ザ・グレイトバトル外伝

ウルトラマンフォース

-光の戦士の大決戦-

第9章

 

 

 バードンがゾフィーに迫って、鋭い嘴を突き出す。ゾフィーは嘴をかわして、バードンに反撃を当てていく。
 さらにゾフィーがバードンの嘴をつかんで、背負い投げの要領で投げ飛ばした。地面を転がるバードンが起き上がって、嘴を開いて炎を吐いた。
 ゾフィーが炎を浴びて、頭にも炎が回った。しかし彼は動じず、体を回転させて炎を吹き飛ばした。
「同じ攻撃に何度もやられるわけにはいかない。平和を守る強い意志は、私の中にもある・・!」
 ゾフィーがバードンに向かって言い放つ。
 バードンはかつて鋭い嘴と頬のこぶにある毒で、1度はタロウを倒して、代わりに駆け付けたゾフィーも倒された。その後復活したタロウによってバードンは倒されたが、ゾフィーも同族が出たときの対処と鍛錬を入念に行っていた。
 バードンがまた突っ込んできた。突き出してきた嘴を再びつかんで、ゾフィーがバードンを空へ投げ飛ばした。
「この技は地球に向けては撃てないが、空目がけてならばある程度は威力を上げられる・・・!」
 バードンが上空にいるのを確認して、ゾフィーが両腕を動かして右手にエネルギーを集める。
「そこだ!」
 ゾフィーが右手を前に出して「M87光線」を発射した。バードンが光線を受けて上空で爆発した。
「ヤツは完全に蒸発した。毒も落ちる前に消え去るだろう。」
 空の様子を伺って、ゾフィーが頷いた。
「みんなも心配いらないだろう。誰もが苦難を乗り越えて、体も心も強くなっているのだから。」
 他のウルトラ戦士のことを信頼しながら、ゾフィーはジャッカル星人たちとの戦いに向かった。

 ウルトラマンとメフィラス星人が対峙して、互角の戦いを繰り広げていた。
 ウルトラマンが放った八つ裂き光輪「ウルトラスラッシュ」を、メフィラス星人が右手からのビームで相殺した。
「なかなかの実力ですね。しかしこれはどうでしょう?」
 メフィラス星人が笑みをこぼして、右手にエネルギーを集めた。しかし光はウルトラマンの後ろから飛んできた。
 ウルトラマンは振り向くことなく横に動いて、光をかわした。
「メフィラス星人、暴力を嫌っていたお前が、このような卑怯なやり方をするとは・・」
「フフフ・・卑怯もラッキョウもありませんよ。」
 ウルトラマンが非難をすると、メフィラス星人があざ笑ってきた。
「地球の平和をつかみ取るため、人間は日々成長している。それは我々ウルトラの戦士も同じだ。」
 自分たちの強さを訴えて、ウルトラマンがメフィラス星人に向かっていく。
「ならば私を上回っているかどうか、試してみますか?」
 メフィラス星人がワープして、ウルトラマンの横に回ってから光線を出した。ウルトラマンは右手を前に出して、光線をはじいた。
「この星を去れ、メフィラス星人。それでお前と私の戦いは終わる。」
「そうはいきません。今回はあなたたちウルトラ戦士を確実に倒します。」
 引き上げるように警告するウルトラマンだが、メフィラス星人は聞かずに攻撃を続ける。
「言葉ではなく力で攻めてくるなら、私も力でお前の侵略を止める・・!」
 ウルトラマンがメフィラス星人に向けて、両腕を十字に組んで「スペシウム光線」を発射した。メフィラス星人も光線を出してぶつけ合う。
 ウルトラマンが力を込めて、スペシウム光線がメフィラス星人の光線を押し込んでいく。
「ぐおぉっ!」
 スペシウム光線に体を貫かれて、メフィラス星人が絶叫を上げた。
「この私が敗れた!?・・ウルトラマンが、格段に強くなったというのか・・・!?」
「自分に過信し、さらに力に溺れたのがお前の敗因だ。力で侵略に踏み切った時点で、メフィラス星人、お前の敗北は決まっていたのだ。」
 うめくメフィラス星人に、ウルトラマンが冷静に答える。
 メフィラス星人は高い力と知能を兼ね備えた宇宙人だったが、本来は暴力を好まず力による侵略をしなかった。そのため、言葉巧みに地球を引き渡してもらう作戦を行ったが、それは失敗に終わった。
「この私が、完全敗北をするとは・・・」
 敗北を痛感したメフィラス星人が、倒れて消滅した。
「我らも人間も、常に自分自身と戦っている。過ちも犯すが、それを乗り越えて日々成長していく。」
 正しい心を持つ人の成長を信じて、自分もこれからも平和のために戦い続けると、ウルトラマンは改めて決意していた。

