ザ・グレイトバトル外伝

仮面ライダーフォース

第2章

 

 

 暗躍していた怪人たちを、英寿とともに撃退したアキト。
 アキトは空間の歪みによって他次元世界がつながる現象について話した。
「なるほど・・つまりパラレルワールド、平行世界ということか・・」
 英寿が別次元の世界のことを聞いて納得した。彼は特に驚く様子を見せず、冷静に現状を把握していた。
「お前のほうは、ライダーバトルのチャンピオン、と受け取ってもいいんだな?」
「そんなところだ。この世界とは関係ないようだし、難しく考えることもないだろう。」
 アキトも話を理解して、英寿が言葉を返す。
「歪みに引き寄せられて、気が付いたらこの近くに来ていた。そこでお前たちが戦っていたということだ。」
「そうだったのか・・つまりお前は、自分で空間を移動することはできないということか・・」
「あぁ。それができるなら自分の世界に帰っている。」
「なるほどな・・」
 英寿から話を聞いて、アキトも納得した。
「英寿と言ったな。一時的だが、オレに協力してくれるか?」
 アキトが英寿に協力を求めてきた。
「どこかで空間が歪むことがあるかもしれないし、お前にとっての手掛かりもみつかるかもしれないぞ。」
「そうだな。下手に動いても状況悪化にしかならないだろうな。」
 彼の言葉を英寿は聞き入れた。
「それで、お前は1人なのか?他に仲間はいないのか?」
「仲間は別の任務に当たっている。今はオレは単独で行動している。」
 英寿が素性を聞いて、アキトが答える。
「お前のことを仲間に話した方がいいか?」
「いや、無理に話すことはないだろう。今はお互いの目的を果たすことを優先するか。」
「そうか。なら先を急ぐぞ。さっきのヤツらの仲間が他にいないとは限らないからな。」
「お前はそのヤツらを追っているんだな。」
「あぁ。そこでお前が帰る方法が分かれば、お前にとっても好都合だ。」
「そうなるな。最後にオレが勝つから、手掛かりを見つければ必ず成功する。」
 アキトの投げかける言葉に答えて、英寿が自信を示す。
「頼りにさせてもらおうか、チャンピオン。」
「その呼び方はやめてくれ・・」
 アキトが声を掛けて、英寿がため息混じりに言い返した。

 デェムシュたちがアキトたちに倒されたことを受けて、2人の戦士が新たに出撃しようとしていた。
「楽しそうな遊び相手が出てきたね。でも、君の相手はあのお兄ちゃんになりそうだね。」
 戦士の1人が無邪気に言って、もう1人の戦士に目を向ける。しかし2人目の戦士は何も言わない。
「つまんないの・・まぁいいや。僕は行くね。」
 1人目の戦士がため息をついてから、先に動き出した。2人目の戦士が目に光を宿して歩き出した。

