ザ・グレイトバトル
-トゥルースピリッツ-
第7章
2人の闇のウルトラマンの暗黒の力に囚われたジードを、ガイも目の当たりにして緊張を感じていた。
「ジードの体力を消耗させて、体も心も消耗させたところで、闇の力を注いで暴走させる・・それがアイツらの狙いだったのか・・!」
ゼロダークネスの企みに気付いて、ガイが毒づく。
ジードはデスティニーたちを狙って、黒い光線を発射していく。光線を高速で回避していくデスティニーとジャッジだが、シンもブラッドもジードに反撃しようとしない。
「攻撃をよけながら呼びかけているな・・オレも行って、止めるしかない・・!」
意を決したガイが、オーブリングとウルトラフュージョンカードを取り出した。
「ウルトラマンさん!」
“ウルトラマン!”
「ティガさん!」
“ウルトラマンティガ!”
ガイがオーブリングで「ウルトラマンカード」と「ティガカード」をリードさせる。
「光の力、お借りします!」
“フュージョンアップ!”
彼がオーブリングを高らかに掲げる。
“ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオン!”
ガイがオーブ・スペシウムゼペリオンに変身して、ジードの前に飛び上がった。
「やめろ、リク!こんな闇に振り回されるヤツじゃないはずだ!」
ガイがリクに向かって呼びかける。しかし暴走しているジードが、オーブにも襲い掛かってきた。
「ぐあっ!」
オーブがジードに肩をつかまれて押し込まれて、ガイがうめく。
「オーブ!」
シンが叫んで、デスティニーがオーブとジードを追いかける。
「やめろ、リク!」
シンが目つきを鋭くして、デスティニーがビーム砲を放って、ジードの背中に命中させる。ジードがオーブを放して、デスティニーに目を向ける。
「力ずくで闇の力を追い出すしかないの、リク・・・!」
自我を取り戻さないリクに、シンが苦悩を感じていく。
「闇の力を追い出す・・それならオレにやらせてくれ!」
ガイが思い立って、シンに向かって呼びかけてきた。
「闇の力を追い払うのは、ウルトラマンの持つ光!」
ガイが1枚のウルトラフュージョンカードを取り出した。カードに描かれているのは、オーブ本来の姿。
“覚醒せよ、オーブオリジン!”
ガイがウルトラフュージョンカードをオーブリングでリードする。彼が剣「オーブカリバー」を手にする。
「オーブカリバー!」
ガイがオーブカリバーの柄にあるリングを回して、トリガーを引く。オーブの姿が新たなる姿へと変わった。
オーブ本来の姿「オーブオリジン」である。
「オレの名はオーブ!銀河の光が、我を呼ぶ!」
オーブが名乗りを上げて、ジードの前に来てオーブカリバーを構える。
「リク、お前の魂、オレが救い出す!だからお前も諦めるな!」
ガイが呼びかけて、オーブがジードに向かっていく。ジードが伸ばしてきた右手を、オーブがすれ違いざまに手ではじく。
「今までのリクの戦い方じゃない・・闇の力に囚われて暴走している・・!」
ジードの状態を確かめて、ガイが言いかける。ジードが再び腕を十字に組んで光線を出して、オーブがオーブカリバーを振りかざして光線をはじいた。
「リク、お前にはベリアルの力を体に持っている!しかしそれさえも正しいことに使うことができる強い心も、お前は持っている!」
ガイがリクに向かって呼びかける。
「気をしっかり持て、リク!お前は強いし、お前を支える仲間はたくさんいる!オレやゼロさん、シンさんたちも!」
ガイがさらに呼びかけて、オーブがオーブカリバーを構える。
「ムダだ。闇の力とジードの中のベリアルの力は完全に同調している。ただひたすら破壊の限りを尽くすだけだ。」
ゼロダークネスがさらにあざ笑い、ジードが自分に宿る闇の力を強めていく。
「そしてオレも加勢すれば、お前たちの勝機は微塵もなくなる。」
ゼロダークネスがオーブたちを狙って動き出す。
「そいつはオレたちが食い止める!」
「ガイはリクの心を取り戻してくれ!」
ブラッドとシンがガイに呼びかけて、ジャッジとデスティニーがゼロダークネスに立ちはだかる。
「そんなに死に急ぎたいなら、望みどおりにしてやるよ。」
ゼロダークネスがデスティニーたちを狙って、黒い光の球を連射する。
「シンさん!ブラッドさん!」
ガイがシンたちに向かって呼びかける。そのとき、ジードがオーブを狙って光線を放とうと、腕にエネルギーを集めた。
「しまった!」
不意を突かれたガイが声を上げる。オーブが身構える前に、ジードの光線が放たれようとしていた。
“バトルナイザー・モンスロード!”
