」
 キラが答えて、グフを見つめる。
「生きていたことは良しと思っている・・だが貴様、こんなところで何をやっている!?」
 イザークが感情をあらわにして、キラに怒鳴る。
「連合軍だけでなく、プラントやザフトも見境なしに攻撃する・・ふざけたやり方がさらに悪くなっているぞ!」
「僕は全てを失った・・全てを奪ったこの世界を、僕が破壊する・・・」
 問い詰めるイザークに、キラが低い声で言い返す。
「君たちも僕が討つ・・2度と悲劇は繰り返させない・・・」
「何を言っている!?こんなマネをして、アスランが喜ぶとでも思っているのか!?」
「この世界のせいで、アスランもみんなもいなくなった・・君たちがいなくなれば、悲劇は終わる・・・」
「キラ・ヤマト、貴様・・!」
 全てを破壊することしか考えないキラに、イザークが怒りを募らせる。
 フリーダムが2つのビームライフルを手にして、速射してザク2機を貫いた。
「オレたちも討とうというのか!?・・ならば貴様を確実に落とす!」
 イザークが激高して、グフがビームガンを発射する。フリーダムが高速でかわして、ビームライフルを連射する。
 イザークが反応し、グフがビームを紙一重でかわす。
「イザーク!」
 ディアッカが叫び、彼の乗る「ガナーザクウォーリア」がビーム砲「オルトロス」を構える。
(今までのフリーダム以上のスピードだ・・標準が定まらねぇ・・!)
「ディアッカ、オレに構うな!動きを見逃さずにヤツを討て!」
 焦りを感じていくディアッカに、イザークが檄を飛ばす。
「隊長とディアッカを援護するんだ!」
 他のザクのパイロットたちが気を引き締める。ザクたちがビームライフルを発射して、フリーダムのけん制を狙う。
 フリーダムがビームライフルを連射してザクたちを撃ち落としていく。その際にフリーダムが一瞬スピードを弱めたのを、ディアッカが捉えた。
「そこだ!」
 ディアッカのザクがオルトロスを発射した。キラが気付き、フリーダムが加速してビームをかわした。
「何っ!?」
 ディアッカが驚愕した直後、フリーダムがレールガンを発射して、ザクの持つオルトロスに当てて破壊した。
「くっ・・!」
「ディアッカ!・・おのれ、キラ・ヤマト!」
 ディアッカがうめき、イザークがいら立ちを膨らませる。
 グフがビームウィップを伸ばして振りかざす。フリーダムがビームライフルの1つをビームサーベルに持ち替えて、ビームウィップを切り裂いた。
 グフが右腕に装備されているビームソード「テンペスト」を伸ばして、フリーダムに突撃する。2人がテンペストとビームサーベルをぶつけ合う。
 フリーダムは2つのビームサーベルの柄を組み合わせて、イペールラケルタにした。
「ビームサーベルを合わせて巨大な剣にしただと!?」
 イザークが驚愕し、フリーダムがイペールラケルタを振り下ろす。
「くっ!」
 イザークが反応するが、グフが左腕をイペールラケルタで切り裂かれた。
「イザーク!」
「くそっ!・・オレたちでは、フリーダムには勝てんというのか・・・!?」
 ディアッカが叫び、イザークが屈辱を覚える。
「逃がしはしない・・君たちも、僕が倒す・・・!」
 キラが低く呟き、フリーダムがドラグーンを射出した。
「隊長、ここは撤退を!」
「ディアッカ、あなたは隊長を援護してください!」
 ジュール隊のパイロットたちがイザークたちに呼びかける。ザク、グフたちがイザークたちを撤退させるために、フリーダムの攻撃を迎え撃つ。
「馬鹿者!自殺行為をするヤツがあるか!」
「たとえ命令に背いても、隊長を守れるなら本望です!」
 怒鳴るイザークだが、パイロットたちは引き下がらず、ザクたちがフリーダムに特攻を仕掛ける。それと同時にディアッカのザクがイザークのグフをつかんで、戦場を離れた。
 他のザク、グフがドラグーンからのビームで撃ち抜かれて爆発を起こした。
「お前ら・・バカヤローどもが・・!」
 イザークが悔しさを募らせていく。攻撃の爆発が起こる中、イザークのグフとディアッカのザクがキラに気付かれないように離れていった。
 ジュール隊はフリーダムを食い止めることができず、壊滅的な被害を被ることになってしまった。
「地球へ行かないと・・ミネルバも、落とす・・・」
 キラがタリアたちへの憎悪を口にして、フリーダムは地球に向けて加速した。