 アキトは英寿を連れて、周辺を調査していた。しかし他の手掛かりや侵略者の行方を探り出すことができない。
「あの洞窟の奥にヤツらの基地があるのか。だとしてもそれは洞窟の長い道を行った先になる。」
「今となっては中に入るのも厳しいところだ。だがそうなれば敵も気軽に出入りすることもできないということだ。」
 アキトが推測して、英寿が話を続ける。
「だがオレたちがヤツらを倒して、仲間が逆襲に出る可能性もある。」
「そこを叩いて、ヤツらのアジトを聞き出す・・望み薄だが・・」
 デェムシュの仲間の出現のことも、英寿とアキトは予測していた。
「1度本部に報告をする。定期報告も任務の1つだ。」
 アキトが英寿に言って、トウジに連絡をしようとした。
 そのとき、アキトたちの周辺に稲妻のような光と衝撃が巻き起こった。
「どうやら敵のお出ましのようだな。」
 英寿が呟いて、アキトとともに振り返った。その先に1人の怪人が姿を現した。
「お兄ちゃんたちだね、今度の僕の遊び相手っていうのは。」
 怪人が子供のような声で、アキトたちに向かって無邪気に言ってきた。
「あの見た目なのに、中身は子供だな。」
「だが力まで子供とは思ってはいない。」
 英寿とアキトが怪人に対して言って、戦意を強める。
「子供の遊びに付き合うつもりはないし、お前を子供だと思っていない。」
「気にしなくていいよ。だって勝つのは僕なんだからね。」
 アキトが態度を変えずに言うが、怪人も気にせずに無邪気に言い返す。
「このドラスの力をたっぷり見せてあげるよ。」
 怪人、ドラスが笑みをこぼして、全身からビームを放射した。アキトと英寿が身構えて、地面に当たったビームの爆発に耐える。
「やはり力は子供ではないか。」
 英寿が呟いて、デザイアドライバーの中心部にギーツコアIDをセットした。
「お兄ちゃんたちの相手は僕だけじゃないよ。」
 ドラスが言うと、もう1人の戦士が姿を現した。
「あれは・・!?」
 その姿にアキトが目を疑った。戦士の姿は仮面ライダーフォースに似ていた。
「みんなはこの人のことをアナザーフォースって呼んでたよ。」
 ドラスが怪人、アナザーフォースのことを紹介する。
「鷹矢アキト、お前を倒し、私が本物のフォースとなる。」
 アナザーフォースがアキトに向けて告げる。
「聞いたことがある。仮面ライダーの力を宿して生まれたアナザーライダーだな。」
 アキトがアナザーライダーのことを思い出していく。
「だがアナザーライダーは、その力の持ち主であるライダーの力と時間を奪い取らないと生み出せないはず・・オレがここにいる以上、フォースのアナザーライダーが出てくることはないはず・・」
「別の世界のフォースからアイツを生み出したと考えれば自然だな。」
 推測を巡らせるアキトに、英寿が助言する。
「アイツら、このまま倒しても問題はないな?」
「そこは気にしなくていい。たとえヤツらのことを聞き出せなくても、戦力を減らせるのは確実だ。」
 英寿からの問いに、アキトが冷静に答える。
「フォースは任せるね。僕はあっちのお兄ちゃんを遊ぶね。」
 ドラスがアナザーフォースに言って、英寿に近づいていく。
「戦う相手が決まったようだな。」
「オレがあのアナザーライダーの正体を暴く・・・!」
 英寿が呟いて、アキトがアナザーフォースに向かっていく。
 アキトがフォースドライバーを取り出して、装着してレバーを手に掛けた。
「変身!」
 アキトがレバーを引いて、フォースドライバーを展開した。フォースドライバーから光があふれて、彼はフォースに変身した。
“Entry.”
 英寿が黒いスーツと狐のような形状の仮面を身に着けた。
「変身!」
“Set.”
 彼は指を鳴らしてから、マグナムレイズバックルをデザイアドライバーの右側にセットして、リボルバーを回してトリガーを押した。
“Magnum.Ready fight.”
 英寿はさらに白い装甲を身に着けて、ギーツ・マグナムフォームへと変身した。
「さぁ、ここからがハイライトだ。」
 英寿がドラスに向けて言いかける。
 アキトとアナザーフォースが同時にパンチを出してぶつけ合う。2人がその衝撃で強く押される。
