ザ・グレイトバトル
-トゥルースピリッツ-
第1章
様々な宇宙、様々な次元、様々な世界が無数に存在している。
様々な戦士、様々なヒーロー、様々な敵。
敵の中にも、様々な能力や策略を見せた者がいる。
ヒーローの姿に化けた者、ヒーローと同種の能力を発揮する者。
信頼、信じる心を打ち砕こうとする脅威が今、全ての世界に迫ろうとしていた。
平穏な雰囲気の町並み。その一角の道を歩く1人の少年がいた。
「おい、リク。今夜うちでパーティーすんだけど、おめぇも来ねぇか?」
町中の八百屋に声をかけられて、少年、朝倉リクが立ち止まって振り返る。
「ありがとう、おじさん。でも僕が来ても、おじさんたちの盛り上げ役になれるかどうか・・」
リクが謝意を示して、苦笑いを見せる。
「なるって、なるって。リクみたいに若いのはいるだけでも盛り上がるからな。」
「い、いるだけって・・」
八百屋に励まされるが、リクはさらに苦笑を見せていた。
「それじゃお言葉に甘えさせてもらいますね・・」
「おっ、やった♪それじゃ今夜、待ってるからな、リク♪」
リクが聞き入れて、八百屋が喜んだ。彼の笑みを見て、リクも笑みをこぼした。
そのとき、上空から1つの光が飛んできた。
「何だ、あれは?・・まさか、隕石・・!?」
八百屋が目を凝らして光を見つめる。
(違う・・あれは・・!)
リクが心の中で光の正体について呟いた。光は地上に来たところで変化して、1人の巨人となった。
「あ、あれは・・・!」
八百屋が安心して、巨人を見て笑みをこぼす。巨人は彼らにとって認知された存在だった。
「だけど、他の宇宙人や怪獣がいねぇな・・どうしたってんだ・・?」
八百屋が巨人に対して首をかしげる。リクは巨人を見つめて、動揺を感じていた。
巨人は少しの間直立すると、突然足を振り上げてそばに建物を壊した。
「うえっ!?どうしたってんだ、いったい!?」
八百屋が巨人の行動に驚く。周りにいた人々たちも動揺を隠せなくなる。
巨人はさらに建物を破壊しながら、リクたちのいるほうへ向かってきた。
「に、逃げろ!」
八百屋が他の人々と一緒に逃げ出す。リクは他の人たちから外れて、人目の付かない物陰に隠れる。
「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」
リクが言い放つと、アイテム「ジードライザー」と装填ナックル、カプセル型アイテム「ウルトラカプセル」を2つ取り出した。
「ユーゴー!」
リクが装填ナックルにウルトラカプセルの1つ「ウルトラマンカプセル」をセットする。
「アイゴー!」
彼は装填ナックルにもう1つのウルトラカプセル「ベリアルカプセル」をセットする。
「ヒアウィーゴー!」
リクがトリガーを押したジードライザーで、装填ナックルにセットされているカプセルをスキャンする。
“フュージョンライズ!”
カプセルをスキャンしたジードライザーから音声が発する。
「決めるぜ、覚悟!ジード!」
“ウルトラマン!ウルトラマンベリアル!”
リクがジードライザーを高らかに掲げた。
“ウルトラマンジード・プリミティブ!”
リクの姿が変わって巨大化した。彼は銀と赤、黒の体をした巨人となった。
「あ、あれはジード!ウルトラマンジードだ!」
八百屋が巨人、ジードを見て指さして叫ぶ。
「えっ!?ジードが、2人!?」
「もしかして最初に現れたのは、偽者・・!?」
人々がジードと巨人を見比べて動揺する。最初に現れた巨人は、ジードと似ているが黒いラインが強調されている。偽ジードである。
「それじゃ、偽者が町を壊してたのか!?」
「あの偽者、ジードを悪者に仕立てようとしてたのか!?」
人々が偽ジードを見て、偽者であることを確信する。ジードと偽ジードが同時に構えを取る。
「お前は誰だ!?僕のフリをして何を企んでいるんだ!?」
リクが問いかけるが、偽ジードは答えずに不気味な笑みをこぼす。
偽ジードが先に飛び出してきた。彼が繰り出すパンチを、ジードが見切ってかわしていく。
「何も答えないなら、僕はこの町を守るだけだ!」
リクが言い放って、ジードが偽ジードの右腕をつかんで背負い投げをする。偽ジードは宙に飛ばされて、人のいない草原に落下した。
「このまま一気に決めるよ!」
リクが言い放って、ジードライザーのトリガーを押してから、再びウルトラカプセルをスキャンして、再度トリガーを引いた。ジードが全身から発した赤黒い稲妻を帯びた光を、両手に集めた。
“レッキングバースト!”
