GUNDAM WAR

-Confusion of SEED-

第1章

 

 

従来の人類である「ナチュラル」と遺伝子調整を施された「コーディネイター」による戦争。
長きに渡るこの戦いは、「メサイア攻防戦」と「デュランダルの乱」で終局を迎えた。

だがナチュラルもコーディネイターも各々の立て直しに残された力を費やすしかなかった。
攻撃を仕掛けようとしてもできない状態にあった。


 民間コロニー「ヘリオポリス」で暮らす学生だった少年、キラ・ヤマト。
 しかしプラントの軍事組織「ZAFT(ザフト)」と地球連合の戦いに巻き込まれ、キラもMS(モビルスーツ)に乗り戦うことになった。
 学生仲間と共に連合軍の戦艦「アークエンジェル」に搭乗することになったキラ。
 親友だったアスラン・ザラがザフトの一員となっていて、2人はすれ違い、激しくぶつかり合うようになった。
 その激突の後、キラはプラントの歌姫、ラクス・クラインから新たな機体「フリーダム」を託された。
 同時期に開発された機体「ジャスティス」を受け取ったアスランは、父のパトリックの指揮によるザフトの攻撃と、コーディネイター殲滅という野心に燃える「ブルーコスモス」の混戦を止めるため、キラやラクスと共に戦った。
 しかしキラたちが協力した中立国「オーブ」で悲劇が起こっていた。
 地球連合軍からの要請を拒否したことで、オーブも戦火に巻き込まれた。戦争から逃れてきた人も犠牲になった。
 オーブに移住していた少年、シン・アスカの両親と妹、マユもその犠牲者である。
 戦争、特に国民や移住者を戦火に巻き込んだオーブに憎しみを抱いたシンは、1人プラントに渡り、ザフトに入隊することを決意した。自らの手で争いのない世の中を実現するために。

 コズミック・イラ74。1度停戦が果たされてから1年が過ぎた。
 再び戦争が起こり、ザフトのパイロットとなってモビルスーツ「インパルス」を駆るシンも、戦場に身を投じた。
 アスランがザフトに戻り、シンたちの現場指揮も行うようになった。
 しかし彼らのいる戦場に、アークエンジェルとキラのフリーダムが乱入。戦況は混乱をきたし、アスランの乗るモビルスーツ「セイバー」も撃破された。
 混迷する戦争の中、シンは1人の少女、ステラ・ルーシェと出会った。
 しかしステラは地球連合が戦闘用に調整した「エクステンデッド」の1人で、連合軍のパイロットだった。
 連合軍の巨大兵器「デストロイ」を動かすステラを、シンは辛くも助け出した。しかし一歩間違えば、キラのフリーダムによってステラが死んでいたかもしれなかった。
 自分勝手に攻撃を仕掛けてくるフリーダムは、倒さなければ世界が混乱したままになる。
 シンはシミュレーションを経て対策を立て、フリーダムとの一騎打ちに挑んだ。
 キラの武装やメインカメラを集中して攻撃する戦法を逆手に取ったシン。その結果、インパルスは辛くもフリーダムを撃破したのだった。
 負傷したシンの代わりにインパルスに乗り、ブルーコスモスの信念を持つ「ロゴス」との激戦に臨んだルナマリア・ホーク。
 シンのために、彼女も決死の覚悟で戦いを繰り広げた。
 そしてシンも新たに与えられた機体「デスティニー」を駆り、連合軍を撃破しロゴスを追い込んだ。
 その後、ロゴスのメンバーであるロード・ジブリールが連合軍が同盟を結んでいたオーブに逃げ込んだ。
 ザフトが進撃し、オーブ軍と交戦となった。シンもデスティニーで出撃し、先陣を切った。
 そこへキラが新たな機体「ストライクフリーダム」に乗って、デスティニーの前に立ち塞がった。
 これまで以上の性能となっただけでなく、これまでの戦いを先読みするシンの対応もキラはするようになった。
 同じミネルバのパイロットであるレイ・ザ・バレルがデスティニーと同じ新機体「レジェンド」で加勢する。
 そのとき、アスランが新たな機体「インフィニットジャスティス」に乗って、シンたちの前に立ちはだかった。
 キラとアスランに行く手を阻まれたことで、シンたちはジブリールの宇宙への脱出を許すことになってしまった。
 ジブリールは準備を進めていた破壊兵器「レクイエム」を起動。発射したビームを宇宙各地にある筒状の中継コロニーで歪曲させ、防衛線の薄い角度からコーディネイターの宇宙コロニー「プラント」を攻撃した。
 その後、ミネルバは宇宙に上がり、レクイエム発射を阻止し、ジブリールを討った。
 世界の敵が排除されたと判断したプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルは、人類存亡を賭けた最後の防衛策「デスティニープラン」の導入、実行を宣言。
 人の情報を遺伝子工学の観点から見出し、それを元に職業の適性や将来を見定め導くデスティニープラン。これにより人々は過ちのない充実した生活を送ることができ、結果対立や戦争がなくなるという見解である。
 デスティニープランに対して各国で議論が繰り返される中、オーブなどプラン反対の意思を示した。
 その反対の国に対し、ギルバートは攻撃を仕掛けた。デスティニープランは世界のために必ず実行しなければならないという意思だった。
 ギルバートの提唱したデスティニープランを、レイは支持した。シンは心から支持したわけではなく、共通の敵であるキラたちを討つために共闘することを心に決めた。
 ギルバートに攻撃の矛先を向けられたオーブを守るため、キラたちが彼を止めようと突撃してきた。
 シンたちは迎え撃ち、世界を混迷に導く敵であるアスラン、キラを激闘の末討った。
 ギルバートの指揮で放たれた砲撃が、オーブ政府を直撃し、その機能を停止させた。
 デスティニープランの本格化を進める一方、ギルバートは心から従わないシンの抹殺を画策した。
 しかしインパルスを駆るルナマリアにシンが救出されたことで暗殺は失敗した。
 デスティニーに乗ったシンは、ステラを連れたルナマリアと共にプラントを脱出。追撃してきたレイのレジェンドを撃退して地球に身を潜めた。
 ギルバートもザフトのイザーク・ジュールに拘束され、デスティニープランは実行延期を余儀なくされた。
 プラントはレクイエムに攻撃された損害の修繕に力を入れることになった。
 各国も戦争終結に向けての政策を打ち出せないばかりか、自国の立て直しを進めるのに精一杯の状態になっていた。

