ザ・グレイトバトル外伝

ウルトラマンフォース

-光の戦士の大決戦-

第1章

 

 

ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊、ガンダム。
地球や宇宙の平穏、正義と平和、それぞれの大切なものを守るために戦う存在。

宇宙や世界を隔てて、戦士たちが集結し、巨大な悪に立ち向かう。


 様々な怪獣、怪人、宇宙人の侵入や襲撃に備えて、地球防衛隊では特別チームが置かれていた。
 その名は「Gフォース」。機動兵器「モビルスーツ」を主力としていて、隊員たちもその操縦に長けた者ばかりである。
 そのGフォースの隊員、隼陽輝(はやぶさはるき)と羽鳥(はとり)ナツ。2人はモビルスーツ「フォースガンダム」と「Gパニッシャー」でパトロールに出ていた。
「こちら陽輝。現在、ポイントTZ773を飛行中。異常ありません。」
 陽輝がGフォース本部にパトロールの報告をする。
“了解。TZ774をパトロールして、本部に戻ってきて。”
 通信の相手、東出(ひがしで)イズルが答えて、陽輝は通信を終えた。
「もう少しで今日のパトロールは終ね、陽輝。」
 ナツが陽輝に向けて声を掛けてきた。
「あぁ。今日も地球は平和だ。」
 陽輝が気さくに答えて、空に目を向ける。彼は自分たちで地球を守っていると実感していた。
(オレとフォース、みんなのおかげだよ・・)
 陽輝が左腕に付けている腕輪「フォースブレス」に目を向ける。
“私も君がいなければ地球に滞在することができなかったし、Gフォースのみんながいたからこそ、我々は平和を守れている。”
 フォースブレスに宿っている人物が答えた。
 光の巨人、ウルトラマン。その人物は「惑星F4」出身のウルトラマン、フォースである。
“ありがとう、陽輝。君たちには感謝しても足りないくらいだ。”
(礼を言うのはオレのほうだよ、フォース。君がいなかったら、オレ自身が成長することができなかった。力を持つだけでなく、心も強くすることも・・)
“君も私も、互いに成長できたということか。”
(そうだね。)
 テレパシーで会話をはずませるフォースと陽輝。
「陽輝・・陽輝?」
 ナツに声を掛けられて、陽輝が我に返る。
「ボーっとしていたらダメだよ。パトロールの任務なのに・・」
「悪かった・・集中しないとな・・」
 ナツに注意されて、陽輝が気を引き締めなおす。
「ナツ、私たち以外の、この世界を守ってくれた人たちのことをどう思う?」
 ナツが陽輝に向かって質問を投げかけてきた。
「みんな、違う世界から来て、地球や宇宙を守ってくれた。私たちを信じてくれて、力を貸してくれた・・」
「あぁ・・確かにそうだな・・自分がいるのとは違う星や世界なのに、自分の故郷のように守ってくれた・・・」
 協力してくれた戦士たちのことを思い出すナツと陽輝。
 宇宙の彼方や空間を隔てた平行世界から、戦士がやってきた。それぞれ考え方や目的は違ったが、巨大な敵を前にして協力して、陽輝たちに力を貸してくれた。
 陽輝たちもフォースも彼らに強い感謝を抱いていた。
(本当にみんなに感謝している・・もちろんフォース、君にも・・)
 陽輝が再びフォースブレスに意識を傾ける。
“始めは私も君も、怪獣や宇宙人に対する憎しみを抱いていて、それに共感して意気投合した。しかし今は私たちは、憎しみに囚われることなく、心から地球や仲間を守りたいと思うようになった。”
(これも他のウルトラマンやみんなのおかげだ・・みんながいなかったら、オレたちはあのときから変わらず、地球が滅んでいたかもしれない・・)
 仲間たちと出会ってその志を知ったことで、本当の強さを身につけることができたと、フォースも陽輝も思っていた。