そこへ1匹の鳥が飛んできて、嘴から火の球を出してきた。火の球が肩に当たって、ジードが怯んだ。
「あれは、原始怪鳥リトラ!・・オレを助けてくれたのか・・!」
ガイがリトラを見て声を上げる。振り向くオーブのそばに来たリトラの背中には、1人の青年がいた。
「別の宇宙に来たと思ったら、知らないものであふれかえっているな・・!」
青年が周りを見て呟く。
「そのリトラは、お前の仲間なのか・・!?」
「あぁ。オレの名はレイ。地球のレイオニクスだ。」
ガイが問いかけて青年、レイが答える。
「レイオニクス・・レイブラッド星人の遺伝子を持った怪獣使いのことか・・!」
ガイがレイオニクスについて思い返す。
かつて全宇宙を支配しようとしたレイブラッド星人。その遺伝子を持った各惑星の宇宙人がレイオニクスである。
レイはレイオニクスの1人である。そしてベリアルもレイブラッド星人の力を注がれたことで、闇のウルトラマンへと変貌したのだった。
「オレもあのウルトラマンを支配している闇の力を感じている・・オレたちで止めないと・・!」
「いや、アイツ、ジードは闇の力に囚われているだけだ・・闇を取り払えば元に戻せる・・!」
言いかけるレイにガイが呼びかける。
「オレたちも協力させてくれ!あのウルトラマンを、オレたちの救い出す!」
「すまない、レイ!行くぞ、リトラ!」
呼びかけるレイに、ガイが答える。
「オレの仲間はリトラだけじゃない・・!」
レイが言いかけて、1つのアイテムを手にした。仲間の怪獣を呼び出す「バトルナイザー」が進化した「ネオバトルナイザー」である。
“バトルナイザー・モンスロード!”
レイのバトルナイザーからもう1体の怪獣が現れた。古代怪獣ゴモラである。
空中に出現したゴモラは、落下しながらジードに飛びついて、そのまま地上に着地した。
「行け、ゴモラ!ジードの動きを止めろ!」
レイが指示を出して、ゴモラが雄叫びを上げてからジードに向かっていく。
ゴモラがジードと組み付いて、力比べに持ち込む。ゴモラがジードをだんだんと押し込んでいく。
ゴモラ。学名、ゴモラザウルス。強い怪力の持ち主で、その力がもたらす突進と尻尾が武器である。
しかし闇の力が高まっているジードに、ゴモラが体を持ち上げて投げ飛ばされる。
「ゴモラ!」
倒れるゴモラにレイが呼びかける。
「立て、ゴモラ!」
レイからの声を聞いて、ゴモラが立ち上がる。
「ゴモラをも超えるパワー・・本気にならないと止めることはできないか・・!」
レイが今のジードの力を確かめて、ゴモラに意識を傾けた。
「ゴモラ、超震動波だ!」
レイが呼びかけて、ゴモラが頭の角からエネルギーを放出した。エネルギーがジードにぶつかって押さえつけていく。
ゴモラは地中を掘り進むときに頭からの震動波を使うが、戦うときの武器としても使える。
レイのゴモラの超震動波は強力だったが、ジードは踏みとどまって前進しようとする。
「このままでは押し切られる・・!」
ガイが思い立って、オーブがオーブカリバーを構える。
「オーブウィンドカリバー!」
オーブがオーブカリバーを振りかざして、緑の風を放つ。緑の風はジードを取り巻いて持ち上げて、動きを封じ込めた。
「オーブウォーターカリバー!」
オーブが続けてオーブカリバーから青い水流を放つ。水流はジードを包み込んで、その身に宿る闇の力を浄化していく。
「ムダだ。今のジードの闇を追い払うことも弱めることもできない。」
ゼロダークネスがオーブとゴモラを見てあざ笑う。
「ジードの、リクのことを甘く見るな!」
シンが言い返して、デスティニーがゼロダークネスに向かっていく。
「戦わなかったり、イヤなものの言いなりになったりすることは弱さだ・・その弱さ自体を悪いとは言わない・・悪いのは諦めたり、その弱さから目を背けたりすることだ!」
「リクは諦めてはいない!己の大切なもののために戦い続けているんだ!」
シンに続いてブラッドもリクへの信頼を口にする。
「往生際の悪いことだ・・そろそろ木端微塵にしてやるぞ。」
ゼロダークネスがデスティニーたちを葬ろうと、両手に黒いエネルギーを集めていく。