 コズミック・イラ75。戦争終局から1年が経過した。
 プラント内にある軍事施設「アーモリースリー」にて、1隻の戦艦が着艦していた。ザフトの戦艦「ミネルバ」である。
 「アーモリーワン」での新型強奪からメサイア攻防戦までの戦争の前線で戦ってきたミネルバは、修理を終えてシステムチェックを終えていた。
「ミネルバ、システム、オールグリーン。各武装、エネルギー、弾数共に万全です。」
 ミネルバに乗艦している管制官、メイリン・ホークが艦の状態を報告する。
「了解。これでいつでも任務を行えるぞ。」
 ミネルバの副官、アーサー・トラインが満足げに頷く。
「ただ搭載されている機体はザク、グフがそれぞれ2機と、レジェンドです。」
「主力がレジェンドか・・今はレイ頼みになってしまうな・・・」
 メイリンが続けて報告して、アーサーが肩を落とす。
 現在、ミネルバにはレジェンドと量産型の「ザクウォーリア」と「グフイグナイテッド」が搭載されていた。
「シンとルナマリアは戻らないのか・・?」
「はい・・地球上を転々としているようですが、現在の位置までは・・・」
 アーサーの問いに、メイリンが悲しい顔を浮かべて答える。
 シン、ルナマリア、ステラは地球に降り立った後、ザフトの追跡を振り切るため、各地を移り渡っていた。メイリンたちが連絡を取り合うこともあるが、それを最小限に留めている。
「新しくパイロット2人が増員し、モビルスーツ“ファルコン”も導入されます。」
「ファルコン・・スピード重視の機体で、スピードだけならデスティニーに勝るとも劣らない・・」
「これでレイを援護することができます・・ここのところ、レイは・・・」
「分かっている・・だからレイにばかり頼るわけにいかないんだ・・・!」
 メイリンがレイのことを言って、アーサーが声を荒げる。2人ともレイのことを深刻に考えていた。
「こんなときに、シンかルナマリアがいれば、レイの負担は軽くなるのに・・・!」
「副長・・機体を持っているとはいえ、シンもお姉ちゃんも表向きには除隊扱いになっています・・まだあからさまに呼び戻すわけには・・・」
 アーサーがシンたちのことを頼りにして、メイリンが顔を横に振る。ルナマリアはメイリンの姉である。
“こちらファルコンのハル・ソーマです。ミネルバ、応答してください。”
 そのとき、ミネルバに向けて通信が入った。作戦室のモニターに、ミネルバに近づく戦闘機型の機体の姿が映し出された。
「私はミネルバ副官のアーサー・トラインだ。艦長は本艦に不在のため、私が指示を出す。こちらの誘導に従い、着艦せよ。」
“了解。着艦します。”
 アーサーが指示を出し、ファルコンのパイロットであるハルが答えた。
「ハッチ解放。ファルコン、着艦どうぞ。」
 メイリンが誘導して、ミネルバのゲートのハッチが開かれる。ファルコンが速度を調整して、ゲートの中に入った。
「来たか、新人パイロット。」
 ファルコンのコックピットから出てきたハルを整備士、ヨウラン・ケイトが声を掛けた。
「初めまして。本日付でミネルバに乗艦しました、ハル・ソーマです。」
 ハルが自己紹介をして、ヨウランに向かって敬礼する。
「オレはここの整備担当のヨウラン・ケイトだ。」
「同じく、ヴィーノ・デュプレだ!よろしくな、ハル!」
 ヨウランに続いて同じ整備士のヴィーノも自己紹介をしてきた。
「これが新しい機体のファルコンかぁ。かなりのスピードだって聞いてるよ。」
「スピードだけは負けないってところです・・でも他の性能はデスティニーやフリーダムには敵いませんよ・・」
 ファルコンに関心を寄せるヴィーノに、ハルが苦笑いを見せて答える。
「ファルコンのスピードで迅速な任務遂行を果たす。敵の陣形を崩したところで、僚機が狙い撃ちすることもできる。」
 アーサーが作戦室から来て、ファルコンの活用について語る。
「トライン副官、よろしくお願いします。」
 ハルがアーサーにも敬礼を送る。
「もう1人新人が加わるはずだが・・ハル、何か聞いていないか?」
「あ、はい・・今向かっていますが、専用の機体がなく、別の手段で移動しているそうです・・」
 アーサーが質問して、ハルが気まずさを浮かべて答える。
「なんてことだ・・もう少しかかりそうだな・・」
 アーサーが肩を落として、ハルが苦笑いを見せる。
「今、このミネルバのグラディス艦長は、所用で艦を離れている。だから今は私が代理で指揮をしている。」
「了解です、副長。ヨウランさん、ヴィーノさん、ファルコンのチェックをお願いします。」
 アーサーに答えて、ハルはヨウランたちと一緒にファルコンのチェックを始めた。

