ザ・グレイトバトル

-命の解放- 

第1章

 

 

ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊、ガンダム。

地球や宇宙の平穏、正義と平和、それぞれの大切なものを守るために戦う存在。

 

みんなの知らない世界でも、その戦士たちは存在していた。

 

 

 1人の青年が全力で走っていく。彼女の行く先の街は、火の海と化していた。

 街にたどり着いた青年は、広がる炎にあおられるも、立ち止まらずに道を駆け抜けていく。

杏子(きょうこ)!どこだ、杏子!?

 青年が妹の名を叫ぶ。しかし燃え盛る炎の中、彼の声に誰からの返事もない。

 やがて青年は家の近くに来ていた。家にも火が回っていたが、中にはほとんど火が入っていなかった。

「杏子、いるのか!?返事をしてくれ!」

 青年が家の中に入って、杏子を呼ぶ。しかし家の中の部屋を全部回っても、誰もいない。

「うまく避難できたのか・・それならいいけど・・・」

 杏子の無事を信じて、青年は家を出た。

 次の瞬間、まだ火が大きく回っていなかったはずの家が、突然爆発を起こした。青年が爆風に押されて、地面を転がった。

「な、何だ・・!?

 起き上がった青年が振り返って、緊張をふくらませる。燃え盛る炎の中から、1つの人影が浮かんだ。

「別の地上ではあるが、私の悲願を果たすことができそうだ。」

 人影が呟いて笑みを浮かべた。

「お前が・・お前がこの街を・・!?

 青年が人影に振り向いて、怒りの眼差しを送る。

「この愚かしき地上を一掃し、改めて作り変えるのだ。」

「何を言っているんだ・・わけの分かんないことのために、この街をこんな・・!?

 目的を口にする影に、青年が激情のままに飛びかかる。しかし影に軽々とかわされて、青年が前のめりに転ぶ。

「貴様ごとき、私に触れることもできない。もはや私が直接手を下すまでもない・・」

「ふざけるな・・こんなことをした犯人であるお前は、オレが捕まえる・・!」

 見下ろしてくる影に、青年が怒りをふくらませていく。

「それはできはしない。全ての世界は正しく修正される。お前たちはその栄えある人柱となるのだ。」

 影は勝ち誇るように笑みをこぼして、横に視線を向ける。その先にいたのは、横たわる1人の少女だった。

「杏子!?

 青年が少女、杏子に叫んで、力を振り絞って駆け寄る。

「お前がやったのか!?・・お前が杏子を!?

 青年が影に向かって怒りをふくらませる。

「その娘だけではない。この世界全てを、私が粛清するのだ。」

「ふざけるな!・・よくも杏子を・・みんなを!」

 笑みをこぼす影に、青年がさらに怒りを燃やした。その彼の前に巨大な怪物が姿を現した。

「後はヤツに任せるとするか。力はそれほどでもないが、知恵は働くからな。」

 影はその怪物、円盤生物の1体、ブニョにこの場を任せて姿を消した。

「待て!」

 青年が影を追おうとするが、その前にブニョが立ちはだかった。

「邪魔をするな、バケモノが!」

 青年が銃を手にして、ブニョを迎え撃つ。しかし大きさの違いから、力の差は明らかだった。

 そのとき、上空から5つの光が飛び込んで、ブニョの行く手を阻んだ。光の正体は、光をまとった動物の顔をしたメカだった。

 5体のメカは、上空から降下してきた巨大ロボから射出されたものだった。

「ゴセイグレート、降臨!」

 巨大ロボ、ゴセイグレートには5人の戦士が声を上げた。

 ブニョがゴセイグレートに狙いを変えて、口から火花を噴射した。火花を浴びて爆発に巻き込まれるゴセイグレートだが、すぐに体勢を整える。

「ヘッダーアタック!」

 ゴセイグレートが手足となっているメカ「ゴセイヘッダー」を射出して、ブニョにぶつけた。怯んだブニョが口から舌を伸ばして、ゴセイグレートの頭に巻きつけた。

 ゴセイグレートが手で舌をつかんで引っ張って、ブニョを振り上げて投げ飛ばした。

 倒れたブニョが口からオイルを吐いて、ゴセイグレートを滑らせようとした。しかしゴセイグレートは飛翔して、オイルをかわした。

Victory charge.”