「ダイナー!」
「コスモース!」
そのとき、2人の巨人が駆けつけてきた。1人はパンチを、もう1人は光を宿した平手をゼロダークネスの体に叩き込んだ。
「ぐっ!」
ゼロダークネスが集めていた力を分散されて押される。2人の巨人がデスティニー、ジャッジのところまで下がる。
「久しぶりだな、シン。お前もこの世界に来ていたか。」
「その通りだ、アスカ。お前も旅を続けて、ここまで来ていたのか。」
1人の巨人、ウルトラマンダイナがシンと声をかけ合う。
アスカ・シン。ウルトラマンの力を手にした青年で、宇宙生命体「スフィア」を始めとする数々の脅威から地球や宇宙を守ってきた。様々な宇宙を渡り歩いている彼と、シンは面識があった。
「あのウルトラマン、闇の力と光の力が混在している・・!」
もう1人の青い体のウルトラマン、コスモスがジードを見て言いかける。
春野ムサシ。怪獣や動物たちの保護に尽力している青年。慈愛の勇者、コスモスと一体化して、地球や宇宙の脅威となっていた生命体「カオスヘッダー」との共存をも果たしたムサシは、別の宇宙で起こった脅威にも立ち向かっていた。
アスカとムサシは今回新たに起こった事件から全宇宙の危機を察知して、この宇宙に駆けつけたのだった。
「ウルトラマンジード。ウルトラマンベリアルの遺伝子を持ったウルトラマンだが、地球や宇宙を守るために戦っている。」
「今、オーブたちがジードを、リクを助けようとしている!だからアイツに邪魔されるわけにはいかないんだ!」
ブラッドとシンがダイナたちに状況を話す。
「分かった。オレも協力させてくれ。」
「ゼロの偽者は、オレが相手になってやる・・!」
コスモスとダイナが呼びかけて、それぞれジードとゼロダークネスに目を向ける。
「お前たちではジードを止めることはできない。お前たち全員、地獄に落ちることになる。」
「それはどうかな?・・ゼロダークネス、オレが相手だ・・!」
あざ笑うゼロダークネスに、ダイナが言いかけて向かっていく。
「オーブ、オレとコスモスも力を注いで、ジードの心を取り戻す!」
コスモスが呼びかけて、両手に光を集めていく。
「フルムーンレクト。」
コスモスが右手を出して、光を放出する。光は身動きの取れないジードに注がれて、彼から闇を追い出していく。
コスモスの放った光は破壊の力ではなく、浄化と鎮静化の力を宿していた。彼の光はオーブの光と合わさって、ジードから闇を追い払おうとしていた。
「目を覚ませ、リク!オレたちもみんなも、お前のことを待っているんだぞ!」
ガイが呼びかけて、オーブがオーブカリバーを構える。
「ガイさん・・・みんな・・・!」
闇に囚われているジードから、リクの声が弱々しく発せられる。眠っていたリクの心が目を覚ました。
「バカな!?・・闇の力に抗っているだと・・!?」
ゼロダークネスがジードの様子を見て驚く。
「僕は、こんなことでくじけている場合じゃない・・このままジーッとしてでも・・ドーにもならない!」
心を研ぎ澄ましたリクが叫ぶ。ジード自身もエネルギーを集中させて、体から闇を追い払う。
「僕はベリアルの息子じゃない!朝倉リク、ウルトラマンジードだ!」
リクが言い放って、ジードが力を振り絞って闇を追い出した。彼の力を受けた闇の霧がかき消えた。
「闇のウルトラマンの闇に打ち勝ったというのか!?」
自我を取り戻したジードに、ゼロダークネスが驚く。
「闇に打ち勝ったのは間違いなくリクの強さだ!だけどそれはリクだけの強さじゃない!」
オーブやコスモスの力、アイツを支えるたくさんの思いがもたらした結果だ・・!」
シンとブラッドがゼロダークネスに向かって言い放つ。
「これがウルトラマンの、人間の強さだ!姿や能力を真似ても、ホントの強さまでは簡単に真似られるものじゃない!」
ダイナも言い放って、右腕を振りかざして光の刃を放つ。ゼロダークネスが横に動いて刃をかわす。
「お前たちは、オレたちの、本物の強さを思い通りにすることはできない!」
シンが言い放って、デスティニーがビームソードを構えた。
「この絆の力で、お前たちの企みを打ち砕く!」