 分身して翻弄してくるガッツ星人に、セブンは下手に反撃ができないでいた。エネルギーを消費させられて敗北したことを、彼は覚えていた。
「どうした、ウルトラセブン?これでは我々の強さを見せつけることにもならんぞ。」
 ガッツ星人が分身とともにセブンをあざ笑う。
「そうやって無駄にエネルギーを使わせる作戦、何度も通用しないぞ。」
 セブンは冷静さを保って、ガッツ星人に言い返す。
「行け、ウインダム、ミクラス、アギラ、セブンガー!」
 セブンがカプセル怪獣のウインダム、ミクラス、アギラ、そして怪獣ボールのセブンガーを召喚した。
 カプセル怪獣はセブンが地球に留まった際に自ら戦えないときなどに彼が呼び出す仲間である。
 セブンガーはセブンに託された怪獣ボールで、1分間しか活動できないが絶大な力を発揮する。
「バカめ。数を増やしたところで、我々の前では無意味だぞ。」
 ガッツ星人が笑みを絶やさず、分身と連携して手から光線を放つ。セブンとともに回避して、ウインダムたちがガッツ星人たちに向かっていく。
 しかしウインダムたちが攻撃したガッツ星人は分身で、攻撃が当たった瞬間に消えてはまた現れる。
 その間にセブンが透視能力を使って、本物のガッツ星人の居場所を探った。彼の視界から分身が消えて、本物が残った。
 セブンが高速で飛ぶ光の球「手裏剣光線」をガッツ星人に命中させた。ガッツ星人攻撃されて体勢を崩した。
 セブンは間髪入れずに、頭にある宇宙ブーメラン「アイスラッガー」を外して投げつけた。回転しながら飛んでいくアイスラッガーが、ガッツ星人の体を切り付けた。
 ふらついたガッツ星人に、アギラが突進して押し込む。ミクラスも組み付いて、アギラと力を合わせてガッツ星人を上へ放り投げた。
 そこへセブンガーがジャンプして、ガッツ星人に突撃した。ガッツ星人が地上に叩き落とされて、ダメージを増していく。
 セブンが額のビームランプから「エメリウム光線」を放つ。同時にウインダムとセブンガーもビームを発射する。
 分身を出そうとしたガッツ星人だが、回避できずに光線を受けて吹き飛ばされた。その直後にセブンが両腕をL字に組んで、光線「ワイドショット」を放った。
 ガッツ星人がワイドショットを浴びて、絶叫を上げて爆発した。
「うん。よくやったぞ、お前たち。」
 セブンが頷いて、ウインダムたちが喜ぶ。
「よし、戻れ。」
 セブンの呼び声を受けて、ウインダムたちが元のカプセルや怪獣ボールに戻った。
「ウルトラ戦士だけでなく、地球の人たちも命懸けで戦っている。その姿に心を打たれて、私は地球に留まることを決めた・・」
 セブンが記憶を呼び起こして、今までの戦いを思い返していく。
 1人の地球人が命懸けで人を助けた姿に感銘したセブンは、その姿を借りて地球に留まり平和を守るために戦った。力を失った間もそのために彼は尽力した。
 地球を離れた今も、セブンは平和のために全力を尽くしていた。
「我々の志を受け継ぐ者は、この先生まれていく。ウルトラ戦士も人類も・・」
 強き希望のある未来を見据えて、セブンもこれからの使命に身を投じた。