「グレートストライク!」

 ゴセイグレートが背負っていた剣「ドラゴンソード」を手にして、急降下する。炎を刀身にまとったドラゴンソードが振り下ろされて、ブニョが切り裂かれた。

 決定打を受けたブニョが倒れて、ドロドロに溶けて消滅した。

 ゴセイグレートに救われたことを実感した青年。しかし杏子や街の人たちのことを気にして、彼は胸を締め付けられる思いを感じた。

(もっと早く来てくれたら、みんなは・・・!)

 敵をすぐに追い払えるほどの力。それを持つ戦士たちなら杏子たちを救えたと思って、青年はゴセイグレートに鋭い視線を向けていた。

 これが青年、赤木(あかぎ)蓮斗(れんと)の悲劇だった。

 

 様々な怪獣、怪人、宇宙人の侵入や襲撃に備えて、地球防衛隊では特別チームが置かれていた。

 その名は「Gフォース」。機動兵器「モビルスーツ」を主力としていて、隊員たちもその操縦に長けた者ばかりである。

「1週間ぐらい前まで、怪獣や宇宙人が地球に入ってきて、暴れてきたけど、今はそれがウソみたいにぱったり出てこなくなっちまったな・・」

 Gフォースの隊員の1人、川西(かわにし)ギンが肩を落とす。

「いいじゃないの。それが平和というものなんだから・・」

 もう1人の隊員、東出(ひがしで)イズルが落ちつきを払って答える。

「その通りだ。我々の任務は地球を守り、平和を守ることだ。何も起きず平和が保たれるなら、それに越したことはない。」

 Gフォースの隊長、桜木(さくらぎ)トウジがイズルに賛成して、ギンを励ます。

「隊長・・それはそうですけど・・」

 トウジからも言われて、ギンが大きく肩を落とす。

「ところで、ハルキとナツはどうしたんだろう・・?」

 ギンが2人の隊員、(はやぶさ)ハルキと羽鳥(はとり)ナツのことを聞く。

「2人は特別監獄へ行っている。彼に会いに・・」

 トウジがハルキたちについて答える。

「アイツによく会っているみたいですけど、大丈夫なんでしょうか・・?」

「ハルキなら大丈夫だろう。それに彼が信じる心を持つことへの手伝いになれるはずだ。」

 イズルが心配の声を上げて、トウジがハルキたちへの信頼を告げた。

「悪いことが何も起こらなければいいですが・・・」

 イズルが不安を抱えて、ギンは警戒心を強めていた。

 

 Gフォースの管轄する特別牢獄。Gフォースが関わった事件の敵のうち、改心の見込みのある者や重要参考人がその牢屋に入れられている。

 ハルキはナツとともに特別監獄を訪れていた。1番奥にある牢屋には、彼のよく知る1人の青年が入っていた。

 鷹矢(たかや)アキト。ハルキのかつての親友だったが、当時の防衛隊の在り方に不満を持ち、宇宙人たちを従えて地球へ復讐しに戻った。

 復讐と地球襲撃は阻止され、アキトはGフォースに拘束されることになった。

「いつまでここに入れておくつもりだ?オレはこの地球で平和に暮らすつもりも、お前たちの味方になるつもりもない・・」

 アキトがハルキに向けて、冷たく声を掛ける。

「オレもトウジ隊長たちも、少しでも地球をよくしていこうと力を尽くしている。すぐに変われるわけじゃないけど、少しずつよくなっている・・」

「だからもう少し待てと?そうやって引き延ばそうとしても、オレのお前たちへの不信感が増すだけだぞ・・」

 地球や防衛隊の改善を語るハルキだが、アキトは聞き入れない。

「そんなマネをするつもりは、私たちにはないわ。そんなことをしても、私たちのためにならない・・」

 ナツが悲しい顔を浮かべて、アキトに告げる。

「アキト、お前が仕掛けた攻撃で、上の人間も自分たちの過ちを痛感し、反省している。人間がお前の言う通りの、過ちを改めない存在なら、オレでも救いようがないと思う・・だが地球人全員が、そんな人ばかりじゃない・・!」