ジードが両腕を十字に交差して、光線を発射する。偽ジードもとっさに同じ構えから光線を放ってぶつけ合う。
ジードの光線に押されて、偽ジードが吹き飛ばされる。地面に叩きつけられた直後、偽ジードの姿が変わった。
「やっぱり別の宇宙人だ!ジードに化けて悪さをしていたんだ!」
人々がジードに化けていた凶悪宇宙人、ザラブ星人を指さす。
「おのれ、ジード・・せっかくお前を悪者に仕立てようとしたのに・・!」
ザラブ星人がジードにいら立ちを見せる。
「僕を悪者に・・お前は何者なんだ!?何を企んでいる!?」
「私はザラブ星人。私はお前の兄弟のようなものだ・・」
リクが問いかけて、ザラブ星人が名乗る。
「お前はあのベリアルの姿と力を宿したウルトラマンだ。本来はお前も地球や他の星を侵略する側の存在なのだ。」
「違う!たとえあのベリアルの力を持っていても、正しいことに、みんなを守るために使えるはずだ!」
あざ笑うザラブ星人にリクが言い返す。
ジードはウルトラカプセルを通じてウルトラ戦士やベリアルの力を宿して戦うだけでない。悪のウルトラマン、ベリアルが自分の遺伝子を与えたウルトラマンがジードである。そのためジードはベリアルからは「息子」と呼ばれていた。
しかしリクはベリアルの力と姿を宿していることに苦悩しながらも、その力の正しい使い方を見出すことができたのである。
「お前が何を言おうとどう言おうと、ベリアルの宿命からは逃れられない・・たとえ私がお前や地球人を騙さなくてもだ・・!」
ベリアルの血を持つジードを、ザラブ星人があざ笑う。しかしこれでもリクの思いは揺るがない。
「僕はその宿命からは逃げない・・立ち向かって、打ち勝ってみせる・・!」
リクが声を振り絞って、ジードがザラブ星人に立ち向かう。
「強がるな、強がるな!」
ザラブ星人があざ笑って、ジードを迎え撃って両手から光線を放つ。ジードがジャンプして光線をかわして、ザラブ星人を飛び越えながら、腕から波状の光線を放つ。
光線を受けてふらつくザラブ星人だが、すぐに体勢を整えて、着地したジードに向かっていく。2人が組み付いて力比べに持ち込む。
そのとき、ジードの胸にある発行体「カラータイマー」が青から赤に変わって点滅を始めた。
多くのウルトラマンの胸にはカラータイマーが存在する。カラータイマーはウルトラマンのエネルギーを表していて、エネルギーが少なくなると赤く点滅するのである。
「いけない!早く終わらせないと・・!」
リクが焦りを感じて、ジードがザラブ星人を押し切ろうとする。
そのとき、1つのビームが飛んできて、ジードに直撃した。
「うあっ!」
ジードが突き飛ばされて地面に倒れて、リクがうめく。彼の前に現れたのは2体の巨大ロボット。
帝国機兵レギオノイド。陸戦型のαと飛行型のβ。βが両手からの光線でジードを攻撃したのである。
「新手のロボット・・こんなときに・・!」
リクがさらに危機感をふくらませて、ジードが構えを取る。
「援軍か。助かるぞ・・!」
ザラブ星人がレギオノイドたちを見て感謝を口にする。レギオノイドβがジードに向かって、両手からの光線を放つ。
回避を取ろうとするジードだが、かわし切れずに光線を当てられて怯む。そこへレギオノイドαが迫って、ドリルの付いた両手を突き出してきた。
「ぐっ!」
ジードがドリルで突かれて、リクが痛みと衝撃で顔を歪める。
「いいぞ、いいぞ!このまま押し切ってやる!」
ザラブ星人が勝ち誇って、レギオノイドたちがジードに迫る。カラータイマーの点滅が速まって、ジードは窮地に立たされていた。