「フリーダムの反応をキャッチ!本艦を目指して移動してきます!」
 ミネルバのレーダーがフリーダムの接近を捉え、メイリンが報告する。
「交戦したジュール隊、被害甚大!ジュール隊長以下数人が生存、撤退していきます・・!」
「ジュール隊もやられてしまった・・フリーダムは以前から脅威であることは分かっていたけど、暴走状態になると手が付けられないわ・・・」
 メイリンが続けて報告して、タリアが緊張を強める。
「本艦もフリーダムとの迎撃に備えます。発進用意!」
「了解!ミネルバ、発進します!」
 タリアが指示を出し、アーサーが答える。ミネルバが発進して飛翔する。
「狙いは私たちのようね・・そこまでザフトやプラント、世界を憎んでいるのね・・」
 キラの憎悪の深さを考え、タリアが呟く。
「ルナマリア、ソラ、ハル、頼むわよ・・・」
“はい。全力を尽くします。”
 タリアが呼びかけて、ドックにいるルナマリアが答える。
 市街地や基地から離れて、ミネルバがスピードを落として交戦に備える。
「インパルス、ファルコン、発進!フリーダムの攻撃を止めるのよ!」
 タリアが指示を出し、アーサーたちが先頭に備えた。

 フリーダムと戦うため、ルナマリア、ソラ、ハルはコアスプレンダー、ファルコンに乗り込んだ。
「ルナマリアさん、私たちが注意を引き付けます。あなたはその隙を突いて攻撃してください。」
 ソラがルナマリアに戦いについて呼びかける。
「分かったわ。でも相手は私たちの常識が通用しないわ。臨機応変に対処していくわよ。」
「了解!」
 ルナマリアが指示して、ソラとハルが答えた。
“フリーダム、大気圏に突入!”
 メイリンがフリーダムの接近を報告し、ルナマリアたちの耳にも入った。コアスプレンダー、ファルコンの前のハッチが開かれる。
(シン、私もやるよ・・私だって、シンや私の大事なもののために戦ってきたんだから・・・!)
 シンへの想いを胸に秘めて、ルナマリアは戦いに集中する。
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、いくわよ!」
「ソラ・アオイ・・」
「ハル・ソーマ・・」
「ファルコン、出ます!」
 ルナマリアのコアスプレンダー、ソラとハルのファルコンがミネルバから発進する。続けて発進した胴体となる「チェストフライヤー」、両足となる「レッグフライヤー」、「シルエットシステム」の1つで飛行能力を搭載させる「フォースシルエット」とコアスプレンダーが合体して、機動力と飛行に長けた「フォースインパルス」となった。
 直後にフリーダムが大気圏を突破して、インパルスたちの前に現れた。
「フリーダム・・・!」
 ソラがフリーダムを見て、緊張と怒りを膨らませていく。
「ミネルバもザフトも滅ぼす・・僕の全てを奪ったものを、絶対に許さない・・・!」
 キラがインパルスたちを見て、憎悪を募らせる。フリーダムがビームライフルを2つ手にして構えた。
 インパルスとファルコンが左右に動いて、キラの注意をミネルバから引き離す。インパルスもビームライフルを持ってビームを放つが、フリーダムに難なくかわされる。
 戦闘機形態のファルコンがスピードを上げながらビームを放つ。フリーダムはこれも回避していく。
「フリーダム・・本当に速い・・・!」
「このファルコンも前のよりも速くなっているはずなのに、フリーダムについていくのがやっとって感じ・・・!」
 ハルとソラがフリーダムの性能を痛感し、緊張を膨らませる。
 フリーダムがビームライフルを連射する。インパルスが盾を構えて防ごうとするが、ビームは盾を貫いて破壊する。
「このっ!」
 ソラが毒づき、ファルコンが高速のままフリーダムのビームをかいくぐる。しかしビームがファルコンの胴体に命中していく。
「うあっ!」