 かつて戦ったベムスターよりも強化されている改造ベムスター。ジャックも以前のように苦戦を強いられていた。
「ヤプールが蘇らせて強化させたベムスター・・タロウも敗れただけのことはある・・・!」
 ジャックがベムスターの力を痛感する。
 ベムスターが目からマシンガンのようなビームを連射する。ジャックはビームをかわして、左の手首に装着されている万能武器「ウルトラブレスレット」を外して、「ウルトラスパーク」にして放った。
 かつてはベムスターを切り裂いたウルトラブレスレットだが、改造ベムスターの体には跳ね返された。
「ブレスレットも効かないのか・・ならば・・!」
 ジャックが警戒を強めながら、ベムスターに向かって真正面から向かっていく。
 ベムスターが頭の角からビームを発射する。ジャックがウルトラブレスレットを変形させた盾「ウルトラディフェンダー」でビームを防いだ。
 ベムスターは今度は腹部から強力な光線を発射した。ジャックは大きくジャンプして光線をかわして、上空から急降下した。
 ジャックが繰り出した「流星キック」が、ベムスターの角に命中した。
 ふらついたベムスターを、着地したジャックが近づいてつかんで持ち上げた。
「ウルトラハリケーン!」
 ジャックが両腕を振りかざして、回転を加えてベムスターを空へ投げ飛ばした。彼は直後にスペシウム光線を発射して、ベムスターに命中させた。
 あらゆるエネルギーを吸収することができるベムスターだが、無防備のために光線を直撃されて地上に落下した。
 ベムスターが起き上がる瞬間を狙って、ジャックがその腹部を狙って再びウルトラブレスレットを投げ飛ばした。ブレスレットはベムスターの腹部から体内に入り込んだ。
 次の瞬間、ウルトラブレスレットがエネルギーをふくらませて、ベムスターを体内から爆発させた。
「どんな生き物も、倒れないことは決してない。ベムスターの真の弱点は、私も把握していた。」
 ジャックが冷静にベムスターの弱点を突いてみせて、その手応えを感じていた。
「どんなことにも負けない、勇気という強さ。それは我々だけでなく、地球や宇宙、それぞれの場所で生きている心ある人みんなが持っているものだと、私は思っている。」
 みんなが正しい強さを持っていくことを信じて、ジャックは彼らを守る誓いを確かめた。

 ヒッポリト星人の吹き出す強風と火炎を、エースかいくぐっていく。
「ウルトラマンエース、貴様にも他のウルトラ戦士にも、地獄と死の苦しみを味わわせてやるぞ。」
 ヒッポリト星人が言い放って、両手を合わせた先からミサイルを発射する。エースも両手から光の矢「アロー光線」を発射して、ミサイルを爆発させた。
 続けてエースが額のランプ「ウルトラスター」から「パンチレーザー」を発射して、ヒッポリト星人の体に命中させた。
「おのれ、エース・・これでもくらえ!」
 いら立つヒッポリト星人が念力を発した。その瞬間にエースが素早く動いた。
 エースがいた場所にカプセルが現れた。「ヒッポリトカプセル」で相手を閉じ込めて、中に「ヒッポリトタール」を流し込んでブロンズ像に変えるのが、ヒッポリト星人の必殺の戦法である。
「カプセルの出現を読んだだと!?」
 ヒッポリトカプセルをかわされたことに、ヒッポリト星人が驚く。
「オレたちはお前の仕掛けた罠にはまり全滅した。しかもお前たちはその能力を進化させてきた。だがそれに何度もやられるオレたちではない!」
 奇襲に対する鍛錬を行ったエースが、ヒッポリト星人に言い放つ。
「おのれ・・おのれ、ウルトラマンエース!」
 ヒッポリト星人がいら立ちをふくらませて、両手から光線を放った。エースがかわして、両腕を振りかぶってL字に組んで「メタリウム光線」を放った。
「ぐおぉっ!」
 ヒッポリト星人が光線を浴びて絶叫を上げる。
「オレはもっとも強い存在だ・・このオレが、ここまで完膚なきまでに敗れるなど・・・!」
 断末魔を上げるヒッポリト星人が、光を発して吹き飛んだ。
「そう簡単に倒れるわけにはいかない。優しさのある世界を守るために・・」
 エースが呟いて、握りしめる右手を見つめる。
“優しさを失わないでくれ。弱い者を労り、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが、何百回裏切られようと・・それが私の・・”
 彼が地球人に向けて投げかけた言葉を思い返していく。
「いや、我々の願いだ。」
 自分が送った願いが多くの人や地球だけでなく、多くの世界に広まっていることを、エースは確信していた。