そのとき、2本のブーメランが飛んできて、レギオノイドたちに命中させて行く手を阻んだ。
「あれは・・!」
ジードが顔を上げて、リクが声を上げる。その先の上空には、赤と青と銀の体をしたウルトラマンがいた。
「エネルギー切れを狙ってくるとは、ふざけたマネをしてくるな・・!」
「ゼロさん!」
もう1人のウルトラマン、ゼロにリクが叫ぶ。ゼロの頭にブーメラン「ゼロスラッガー」が戻る。
「ウルトラマンゼロ、お前も来ていたのか!?」
ザラブ星人がゼロを見て驚く。
ゼロが自身のカラータイマーから光を照射する。ジードのカラータイマーに光が注がれて、彼のエネルギーを回復させた。
「ありがとうございます、ゼロさん!」
着地したゼロにジードが駆け寄って、リクが感謝する。
「地球に近づいていたのを迎え撃ったが、あの2体だけ倒し損なってしまった・・もう逃がしはしない・・!」
「そうでしたか・・ここで一気に倒してしまいましょう!」
ゼロが状況を話して、リクが笑みを浮かべる。ジードとゼロが構えを取って、ザラブ星人たちを迎え撃つ。
レギオノイドαがジードに、βがゼロに迫る。
「ロボット相手にはパワー勝負だ!」
リクが言い放って、新たに2つのウルトラカプセルを取り出した。ウルトラセブンの力を宿した「セブンカプセル」とウルトラマンレオの力を宿した「レオカプセル」である。
「ユーゴー!」
リクが装填ナックルにセブンカプセルをセットする。
「アイゴー!」
続けて彼は装填ナックルにレオカプセルをセットする。
「ヒアウィーゴー!」
リクがトリガーを押したジードライザーで、装填ナックルにセットされているカプセルをスキャンする。
“フュージョンライズ!”
「燃やすぜ、勇気!」
“ウルトラセブン!ウルトラマンレオ!”
リクがジードライザーを高らかに掲げた。
“ウルトラマンジード・ソリッドバーニング!”
ジードの体が赤が強調されたものとなる。彼はパワーと防御力に優れた姿「ソリッドバーニング」となった。
パワーを上げたジードがレギオノイドαに向かっていく。
レギオノイドが突き出すドリルを、ジードはパンチではじいていく。彼はドリルに触れてもものともしていなかった。
炎をまとったジードのパンチが炸裂して、レギオノイドαが突き飛ばされた。
「なかなかやるな、ジード!」
ゼロが声を上げて、頭部のゼロスラッガーを放って、レギオノイドβに当てていく。
「よし、こっちも!」
ジードも頭部にある「ジードスラッガー」を飛ばして、ドリルをはじいてレギオノイドαの胴体に当てていく。
「やはり硬いか・・なら!」
ゼロが集中力とともにパワーを高める。
「ストロングコロナゼロ!」
彼の体の青が赤に変わった。
ゼロには2人のウルトラマン、ダイナとコスモスの力が宿っている。彼はダイナの「ストロングタイプ」とコスモスの「コロナモード」を併せたパワー重視の姿「ストロングコロナゼロ」となった。
レギオノイドβが両手から光線を放つ。しかしゼロは光線を直撃されてもものともせず、レギオノイドに詰め寄って、胴体をつかんだ。
「行くぞ!ウルトラハリケーン!」
ゼロは体を回転させて、レギオノイドを空高く投げ飛ばした。
「ガルネイドバスター!」
続けてゼロが炎のエネルギーを集めた右手を上に突き上げる。解き放たれた炎の光線が、レギオノイドβに命中して撃破した。
「僕もこのまま決めるよ!」
リクが言い放って、ジードも右手に炎のエネルギーを集める。
“ストライクブースト!”