 プラント内にある監獄。その1番奥の牢に、ギルバートはいた。
 ギルバートは常に冷静さを保ち、禁固の日々を過ごしていた。
 デスティニープラン強行を進め、イザークによって拘束されたギルバート。しかし彼は今でも、己を知り指し示された生き方をするのが正しいものという考えを変えてはいなかった。
 そんなギルバートの前に、イザークが仲間のディアッカ・エルスマンと共に来た。
「少しは改心する気になったか?」
「改心?私は間違いを犯したつもりはない。考えを改めるつもりもない。」
 問いかけるイザークに、ギルバートが悠然と言い返す。
「デスティニープランが実行を見送られ、その結果、世界は混迷が続いている。常に道を指し示さなければ、真の平和は訪れない。」
「誰かの言いなりにならなければ生きていけないほど、オレたちは落ちぶれではいない。神になったつもりか?思い上がるな!」
 デスティニープランが必要不可欠であると確信しているギルバートに、イザークが憤りを覚える。
「やれやれ。これはイザーク以上に強情だな。信念を曲げないのはご立派なことだけど・・」
「貴様も減らず口を叩くな、ディアッカ!この男の前では、わずかも隙を見せるな!」
 呆れた素振りを見せるディアッカに、イザークが怒鳴る。
「貴様はそこで大人しく見ていろ!貴様が思い通りにしようとした人間の生き様をな!」
 イザークが言い放ってから、ギルバートに背を向ける。
「シン・アスカは、今はどうしているのかな?」
 ギルバートは悠然とした態度を崩さずに、イザークに質問した。
「ヤツは地球に行ってから行方が知れない。ルナマリア・ホークと、ステラという女を連れてな。」
 イザークは振り向かずに答えて、右手を握りしめる。
「君はシンによってアスランを討たれている。アスランの友人だった君としては、シンは仇と言えるのだが?」
「確かにアイツはアスランを討った。だがそれはアスランがプラントを裏切ったからだ。責められるべきはアスランのほうだ・・・!」
 ギルバートからの指摘に、イザークが感情を押し殺して言い返した。彼はシンだけでなく、裏切ったアスランにも不満を感じていた。
「行くぞ、ディアッカ!」
「おいおい・・少しは落ち着けよ、隊長なんだから・・」
 声を張り上げて呼ぶイザークに、ディアッカが呆れて注意を言った。
「君たちも世界も思い知ることになる。自分だけの判断だけでは、混迷を取り払うことはできないと。」
 2人を見送るギルバートは笑みを絶やさなかった。

