ザ・グレイトバトル
-ロストヒーローズ-
第4章
ファイブキングの放つ様々なビームの攻撃を、シンの駆るデスティニーは素早くかわしていく。
「このっ!」
シンが戦意を強めて、デスティニーがビーム砲を構えて発射する。ファイブキングが左手の目からビームを吸収して、右手から跳ね返した。
「アイツ、全身が武器だらけじゃないか!」
ファイブキングの強さと能力に、シンが毒づく。
「だけど、デスティニーはどんな状況や相手でも!」
シンが言い放って、デスティニーがビームソードを手にして構える。上空にいるデスティニーに向かって、ファイブキングも羽をはばたかせて飛び上がる。
ファイブキングが連続で放つビームをかいくぐり、デスティニーが飛び込みビームソードを振りかざす。デスティニーの一閃が、ファイブキングの胴体を切りつけた。
ファイブキングが右手のハサミを突き出すが、デスティニーは後ろに動いてかわす。同時にデスティニーは両肩に搭載されているビームブーメラン「スラッシュエッジ」の1本を手にして投げつける。
ビームブーメランはファイブキングの右の翼を切り裂いた。体勢を崩して落下するファイブキングに、デスティニーがさらにビームブーメランを投げつける。
ビームブーメランによって、ファイブキングは左手の目と左の翼も切り裂かれた。完全に飛行ができなくなって、ファイブキングが地上に落下した。
「これでビームははね返せない!」
シンが言い放って、デスティニーがビーム砲を発射する。ビームがファイブキングの右手に命中して、ハサミを破壊した。
「お前のようなヤツの好き勝手にさせてたまるか!お前がいると、みんながムチャクチャにされてしまう!」
シンが目つきを鋭くして、デスティニーがビームソードを構えて突っ込む。デスティニーがビームソードを振り下ろして、ファイブキングの頭部に命中させる。
「とどめだ!」
シンの駆るデスティニーが、左手を突き出した。デスティニーの手のひらにはビーム砲「パルマフィオキーナ」が搭載されている。
デスティニーの左のパルマフィオキーナが、ファイブキングの頭部に直撃した。決定打を受けたファイブキングが倒れて、爆発を起こして消えていった。
「そうだ・・こんなバケモノも、みんなを苦しめるヤツも、許しちゃいけないんだ・・・!」
デスティニーがビームソードを下げる中、シンが自身に宿る意思を口にする。戦いを終わらせることを、彼は今も強く決意していた。
そのとき、デスティニーのレーダーが迫る熱源を捉えた。反応したシンがデスティニーを動かす。
デスティニーに向かってきたのは1つのビーム。デスティニーが回避してビームをかわした。
「何だ!?・・えっ・・!?」
視線を移したシンが目を疑った。デスティニーの前に現れたのは、ウルトラマンエックス。
「エックス!?どういうことなんだ!?」
エックスが攻撃してきたことに、シンが驚きを覚える。エックスがデスティニーに向かって、再び攻撃を仕掛ける。
デスティニーが素早く動いて、エックスのパンチをかわす。
「何をする!?やめろ!」
シンが呼びかけるが、エックスは攻撃の手を止めない。エックスが振りかぶって、ザナディウム光線を放ってきた。
「ぐっ!」
シンがとっさにデスティニーを動かして、ビームシールドを展開して光線を防ぐ。光線は爆発して、デスティニーが押されてシンが衝撃に揺さぶられる。
「いい加減にしろ、エックス!大地も!」
「違う、シン!そこにいるのは私ではない!」
声を張り上げて呼びかけたシンに向けて、エックスが通信を通じて返事をしてきた。
「オレとエックスは敵の不意打ちで氷付けにされてしまった!オレたちの動きを止めて、エックスに化けてシンのところに行ったのは、暗黒星人ババルウ星人!」
大地も続けてシンに呼びかける。彼らの言葉を聞いて、シンが目の前にいるエックスへの疑惑を拭う。
ババルウ星人は暗黒宇宙の支配者とも呼ばれていて、ウルトラ戦士に化けて、ウルトラマンの同士討ちやウルトラマンへの疑惑の植え付けを図ったこともある。その変身能力は本物と見分けがつかないほどに優れている。
(エックスの光線は、怪獣を人形に変える能力を持っていた・・だけど今の光線は、普通の破壊光線だった・・・!)