ジードが正拳突きのように突き出した右手から、炎の光線を放つ。レギオノイドαが光線の直撃で宙に跳ね上げられて、爆発を起こした。
「ぐっ・・あのロボットたちを倒してしまうとは・・!」
ザラブ星人がレギオノイドたちが倒されたことに、驚きを隠せなくなる。ジードが着地したゼロと合流して、ザラブ星人に目を向ける。
「おのれ、ウルトラマン!これで済んだと思わないことだ!」
ザラブ星人が捨て台詞を吐いて、飛び上がって宇宙へ逃げ出した。
「逃がすか!」
ゼロが元の姿に戻って、ザラブ星人を追う。ジードもプリミティブに戻って、続いて飛び上がる。
ザラブ星人とジードたちが地球から大気圏を抜けて宇宙へ出た。
その先に多数の機影が広がっていたのを、ジードたちが目撃した。レギオノイドとは違うロボットだった。
「またロボット!?星人の仲間か!?」
リクが声を上げて警戒する。
「また新しい援軍か!?よし、ジードとゼロを始末してくれ!」
ザラブ星人が笑みをこぼして、ロボット「デスアーミー」たちに呼びかけた。デスアーミーたちが棍棒型のビームライフルを構えた。
デスアーミーのビームライフルからビームが一斉に放たれた。その射撃に撃たれたのはザラブ星人だった。
「なっ!?」
「バ・・バカな!?・・お前たちは、私の味方では・・・!?」
デスアーミーの行動に、ジードとザラブ星人が驚く。体を撃ち抜かれたザラブ星人が力尽きて、爆発を起こした。
「僕たちを、助けてくれたのか・・・!?」
「いや・・オレたちの味方ってわけでもなさそうだ・・!」
リクが声を上げて、ゼロが緊張を絶やさない。デスアーミーたちがジードとゼロにもビームライフルの銃口を向ける。
デスアーミーがビームライフルから発射したビームを、ジードとゼロが光の壁を作り出して防ぐ。
「このままじゃ地球にビームが落ちる!」
リクが焦りを噛みしめて、ゼロがゼロスラッガーを射出して、デスアーミーを切りつけて破壊していく。
「今だ!ヤツらを地球から引き離すぞ!」
「はいっ!」
ゼロの呼びかけにリクが答える。デスアーミーの攻撃が止まった瞬間に、ジードとゼロが光の壁を消して、地球から離れた。
ジードたちを追ってデスアーミーたちが動き出す。結果、彼らは地球から離れることになった。
「狙いはオレたち・・地球は眼中にないか・・!」
「だったら僕たちが引きつけて迎え撃ちましょう!」
ゼロが呟いて、リクが呼びかける。地球からデスアーミーを引き離したところで、ジードとゼロが迎撃に踏み切ろうとした。
そのとき、ジードたちのいる宇宙に突然、空間の歪みが発生した。歪みは巨大な穴となって、ブラックホールのように周辺を吸い込み出した。
「な、何だ、これは!?」
リクが穴を見て声を上げる。デスアーミーたちが停滞を維持できず、穴に吸い込まれていく。
「離れるぞ、リク!吸い込まれたらどの空間に飛ばされるか分からないぞ!」
ゼロが呼びかけるが、ジードも穴の吸引力に捕まって引っ張られていく。ジードのエネルギーが少なくなって、再びカラータイマーが点滅を始めた。
「こんなときにエネルギーが少なくなるなんて・・これじゃ、脱出が・・!」
必死に脱出しようとするリクだが、ジードはさらに引きずり込まれていく。
「うわあっ!」
ジードが穴に吸い込まれて、リクが叫び声を上げる。
「リク!・・くそっ!」
ゼロがジードを追いかけるが、穴は小さくなって消えてしまった。
「リク・・追いかけるには力を使うしないか・・!」
ゼロが毒づいて、左手首に装備している腕輪「ウルティメイトブレスレット」を起動した。ウルティメイトブレスレットが変化して、鎧「ウルティメイトイージス」となって、ゼロの体に装着された。