 ミネルバに向かって、2人の少女が移動を続けていた。
「ハルはもう着いてるよね・・やることがなかったら、一緒に乗せてもらえたのに・・」
「みんな心配してるよ~!急がないと艦長に怒られちゃうよ~!」
 2人の少女、ソラ・アオイとマイ・ヤヨイが慌ただしく進んでいく。ソラはパイロットで、マイは管制官である。
「でもあれを進めておいたほうがいいと思ったし・・」
「でも1年前の戦争でロゴスを倒して、フリーダムもジャスティスも倒して、大きな敵はもういないんだよ!そんなに慌ててやる必要はないんじゃないかな?」
「それでまた大きな敵が出てこないとも限らないんだよ。例えばロゴスの残党とか、ラクス・クラインの支持派の生き残りとか・・」
「ち、ちょっと~・・そんなこと言わないでよ~・・ホントに出てきちゃったらどうするの~!?」
 ソラが予感を口にして、マイが不安を浮かべる。
「そんな話はいいから、早くミネルバに行くよー!」
「マイ、いくら何でもグイグイ押したら倒れちゃうよー!」
 マイに背中を押されて、ソラが悲鳴を上げる。2人は全速力でミネルバに向かった。

 イザークたちと入れ替わりで、ミネルバの艦長、タリア・グラディスがレイと共に監獄に来た。
「君も来たか、タリア、レイ・・」
「ギル・・・」
 ギルバートが微笑んで、レイが戸惑いを浮かべる。
「申し訳ありません・・自分が至らないばかりに、ギルの築こうとした世界が・・・」
「レイ、今、デュランダルに与する行動を取れば、あなたも罪人として拘束されることになるわ・・」
 ギルバートに謝罪するレイを、タリアが制止する。
「ミネルバは修理とチェックを完了し、私たちは本格的に任務に当たることになります。」
「そうか・・万全となるまでかなりの時間が経っていたのだな・・」
 タリアが現状を話して、ギルバートが笑みをこぼす。
「あなたたちも、シンたちのことは分かっていないんだね・・」
 ギルバートはタリアにもシンたちのことを聞く。
「えぇ・・シンとルナマリアがザフトを脱走した日、地球に逃れてからの行方は分かっていません。」
 タリアが真剣な面持ちのまま答える。シンが地球に降りて少しの間はやり取りを行っていたが、その後に彼らが移動してからは、タリアたちも詳しい行方は分かっていない。
「争いが決して起こらない世界、誰もが正しい道を歩み幸福でいられる世界を、私は実現しようとした。その世界を守る力の担い手として、レイとシンを選んだ。」
「しかしシンはギルを信じようとせず、自分だけの道を歩んでしまった。キラ・ヤマトたちを討つことに成功したが、ギルの世界における大きな汚点となってしまいました・・」
 ギルバートがシンのことを言って、レイが謝意を示す。
「私としては、シンは自らの意思で決断したことをよいと思っているわ。彼は戦争の中で受けた悲しみや辛さを、人一倍理解している。だからこそ自分の意思で戦うことを決めても、混迷に進むことはない。」
 タリアがシンの決心を快く思っていた。
 軍人として上官の命令は絶対である。しかし人としても何もかも言いなりになるばかりでは、真に生きていることにはならない。
 自分の意思で生き方を決めたシンを、タリアは嬉しく思っていた。
「だがいつか彼もぶつかることになる。自分の意思だけではどうすることもできない壁に・・私たちのように・・・」
「確かに、私たちの間で子供は産めなかった・・でもシンたちと私たちは違う。戦う運命を背負い、悲しい運命を乗り越える。」
 自分たちの悲劇を口にするギルバートだが、タリアはシンたちへの信頼を持ち続ける。
「艦長、自分はあくまでギルのために行動します。もしもあなたがギルに弓引く判断を取るようなら、自分は躊躇なくあなたを討ちます。」
 レイが自分の考えを言って、タリアに鋭い視線を向ける。彼はギルバートのためならいかなる手段にも訴えるつもりでいた。
「あなたと対立しないことを、私は願っているわ・・」
「自分もです、艦長・・皆が、ギルに賛同してくれることを願っています。」
 互いに正直な気持ちを口にするタリアとレイ。
「レイ、頼むぞ。お前もこの世界に欠かせない存在だ。」
「はい、ギル。」
 ギルバートが信頼を寄せて、レイが敬礼して答えた。
(ザフトが大きく動けば、いずれシンも動くことになる。その時期はそろそろか・・)
 これからのことを推測して、ギルバートは微笑んで頷いた。