エックスと大地の言葉を受けて、さらに思考を巡らせたことで、シンは目の前のエックスが偽者であることを確信した。
「偽物に化けてオレたちを騙そうとして・・正体を現せ!」
シンが怒りを叫んで、デスティニーがビーム砲を発射する。偽エックスも光線を放って、ビームとぶつけ合う。
光線とビームがぶつかって爆発が起こる。その中からデスティニーが飛び出してきて、右手を突き出してパルマフィオキーナを放った。
胸に射撃を受けて、吹き飛ばされた偽エックスが正体を現した。エックスに変身してシンを欺いたババルウ星人の姿を。
「もう少しのところで知られることになったか・・・!」
正体を明かされたことに毒づくババルウ星人。
「私はババルウ星人フェイル。この世界に来たお前たちにさらなる混乱をもたらそう。」
ババルウ星人フェイルが笑みを見せて、高らかに言い放つ。
「自分たちの目的のためだけに、オレたちを・・許さないぞ!」
怒りを一気にふくらませたシン。彼の中で何かがはじけたとき、彼の感覚が研ぎ澄まされた。
フェイルが左手を構えて、装備しているビーム銃を発射する。シンが即座に反応して、デスティニーが素早くビームをかわす。その動きは今まで以上に素早く正確になっていた。
フェイルが続けて鎖を射出する。デスティニーはスピードを上げて、これもかわす。
「ヤツめ・・スピードが格段に上がっている!?」
驚きの声を上げるフェイルに、デスティニーがビームソードを手にして飛び込んできた。振り下ろされたビームソードを、フェイルも素早くかわす。
「このままおめおめとやられるわけにはいかんぞ!」
フェイルが焦りをふくらませて、刺又「ババルウスティック」を手にして振りかざす。ビームソードとババルウスティックがぶつかり合うが、デスティニーがフェイルを押していく。
「バカな!?人間の兵器が、この私を脅かすなど・・あるはずがない!」
自分が追い詰められていくことに、フェイルが感情をむき出しにする。
「人間も宇宙人も関係ない・・人を悲しませて、世界をムチャクチャにするヤツを、オレは許さない!」
シンが言い放って、デスティニーがフェイルに向かって突っ込む。デスティニーのビームソードがフェイルの体を貫いた。
「こんなことが・・この、ババルウ星人が・・・!」
ビームソードを引き抜かれたフェイルが、力尽きて爆発を引き起こした。
「や、やった・・・!」
乱れた呼吸を整えて、シンが落ち着きを取り戻そうとする。
「持っていた潜在能力を引き出したっていうところか・・」
そこへ別の声が飛び込んで、シンが視線を移す。振り向いたデスティニーの前に現れたのは、ベリアルだった。
「ウルトラマン!?・・にしちゃ、ものすごく悪そうに見えるが・・・!」
シンがベリアルに対する警戒心を強める。デスティニーがビームソードを構えて、ベリアルとの距離を取る。
「ゼロたちからウルトラマンのことは聞いてるみたいだな。オレの名はベリアル。ウルトラマンベリアルだ。」
(ベリアル・・コイツが、ウルトラの星の光を狙った邪悪なウルトラマンなのか・・!)