ゼロが意識を集中すると、彼の行く先に空間のトンネルが現れた。ウルティメイトイージスには、空間を通り抜ける能力がある。
ジードを追いかけて、ゼロは別の空間へと渡った。
町中にある動物公園。そこで動物の世話をしている1人の青年がいた。
「今日も穏やかでいるな、みんな。」
青年、神奈ノゾムが動物たちの様子を見て笑みをこぼす。
(世の中も動物たちみたいに穏やかになればいいのに・・・)
ノゾムは心の中で世の中への不満を呟いていた。彼は今の世界の不条理に不満を感じていた。
そのとき、動物公園の近くで騒ぎが起こっているのをノゾムが耳にした。
「何だ・・何か起こったのか・・!?」
ノゾムが目つきを鋭くして、動物たちも落ち着きがなくなる。
「みんなはここでおとなしくしていろよ。ちょっと見てくる・・」
ノゾムは動物たちに呼びかけると、騒ぎが起こったほうへ向かっていった。
ノゾムがたどり着いた広場では、そこにいた人々が逃げ惑っていた。人々がいなくなった広場にはノゾムと、赤と黒の装束と仮面を着けた忍者がいた。
「何だ、お前は!?ここで何かしているのか!?」
ノゾムが問い詰めるが、忍者は何も答えない。
「何か言ったらどうなんだ・・!?」
ノゾムが怒鳴り声を上げると、忍者、闇アカニンジャーが刀「忍者一番刀」を手にして彼に向かってきた。振り下ろされた忍者一番刀を、ノゾムがとっさに横に動いてかわす。
「問答無用っていうなら、こっちも容赦できなくなるぞ・・・!」
ノゾムが怒りを口にして、1枚のカードを取り出した。「アニマルカード」の1枚「マックスカード」である。
“マックス!”
彼が身に着けているベルト「ビースドライバー」に、マックスカードをセットした。
「変身!」
そしてビースドライバーの左上にあるボタンを押す。
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ノゾムの体を赤いスーツが包んで、頭に野獣を思わせる形状のマスクが装着された。彼はビーストライダー、マックスへ変身を果たした。
「オレの怒りは限界突破!」
ノゾムが言い放って構えを取る。彼に向かって飛びかかって、闇アカニンジャーが再び忍者一番刀を振りかざす。
「その姿・・ライダーじゃなさそうだな・・スーパー戦隊とかっていうヤツか・・!」
ノゾムが闇アカニンジャーを見て呟く。
複数の戦士たちがチームとなって敵に立ち向かう「スーパー戦隊」。ノゾムはスーパー戦隊の存在を知っていて、闇アカニンジャーが本物の戦隊戦士でないことにも気付いていた。
「本当に何者だ!?何も言うつもりはないのか!?」
ノゾムがまた問い詰めるが、闇アカニンジャーは答えようとしない。
「だったらもう何もいうな・・ここでオレがお前をブッ倒す!」
ノゾムが声を張り上げると、闇アカニンジャーに向かって飛びかかる。彼の力任せの攻めに闇アカニンジャーが押されていく。
ノゾムが繰り出したパンチが闇アカニンジャーの体に命中したように見えた。次の瞬間、闇アカニンジャーが木の丸太に変わっていた。
「くそっ!変わり身の術ってヤツか!」
ノゾムが毒づいて、闇アカニンジャーの行方を探る。振り返ったノゾムに、闇アカニンジャーが飛びかかって、忍者一番刀を振り下ろした。
「ぐあっ!」
マックスのスーツが切りつけられて火花を散らして、ノゾムがうめく。彼はとっさに後ろに下がって、闇アカニンジャーとの距離を取る。
「こうなったら目には目を、剣には剣を!」
ノゾムが新たなアニマルカード「シャークカード」を取り出して、ビースドライバーのマックスカードと入れ替えた。
“シャーク!”
彼は続けてビースドライバーに左上のボタンを押した。
“チャージ・シャーク!シャーシャーシャーシャー・シャークソード!”