 アキトがすぐに踏みとどまって、直後にアナザーフォースに向かっていく。彼が連続でパンチを出していくが、アナザーフォースは両手で正確に防いでいく。
「お前は何者だ・・正体を言え・・!」
 アキトは攻撃を続けながら、アナザーフォースに問いかける。
「オレはお前だ・・オレは別の世界の鷹矢アキトだ。」
「何っ!?」
 アナザーフォースの答えを聞いて、アキトが驚きを覚える。アナザーフォースの声はアキトと同じだった。
「お前はオレだと!?別世界のオレが、仮面ライダーフォースであるお前が、アナザーライダーのフォースになっているというのか・・!?」
「お前はフォースの力を保っているようだな・・」
 問い詰めるアキトの素性を、アナザーフォースが把握していく。
「だがオレはフォースの力を失った・・絶望していた私は、このフォースの力を手に入れた・・」
「それで改めて、自分の世界を正したということか。」
 アナザーフォースの話を聞いて、アキトが納得していく。
「正した?・・結果的に滅ぼしたということになるのか・・」
 するとアナザーフォースが笑みをこぼしてきた。
「お前・・お前の世界の地球を滅ぼしたのか・・!?」
「もはや人類は正されるにはあまりにも愚かになりすぎた・・更生不可能となったため粛清に至った、ということだ・・」
 声を荒げるアキトに、アナザーフォースが笑みをこぼした。
「己の世界を滅ぼすとは、見下げ果てたことだ・・」
 アキトがアナザーフォースの行動に呆れる。
「お前も世界を敵に回しておきながら、今はこの愚かな世界を守っているとはな・・」
 アナザーフォースがアキトの言動に呆れる。
「オレが手を下す前に、世界を正しく変えようとするヤツがいたのでな。それでも変わらないなら、今度こそオレが手を下す・・」
「甘さと愚かさを兼ね備えているとは、別世界のオレでありながら、それこそ見下げ果てたものだ・・」
 自分の考えを口にするアキトに対して、アナザーフォースがため息をついた。
「あくまでオレと敵対するというなら、お前を倒すまでだ。」
 アキトは自分の考えを貫くことを崩さず、アナザーフォースと対峙する。
 その頃、英寿もドラスの放つビームを正確に回避していた。
「速いね、お兄ちゃん。でもそろそろ当たってよね。」
 ドラスが英寿に言って、左腕を変形させる。その手から今までよりも威力の高いビームを発射した。
 英寿は見切って、ビームを回避した。
「お前の都合に合わせるつもりはない。」
 英寿が言い返して、マグナムシューターを連射した。ドラスが射撃を受けるが、ダメージは受けていなかった。
 ドラスが再び左手からのビームを放って、英寿に命中させた。
「僕の方が強いってことだね。この調子でどんどん当てていくよ。」
 ドラスが無邪気に笑って、全身からビームを放った。
「速さも耐久力も子供だましではないな・・オレもこれを使わせてもらうか。」
 英寿が気を引き締めなおして、もう1つのレイズバックル「ブーストレイズバックル」を取り出した。
“Set.”
 彼はデザイアドライバーにセットされているマグナムレイズバックルを外して、ブーストレイズバックルをセットして、リボルバーを回してトリガーを押した。
“Boost.Ready fight.”
 英寿の上半身の白い装甲が解除されて、下半身を赤い装甲が覆った。彼はギーツの別形態「ブーストフォーム」となった。
“Boostriker.”
 同時に英寿のそばにバイク「ブーストライカー」が現れた。
「へぇ。姿が変わるんだね。それだけじゃないといいんだけどね。」
 ドラスが笑みをこぼして、体からビームを放った。英寿はスピードを上げて、ビームをかいくぐっていく。
「ここから反撃させてもらうぞ。」
 英寿がさらにスピードを上げてドラスに近づく。彼は跳躍して高速のキックを繰り出した。
 ドラスが連続でキックを受けて、後ろに押される。
「ホントに速い・・僕が追いつけないなんて・・・!」
 ドラスが英寿の動きに翻弄される。
 ドラスは右手をかぎ爪に変形させて振りかざす。しかし高速の英寿に当たらない。
「ムダだ。」
 英寿がドラスに詰め寄って、連続でパンチを繰り出す。ドラスが体にパンチを当てられて押される。
「そろそろ違う遊びをしようかな。」
 ドラスが無邪気に言って、球体に変形して移動する。