リクが言い放って、ジードがオーブたちをともに構えを取った。
ルナマリアたちが駆るインパルスたちがガンダムヘッドを引き付けて、ドモンのゴッドガンダムがデビルガンダム本体に向かって飛び込んでいた。
「これで終わりにしてやるぞ、デビルガンダム、中にいる宇宙人・・この悲劇、オレの手で終わらせてやる!」
ドモンが言い放って、全身に力を込める。彼の体とゴッドガンダムが金色に輝く。
ゴッドガンダムがエネルギーを解放した「ハイパーモード」が発動した。
「石破天驚拳!」
ゴッドガンダムが両手にエネルギーを集中させて、強力な炎の球を放つ。炎の球がデビルガンダムのコックピットに直撃して、中にいたサロメ星人共々吹き飛ばした。
デビルガンダムとガンダムヘッドが絶叫を上げて倒れて、大爆発を起こした。
「やった!デビルガンダムをやっつけたよ!」
ハルがデビルガンダムの最期を見て、声を上げる。
「あんな怪物みたいなガンダムもいるなんて・・たくさんの世界があるから、あり得ない話じゃないけど・・!」
多次元世界の現実離れした事態を改めて痛感して、ルナマリアが呟きかける。
「オレたちはオーブたちと合流して、ゼロダークネスを叩く。」
ヒイロが言いかけて、ルナマリアたちとともに視線をゼロダークネスに向ける。
「あれは、ダイナとコスモス!2人もこっちに来てたんだな!」
ガロードがダイナたちを見て笑みをこぼす。
「あの2人も、別の世界から来たウルトラマンか。」
「敵を倒すだけじゃない・・心も敵も救うウルトラマンもいるんだね・・」
ヒイロとソラがダイナとコスモスを見て呟く。
「ジードとオーブもいる!オレたちも行くぞ!」
ドモンが声を上げて、ルナマリアたちが頷く。インパルスたちもジードたちのところへ向かった。
ライオトルーパーたちとの攻防を続けるノゾムたち。しかしノゾムたちはだんだんと体力を消耗していた。
「このままじゃ体力が尽きてやられちまうぞ・・!」
龍我が焦りを感じて毒づく。彼と戦兎に向かって、スカルライダーたちがジャンプキックを繰り出してきた。
「ぐあっ!」
2人がキックを受けて突き飛ばされて、激しく地面を転がる。ダメージを受けた戦兎と龍我がビルド、クローズへの変身が解かれた。
「戦兎!」
「龍我くん!」
ソウマとRXが呼びかけるが、ライオトルーパーたちに行く手を阻まれて、戦兎たちの援護に行けない。
「くっ・・このままぶっ倒れるわけにいかねぇのに・・!」
龍我が力を振り絞って、戦兎とともに立ち上がる。
そのとき、戦兎と龍我が息づまる気配を感じて、緊張を覚える。2人が振り返った先にいたのは、それぞれ黒、紫、金色の装甲をした3人の仮面ライダー。
「あれはリュウガ、王蛇、オーディン・・“ミラーワールド”の仮面ライダーも・・!」
ウラタロスがリュウガたちを見て声を上げる。
「早う行かな、2人ともやられてまうで!」
「でも僕たちも手が離せないよー!もー!コイツら、キリがないよ!」
呼びかけるキンタロスと、不満の声を上げるリュウタロス。彼らもメイジたちに取り囲まれて、その相手で手一杯になっていた。
「この3人、とんでもない力を備えているみたいだ・・!」
「だったら、それ以上の力でブッ倒せばいいだけのことだ!」
戦兎がリュウガたちに危機感を感じる中、龍我が新たなベルト「スクラッシュドライバー」とパウチ型アイテム「ドラゴンスクラッシュゼリー」を取り出した。
「お前はこのままスパークリングでやれよ!切り込み隊長はオレがやってやる!」
「・・いや、ここは“ハザードトリガー”を使う・・・!」
前に出る龍我に戦兎が言いかける。彼がアイテム「ハザードトリガー」を手にした。
「戦兎、大丈夫なのか、ハザードトリガーを使って・・!」
「そうしないと、アイツらを止められない・・いざとなったら、お前がオレを止めてくれ・・!」
声を荒げる龍我に戦兎が呼びかける。戦兎は覚悟を決めて、龍我もそれを理解していた。
「それしかなさそうか・・けど、まずはオレから行かせてもらうぞ!」
龍我が戦兎の言葉を聞き入れてから、スクラッシュドライバーを身に着けた。
“ドラゴンゼリー!”