 ハルキが真剣な顔で、地球人の正しい部分を話す。

「お前の言うことが正しいかどうか、今のオレには見届けるしかないようだ・・」

 アキトが皮肉を込めた笑みをこぼして、牢屋でおとなしくすることにした。

(アキト、お前はまたみんなのことを信じられる時が来る・・それを、オレは信じている・・・)

 アキトの前から去る中、ハルキは彼への信頼を感じていた。

 

 地球防衛隊に所属する宇宙ステーション「マーク7」。ステーションのレーダーは、宇宙で発生している空間の歪みを捉えていた。

「この1週間でこれほどの数の空間の歪み・・これは異常ではないでしょうか・・」

「自然発生でここまでとは考えにくい・・何者かの仕業の可能性が高い・・」

 隊員の1人が口にした言葉を受けて、隊長が警戒を強める。

「引き続き空間の異常を調査する。報告は地球の本部にも逐一すること。」

「了解。」

 隊長が指示して、隊員が答えた。

(何かイヤな予感がする・・1年前の地球襲撃のような大事件が起こりそうな・・・)

 一抹の不安を感じて、隊長がステーションの窓越しから外を見て、空間の歪みを見つめていた。

 

 マーク7からの報告は防衛隊本部、そしてGフォース本部にも伝えられた。

「空間の歪みの数が、マーク7でも放置できないほどになってきたか・・」

 トウジが現状に対して深刻な顔を浮かべる。

「別の世界から空間を超えて、怪獣や宇宙人が攻めてくる可能性が高い。警戒を怠るな。」

「はい!・・よーし、今度こそオレたちの手で地球を守ってやるぞ!」

 トウジからの激励に応えて、ギンが意気込みを見せる。

「空間の歪み・・1年前のように、ウルトラマンや仮面ライダー、スーパー戦隊が来る可能性も・・・」

 ハルキが別の世界の戦士たちのことを思い出す。

 地球や宇宙、大切なものを守るために戦う戦士たち。別の世界から来た彼らと、ハルキたちは出会い共闘した。

 ハルキはその戦士たちから教えられたことを、大切にしていた。

「また、会えるかな、あの人たちに・・・?」

 ナツもその戦士たちのことを気に掛ける。

「可能性がないわけじゃないが、願ってばかりもいられないぞ・・」

「それは分かるけど・・願うのが悪いってことには・・・」

 ハルキが言い返すと、ナツが表情を曇らせた。

 そのとき、Gフォース本部の指令室に警報が鳴り響いて、ハルキたちが緊張を覚えた。

「山岳ポイント“KO17”に怪獣出現!」

 イズルがレーダーを見て、トウジたちに報告する。

「全員出動!現場の住民を怪獣から守るのだ!」

「了解!」

 トウジが呼びかけて、ハルキたちが答える。彼らが指令室からドックへ向かい、それぞれ人型の機体に乗り込んだ。

 ハルキが乗った機体は「フォースガンダム」。「モビルスーツ」に属する機体で、戦闘データを駆使することで、様々な変形や戦い方を可能とする。

 ナツ、ギン、イズルの乗る機体は「Gパニッシャー」。こちらもモビルスーツで、Gフォースの基本機体である。

「隼ハルキ、フォースガンダム、いきます!」

「羽鳥ナツ、Gパニッシャー、出ます!」

「川西ギン、Gパニッシャー、行くぜ!」

「東出イズル、Gパニッシャー、発進します!」

 フォースガンダムと3機のGパニッシャーがGフォースの本部から発進した。

 