「逃がしはしない。」
 英寿がブーストライカーに乗って、ドラスを追いかける。ドラスはさらに杭のような形に変わって加速する。
 ブーストライカーがドラスの前に回り込んで、英寿が左足を振り上げてドラスを蹴り上げた。
「これで決める。」
 英寿がブーストライカーから降りて、ブーストレイズバックルのハンドルを回した。
“Boost strike.”
 落下するドラスに向かってジャンプして、英寿が高速のキックを繰り出した。キックを直撃されたドラスだが、怪人の姿になったと同時に笑みをこぼした。
「捕まえたよ、お兄ちゃん。」
 ドラスが英寿のキックした足をつかんで、全身から光を放出した。
「うぐっ!」
 ギーツの装甲やスーツから火花が散って、英寿がダメージを負う。
「コイツ、ブーストの力に耐えたのか・・!?」
 ドラスから離れた英寿が、彼の底力を痛感する。
「もっとだよ。もっと楽しく遊ぼう。」
 着地したドラスが英寿に向かって手招きをする。
「だがオレの力はまだこれが限界ではない・・・!」
 彼がデザイアドライバーを半回転させた。ギーツの下半身の装甲が1度外れて、上半身に装着された。
 ギーツの装甲はデザイアドライバーにセットされているレイズバックルの向きによって、装着される上下が変化する。
「伝説は塗り替えるもの。1番強いとか最強とか、そういうものは他の誰かに取って代わられるものだ。」
 英寿が語りかけて、ドラスに近づいていく。
「そうなりたくないなら、それだけの鍛錬や強化をする。でなければ寝首をかかれることになる。」
「そういう話に興味はないよ。僕は強くなって、楽しく遊べればそれでいいんだから。」
 英寿の話を素直に聞かずに、ドラスが不満を込めて言い返す。
「そうか・・ならばその馬鹿げた遊びはもう終わりだ・・」
 英寿はため息をついてから、ドラスの眼前で足を止めた。
 英寿が速さのあるパンチを連続で繰り出した。少し押されるドラスだが、パンチを受けても平然としていた。
「速いだけじゃ僕には勝てないよ。どんなに速くても、こうしてみんなやっつけちゃえば・・」
 ドラスが無邪気に笑って、全身からビームを放射した。英寿がビームを受けて、火花を散らしながら吹き飛ばされた。
「ホラ。確実に攻撃に当たっちゃうよ。」
 倒れた英寿を見下ろして、ドラスが笑い声を上げる。
「あんまり時間を掛けちゃうのもよくないし、そろそろおしまいにしようかな・・」
 ドラスが英寿にとどめを刺そうと、左手を砲門に変えた。
「そうだな・・これで終わりにする・・」
 英寿が冷静に言い返して、ドラスにパンチを当てた。
「うっ!」
 その瞬間、ドラスが体に激痛を覚えてふらついた。
「ど、どうしたの!?・・体が、急におかしくなった・・・!?」
 自分の体の異変にドラスが驚く。
「ようやく効いてきたか、オレの一点集中攻撃が。」
 英寿がひと息ついてから、ドラスに告げる。ドラスの体の1ヵ所に傷が付いていた。
「オレはただ速く攻撃していたわけではない。1つの場所へ攻撃を続ければ、ダメージが蓄積され決定打になる。」
「そんなことで・・この僕が、こんな・・・!?」
 英寿の説明を聞いて、ドラスが声を荒げる。
「自分の力に溺れただけでなく、遊びすぎたのも、お前の敗因だ。」
 英寿が告げて、ブーストレイズバックルのハンドルを2回回す。
“Boost time.”
 彼はさらにスピードを上げて、ドラスに連続でパンチを叩き込んだ。
「んもー!」
 怒ったドラスが全身から閃光を放った。英寿は光から離れて回避した。
「もうお前は、オレに追いつくことはできない。」
 英寿はドラスに言って、再びブーストレイズバックルのハンドルを回した。
“Boost grand strike.”
 彼の両手にエネルギーが集まっていく。
「このー!」
 迫るドラスを迎え撃って、英寿がパンチを繰り出した。先ほどと同じ場所にパンチを当てられて、ドラスが絶叫を上げた。
「この僕がやられるなんて・・この強い僕が・・・」
 ドラスが断末魔を上げて消滅した。
「これで終わりだ・・愚かな頂点も、自惚れた遊びも・・」
 英寿が呟いてひと息ついた。
「後はアキトの決着だが・・・」
 彼はアキトの戦っているほうへ移動した。