彼がドラゴンスクラッシュゼリーをスクラッシュドライバーにセットした。
「変身!」
スクラッシュドライバーの右にあるレンチを倒した。セットされているドラゴンスクラッシュゼリーが押しつぶされて、中の成分がスクラッシュドライバーに送られる。
“つぶれる!流れる!あふれ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブウルァァァ!!!”
ドラゴンスクラッシュゼリーの成分を身にまとって、龍我が新たな戦士「クローズチャージ」に変身した。
「よし!おめぇらの相手はオレだ!」
龍我が意気込みを見せて、リュウガたちに向かっていく。龍我が繰り出すパンチを、リュウガが回避と防御でかいくぐる。
その龍我の後ろに王蛇が立ちはだかった。
「ぐあっ!」
王蛇に背中を蹴られて、龍我が突き飛ばされる。王蛇が杖「ベノバイザー」を手にして、カード「アドベントカード」をセットした。
“Sword vent.”
王蛇が剣「ベノサーベル」を手にして、龍我目がけて振りかざす。龍我が回避を取ろうとするが、かわし切れずにクローズチャージの装甲が切りつけられて火花が散る。
「万丈!」
しりもちをついた龍我に、戦兎が声を上げる。龍我を助けようとした戦兎の前に、オーディンが立ちはだかる。
「オレも、やるしかないようだな・・!」
戦兎が覚悟を見せて、アイテム「ハザードトリガー」を手にした。
“ラビット!タンク!ベストマッチ!”
まずラビットフルボトルとタンクフルボトルを、ビルドドライバーにセットする戦兎。
“ハザードオン。”
彼は続けてハザードトリガーを起動して、ビルドドライバーにセットした。
“スーパーベストマッチ!”
“ドンテンカン・ドンテンカン!・・”
戦兎がビルドドライバーのレバーを回転させる。
“ガタガタゴットン!ズッタンズッタン!”
“Are you ready?”
彼の前後に黒い枠と装甲が現れた。
(万丈、頼りにさせてもらうぞ・・!)
「変身!」
“アンコントロールスイッチ・ブラックハザード!ヤベーイ!”
心の中で龍我のことを考えて、戦兎が装甲を身にまとう。彼はビルドの漆黒の姿「ハザードフォーム」となった。
「時間がない・・一気に決めさせてもらうぞ!」
戦兎が言い放って、オーディンに向かっていく。戦兎が繰り出すパンチを手で受け止めようとしたオーディンだが、戦兎のパワーに押される。
戦兎が勢いに乗って攻め立てるが、オーディンは瞬間移動を使って彼のパンチをかわした。
「瞬間移動!?・・そんな技を使ってくるのか・・!」
戦兎が振り返って続けて回し蹴りを繰り出すが、またもオーディンに瞬間移動でかわす。
「移動先を狙うしかない・・!」
戦兎が打開の策を練り上げて、武器「ドリルクラッシャー」を手にして「ガンモード」にした。彼がドリルクラッシャーを発砲して、オーディンが瞬間移動でかわす。
「そこだ!」
戦兎がとっさにドリルクラッシャーを「ブレードモード」に戻して、再出現したオーディンに向かって振りかざす。ドリルクラッシャーが命中して、オーディンが少し押される。
“Ready go!ボルテックブレイク!”
戦兎がラビットフルボトルをドリルクラッシャーに移す。オーディンが杖「ゴルドバイザー」を手にして、アドベントカードをセットした。
“Advent.