ノゾムの手の中に、サメの角のような形の刀身の剣が現れた。サメのような切れ味を備えた「シャークソード」である。
「今度はコイツでやってやるぞ・・・!」
ノゾムが言い放って、闇アカニンジャーに向かっていく。2人がシャークソードと忍者一番刀を振りかざしてぶつけ合っていく。
互いの一閃がノゾムと闇アカニンジャーを切りつけていく。しかし2人は怯むことなく、攻撃を続ける。
「これで終わりにしてやるぞ・・!」
ノゾムが言いかけてビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“シャークチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムが構えたシャークソードにエネルギーが集まる。
“ザ・技!”
“なんじゃなんじゃ・なんなんじゃ!・・”
闇アカニンジャーも忍者一番刀の「技」ボタンを押して構える。
“アカジャー・ニンジャー!忍者一閃!”
ノゾムとシャークソードと闇アカニンジャーの忍者一番刀が振り下ろされて、激しくぶつかり合った。その激しい衝撃で、2人が強く突き飛ばされる。
ノゾムはすぐに立ち上がるが、闇アカニンジャーは力を消耗してふらついていた。
「このままお前をブッ倒してやるぞ!」
ノゾムが再びマックスカードをビースドライバーにセットして、左上のボタンを2回押した。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムの右足にエネルギーが集まる。彼は大きくジャンプして、闇アカニンジャーに向かってキックを繰り出した。
ノゾムのキックを体に受けて、闇アカニンジャーが突き飛ばされた。決定打を受けて倒れた彼の前に、ノゾムが着地する。
闇アカニンジャーが立ち上がるが、体からあふれる黒い霧とともに消滅した。
「やったか・・何だったんだ、コイツは・・・!」
ノゾムが闇アカニンジャーのことを考えて、疑問を感じていく。何も答えが出ることなく、ノゾムは闇アカニンジャーを倒すこととなった。
そのとき、ノゾムのそばで爆発が起こった。身構えた彼が振り返った先に、新たに2人の戦士が現れた。
1人は赤いスーツの上に黒い着物を羽織った外道シンケンレッド。もう1人は黒いスーツの闇のトッキュウ1号である。
「また悪い戦隊が出てきたのか・・!」
ノゾムが闇の戦士2人に対して警戒を抱く。外道シンケンレッドと闇のトッキュウ1号が彼に迫る。
ノゾムが迎え撃つが、外道シンケンレッドたち2人を相手に攻め立てられる。外道シンケンレッドが刀「シンケンマル」を手にして振りかざす。
「ぐっ!」
ノゾムが切りつけられてうめく。さらに闇のトッキュウ1号のパンチを受けて、ノゾムが突き飛ばされる。
「コイツらも強い・・だけど、やられるつもりはない・・!」
ノゾムは毒づきながらも、諦めずに戦いを続けようとする。闇のトッキュウ1号が線路型の剣「レールスラッシャー」を手にして構えた。
「おいおい・・またおかしなヤツらが出てきたものだ・・」
そこへ2人の青年がノゾムたちの前に現れた。
「ソウマ、シゲル・・!」
ノゾムが2人の青年、渋谷ソウマと牛込シゲルに声をかける。
「また新しいスーパー戦隊・・にしちゃ、ちょっとおかしくないか?」
シゲルが外道シンケンレッドと闇のトッキュウ1号を見て、首をかしげる。2人もスーパー戦隊のことは知っていた。
「アイツらとは違うみたいだ・・偽者ってヤツか・・!?」
「偽者・・だったら遠慮しなくてよさそうだ。」
ノゾムが説明をして、ソウマが笑みを浮かべて頷く。
「オレたちもやらせてもらうぞ!お前に任せ切りなのも腑に落ちないからな!」
ソウマがノゾムに呼びかけて、キツネのアニマルカード「フォックスカード」を取り出した。
“フォックス!”