 陽輝たちのいる地球に向かって、複数の光が移動していた。1つの白い光を他の赤い光が追っていた。
「まさか私たちの故郷が・・・頼りにできるのは、もうフォースしかいない・・・!」
 白い光の中にいた女性が、助けを求めてスピードを上げた。彼女の姿はウルトラマンの一族に似ていた。
「あの人たちのことを知らせないと、全ての宇宙が侵略されてしまう・・・!」
 女性はフォースを求めて地球へ急ぐ。赤い光も彼女を追ってスピードを上げた。

 パトロールを続けて移動する陽輝とナツ。その最中、フォースガンダムとGパニッシャーのレーダーが地球に接近するエネルギーを捉えた。
「こちら、陽輝!地球に接近するエネルギーを捕捉!」
 陽輝がGフォース本部へ連絡をする。
“あぁ。本部のレーダーでもキャッチしている。落下予測地点は、そちら進行方向から1時の方向50キロの地点だ。”
 Gフォースの隊長、桜木(さくらぎ)トウジが答える。フォースガンダムたちのレーダーに、光の落下予測地点が表示された。
“ギンとイズルも現場に向かう。2人と合流するんだ。”
「了解!」
 トウジからの指示に答えて、陽輝は通信を終えた。
「急ぎましょう、陽輝!周辺の住民の避難をさせないと・・!」
「あぁ・・だけど地球に来るヤツに下手に手を出さないほうがいい・・対処はギンたちが来てからだ・・・!」
 ナツが呼びかけて、陽輝が注意を口にする。フォースガンダムとGパニッシャーが落下地点に向かった。