 グランドキングの振るうパワーとビームをかわして、タロウが距離を詰めていく。
「今お前の相手をしているのは私だけだが、みんなとは今でもつながっている!」
 タロウが言い放って、空高くジャンプする。彼は空中で拘束スピンをして「スワローキック」を繰り出してグランドキングの頭に当てた。
 グランドキングがふらついて、タロウが前転をして起き上がって体勢を整える。
 グランドキングが尻尾の先からも光線を出した。タロウが光線を当てられて、吹き飛ばされて倒れる。
 振り返ったグランドキングと、起き上がったタロウ。近づいてくるグランドキングに対して、タロウが両手を上に伸ばして頭上で合わせた。
「ストリウム光線!」
 タロウがその両手を腰に当ててエネルギーを溜めて、腕を逆L字に組んで「ストリウム光線」を発射した。グランドキングが光線を受けて、体から火花を散らす。
「タロウ!」
 そこへゾフィーがウルトラマンたちとともに駆け付けて、タロウに声を掛けてきた。
「兄さんたち!」
「我々の力を1つに合わせるぞ。」
「ウルトラホーンに力を集めるんだ。」
 声を上げるタロウに、ウルトラマンとセブンが呼びかける。
「頼むぞ、タロウ。」
「オレたちの力を、ヤツに叩き込むんだ!」
 ジャックとエースも声を掛けて、タロウが頷いた。
「我々の力をタロウへ!」
 ゾフィーが呼びかけて、ウルトラマンたちとともに手をかざした。彼らの手からエネルギーが出て、タロウの角「ウルトラホーン」に送られた。
 グランドキングが全身のエネルギーを集めて、口から光線を放った。
「コスモミラクル光線!」
 タロウが右腕を振りかざして、右半身から「コスモミラクル光線」を放った。コスモミラクル光線はグランドキングの光線を押し込んで、その体を貫いて木っ端微塵に吹き飛ばした。
「ありがとう、兄さんたち!」
 タロウが感謝して、ゾフィーたちが頷いた。
「残るはジャッカルの軍団たちだ。ヤツらとはフォースたちが戦っている。」
「僕たちも見届けに行きましょう。彼らも力を合わせてみんなを守っているはずです。」
 ゾフィーが呼びかけて、タロウが答える。彼らのところへデッカーたちも来た。
「みなさんも勝ったんですね!」
「フォースとセレーナのところへ行きましょう!」
 トリガーが喜んで、デッカーが声を掛ける。彼らもジャッカル星人たちとの戦いへ向かった。

 ジャッカル星人の軍勢に、セレーナが果敢に挑んでいた。彼女の戦いにジャッカル星人たちが焦りを感じていた。
「セレーナ、ここまでの力とは聞いていないぞ・・・!」
「こんなすぐにパワーアップするものなのか・・!?」
 ジャッカル星人たちが覚えて、セレーナから遠ざかっていく。
「確かに私も、自分の力が上がっている気がする・・ただあなたと1つになったという違いしかないのに・・・」
 セレーナも強くなっていることを不思議に思っていた。
「もしかして、私と一緒だから?・・でもそれだけじゃない気がする・・・」
 ナツもそのことに疑問と戸惑いを感じていく。
「よく分からないけど、今はこのチャンスに乗っかろう!」
「えぇ!力を貸して、ナツ!」
 ナツの呼びかけにセレーナが答える。
「怯むな!相手は女のウルトラ戦士、たった1人だ!」
「数で押し込めば確実に勝てる!」
 ジャッカル星人が気を引き締めなおして、セレーナを取り囲んだ。
「お前を血祭りにして、他のウルトラマンたちも後を追わせてやる!」
 ジャッカル星人がセレーナを見つめてあざ笑ってくる。
「少しエネルギーを使うことになるけど・・ナツ、行ける?」
「もちろんよ!行きましょう、セレーナ!」
 セレーナが呼びかけて、ナツが頷いた。聞き入れたセレーナが全身にエネルギーを集める。
「フルムーンフラッシュ!」
 セレーナの体からまばゆい閃光が放たれた。
「うおっ!」
 ジャッカル星人たちが光を受けて目がくらんだ。
「今よ!フルムーンシュート!」
 セレーナが左手にエネルギーを集めて、前に出して光線を放った。ジャッカル星人たちが次々に光線を受けて倒れていく。
「星人を一気に倒したけど、確かにエネルギーの消費が激しいわね・・!」
 セレーナのカラータイマーが点滅して、ナツが疲れを感じる。
 フルムーンフラッシュで相手の目をくらませてから、フルムーンシュートを撃ち込むのが、セレーナの切り札である。しかし2つの技を使うことで、エネルギーを大きく消耗してしまう。
「あとはフォースと他のウルトラマンたちに任せた方がいいみたいだね・・」
「えぇ・・私たちは1度休みましょう・・・」
 セレーナがフォースたちに託して、ナツが頷く。セレーナが変身を解いて、ナツがフォースのいる方へ振り向いた。