 アナザーフォースと交戦するアキト。しかし徐々にアナザーフォースに追い詰められていた。
「お前はオレに勝てない。同じフォースでも、オレはお前以上の力を備えている。」
 アナザーフォースが自分の力について語っていく。
「本当にそう思っているのか?見くびられたものだな・・」
 アキトが呆れて、アナザーフォースに言い返す。
「オレもフォースも進化している。まがい物になり果てたお前とは違う。」
 アキトがそう言って、ドライバーのバックルの左にあるスイッチを押した。現れた画面の中のアイコンの1つにタッチして、彼はギルスティンガーに変身した。
「お前にできてオレにできない、と思わないことだな。」
 アナザーフォースが笑みをこぼして、全身に力を入れた。するとフォース・ギルスティンガーのように装甲から棘が生えてきた。
「それはまさか、ギルスティンガーか・・!?」
 アキトがアナザーフォースの姿を見て、驚きを覚える。アナザーフォースもギルスティンガーへの変身を果たした。
「同じ変身が果たせるなら、その力が高いオレのほうが上ということだ。」
 アナザーフォースがアキトに対して勝ち誇る。
「それで勝った気になるのは愚かなことだぞ・・」
 アキトはため息をついてから、アナザーフォースに向かって突っ込んだ。アナザーフォースが素早く動いて、アキトの後ろに回り込んだ。
「何っ!?」
 驚くアキトに向けて、アナザーフォースが腕を振りかざす。腕にある棘がアキトの背中を切り付けた。
「ぐっ!」
 背中から火花を散らして、アキトが前のめりに倒れた。
「このように、同じ能力なのにスピードはオレが上だ。」
「それでオレより上だと思わないことだ・・・!」
 アナザーフォースに言い返して、アキトが立ち上がって彼に向かっていく。
「遅い。別世界のオレでもこの程度とは・・」
 アナザーフォースがため息をついてから、アキトの動きを見切って回し蹴りを繰り出した。
「うっ!」
 アキトが蹴り飛ばされて、激しく地面を転がる。
「これが、別のフォースとなったオレの力。今のお前、以前のオレを上回るに至った。」
 アナザーフォースがアキトを見下ろして、自分の力の高まりを実感する。
「たとえお前が何をしようと、オレに勝つことはできない。」
「言ったはずだ・・これでオレより上だと思わないことだと・・・!」
 アナザーフォースに言い返して、アキトが立ち上がる。
「オレの力は、こんなものではない・・・!」
 アキトがフォースドライバーの右のスイッチを上に上げて、レバーを1度閉じて引いた。彼の体から稲妻のようなエネルギーが取り巻く。
「ならばどれほどのものか、オレに見せてみろ。」
 アナザーフォースも足に力を入れて、アキトと同様のエネルギーを発した。
「ギルスティンガーブレイク!」
「アナザーギルスティンガーブレイク。」
 アキトとアナザーフォースが同時に足を振りかざして、キックをぶつけ合った。
「ぐあっ!」
 アキトが力負けして、アナザーフォースに蹴り飛ばされた。
「オレがやられただと!?・・本物のフォースのオレが・・・!?」
 必殺技も押されて、アキトが愕然となる。
「これで理解するには十分だろう。それとも倒されるまで理解できないというのか?」
 アナザーフォースがひと息ついて、アキトに告げる。
「やられるわけにはいかない・・オレは、ここで倒れるわけにはいかない・・・!」
 アキトが力を振り絞って、アナザーフォースに鋭い視線を向ける。
「オレの、オレたちの力はこれだけではない・・!」
 アキトは言いかけて、ドライバーのバックルの左にあるスイッチを押して、アイコンの1つにタッチした。フォースの装甲が変化して、黒と金の光があふれ出してた。
「ダークフルバースト!」
 新たなる姿「ダークフルバースト」となったアキトが名乗りを上げる。ダークフルバーストにはウルトラマンベリアル、仮面ライダーディケイド、暴太郎戦隊ドンブラザーズ、ストライクフリーダムガンダムの力が宿っていた。
「この力をオレは持っていないと思っていたのか?」
 アナザーフォースがあざ笑って、同じように黒と金の光を放出して、装甲を変化させた。
「お前にできてオレにできないことはない。オレはお前、お前はオレなのだから。」
「それでオレを超えた気になっているのか・・・!」
 勝利を確信しているアナザーフォースに、アキトがいら立ちを覚える。
「気になっているのではない。確実に超えていると理解しているのだ。」
 アナザーフォースが告げて、アキトに向かって前進する。アキトが構えを取った瞬間、アナザーフォースの姿が彼の視界から消えた。
「フォースドラグーン!」
 アキトが光の矢「フォースドラグーン」を多数出現させて、自分の周辺に展開させた。
「これで奇襲を仕掛けても、ドラグーンに足止めされ・・」
 フォースドラグーンですぐに対応できると考えるアキト。次の瞬間、新たに別のドラグーンが現れて、アキトのドラグーンとぶつかり合った。
「何っ!?」
「お前にできてオレにできないことはないと言っただろう。」