 Gフォースが判断した光の落下地点は、一部に木々が生えた荒野だった。
「この辺りは人は少ない・・早く住人を避難させるんだ・・!」
「うん・・!」
 陽輝が指示して、ナツが頷いた。
「みなさん、ここは危険です!早く避難してください!」
 Gパニッシャーが降下して、付近の人々に呼びかける。上空にきらめき始めた光を目の当たりにしてから、人々が避難する。
「来た!あれか!」
 陽輝が落下する光を見つめて、ナツも視線を戻す。白い光が地上への衝突を避けるように、横へ軌道を変えた。
「動きが変わった・・隕石ではないぞ・・!」
 陽輝が光の動きの変化に気付いて、警戒を強める。
“あの光・・もしかして・・!?”
(フォース、あれを知っているのか・・!?)
 光の正体に気付くフォースに、陽輝が疑問を投げかける。
“白い光は赤い光に追われている・・地球まで逃げてきたようだ・・!”
(フォース、何者か知っているのか・・!?)
“詳しい話は後だ。彼女を助けるのが先決だ。”
(彼女?・・あ、あぁ・・)
 フォースに言われて、陽輝が頷いた。彼は2色の光の動きを追っていく。
 白い光が地上にぶつかって、女性の巨人が姿を現した。
「ウルトラマン・・いや、女のウルトラ戦士だ・・!」
 陽輝がその巨人を見て声を上げる。
“間違いない!セレーナだ!”
 フォースがその巨人、セレーナを見て声を上げた。
(フォースの知り合い・・だったら味方なのは間違いないし、尚更助けないと・・!)
 陽輝が確信を覚えて、フォースが頷いた。
 赤い光から凶悪な宇宙人が現れて、セレーナのそばに着地した。
“あれは“ジャッカル星”の兵士・・セレーナはヤツらに追われていたのか・・!”
 フォースが宇宙人、ジャッカル星人を見て緊張をふくらませる。
「ジャッカル星・・!?」
“全宇宙の征服を企む異星人だ。1度撃退されたが、再び動き出したのか・・!”
 陽輝が声を上げて、フォースがジャッカル星人について話す。
「陽輝、このエリアの住人の避難は完了したよ。」
 Gパニッシャーがフォースガンダムに近づいて、ナツが陽輝に報告した。
「あれ、ウルトラ戦士だよね!?・・早く助けないと・・!」
「まだだ、ナツ・・ギンたちが来るまで手を出すな・・!」
 セレーナを助けようとするナツを、陽輝が呼び止める。
「でも彼女がピンチなのに、放っておくなんてできないよ・・!」
 しかしナツは思いとどまることができず、Gパニッシャーがビームライフルを手にして、セレーナを助けに向かった。
「ナツ!」
 陽輝が叫んで、フォースガンダムもビームライフルを手にする。セレーナがジャッカル星人たちから離れようとする。
「やめなさい!」
 ナツが言い放って、Gパニッシャーがビームライフルを発射した。ジャッカル星人がセレーナから離れて、ビームをかわした。
「大丈夫ですか!?」
「これが、地球の兵器?・・中に動かしている人がいる・・・」
 ナツが声を掛けて、セレーナが呟く。彼女は透視能力で、Gパニッシャーのコックピットにいるナツの姿を確認した。
「何だ、アイツは?この星のヤツか?」
「我々の邪魔をするヤツは、誰であろうと排除するまで!」
 ジャッカル星人たちがGパニッシャーも敵だと認識して、持っている槍を構える。
「その人から離れなさい!」
 ナツが言い放って、Gパニッシャーが再びビームライフルを発射する。ジャッカル星人がビームをかわすと、その1人が槍の先からビームを出してきた。
 ナツが反応して、Gパニッシャーがビームを回避する。
「ナツ、下がれ!」
 陽輝がナツに呼びかけて、フォースガンダムもビームライフルを撃つ。ジャッカル星人が槍を振りかざして、ビームをはじく。
「仲間がいたようだな・・・!」
「だが何人敵が出てこようが、排除するまでだ・・!」
 ジャッカル星人が呟いて、フォースガンダムも標的にした。
「ナツ、離れるんだ!」
「でも、あの人を放っておくわけには・・!」
 陽輝が指示するが、ナツはセレーナを気にする。
「我々の邪魔をして、逃げられると思わんことだ・・!」
 ジャッカル星人の2人がフォースガンダムたちに向かってきた。フォースガンダムがビームサーベルを手にして、ジャッカル星人が振りかざす槍を受け止める。
「私たちが食い止めている間に逃げてください!」
「あなたは・・私を助けようとして・・・」
 避難するように誘導を試みるナツに、セレーナが戸惑いを感じていく。
「逃がしはせんぞ、セレーネ王女!貴様は必ず始末してくれる!」
 ジャッカル星人の1人が2人を狙って近づいてくる。Gパニッシャーがビームライフルを構えるが、ジャッカル星人が振りかざした槍にライフルが切り裂かれた。
 ナツは焦りを感じて、Gパニッシャーがビームサーベルに持ち替える。ジャッカル星人とGパニッシャーが槍とビームサーベルをぶつけ合う。
「危ない!フルムーンシュート!」
 セレーナがとっさにエネルギーを集めた左手を前に出して、光線を発射した。ジャッカル星人が光線を受けて体勢を崩す。
「おのれ・・だが、これで我々に勝てると思うな!」
 ジャッカル星人がいら立ちを浮かべて、槍からビームを放つ。
「うわっ!」
 セレーナがビームを受けて吹き飛ばされる。
 Gパニッシャーがジャッカル星人と攻防を繰り広げる。
「いけない!ナツがやられてしまう!」
 フォースガンダムがジャッカル星人2人と交戦する中、陽輝がナツの危機に焦りを感じていく。
(フォース、行くよ!)
“分かった!”
 陽輝が呼びかけて、フォースが答える。
(フォースガンダム、オートコントロール・・!)
 陽輝はフォースガンダムを自動操縦にしてから、フォースブレスを構えた。
「フォース!」
 陽輝がフォースブレスを付けている左腕を前に伸ばした。彼が光を発しながら、フォースに変身した。
「ウ、ウルトラマン!?」