 ジャッカル星人が戦っていたのは、セレーナたちだけではなかった。別の星人の1部隊が、人間サイズになってGフォース本部に迫っていた。
「ここが地球人の軍隊の基地か。」
「あそこに入り口があるぞ!破って中に飛び込むぞ!」
 ジャッカル星人たちが本部に通じる扉を見つけて入ろうとした。
「その必要はない。」
 その扉が開いて、トウジが出てきた。
「ここから先へは行かせない。私がお前たちの相手をする。」
 当時がジャッカル星人たちに言って、携帯している銃を手にした。
「フハハハハ!バカめ!たった1人の地球人に、我らジャッカルの軍団を止められると思っているのか!」
「身の程を思い知らせてやるぞ!」
 ジャッカル星人たちがあざ笑って、持っていた槍を構えた。
(巨大になっていれば不利だったが、人間サイズになっているなら、まだ食い止められるか・・・!)
 わずかに増すチャンスに賭けて、トウジがジャッカル星人を迎撃する。
「突撃だ!」
 ジャッカル星人たちが一斉に飛びかかる。トウジが銃を撃って、星人たちに命中していく。
 撃たれたジャッカル星人が体勢を崩す。しかしすぐに立て直して、再び前進をする。
「この大きさでも身体能力が高い・・この銃だけでは・・・!」
 劣勢を感じてトウジが身構える。ジャッカル星人たちが彼を狙って槍を振り上げた。
 そのとき、無数の針のような光線が飛び込んで、ジャッカル星人たちに命中した。
「ギャアッ!」
「これは・・!?」
 ジャッカル星人が絶叫を上げて、トウジが目を見開く。彼が振り向いた先にいたのは、3人の宇宙人。
 宇宙海人バルキー星人バルキ、異次元宇宙人イカルス星人イカリ、暗殺宇宙人ナックル星人ナクリ。かつてダークルギエルに従っていたエージェント3人組である。
「イカカカカ!当たったじゃなイカー!」
 放った「アロー光線」がジャッカル星人に当たって、イカリが笑い声を上げる。
「貴様たち、宇宙人なのに地球人に味方するつもりか!?」
 ジャッカル星人たちがイカリたちに怒鳴る。
「ここは私たちが楽しく暮らしてる星なのよ。」
「ミーたちのベストプレイスに手を出すヤツがいるなら、誰だろうとやっつけてやるぜ!」
 ナクリとバルキが自分たちの考えを口にして、イカリとともに構えを取る。
「バカめ!この星に染まってしまったようだな!」
「我々に盾突くならば、他の星のヤツらだろうと始末するまでだ!」
 ジャッカル星人たちがいら立って、バルキたちに飛びかかる。
「吾輩もどんどんやってやるぞー!」
 イカリが大声を上げて、体から再びアロー光線を発射した。前にいたジャッカル星人たちが光線を浴びて、ダメージを負って倒れる。
 ナクリも目と前に出した手からビームを出して、ジャッカル星人たちに当てていく。
「ミーのパワーとスキルを受けてみろ!」
 バルキが剣「バルキーリング」を手にして、ジャッカル星人たちが振りかざす槍を防いでいく。
「そりゃ!」
 バルキがバルキーリングを振りかざして、槍を跳ね返して、ジャッカル星人の体を突いていく。
「すまない、君たち。ともに戦ってくれて・・」
 トウジがナクリに目を向けて感謝する。
「勘違いしないでよね。私たちは自分の居場所を守っているだけなんだから。」
「それでも君たちに感謝したい・・」
 自分たちの考えを口にするナクリに、トウジが改めて礼を言った。
「それそれ!ユーたちの力はそんなもんか!どんどん行くぜー!」
 バルキが高らかに言って、ジャッカル星人たちを攻め立てる。
「怯むな!1人ずつ取り押さえろ!」
 ジャッカル星人たちが手分けして、バルキたちを1人ずつ攻め立てて押さえ付けようとする。
「おい、コラ!密はやめろ、密は!」
 怒ったバルキが額から光線「バルキービーム」を発射して、ジャッカル星人たちに当てて遠ざける。
「イカカカー!」
 イカリもアロー光線でジャッカル星人たちを引き離して、ワープで別の場所へ移動した。
「ちょっと、あなたたち!むさ苦しいのに近づいてこないでよね!」
 ナクリが槍を手で払って、ジャッカル星人たちを叩いていく。
「この程度で手こずるとは・・・インペライザー!」
 ジャッカル星人の掛け声で、インペライザーがバルキたちに近づいてきた。
「おいおいおい!マジかよー!?」
 バルキが慌ただしく叫んで、イカリとともに後ずさりする。インペライザーが彼らを狙ってビームを発射した。
「おわあっ!」
 ビームが地面に直撃して、バルキと怒りが爆発に吹き飛ばされて跳ね上げられた。