 そばに火山が点在する山岳地帯に、1体の怪獣が現れた。食葉怪獣ケムジラである。

 元々毛虫のような姿と大きさだったが、迎撃に出た警官の発砲を受けて巨大化したのである。

 ケムジラは山岳地帯から町へ前進していた。そこへフォースガンダムとGパニッシャーが駆けつけてきた。

「アイツか・・何だか気色悪い姿のヤツだな・・!」

 ギンがケムジラを見て息をのむ。

「町に入れたら被害が増すよ・・ここで食い止めよう!」

 イズルが呼びかけて、ハルキたちが頷く。フォースガンダムとGパニッシャーが二手に別れて、ケムジラの進行を阻む。

 ナツとイズルのGパニッシャーがビームライフルを手にして、ケムジラにビームを当てる。一瞬怯むケムジラだが、再び全身をしていく。

 フォースガンダムとギンのGパニッシャーがビームサーベルを手にして、ケムジラに向かって加速する。振りかざしたビームサーベルが、ケムジラの体を切りつけた。

 ダメージを負ったケムジラが、口から糸を吐き出した。糸が縄のようにフォースガンダムのビームサーベルの刀身に巻きついた。

「コイツ・・!」

 ハルキが毒づいて、フォースガンダムがビームサーベルを振りかざして、糸を切り裂いた。

「接近は危険だ!糸を巻かれて身動きが取れなくなるぞ!」

 ハルキが注意を呼びかけて、フォースガンダムとGパニッシャーがケムジラから距離を取る。4機がビームライフルでケムジラを射撃する。

 ケムジラが撃たれて怯むも、尻から黄色のガスをおならのように吹き出してきた。

「な、何だ!?

「これじゃ見えない・・アイツがどこにいるのか・・!」

 視界をガスでさえぎられて、ギンとイズルが危機感を覚える。

「キャッ!」

 ナツのGパニッシャーがケムジラの吐いた糸に縛られて、動きを封じられた。

「ナツ!」

 ハルキが叫んで、フォースガンダムがケムジラへビームを放って引き離す。フォースガンダムがビームサーベルを振り下ろして、Gパニッシャーを捕まえている糸を切った。

「大丈夫か、ナツ!?

「うん・・助かったわ、ハルキ・・!」

 ハルキが心配の声を掛けて、ナツが微笑んで答えた。

「コイツ、虫の癖に厄介なヤツだ・・!」

「口を攻撃して、糸を出せないようにすれば・・!」

 ギンが焦りを噛みしめて、イズルが作戦を練る。

「オレが注意を引き付ける!3人はその隙に攻撃してくれ!」

 ハルキが呼びかけて、フォースガンダムがケムジラに向かっていく。ケムジラがフォースガンダムを狙って糸を吐き出す。

「今だ!集中攻撃!」

 ギンが掛け声を上げて、3機のGパニッシャーがビームライフルを発射した。しかしケムジラは体勢を低くして、ビームをかわした。

「何っ!?

 ギンが驚きの声を上げて、ケムジラが起き上がり様に糸を吐き出した。ギンのGパニッシャーが糸を巻きつけられて、ケムジラに引き寄せられる。

「このままじゃやられてしまう・・・!」

“ハルキ、変身するんだ。”

 焦りをふくらませるハルキに向けて声が響いた。声は彼の頭の中だけに伝わっていた。

(フォース・・!)

 ハルキが声の主、フォースに答えて、左腕に着けている腕輪「フォースブレス」に目を向けた。

(分かった・・行くぞ、フォース!)

 ハルキが頷いてから、フォースガンダムのコンピューターを操作する。

(フォースガンダム、オートコントロール・・!)

 彼はフォースガンダムを自動操縦にしてから、フォースブレスを構えた。

「フォース!」

 ハルキがフォースブレスを付けている左腕を前に伸ばした。彼が光を発しながら、光の巨人に変身した。

 光の巨人、ウルトラマン。その巨人は“惑星F4”出身のウルトラマン、フォースである。

 フォースはハルキと一心同体にある。ハルキはフォースブレスを使うことで、フォースに変身することができるのである。

 フォースがジャンプをして、ケムジラにキックを当てて突き飛ばした。ケムジラが遠ざけられた間に、フォースがGパニッシャーに巻きついている糸を引きちぎった。

「フォース、助かった・・ありがとう・・!」

 ギンが安心の吐息をついてから、フォースに礼を言う。フォースが小さく頷いてから、ケムジラに目を向ける。

「気を付けて、フォース!糸に捕まると厄介だ!」

“そのようだ。距離を取って攻撃しよう・・!”