「この星にウルトラマンがいたのか!?」
 ジャッカル星人たちがフォースの出現に驚く。
「フォース!?あなたも地球にいたのね!」
 セレーナもフォースを見て声を上げた。
「セレーナ、今は逃げろ!ヤツらは私が食い止める!」
「フォース・・う、うん・・!」
 フォースに呼びかけられて、セレーナが頷いてジャッカル星人から逃げる。
「逃がすか!」
 ジャッカル星人が左手を伸ばして、光を放つ。
「キャッ!」
 セレーナが背中に光を受けて、前のめりに倒れた。その直後、彼女の胸にあった「カラータイマー」が点滅を始めた。
 ウルトラの一族の多くは、胸にカラータイマーが存在する。普段は青色だが、エネルギーが少なくなると赤く点滅して、力尽きればその輝きは消えてしまう。
「この星では、宇宙よりも体力の消耗が激しい・・・!」
 地球でのエネルギーの消費の度合いを痛感して、セレーナが焦りをふくらませる。
「セレーナ、とどめを刺してくれる!」
 ジャッカル星人がセレーナを狙って、槍を振りかぶった。
「危ない!」
 ナツが叫んで、Gパニッシャーがセレーナに近づく。ジャッカル星人が投げた槍が、セレーナを庇ったGパニッシャーの胴体に刺さった。
「キャアッ!」
 Gパニッシャーのコックピットにも衝撃が襲い、ナツが悲鳴を上げる。
「ナツ!」
 地上に落下するGパニッシャーに、陽輝が叫ぶ。
「フォーススラッシュ!」
 フォースが右手を振りかざして、光の刃を飛ばしてジャッカル星人2人をけん制する。フォースがセレーナとともにGパニッシャーに近づく。
「ナツ、しっかりしろ!ナツ!」
 陽輝が呼びかけるが、Gパニッシャーから反応がない。フォースたちに向かって、ジャッカル星人たちが槍を構えて向かってきた。
「陽輝、星人を倒してナツ隊員を助けるぞ!」
「あ、あぁ!」
 フォースが呼びかけて、陽輝が答える。フォースが両手を握って、左胸の前で交差するように腕を組む。
「フォースチャージシュート!」
 フォースが両手を伸ばして右腕を縦、左腕を横にして再び両腕を組んだ。その右腕から光線を発射した。ジャッカル星人たちが槍からビームを出すが、光線に押し切られて直撃された。
「ぐあぁっ!」
 ジャッカル星人たちが大きなダメージを負って、倒れて爆発した。
「ナツを助けないと・・!」
 ナツのことで頭がいっぱいの陽輝。彼はフォースへの変身を解いて、Gパニッシャーのハッチに駆け付ける。
「ハッチは開けられる・・早く開けないと・・!」
 陽輝がGパニッシャーのコックピットのハッチを開いた。機体の損傷がコックピットにも及んでいて、ナツが動かなくなっていた。
「ナツ・・・!」
 陽輝がナツを外に出して、体の状態と脈を確かめる。
「早く病院か本部の医務室に連れていかないと、かなり危険だ・・・!」
“いや、間に合わない・・すぐに治療をしないと、助からない・・・!”
 陽輝がナツをフォースガンダムで運ぼうとして、フォースが彼女の危機を察知する。
「待って、2人とも・・私が彼女の力になるわ・・・!」
 するとセレーナが陽輝たちに声を掛けてきた。
“セレーナ、何を・・!?”
「フォース、あなたがその人と合体しているように、私が彼女の中に入るわ。」
 声を荒げるフォースに、セレーナがナツと一体化することを申し出てきた。
「彼女は私を守るために傷ついてしまった・・次は、私が彼女を助ける番・・・!」
“セレーネ・・・!”
「このままじゃ彼女は助からないし、私も地球にいられない・・1つになっても、彼女の人格は彼女のもの。彼とフォースの関係と同じよ・・」
“君はナツ隊員を助けるために、自分を・・”
 セレーナの決心を聞いて、フォースが戸惑いを感じていく。
「では行くよ・・・!」
 セレーナが両手を広げて、全身から光を発する。光となった彼女がナツの体の中に入った。
 セレーナの入ったナツの体から傷が消えた。彼女が意識を取り戻して目を開けた。
「ナツ・・大丈夫なのか・・・!?」
「あ、あれ?・・私、あの宇宙人に攻撃されて・・・」
 陽輝が心配して、ナツが自分に起こったことを思い出す。
「えっ!?Gパニッシャー!?・・機体はひどい傷なのに・・私は、何ともなかった・・・」
 ナツがGパニッシャーの損傷を見て驚いて、自分の体に異変がないことにも驚く。
「助かったにしても、少しおかしい・・何がどうなっているの・・・!?」
「いや・・とにかく、助かってよかった・・・!」
 問いかけるナツに、陽輝が喜んで胸を撫で下ろした。
 そこへ2機のGパニッシャーが飛行してきて、陽輝たちの近くに着地した。
「陽輝、ナツ、大丈夫か!?」
 Gパニッシャーの1機からGフォースの隊員、川西(かわにし)ギンが降りてきた。
「ギン・・あぁ、オレたちは何とか無事だ・・」
 陽輝が振り向いて、ギンに答えた。
「ちょっと!ナツのGパニッシャーが・・!」
 もう1機のGパニッシャーに乗っていたイズルが、ナツのGパニッシャーを見て驚く。
「ナツ、ホントに大丈夫なのかよ!?」
「うん・・特に痛いところはないけど・・・」
 ギンが心配して、ナツが苦笑いを見せる。
「でも本部に戻って、検査を受けないと・・感じてないけどどこに異変があるか分からないから・・」
「えぇ・・私を本部まで連れてって。私のGパニッシャーは動かないから・・」
 イズルが気を遣って、ナツが答えてGパニッシャーに目を向けた。
「陽輝、フォースガンダムに乗せて。」
「あぁ。分かった・・」
 ナツが頼んで、陽輝が頷いた。2人はフォースガンダムへと乗り込んだ。
「おいおい・・うらやましいなぁ、陽輝のヤツ・・・!」
「本部に連絡してから、僕たちも戻ろう。Gパニッシャーは後で回収だ。」
 ギンが落ち込んで、イズルが本部に現状を報告した。彼らは連絡の後に帰還して、ナツのGパニッシャーは別動隊が回収した。