 プラントにて復興活動が続いていたが、プラントや地球の周辺では、ザフトや連合軍が警備網を敷いていた。表向きには暗躍を企てる者への警戒だが、実質は奇襲をされないために互いにけん制し合っていた。
「他の国の軍、まだこっちを睨んできてるぞ・・」
「こっちから仕掛けてさっさと倒しちまえばいいのに・・!」
「それだけの戦力が残ってないことくらい、お前も分かっているだろ・・」
「下手に攻撃を仕掛けて返り討ちになったら、何もかもおしまいだぞ・・」
 ザフトのパイロットたちが連合軍に対して懸念を抱いて言葉を交わす。
「それに、襲撃者は連合のヤツらとは限らんぞ・・」
「まさか、ザフトやプラントから裏切り者が出るとか・・・!?」
 パイロットたちが会話を続けて、不安を覚える。
「おいおい、いつまでも脅かすんじゃねぇよ・・警備に集中だ!」
 他のパイロットが檄を飛ばし、周囲を警戒する。
“こちら、ぺスタ隊“ジーザス”!超高速の機体に攻撃されている!至急応援を・・!”
 そのとき、パイロットたちにSOSの通信が入ってきた。
「超高速の機体だと」!?」
「ジーザス、場所はどこだ!?応答しろ!」
 パイロットたちがジーザスに向けて呼びかける。
“こっちに来る!うわあっ!”
 ジーザスから悲鳴が上がり、通信が途切れた。
「ジーザス、どうした!?ジーザス!」
 パイロットが呼びかけるが、ジーザスからの応答がなくなった。
「新たな襲撃者か!?ジーザスはどこにいたんだ!?」
「ここから遠くないはずだ!2組に分かれて、1組はジーザスの援護に向かうぞ!」
 パイロットたちはジーザスの救援に行こうとした。
 そのとき、パイロットの操縦する「ザクウォーリア」の1機が、突然飛び込んできたビームに貫かれて爆発した。
「何っ!?」
「どこからの攻撃だ!?レーダーには何も・・!」
 パイロットたちが驚き、周囲を伺う。ビームは彼らの機体のレーダーの範囲の外から飛んできたものだった。
「みんな、1ヵ所に固まるな!狙い撃ちされるぞ!」
 パイロットの1人が叫び、ザクウォーリア、「ブレイズザクファントム」、「ガナーザクウォーリア」、「グフイグナイテッド」が散開した。
「敵を見つけたらすぐに連絡だ!取り囲んで敵を討つ!」
「了解!」
 パイロットの1人が檄を飛ばし、他のパイロットたちが答える。ザクたちが見えない敵の捜索を行う。
 その最中、再びビームが飛び込み、ブレイズザクファントムの1機が貫かれて爆発した。
「またやられた!?」
「くそっ!どこにいる!?」
 パイロットたちが焦りを募らせ、周囲を見回す。
 その直後にビームが2つ放たれ、ザク2機が撃たれた。
「いた!あそこを横切った!」
 パイロットの1人が機影を発見して、他のパイロットも視線を移す。ザクたちの前に1機の機体が高速で距離を詰めてきた。
「あ、あれは!?」
「そんな、バカな!?」
 機体の姿にパイロットたちが目を疑う。機体の放ったビームの連射で、ザクたちは短時間で全滅することとなった。