 驚きの声を上げるアキトに、アナザーフォースが言いかける。彼がアキトの後ろに回り込んで、両手を前に出して光を放った。
「ぐっ!」
 アキトも振り向き様に手から光を放つが、アナザーフォースの光に押し切られた。
「アイツ、ことごとくオレと同じ力を・・・!」
 アキトがダメージを痛感しながら、アナザーフォースに鋭い視線を向ける。
「遊びはここまでだ。一気に攻めさせてもらう。」
 アナザーフォースが高速で距離を詰めて、アキトを宙へ蹴り飛ばした。彼はすぐに飛行して、アキトに連続で突撃を当てていく。
(このままやられてたまるか・・オレが倒れれば、世界が・・・!)
 アキトがフォースドラグーンを強引に動かして、アナザーフォースを狙ってビームを発射させた。アナザーフォースが彼から離れて、ビームをかわす。
「これで決める!」
 アキトがフォースドライバーの右のスイッチを上に上げて、レバーを1度閉じて引いた。彼の体から黒と金の光が放出されていく。
「フォースフルバースト!」
 アキトが両手を前に出して、フォースドラグーンとともに一斉に光線を発射した。
「アナザーフォースバースト。」
 アナザーフォースも同様に光線を発射した。アナザーフォースの光線がアキトの光線を押し込んで、彼のいる場所に爆発を引き起こした。
「パワーもスピードも能力も、全てがオレが上となった。お前の代わりに、オレが全ての世界を粛正する。」
 倒れたアキトを見下ろして、アナザーフォースが自分の考えを口にする。アキトは力尽きて、フォースへの変身が解けた。
「アキト・・・!」
 戻ってきた英寿がアキトを見て驚きを覚える。
「戻ってきたか。ドラスでは役不足だったか。」
 アナザーフォースが英寿に振り向いて呟く。
「オレは別世界の鷹矢アキト。だがアナザーライダーになったことで、オレはこの世界のオレを上回っている。」
「同じ自分だから手が出せなかった・・わけではないようだな。」
 アナザーフォースが語りかけて、英寿が状況を把握する。
「たとえ違う能力だとしても、オレはお前をも上回る。それを今、証明するとしよう。」
「オレを同じように倒せると思わないことだ。」
 攻撃の狙いを向けるアナザーフォースに、英寿が冷静に言い返した。
「ちょっと待った。」
 そこへ声がかかって、英寿とアナザーフォースが振り向いた。
 3人の戦士が英寿たちの前に現れた。姿は違っていたが、いずれも仮面ライダーだった。
「ここから先はオレたちも混ぜてもらうぞ。」
 ライダーの1人、乾巧(いぬいたくみ)=ファイズが英寿たちに言う。
「あれってもしかして、アナザーライダーっていうのじゃ・・・!?」
「あぁ!聞いたことのないヤツみたいだけど・・!」
 もう1人のライダー、紅渡(くれないわたる)=キバに、ベルト「キバットベルト」にいるコウモリ、キバットバット3世が答える。
「だったら、そいつと戦っているのは、オレたちの仲間ってことでいいのか?」
 ライダー、葛葉紘汰(かずらばこうた)=鎧武(がいむ)が英寿に目を向ける。
「あの3人も、オレと同じライダーだというのか?」
 英寿も紘汰たちを見て呟く。
「ファイズ、キバ、鎧武もこの世界に来ていたか。ライダーが束になってかかってきても、オレは勝つ。」
 アナザーフォースが紘汰たちと戦っても勝てるという自信を持っていた。
“1度戻れ、アナザーフォース。体勢を整える。”
 そのとき、アナザーフォースの頭の中に声が響いてきた。
(オレの前に、倒すべき仮面ライダーが5人もいる。ヤツらを始末するチャンスだとしてもか?)
“力を過剰に出すな。お前はまだ、アナザーライダーの力を完全に制御しているわけではない。”
 不満を覚えるアナザーフォースに声の主が制する。
(分かった。だが次に戦うときは、止めても聞かないぞ。)
 アナザーフォースが聞き入れて、アキトに振り返る。
「お前たちを始末するのは次の機会にする。長生きしたければ、オレに会わないことを祈ることだな。」
 アナザーフォースが英寿たちに言って、この場から姿を消した。
「待て!・・逃げられたか・・!」
 キバットがアナザーフォースを止められなかったことを悔しがる。
「お前たちも、こことは違う世界から来たのか?」
 英寿がギーツへの変身を解いて、紘汰たちに問いかけた。
「あぁ。この世界で会って、ここまで来たってわけだ。」
 紘汰が答えて巧、渡とともに変身を解いた。
「そうか・・オレはこの世界の人間だ。」
 アキトが立ち上がって、紘汰たちに声を掛けてきた。
「オレが、別の世界のオレにやられるとは・・・!」
 アナザーフォースに敗れたことに屈辱を感じて、アキトが手を強く握りしめる。
「いろいろ事情があるみたいだけど、ここのことを教えてもらえないかな?あのアナザーライダーのことも、放っておけないし・・」
 渡がアキトに話を聞いて、紘汰と巧も頷いた。
「あぁ・・体を休めながら、お前達にも話す・・」
 アキトはひと息ついてから、紘汰たちにも話をすることを決めた。