 本部に戻った後、ナツは検査を受けた。体の内外ともに傷や異常は見られず、彼女は陽輝たちのところに戻ってきた。
「ナツ、大丈夫なのか・・!?」
「えぇ。検査でも異常は出なかったよ。」
 ギンが問いかけて、ナツが答えた。
「Gパニッシャーの負傷は激しかった・・にもかかわらず君には何の異常もなかった・・助かったことは喜ばしいが、これはもはや奇跡と呼べる生還だ・・」
「私も不思議に感じていますね、そこは・・」
 トウジも疑問を感じて、ナツが苦笑いを浮かべて答える。
「別条がなかったとはいえ、命の危険にさらされたのは事実だ。ナツ、今日は休息をとるんだ。次の任務に向けて体を休めておくんだ。」
「隊長・・分かりました。ご心配をおかけして、すみませんでした・・」
 トウジからの言葉を聞いて、ナツが頭を下げた。
「ナツさん、何かあったら連絡するから、ゆっくり休んで。」
「ありがとう、みんな。そうするね・・」
 イズルも気遣いを見せて、ナツはお礼を言って作戦室を後にした。
「オレたちはパトロールの強化だな。そうですよね、隊長?」
 ギンが気を引き締めて、トウジに聞く。
「そうだ。新たに宇宙人が地球に現れた。ウルトラマンフォースが戦ったということは、凶悪な宇宙人である可能性が高い。」
 トウジがジャッカル星人について冷静に分析する。
「同型の宇宙人が3人。他に仲間がいないとは限らない。」
「その大勢を束ねる司令官もいるかもしれません・・」
 彼に続いてイズルも推測する。
「またとんでもない敵が地球に来るのかよ・・・!」
「大勢で来られたら、いくらウルトラマンでも手に負えない。僕たちが敵を倒すぐらいの気持ちでいないと・・」
 ギンが毒づいて、イズルが自分たちで戦う決意をする。
(フォース、このままあの宇宙人とその仲間と戦ってもいいのか?さっきはセレーナを助けるために戦ったけど、何か事情を抱えていることはないのか?)
 陽輝が心の中でフォースに問いかけた。
“陽輝が心配するような事情を、おそらく持ち合わせてはいない。あのジャッカル星人と、ヤツらを束ねているジャッカルは、全宇宙の征服を企んだ宇宙人軍団だ。私の故郷、惑星F4も襲撃を受けたことがある。”
 フォースがジャッカル星人について語っていく。
“ジャッカル星人の軍勢は野望を果たす前に撃退、追放された。ヤツらを倒したのが誰だか分からないが、おそらくウルトラ戦士だったと、今は思う・・”
(そのジャッカル星人が再び侵略を開始して、セレーナも襲ったというのか・・)
 フォースが話を続けて、陽輝が納得した。
「陽輝・・おい、陽輝!」
 ギンに呼ばれて、陽輝が我に返る。
「どうしたんだよ、陽輝?お前もどこかケガしたのか?」
「いや、平気だ。ちょっと考え事をしていただけだ。」
 ため息混じりに言うギンに、陽輝が微笑んで答えた。
「そうか・・パトロールや任務のときは、ボーっとしないでくれよな。」
 ギンが呆れながら、陽輝に注意を言った。
「陽輝、ギン、イズル、各機体に登場してパトロールだ。フォースガンダムの整備を済ませて発進する。」
「了解。」
 トウジが指示を出して、陽輝たちが答えた。3人は機体のある格納庫へ向かった。