「ちょっと、あなたたち!大丈夫!?」
 ナクリが動揺を見せて、倒れたバルキたちを心配する。
「巨大なヤツでドンパチしてくるなんて・・!」
「これじゃ焼きイカになっちゃうじゃなイカー!」
 顔を上げたバルキとイカリが不満の声を上げる。
「こうなったら、ミーもビッグになってやってやる!」
 バルキがいきり立ったときだった。1体の生物が彼の肩の上に乗った。
「ジョリー!もしかしてユーもやるのか!?」
 バルキが声を掛けて生物、ジョリーが頷く。
 バルキー星の海に住む宇宙海獣サメクジラ。その1体であるジョリーを、バルキはペットとしていた。
「それじゃ一緒にやるぞ、ジョリー!」
 バルキが意気込みを見せて、ジョリーとともに巨大化してインペライザーを迎え撃った。
 インペライザーが両手からビームを発射した。バルキが上にジャンプして、ジョリーも前で跳ぶように突っ込んだ。
 ジョリーが鼻先の角をインペライザーの胴体に当てた。しかしインペライザーに傷が付かず平然としている。
 バルキが着地して、インペライザーを後ろから詰め寄って押さえた。
「これでユーをチクチクしてやる!」
 バルキがインペライザーを羽交い絞めにして、バルキーリングを突き立てる。しかしこれもインペライザーに通じない。
「何っ!?おわっ!」
 驚くバルキがインペライザーに投げ飛ばされて、ジョリーとぶつかった。
「イタタタ・・ソーリー、ジョリー・・・!」
 バルキが起き上がってジョリーに謝る。インペライザーが再び両手と目から光を放射してきた。
「おわあっ!」
 バルキとジョリーが爆発で吹き飛ばされて、イカリたちも壁や地面に叩きつけられていく。
「これは、かなり危険な状況だ・・・!」
 トウジが焦りを噛みしめて、ジャッカル星人たちの動きを見計らう。
「ヤツらが怯んでいるうちに、一気に攻め込むぞ!」
 ジャッカル星人たちが勢いに乗って、トウジたちに向かって一斉に飛びかかった。
 そのとき、光の刃が飛び込んできて、ジャッカル星人たちが切りつけられた。
「な、何だ!?」
 他のジャッカル星人が声を上げて、トウジたちとともに振り向く。その先に5人の男女がいた。
「何だ、何だ!?おかしなヤツらが集まってやがるな!」
 男の1人、ヤンマ・ガストがジャッカル星人たちを見て喧嘩腰になる。
「どうやらあの男たちとロボットが、その人間を襲っていて、そこの2人と巨人と怪物が人間に加勢しているようだ。」
 女性、リタ・カニスカが冷静に状況を把握する。
「多勢で敵に攻め入るのは戦国の理ではありますが・・!」
 男、カグラギ・ディボウスキもジャッカル星人たちに向かって高らかに言い放つ。
「何だ、アイツらは?オレたちに盾突くつもりか?」
「我々に逆らうならば、誰であろうと容赦しないぞ!」
 ジャッカル星人たちがカグラギをあざ笑い怒鳴る。
「そのセリフ、そっくりそのままお返しするわ。この“イシャバーナ”の女王、ヒメノ・ランに牙をむくとは・・」
 少女、ヒメノが上品に振る舞って言い返す。
「女王!?貴様ら、王と女王だとでもいうのか!?」
「その通り!オレたちは王の集まりだ!」
 ジャッカル星人が声を荒げて、青年、ギラが高らかに言い放つ。
「てめぇは王子だろうが!」
「現時点では王ではなく、邪悪の王を自称しているだけ。」
 ヤンマがギラに怒鳴って、リタも冷静に言う。
「とにかく、オレたちを相手にするお前たちには運がないということだ!」
 ギラが再びジャッカル星人たちに向かって高らかに言い放つ。
「まずは、そこにいる愚か者に裁きを下すのが先決よ。命を奪うヤツらに、その重みを思い知らせてあげるわ。」
「尻尾巻いて逃げ出すなら今のうちですぞ!」
 ヒメノが優雅に振る舞って、カグラギがジャッカル星人たちへ言い放つ。
「そいつらも始末してやるぞ!」
「邪魔をする者は、我々の敵だ!」
 ジャッカル星人たちがいきり立って、ギラたちに飛び掛かる。するとギラたちが剣「オージャカリバー」を振りかざして、ジャッカル星人を引き離す。
「王の力、お前たちに見せてやるぞ!」
“クワガタ!”
 ギラが高らかに言って、オージャカリバーにあるクワガタの角を下ろした。
「オレたちの敵に回ったこと、たっぷり後悔させてやるぞ、スカポンタヌキども!」
“トンボ!”
 ヤンマも言い放って、オージャカリバーのトンボを回した。
「私の言うことを聞かないなら、私の前から消えてもらいますわ。」
“カマキリ!”