彼がビースドライバーにフォックスカードをセットして、左上のボタンを押した。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
ソウマが黄色と茶色のスーツとキツネの形のマスクを身に着けた。彼はビーストライダー、フォックスへと変身した。
「オレの強さは疾風迅雷!」
ソウマが外道シンケンレッドたちに向かって言い放つ。
「それじゃオレもやるとするか!」
シゲルも笑みを見せて、牛のアニマルカード「オックスカード」を取り出した。
“オックス。”
彼はオックスカードを、左腕に装着している腕輪「ビースブレス」にセットした。
「変身!」
シゲルがビースブレスをベルト「リードライバー」の中心部の前にかざした。
“スタートアップ・オックス。”
シゲルが茶色のラインの入った黒いスーツと、牛を思わせる模様の黒と銀のマスクを身に着けた。彼はビーストライダー、オックスになった。
「オレの力は天下無敵!」
シゲルも外道シンケンレッドたちに向かって言い放つ。3人のビーストライダーがそろい踏みした。
「お前たちは何者なのか、答えるつもりはあるのか・・・!?」
ノゾムが問い詰めるが、外道シンケンレッドも闇のトッキュウ1号も何も答えない。
「だんまりか・・悪いけど問答無用でやられるつもりはないんでな。」
「やられる前にやらせてもらうぞ!」
シゲルが気さくに言いかけて、ソウマが言い放つ。3人に外道シンケンレッドと闇のトッキュウ1号が迫る。
ソウマが闇のトッキュウ1号を、シゲルが外道シンケンレッドを迎え撃つ。
「オレだけがのけ者になってしまったじゃないか・・・」
自分だけ戦う相手がいなくなったことに、ノゾムが肩を落とす。
そのとき、ノゾムたちのいる場所の空が突然歪み出した。歪みは穴となって、ブラックホールとなって周囲を吸い込む。
「おいおい、何だよ、こりゃ・・!?」
「アレに吸い込まれたら一巻の終わりな気がするぞ・・!」
ソウマとシゲルが穴に目を向けて踏みとどまる。外道シンケンレッドと闇のトッキュウ1号が穴に飛び込んで姿を消した。
「このままじゃオレたちも吸い込まれてしまう・・そうなる前に・・!」
ノゾムが声とち肩を振り絞って、新たなアニマルカードを取り出した。トラが描かれた「タイガーカード」である。
“タイガー!”
彼がビースドライバーにタイガーカードをセットした。
“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”
ノゾム自身に変化はない。彼らの前に、前方部がトラの顔を思わせる形状のバイクが駆けつけてきた。
「タイガーランナー、ここから離れるぞ・・!」
ノゾムが言いかけて、バイク「タイガーランナー」に乗ったときだった。突然レール状の刃が穴から飛び出して、ノゾムの体を縛った。
「な、何だ、これは!?うあっ!」
ノゾムが刃に引っ張られて、穴に引きずり込まれた。
「ノゾム!」
穴の中に姿を消したノゾムに、ソウマとシゲルが叫ぶ。
「やばい!早く追いかけないと!」
ソウマが声を上げて、オオカミのアニマルカード「ウルフカード」を取り出した。
“ウルフ!”
彼はビースドライバーにウルフカードをセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・ウルーフ!ウルフル・ウルフル・ウルフルスロットール!”
ソウマに向かって、オオカミの頭をしたバイクが駆けつけてきた。
「よせ、ソウマ!あの先がどうなってるか分かんないんだぞ!」
バイク「ウルフルスロットル」に乗ってノゾムを追いかけようとしたソウマを、シゲルが呼び止める。
「だったら余計にノゾムをほっとくわけにいかないだろう!オレなら一気に行って、一気に連れて戻ってきてやる!」
「ソウマ・・だったらオレも行くぞ!」
それでも行こうとするソウマに、シゲルが頷く。彼はイグアナのアニマルカード「イグアナカード」を取り出した。
“イグアナ。”
イグアナカードをビースブレスにセットして、シゲルがリードライバーにかざした。
“スタートアップ・イグアナ。”
彼の前にイグアナの姿をした車「イグアカート」が駆けつけた。
「コイツの吸引力はすごいからな。スピードだけじゃなくてパワーも必要だ。」
「シゲル・・すまない・・それじゃ行くぞ!」
シゲルの呼びかけに答えて、ソウマが笑みをこぼす。ソウマがウルフルスロットルに、シゲルがイグアカートに乗って、ノゾムを追って穴に飛び込んだ。