 ハルキからの注意に答えて、フォースが上空に飛び上がる。フォースに変身しているハルキは、彼の中にいた。

 フォースが長距離からケムジラを攻撃しようとして、光線を撃つ体勢に入った。

「フォース、後ろから別の怪獣が!」

 そのとき、ナツがフォースに向かって呼びかけてきた。次の瞬間、彼の左腕に鋭いくちばしが突き刺さった。

「うおっ!」

 左腕を刺されてうめくフォース。腕からくちばしを振り払った彼だが、大きなダメージのために体勢を崩して地上に落下した。

「フォース!」

 倒れたフォースにギンが叫ぶ。フォースを襲ったのは、1体の鳥の怪獣。

 火山怪鳥バードン。山岳地帯にある火山の火口に巣を作っていた怪獣で、鋭いくちばしが最大の武器である。

「あのくちばし・・あんなのを食らったら、いくらウルトラマンでもひとたまりもない・・!」

 イズルがバードンへの警戒を強める。

「フォースを援護する!ハルキとナツは鳥を、オレとイズルは虫を食い止める!」

「了解!」

 ギンが指示を出して、ナツとイズルが答える。

「ハルキ?ハルキ、どうしたんだ!?

 返事のないハルキに、ギンが呼びかける。彼とイズルはフォースガンダムが自動操縦になっていることに気付いていない。

「私がハルキくんと連絡を取るから、ギンさんとイズルさんは虫の怪獣を!」

 ナツが呼びかけて、彼女のGパニッシャーがフォースガンダムと合流した。ナツはハルキがフォースに変身することと、フォースガンダムが今、自動操縦になっていることを知っていた。

「ハルキくん、大丈夫!?腕は・・!?

 ナツがフォースに目を向けて、ハルキに呼びかける。

「不意を突かれた・・左腕が、思うように動かせない・・!」

 ハルキが痛みで顔を歪めながら答える。フォースが受けたダメージは、中にいるハルキも受けるのである。

「長引けば我々は不利になる・・短時間で怪獣を倒す・・!」

「フォースアーマーを使うんだ・・あのくちばしに耐えるには、これしかない・・!」

 フォースとハルキが声を掛け合う。

「頼むぞ、フォースガンダム・・・!」

 腕の痛みに耐えながら、ハルキがフォースブレスの画面をスライドして、マークを表示させた。

「フォースアーマー!」

 フォースガンダムが変形をして、フォースの体に鎧のように装着された。フォースガンダムはフォースを強化するための装甲「フォースアーマー」になった。

 バードンが急降下して、くちばしをフォースに突き刺そうとしていた。フォースが横に動いて突撃をかわしたが、バードンは着地の直後に再び彼に襲い掛かってきた。

 フォースアーマーにバードンのくちばしが命中した。しかしフォースアーマーは火花が散っただけで傷はなく、フォースもダメージを受けていない。

 フォースが右のパンチを繰り出して、バードンの体に当てて突き飛ばした。

 怯んだバードンがくちばしを開いて火炎を吐き出した。フォースアーマーを身にまとうフォースは、火炎にものともせずに前進していく。

 フォースが右手を振り上げて、バードンを上空へ跳ね上げた。バードンは翼をはばたかせて、空中で体勢を整えた。

「フォース、チャージシュートは撃てるか!?