オーディンの前に不死鳥「ゴルドフェニックス」が現れて、戦兎が振りかざしたドリルクラッシャーを受け止めた。
「何っ!?おわっ!」
驚きの声を上げる戦兎が、ゴルドフェニックスがはばたく翼からの炎と風に吹き飛ばされる。
「不死鳥ってヤツか・・非科学的なものばかり出てくるな・・!」
戦兎がオーディンの力とゴルドフェニックスに対して毒づく。彼はすぐに立ち上がって、オーディンたちへの攻撃を続ける。
そのとき、戦兎が頭に刺激を感じて動きを止めた。
「しまった・・脳が・・・!」
戦兎が頭痛を覚えてふらつく。脳に稲妻のような衝撃が走って、彼が腕をだらりと下げた。
「せ、戦兎!?」
戦兎の異変にソウマが驚く。
「やべぇ!暴走が始まっちまう!」
龍我が危機感を覚えて、戦兎のところへ向かおうとする。しかしリュウガと王蛇に行く手を阻まれる。
「おい!誰か戦兎を止めろ!暴走が始まって、見境なしに襲い掛かってくるぞ!」
「何っ!?」
龍我が呼びかけて、巧が声を上げる。ビルドの仮面の複眼に不気味な輝きが宿る。
オーディンの思念を受けて、ゴルドフェニックスが炎と風を放つ。次の瞬間、戦兎が素早く動いて炎と風をかわして、オーディンに一気に詰め寄った。
戦兎がオーディンの腕をつかんで、体に膝蹴りを叩き込む。戦兎はさらにパンチを叩き込んで、オーディンを突き飛ばす。
続けて戦兎がドリルクラッシャーをガンモードにして発砲する。しかし射撃はオーディンやライオトルーパーたちだけでなく、モモタロスにも飛んできた。
「おわっ!おいっ!こっちは味方だ!」
文句を言うモモタロスだが、戦兎は敵味方の区別なく攻撃を続ける。
ハザードフォームは強大な力を発揮できるが、神経に大きな負担がかかる。変身時間が長引くと理性を失い、見境なしに攻撃を仕掛ける暴走状態になってしまう。
「くそっ!このままじゃ取り返しがつかなくなっちまうのに・・邪魔すんな、おめぇら!」
戦兎の暴走を危惧する龍我が、リュウガと王蛇に怒りをあらわにする。
龍我が武器「ツインブレイカー」を装備して、「ビームモード」にして発射する。リュウガが剣「ドラグセイバー」で、王蛇がベノサーベルでビームをはじく。
「誰か戦兎を止めてくれ!このまま取り返しがつかなくなっちまう!」
龍我が必死になって呼びかける。
「早く止めないとヤバいってことなのか・・!」
ソウマも戦兎の暴走の危険性を痛感する。
「シゲル!」
「あぁっ!」
ソウマとシゲルが声をかけ合う。
“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
“オックス・ロードスマッシュ。”
ソウマがビースドライバーの左上のボタンを押して、シゲルがリードライバーの中心部を回転させる。2人が同時にジャンプしてキックを繰り出して、スカルライダーたちを突き飛ばして撃破する。
「戦兎!」
ソウマが駆け出して、戦兎のそばに来た。しかし戦兎はソウマにも向かってきて、ブレードモードに戻したドリルクラッシャーを振りかざしてきた。
「おい、戦兎!オレだ!ソウマだ!」
ソウマが呼び止めるが、彼の言葉は戦兎には届いていない。戦兎が詰め寄ってきて、ソウマをつかんでパンチや膝蹴りを叩き込んでいく。
「ソウマ!アイツ・・!」
ノゾムが声を上げて、暴走を続ける戦兎にいら立ちを覚える。彼はライオトルーパーたちを押しのけて、戦兎に向かっていく。
「ベルトにあるハザードトリガーを外せ!そうすりゃ変身が解けて、暴走も止まる!」
「けどこのパワー相手に、それができるかどうか微妙だな・・!」
龍我が呼びかけて、ソウマが痛みに耐えながら呟く。
“ガタガタゴットンズッタンズタン!Ready go!”
戦兎がビルドドライバーのレバーを回して、、右足に黒い煙をまとわせて振りかざす。
「コイツはまずい!」
“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ソウマがとっさに後ろに跳びながら、キックを振り上げて迎え撃つ。
「がはっ!」
戦兎のキックに押されて、ソウマが大きく吹き飛ばされる。
「ソウマ!」
ダメージを負って激痛に襲われるソウマに、シゲルが駆け寄る。
「アイツ、どこまでも勝手に暴れて・・!」
ノゾムが怒りをふくらませて、戦兎に向かっていく。
“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーの左上のボタンを2回押して、ノゾムがジャンプする。彼の両足のキックと、戦兎のジャンプキックが激しくぶつかり合う。
「ぐっ!」
ノゾムも戦兎のキックに押されて突き飛ばされる。
「マキシマムでも止められないだと・・!?」
戦兎のハザードフォームの戦闘力に、ノゾムも驚きを感じていく。ライオトルーパーたちとの交戦の中、戦兎はハザードフォームの暴走から抜け出せなくなっていた。