 ヒメノも続けて言って、オージャカリバーのカマキリの鎌を下ろした。
「“ゴッカン”の国際最高裁判長、リタ・カニスカがお前たちに裁きを下す。」
“パピヨン!”
 リタも告げて、オージャカリバーの蝶の羽を押した。
「拙者もお前たちを成敗いたしますぞ!」
“ハチ!”
 カグラギも賛同して、オージャカリバーの蜂の尻を押した。
「王鎧武装!」
 彼らはその後オージャカリバーのトンボ、カマキリ、蝶、蜂、クワガタのスイッチを動かす。
“You are the king.You are the,you are the king!”
 オージャカリバーからあふれた光を浴びて、ギラたちはそれぞれの色の鎧のような服とマスクを身にまとった。
“クワガタオージャー!”
“トンボオージャー!”
“カマキリオージャー!”
“パピヨンオージャー!”
“ハチオージャー!”
 ギラ、ヤンマ、ヒメノ、リタ、カグラギがクワガタオージャー、トンボオージャー、カマキリオージャー、パピヨンオージャー、ハチオージャーに変身して、オージャカリバーを構えた。
「その姿・・君たちもスーパー戦隊だったのか・・・!」
 トウジがギラたちを見て戸惑いを覚える。
「スーパー戦隊?」
「地球や宇宙、そこに住む命、自由と平和を守るために敵と戦ってきたチームの総称だ。」
 ヤンマが疑問符を浮かべて、トウジが説明する。
「別にチームを組んでいるつもりはないのだけど・・」
「つまりは腐れ縁というヤツですか!」
 ヒメノが呆れた素振りで言い返して、カグラギが笑みをこぼす。
「ムダな話はそこまでだ。まずはあの無法者に裁きを下す。」
「ではみんな、行くぞ!」
 リタが冷静に言って、ギラが高らかに言い放つ。
「おのれ!貴様らも全員始末してやる!」
 ジャッカル星人たちが飛びかかって、ギラたちが迎え撃つ。
 ギラ、ヤンマ、カグラギが先に飛び出して、オージャカリバーでジャッカル星人たちを切りつけていく。
「男というのは血気盛んですわね。」
「そのようなものよりも、冷静であることが重要だ。」
 ヒメノがギラたちに呆れた素振りを見せて、リタが落ち着きを払って言いかける。
「女だからといって、いつまでも後ろでコソコソしてられると思ったら、大間違いだぞ!」
 他のジャッカル星人たちがヒメノたちに迫る。
「私は常に我が道を行く。邪魔をするならば容赦はしないわよ・・・!」
 ヒメノが言い返して、オージャカリバーを振りかざしてジャッカル星人たちを切りつけていく。
「引き下がらないか。ならばお前たちに、もはや酌量の余地はない。」
 リタも呟いて、続いてオージャカリバーで反撃を仕掛ける。2人にも斬られて、ジャッカル星人たちが攻撃を阻まれる。
「女が男より劣るというのは、今では差別の中でも愚かしいものだ。」
「女性の強さというものを、あなたたち自身の愚かさとともに思い知ることね。」
 リタが呟いて、ヒメノがため息混じりに言う。2人がオージャカリバーを振りかざして、ジャッカル星人たちを斬りつけて突き飛ばした。
「そろそろ終わりにするぞ、みんな!」
「おめぇが仕切んな!」
 ギラが呼びかけて、ヤンマが言い返す。彼らがオージャカリバーのトリガーを長押しする。
“オージャチャージ!”
 エネルギーを溜めたオージャカリバーのそれぞれのスイッチを3回動かしてから、ギラたちが再びトリガーを押した。
“オージャフィニーッシュ!
 ギラたちがオージャカリバーを振りかざして、光の刃を飛ばす。
「ギャアッ!」
「オレたちが、このようなヤツらにまで・・!」
 ジャッカル星人たちが光の刃を受けて、絶叫を上げて爆発した。
「すごいじゃなイカー!あっさりやっつけちゃったぞー!」
「さすがね。王様は伊達ではないってことね。」
 イカリとナクリがギラたちの活躍に感心する。
「おわあっ!」
 そのとき、インペライザーの猛攻を受けて、バルキとジョリーが吹き飛ばされてイカリたちのそばに倒れてきた。
「ちょっとアンタ、危ないじゃないの!」
「そんなこといってもアイツ、ベリーストロングなんだよー・・!」
 ナクリが文句を言って、バルキが起き上がりながら言い返す。彼とジョリーにインペライザーが迫る。
「向こうも手こずっているようですな!」
「あのようなものにウロウロされたら気が滅入るわね・・」
 カグラギが高らかに言って、ヒメノがため息混じりに言う。
「あのような無差別攻撃を繰り返す兵器は、即刻処分する。」
「さっさとスクラップにしてやるよ!」