「左腕のダメージがまだ大きい・・エネルギーを集中させることができない・・・!」

 ハルキが声を掛けて、フォースが自分の状態を伝える。

「右手にエネルギーを集中させて放つしかないが、時間がかかる・・!」

「フォースアーマーで防ぎながら、時間を稼ぐしかないが・・・!」

 打開の糸口を探るフォースとハルキ。フォースが構えた右手にエネルギーを集めていく。

 バードンがくちばしから火の球を連射する。フォースが跳躍して火の球をかわしていく。

「これならエネルギーを大きく消耗させる前に、チャージができそうだ・・・!」

 十分な時間を稼げると思って、フォースがさらにエネルギーを込めた。

 そのとき、フォースが突然左腕を何かに叩かれて、体勢を崩した。

「うぐっ!」

 倒れたフォースが再び激痛を覚える。集中力が乱されて、右手に溜めていたエネルギーが弱まった。

「な、何だ!?・・あの鳥でも虫でもない・・・!」

 2大怪獣の攻撃を受けたのではないと思い、ハルキとフォースが周りに目を向ける。

「もう1体、怪獣が現れました!」

 ナツが新たに現れた怪獣を目にして、報告をする。その怪獣は獰猛な爬虫類を思わせる姿をしていた。

「3体目の怪獣・・こんなときに出てくるなんて・・・!」

 ハルキが爬虫怪獣バデルスの出現に、ハルキが焦りをふくらませていく。

「フォースを援護する!イズル、行くぞ!」

「ダメだよ!こっちも虫怪獣にかかりっきりで、そっちに手が回せない・・!」

 ギンが指示を出すが、イズルはケムジラの迎撃で手いっぱいになっていた。

「ちくしょう・・オレがやるしかないか・・!」

 ギンが毒づきながら、Gパニッシャーを動かしてバデルスに向かっていく。Gパニッシャーがビームライフルを発射するが、バデルスはビームを受けても平然としていた。

「なんてヤツだ・・コイツもどんでもないバケモノだ・・!」

 ギンがバデルスの強さを目の当たりにして、驚きを隠せなくなる。

 バデルスが長い尻尾を振りかざして、ギンのGパニッシャーにぶつけた。

「おわっ!」

 Gパニッシャーが横に強く叩かれて、ギンが衝撃を受けて苦痛を覚える。

「ギンさん!」

 ナツがギンに向かって叫ぶ。ナツのGパニッシャーもバードンのけん制から離れることができない。

「このままじゃみんなが・・・!」

 打開の糸口が見つけられず、ハルキが絶体絶命を痛感する。

「ストリウムブラスター!」

 そのとき、1つの光線が上空から飛んできて、バードンに命中した。体勢を崩したバードンが地上に落下した。

「今の光線は・・!?

 ハルキが驚きを覚えて、フォースが上空を見上げた。そこにいたのは、1人のウルトラマンだった。

「火山怪鳥バードン・・かつて父さんの命を奪った怪獣だ・・!」

 そのウルトラマン、タイガがバードンを見て警戒を覚える。

「3体も怪獣がいて、みんな苦戦しているみたいだ・・・!」

 タイガの中にいる青年、工藤(くどう)ヒロユキが状況を確かめる。

「ウルトラマンがいる!・・オレたちの知らないウルトラマンだ・・・!」

 タイガがフォースを見て、戸惑いを覚える。

「腕を痛めているようだ・・みんなを助けよう!」

 ヒロユキが呼びかけて、タイガが地上に下りてフォースと合流した。

「君もウルトラマンのようだ・・私はフォース。ウルトラマンフォースだ。」

「オレの名はタイガ。ここからはオレが怪獣たちと戦う!」

 フォースとタイガが自己紹介をして、バデルスに目を向ける。

「ウルトラマン、虫の怪獣は私たちに任せて!」

 ナツが呼びかけて、ハルキが頷いた。Gパニッシャー3機がケムジラを包囲する。

 バデルスがフォースとタイガに向かって、目から光線を出してきた。フォースたちがジャンプして、光線をかわした。

“カモン!”

 ヒロユキが右腕に着けているガントレット「タイガスパーク」に、アイテム「ウルトラタイガアクセサリー」の1つ「プラズマゼロレット」をリードさせた。

“プラズマゼロ・コネクトオン!”

 タイガの体にウルトラマンゼロの力が宿る。

「ワイドタイガショット!」

 タイガが両腕をL字に組んで、光線を発射する。光線はバデルスの体に直撃したが、バデルスはビクともしない。

「この光線を受けても、ダメージを受けていないのか・・!?