 声に呼び止められて、アナザーフォースが帰還した。
「どういうつもりだ?少なくとも、あそこでフォースにとどめを刺すことができたのに。」
 アナザーフォースが声の主に対して不満を口にする。
「お前のアナザーライダーとしての力は、まだお前の体に完全に馴染んだわけではない。だが次ならば問題なく全力を出せるだろう。」
 声の主がアナザーフォースに告げて、彼にその正体を現した。
「この力を与えてくれたことには感謝しているぞ、邪眼。」
 声の主、邪眼に礼を言うアナザーフォース。
「だがこの世界のアキトは、オレの手で確実に始末する。これ以上の邪魔は、たとえお前でも許さんぞ。」
「好きにするがいい。だが他の者に、お前の1対1の邪魔をされるわけにはいかないだろう。」
 念を押すアナザーフォースに邪眼が告げる。彼らの周囲に3人の戦士が現れた。
「これは・・・!?」
「この3人と私が行けば、確実にヤツらを滅ぼせる。お前の本領にも期待しているぞ、アナザーフォース。」
 驚きを覚えるアナザーフォースに邪眼が告げる。3人の戦士を伴って、彼らは再び出撃した。

 

 

第3章へ

 

その他の小説に戻る

 

TOPに戻る

inserted by FC2 system