 自分の私室に戻ったナツ。彼女はベッドに腰を下ろして、自分の胸に手を当てた。
(検査では何ともなかったけど・・本当に私、どうしてしまったのかな・・・?)
 自分が普通でなくなったと思って、ナツが不安を感じていく。
“それは私と一心同体になっているからよ。”
 彼女の頭に中に、セレーナの声が響いてきた。
「えっ!?誰!?」
 ナツが驚いて周りを見回すが、部屋に自分しかいないことに動揺する。
「幻聴?・・やっぱり疲れているみたいね・・」
“聞き間違いではないわ。私はあなたの中にいるのよ。”
 肩を落としたところで、ナツは再びセレーナの声を聞いた。
「えっ!?私の中!?あなたは誰なの!?」
“まずは落ち着いて。心の中で念じるだけで、私と話ができるから・・”
 動揺をふくらませるナツを、セレーナが落ち着かせる。
(この声・・もしかして、あのウルトラ戦士・・・!?)
“そうよ。あなたを助けたくて、私はあなたと1つになったのよ。”
 ナツが気付いて、セレーナが説明をする。
(だから私は死にそうになっていたのに、何事もなかったかのように助かったんですね・・)
 自分が無事だった理由が分かり、ナツが安心する。
(でも、あなたと合体しているというのは、私は私じゃなかったり、人間じゃなくなったりするの・・・?)
“そんなことはない。あなたの心はあなたのものだし、この“セレーナリング”で変身しない限り、あなたは普通の人間と変わらないわ。ただ、私はあのとき力を送ってあなたを回復させただけ・・”
 不安を覚えるナツに、セレーナが説明をする。
(変身って・・私があなたになるってこと・・?)
“そう。でもそうするかどうかはあなた次第だよ。”
 戸惑いをふくらませていくナツに、セレーナが答えていく。
(私がこのまま変身しなかったら、あなたは・・)
“そのときはそのときだよ。もちろん、私に出て行ってほしいと思うならそうするけど・・”
(そんな薄情なことはしないわ・・でも、詳しく話を聞かせてもらえないかな?)
“そうね。こうして1つになった以上、私のことを言わないわけにいかないわね・・”
 ナツが頼んで、セレーナが自分のことを打ち明けることにした。
“私は故郷、フワンは地球にとっての月のような星だった。でもジャッカル星人に襲われて、私は逃げてきたの・・”
(あの宇宙人に!?・・その逃げた先がこの地球だったんだね・・)
“うん。フォースは私の幼馴染みなの。この地球にいたのには驚いたよ・・”
(ウルトラマンフォースとも知り合いだったの・・!?)
 セレーナと話をして、ナツが驚きを感じていく。
“フォースは惑星F4に住んでいたのよ。でもF4は滅ぼされて、フォースも行方が分からなくなった・・”
(フォースにそんな過去が・・その後にフォースは地球に来て、地球を守っている・・)
“そうみたいね。あたたかい星だね。環境だけじゃなく、地球人の心も・・”
(あなたにもそう思ってもらえて嬉しいわ・・)
 地球に好感を持つセレーナに、ナツが喜ぶ。
“でも私は元の姿では地球に長くいることができない。体力が早く消耗してしまう・・”
(あなたが私の中に入ったのは、私を助けるためだけでなく、あなた自身を守るためでもあったと・・)
“そのことは悪いと思っているわ・・ごめんなさい・・”
(ううん。それは気にしていないわ。助かったのはお互い様ということで。)
 謝るセレーナに、ナツが微笑んで答えた。
(それでセレーナ、あなたを追ってきた・・ジャッカル星人は何者なの?)
“全宇宙を支配しようとしている宇宙人軍団よ。フワンだけじゃなく、他の星も襲われているわ・・”
(そんな悪い宇宙人が、地球に迫ろうとしている・・・!)
“私を追っていたジャッカル星人は、その大軍団の中のひと握り。フォースも地球にいると知ったら、大群を地球に送り込んでくるかもしれない・・!”
 ナツがジャッカル星人のことを聞いて、セレーナが答えて緊張をふくらませていく。
(私たちが地球を守るし、フォースとも協力したいと思っている。)
“ありがとう、ナツ・・私たちのために・・”
 決意を伝えるナツに、セレーナが喜んだ。
“変身するときはセレーナリングを空に掲げて。”
(分かった。危なくなったら頼りにするよ。)
 セレーナの言葉を聞き入れて、ナツが頷いた。
「隊長の言う通り、今は体を休めておかないと・・」
 ナツは気を落ち着けて、休息に専念するのだった。