 急いで駆け付けたソラとマイは、ようやくミネルバに到着した。
「も、申し訳ありませんでした、みなさん・・・!」
「ソラ・アオイ、ただ今到着しました・・・!」
 マイとソラが呼吸を乱しながら、アーサーに謝る。
「まだ艦長は戻ってきていない・・今のうちに休んで、万全の状態に戻しておくんだぞ・・」
「り、了解です・・・!」
 呆れながら注意するアーサーに、ソラが呼吸を整えながら答える。
「副官、緊急通信です!」
 そのとき、メイリンが通信を受け取り、アーサーに報告してきた。
「ローグ隊が襲撃を受け、モビルスーツ隊が全滅!敵機がプラントに向けて進行しています!」
「何だと!?全滅!?」
 メイリンの報告を聞いて、アーサーが驚愕する。
「それで敵は何者だ!?地球連合か!?」
「それが・・敵は、モビルスーツ1機・・その姿は、フリーダムに酷似していたとのことです・・・!」
 アーサーが聞いて、メイリンが困惑気味に報告を続けた。
「えっ!?フリーダム!?」
「そんな!?フリーダムは2機ともシンさんに倒されたでしょ!?」
 それを聞いてマイが驚き、ソラが声を荒げる。
「それで、敵機は今どこにいるんだ!?」
「ローグ隊全滅後、こちらに・・アーモリースリーに近づいています!」
 アーサーが問いかけて、メイリンが敵機の位置情報を伝える。
「周辺にいる他の部隊にこのことを知らせろ!グラディス艦長にもだ!」
「はい!」
 アーサーの指示でメイリンが警告を呼びかけた。
「トライン副官、ファルコンで出撃します!」
 ハルがファルコンに乗って、発進準備を整える。
「待て!まだ敵の姿を確認できていない!下手に出ても不利になるだけだ!」
 アーサーに呼び止められて、ハルは待機することになった。
「レーダーが高速で近づく反応を捉えました!」
「あの敵機か・・・!」
 メイリンがレーダーを見て報告して、アーサーが緊張を膨らませた。
 アーモリースリーの外壁がビームに貫かれて爆発した、中の空気が出ていく穴から、1機の機体が入ってきた。
「あれは!」
「そんな!?・・確かにフリーダムだよ・・・!」
 機体の姿を見て、マイとソラが驚愕する。形状はこれまでと比べて若干の違いがあったが、その姿はフリーダムだった。
 フリーダムは両手にそれぞれ持っているビームライフルを発射してきた。ビームが停泊している戦艦や機体を破壊していく。
「あ・・アーモリースリーが・・!」
 爆発や火災が起こり、アーサーが動揺を見せる。
「副官、発進の許可を!今、ミネルバで敵を食い止められるモビルスーツは、このファルコンくらいです!」
 ハルがアーサーから出撃を進言する。
「分かった、ハル・・だが敵はかなりのスピードと攻撃力を持っている!いくらファルコンでも、まともにやっても勝てないぞ!」
「はい!」
 アーサーが出撃を許可して、ハルが答えた。
「副官、私も!・・って、機体は他はザクとグフぐらいしか・・・!」
 ソラも出撃しようとするが、今現在、専用機を持っていないことを思い出す。
「ソラはグフに乗って待機。緊急時に出撃するぞ。」
「は、はい!」
 アーサーから大気を命ぜられて、ソラが答える。
(私もすぐに戦いたいけど・・ファルコンやレジェンドのような専用の機体があれば・・・!)
 彼女は主力として戦えないことが腑に落ちなかった。
「ハル・ソーマ、ファルコン、発進します!」
 ハルの乗るファルコンが、ミネルバから発進した。
「やめろ!」
 ファルコンが叫び声を上げて、機体に向けてビームを放った。機体は振り向くことなく高速で上昇して、ビームを難なくかわした。
「このファルコンのビームが当たらないなんて・・!」
 スピード重視のファルコンの攻撃が通じないことに、ハルが驚く。
「それにあの機体・・本当にフリーダムに似ている・・・!」
 ハルは機体の姿を見て、緊迫を募らせる。フリーダムに似た機体「アークフリーダム」ザフトやプラントを襲撃してきた。

 

 

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