 リタが告げて、ヤンマも言い放つ。
「来い、シュゴッド!」
 ギラが言い放って、ヤンマたちとともにオージャカリバーのクワガタの角を長く下ろす。
“シューゴーッド!”
 彼らは続けてそれぞれのスイッチを動かす。
“ゴッドクワガタ!”
“ゴッドトンボ!”
“ゴッドカマキリ!”
“ゴッドパピヨン!”
“ゴッドハチ!
 ギラたちのいる場所に5体の昆虫が現れた。昆虫型の機械生命体「シュゴッド」である。
 ギラ、ヤンマ、ヒメノ、リタ、カグラギがそれぞれシュゴッド「ゴッドクワガタ」、「ゴッドトンボ」、「ゴッドカマキリ」、「ゴッドパピヨン」、「ゴッドハチ」に乗り込んだ。
“ゴッドクモ!”
“ゴッドテントウ!”
“ゴッドアント!”
“ゴッドカブト!”
“ゴッドスコーピオン!”
 さらに5体のシュゴッド「ゴッドクモ」、「ゴッドテントウ」、「ゴッドアント」、「ゴッドカブト」、「ゴッドスコーピオン」も駆け付けてゴッドクワガタたちと合流した。
「来い、キングオージャー!」
 ギラがオージャカリバーのトリガーを長押しして、クワガタの角を下ろした。10体のシュゴッドが変形、合体して巨大ロボとなった。
“キング!キング!キングオージャー!”
 王者ロボ「キングオージャー」が誕生して、インペライザーの前に降り立った。
「オー!新しいロボが現れたかー!」
 バルキがキングオージャーを見て喜ぶ。
「あのロボットの相手は、ここからはオレたちがする!」
 ギラが言い放って、キングオージャーがインペライザーを迎え撃つ。
 インペライザーが両手と目からビームを連射する。キングオージャーはビームをものともせずに前進していく。
 キングオージャーが右手を繰り出して、インペライザーの頭部にパンチを当てる。少し後ろに押されたが、インペライザーは平然としている。
「さすがはロボット!鉄壁の鎧のごとく頑丈ですな!」
「感心してる場合じゃねぇだろ!」
 大きく頷いてみせるカグラギに、ヤンマが怒鳴る。
「次は私が仕掛けさせてもらうわ。」
 ヒメノが言って操縦して、キングオージャーが右足を振りかざす。ゴッドカマキリで構成されている右足が、インペライザーを切り付けた。
 インペライザーが光の球を発射して、キングオージャーが飛行する。光の球は軌道を変えて、キングオージャーを追跡する。
「誘導弾か。ならば切り捨てるまで。」
 リタが言いかけて、キングオージャーが右手の昆虫剣「シュゴッドソード」を振りかざして、光の球をはじき飛ばして爆発させた。
「いつまでもドンパチしてられると思うなよ、スカポンタヌキが!」
 ヤンマがインペライザーに向かって怒鳴る。
「そいつはちょっとやそっとじゃすぐに元に戻っちまうぞ!」
 バルキがギラたちに向かって助言を送る。
「だったらキングオージャーの力で、完全に消滅させてやる!」
 それを聞いて、ギラが高らかに言い放つ。
“オージャフィニーッシュ!”
 シュゴッドソードにエネルギーを集めて、キングオージャーが急降下する。インペライザーが光の球を連射するが、キングオージャーに回避される。
 キングオージャーがエネルギーを放出したオージャカリバーを振り下ろした。真っ二つに両断されたインペライザーが、光に包まれて消滅した。
「復活しない!ヤツを倒したぞ!」
「これでここはひと安心ね。」
 バルキが喜んで、ナクリが胸を撫で下ろす。
「力を貸してくれて、ありがとう、みんな・・・!」
 トウジがバルキたちとギラたちに感謝する。
「別に助けたわけではなイカ。地球でのんびり暮らすのもいいんじゃなイカ。」
 イカリが言い返して、トウジが微笑んだ。
「コイツらの親玉があっちにいるみてぇだな・・!」
「あの悪者にも退場していただこうかしらね。」
 ヤンマとヒメノがジャッカルのいるほうに目を向ける。
「敵の大将を討ち取れば、戦は終わるものです!」
「任務は迅速であるほど効率がいいものだ。」
 カグラギが高らかに言って、リタが冷静に呟く。
「そこの異国の者たちはここで待っていろ!オレたちがヤツも倒してみせる!」
 ギラがトウジたちに声をかけて、キングオージャーがジャッカルのほうへ飛行していった。
(陽輝、ナツ、ギン、イズル・・みんな、無事でいてくれ・・・!)
 連絡が取れない陽輝たちを気にかけて、トウジは本部で待つことにした。

 

 

第10章へ

 

その他の小説に戻る

 

TOPに戻る

inserted by FC2 system