 フォースガンダムの整備が完了して、陽輝は再びパトロールに出た。ギンとイズルもGパニッシャーで同行していた。
「やれやれ・・またまたとんでもないことが起こりそうだな・・」
「最悪の事態にならないように、僕たちが地球を守らなくちゃ・・」
 ギンがため息をついて、イズルが注意を口にする。
「まずは3人の宇宙人が現れた地点の周辺をパトロールだよ。」
「分かった。」
「おう!」
 イズルが声を掛けて、陽輝とギンが答えた。フォースガンダムとGパニッシャーが移動していく。
“さっきのジャッカル星人は、ジャッカル星の軍団のほんの一部だ。私とセレーナがいると聞いて、主力が攻めてくるかもしれない。”
 フォースが陽輝に警告をする。
(セレーナは・・ナツは大丈夫なのか・・?)
“あぁ。私と君のように戦うということがなければ、2人に危険が及ぶことはない。だが2人も戦うだろう。”
(ナツもGフォースの隊員だからな・・)
“セレーナも誰かのために力になろうとするから・・お互いに恩を感じているから、なおさら力を貸そうとするだろう。”
 陽輝もフォースもナツとセレーナがジャッカル星人と戦うことを予感する。
(オレたちがサポートするしかないな・・)
“私はもちろんそのつもりだ。”
 ナツとセレーナのために、地球のために戦う決意を、陽輝とフォースは心に宿した。

 

 

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