 ファルコンが体勢を崩して落下して、ソラとハルがうめく。
「スピードで上回れないなら、パワーと確実性に賭けるしかない・・・!」
「ハル、操縦を交代するよ!距離を詰めてフリーダムを食い止めよう!」
 ハルが接近戦を試み、ソラが賛成する。ソラがスイッチを切り替えて、操縦をハルに交代する。
 直後にファルコンが戦闘機形態から人型へと変形し、ビームサーベルを手にした。
 フリーダムがビームライフルを連射して、ファルコンがビームサーベルを振りかざしてビームを弾く。
 フリーダムがビームサーベルに持ち替えて、ファルコンに向かっていく。2機がビームサーベルを素早く振りかざし、連続でぶつけ合う。
「接近戦は負けてないってことかな・・・!」
「油断しないで!このフリーダムは前のとは全然違うよ!」
 戸惑いを覚えるハルを、ソラが注意する。
 フリーダムがビームブレイドを発した右足を振りかざしてきた。ハルが反応して、ファルコンがビームサーベルをぶつけ合ったまま、上へ舞い上がりビームブレイドをかわした。
 直後にフリーダムがビームブレイドを発した左足を振り上げた。
 ファルコンがビームサーベルを掲げてビームブレイドを受け止めるが、防ぎ切れずに突き飛ばされる。
「うっ!」
 その衝撃に揺さぶられて、ソラとハルがうめく。
「ソラ!ハル!」
 ルナマリアが叫び、インパルスがビームライフルを発射する。ビームはファルコンとフリーダムの間を通り抜けた。
「ルナマリアさん!」
「今のうちに!」
 ソラが声を上げて、ハルが反撃を狙う。ファルコンがフリーダムに詰め寄り、ビームサーベルを振りかざす。
 フリーダムがビームサーベルの柄を組み合わせて、イペールラケルタにしてファルコンのビームサーベルを受け止めた。
「そんな!?」
 攻撃を止められたことに驚くハル。
「ハル、離れて!ファルコンがやられる!」
 ソラが呼びかけて、ハルが反応する。ファルコンがフリーダムから離れようとした瞬間に、ファルコンのビームサーベルが一瞬歪んだ。
「今のは、いったい!?・・サーベルの刃が歪んだ・・・!?」
「高周波・・このフリーダムの剣にも、高周波が出ているんだよ・・!」
 サーベルの異変に驚くハルに、ソラが説明する。
「高周波で振動する刃物は、普通の刃よりも切れ味が格段に上がる・・ビームの刃で防ごうとしても、当たったら切られてしまうよ・・!」
「そんな・・ますますとんでもないじゃないか・・・!」
 ソラから忠告されて、ハルが緊迫を募らせる。
「君たちみんな、必ず倒す・・・」
 キラが憎悪を口にし、フリーダムがイペールラケルタを構えて飛びかかる。
 ファルコンがフリーダムとの距離を取るが、フリーダムにすぐに追いつかれる。
「2人とも!」
 ルナマリアが呼びかけ、インパルスがビームライフルを発射しながらフリーダムに向かって加速する。
「ルナマリアさん、接近したらダメです!」
 ソラが呼び止めるが、インパルスが左手でビームサーベルを持って、フリーダム目がけて振り下ろした。
「インパルス・・・!」
 キラが低く呟き、フリーダムがイペールラケルタを振り上げて、ビームサーベルをインパルスの左腕ごと吹き飛ばした。
「あの大きな剣を軽々と動かして・・・!」
 ルナマリアが焦りを噛みしめ、インパルスがビームライフルを連射しながらフリーダムから離れる。
「このフリーダム、本当に強い・・これじゃ足止めもできない・・・!」
「この力の差を跳ね返すチャンスを見つけないといけないのに・・・!」
 ハルがフリーダムの脅威を痛感し、ソラも危機感を募らせる。インパルスとファルコンは、フリーダムに対して完全に窮地に立たされていた。

 

 

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