「あの怪獣はパワーが並外れているみたいだぞ・・!」

 ヒロユキとタイガがバデルスの耐久力を目の当たりにして、緊張をふくらませる。

「力ならば私に任せてもらおう!」」

 そのとき、2人に向かって声が響いてきた。

「タイタス・・!」

「それに、あの怪獣はバデル族の操っていた爬虫怪獣。私の故郷、“U40”の宿敵だ・・!」

 タイガが戸惑いを感じて、声の主、タイタスがバデルスへの敵意を見せる。

 タイタスは光の国「M78星雲」と並ぶウルトラマンの星、U40のウルトラマンである。バデル族はU40のウルトラ戦士の宿敵だったが、撃退され全滅したはずだった。

「分かった、タイタス・・行くよ!」

「おう!」

 ヒロユキが答えて、タイタスが頷いた。

“カモン!”

「力の勇者、タイタス!」

 ヒロユキがウルトラタイガアクセサリー「タイタスキーホルダー」をタイガスパークでリードした。

「バディー・ゴー!

 彼がタイガスパークを高く掲げた。

“ウルトラマンタイタス!”

 タイガの姿が大きな体格のウルトラマンに変わった。タイガに代わってタイタスが姿を現した。

「オレの名はタイタス!賢者の拳が全てを砕く!」

 タイタスが名乗りを上げて、拳を構える。

「爬虫怪獣、ここからはオレが相手だ!」

 タイタスが言い放って、バデルスに向かっていく。バデルスが振った尻尾を腕に当てられたが、タイタスはものともせずに距離を詰めた。

 タイタスが腕を振りかざして、重みのあるパンチを繰り出した。バデルスがパンチを体に受けて、苦痛を覚えて叫ぶ。

 タイタスが続けてバデルスに組み付いて、投げ飛ばそうとした。するとバデルスがタイタスの左肩に噛みついてきた。

「うおっ!」

 左肩に痛みを覚えて、タイタスがうめく。バデルスを放さないタイタスだが、体勢を崩しそうになってふらつく。

 そこへフォースが飛び込んで、突撃でバデルスを横から突き飛ばした。

「大丈夫か、タイタス!?

「すまない!助かった!」

 フォースが呼びかけて、タイタスが感謝した。倒されたバデルスが起き上がって、フォースたちに近づいていく。

 そのとき、フォースの胸にある「カラータイマー」が青から赤になって点滅を始めた。カラータイマーはウルトラマンのエネルギー量を表している。

「いけない・・フォースの戦える時間が少ない・・!」

 ハルキが焦りを感じる中、フォースはタイタスとともにバデルスに立ち向かう。

 そのとき、バードンがフォースたちに迫って、翼をはばたかせて突風を起こしてきた。

「バードン・・かつて父さんたちの命を奪った怪獣・・!」

 タイガがバードンに対して警戒を強める。

「長引けない・・急いで倒したほうがいい・・!」

 ヒロユキが言いかけて、タイタスが頷いた。彼とフォースがバードンにも警戒を強めていた。

 そのとき、1つの光線が飛び込んできて、バードンに直撃した。

「な、何だ!?

「また新しいウルトラマン!?

 ハルキとヒロユキが光線に対して驚きを覚える。フォースとタイタスが光線の飛んできたほうへ振り向く。

 そこにいたのは1体の巨大ロボ。ロボが胴体から放った光線「フォースレーザー」がバードンに命中したのである。

「何だ、あのロボットは!?

「味方なのか!?・・それとも、敵・・!?

 ギンとイズルがロボに対して声を荒げる。

「あなたたちは誰ですか!?こちらはGフォースです!」

 ナツがロボに向かって通信を試みる。

「これは“フォースロボ”。そしてオレたちは地球防衛隊所属の無双戦隊、フォースレンジャーだ!」

 フォースロボのコックピットにいる戦士、フォースレッドが自己紹介をする。彼とフォースブルー、フォースイエローで構成されたフォースレンジャーが、戦いの場に現れたのだった。

 

 

 

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