名乗るベリアルを見て、シンがゼロからの話を思い出す。
「今の戦い、楽しませてもらったぞ。お前からは強い怒りの力を感じた。」
「お前も、自分の目的のために、みんなを、世界を・・!」
笑みをこぼすベリアルにも、シンが怒りを覚える。
「その怒り、思う存分発揮させてやる・・」
ベリアルが右手から赤黒いオーラをあふれさせてきた。シンが目つきを鋭くして、デスティニーがベリアルに向かっていく。
デスティニーが振り下ろしたビームソードを、ベリアルがオーラを宿した右手で受け止めた。
「何っ!?」
「オレを他のヤツと一緒にしてくれるなよ・・」
驚きの声を上げるシンに、ベリアルが強気に言いかける。彼が放ったオーラによる衝撃波で、デスティニーが吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
シンが衝撃に揺さぶられてうめき、デスティニーが体勢を整える。
「お前たちのようなのがいるから、世界は・・宇宙は!」
シンが怒りをふくらませて、デスティニーが再びベリアルに立ち向かう。ベリアルが振り下ろされたビームソードをかわして、かぎ爪状の両手から稲妻のようなビームを放つ。
デスティニーもビーム砲を発射して、ベリアルのビームと相殺させる。
「お前のその力、オレが引き出してやるぞ・・」
ベリアルがスピードを上げて突撃を仕掛ける。
「ぐっ!」
デスティニーが突撃を受けて突き飛ばされて地上に叩き落とされて、シンが衝撃に揺さぶられる。起き上がるデスティニーの前に、ベリアルが降りてきた。
「お前の怒りが、コイツの避雷針になっているぞ・・!」
ベリアルが笑みを浮かべると、上空からダークサンダーエナジーが飛び込んできた。ダークサンダーエナジーはベリアルの眼前を通り過ぎて、デスティニーに直撃した。
「ぐあぁっ!」
ダークサンダーエナジーの邪悪な力に襲われて、シンが絶叫を上げる。発揮していた強い怒りに呼応するかのように勢いを増すダークサンダーエナジーに、シンの心はのみ込まれてしまった。
「お前のその力と武器、オレが使ってやる・・」
ベリアルもエネルギー体となって、デスティニーの中に入り込んだ。シンとデスティニーはベリアルに乗っ取られて、機体の体色が黒く染め上げられた。
「ゼロ、お前たちに地獄を見せてやるよ・・・」
シンに憑依しているベリアルが不気味な笑みを浮かべる。デスティニーが立ち上がり、エックスたちのいるほうに振り返る。
そこへ、フェイルによる氷付けから脱出したエックスが駆けつけてきた。
「シン、大丈夫!?・・・シン・・!?」
大地がシンに向かって呼びかけるが、デスティニーに異変が起きていることに気付いて緊張を覚える。
「新しく出てきたウルトラマンか・・お前にもオレの恐ろしさを教えてやらないとな・・」
ベリアルがエックスに笑みを見せてきた。
「大地、気を付けろ!シンの体に入っているヤツは、今まで出会った敵の中で格が違う!」
エックスが大地に向けて忠告を投げかける。
「あぁ・・ものすごい邪悪な力・・オレも痛いほど感じているよ・・!」
大地もベリアルに対して緊張の色を隠せなくなっていた。
「オレの名はベリアル・・お前にもゼロにも、地獄以上の恐怖を味わわせてやるよ・・・」
「ベリアル・・ゼロから聞いたことがある・・光の国のウルトラマンの中で、唯一邪悪に染まった・・・!」
名乗るベリアルにエックスが言いかける。
「それなら話が早いな・・まずはお前からだ!」
ベリアルが言い放って、彼に操られたデスティニーがビームソードを構える。
「シン、やめろ!目を覚ますんだ!」
大地がシンに呼びかけるが、デスティニーがエックスに飛びかかってきた。上空を飛んでかわしたエックスだが、デスティニーのパワーもスピードも上がっていた。
「この力、ヤツがシンに乗り移っているだけではない!ダークサンダーエナジーも宿っている!」
「ベリアルとダークサンダーエナジー・・邪悪な2つの力がかけ合わさった、最悪の状況だ・・!」
エックスと大地が声をかけ合う。2人はデスティニーにダークサンダーエナジーも宿っていることに気付く。
「まずはダークサンダーエナジーを消さないと!そうすればシンの意識が戻るかもしれない!」
「よし!行くぞ、大地!」
大地とエックスが考えを交わす。
“ウルトラマンエックス、パワーアップ。”
「行くぞ!エクシード、エーックス!」
大地がエクスラッガーを手にして、エックスがエクシードエックスになる。
「少しは楽しめそうだな・・」
ベリアルが笑みをこぼして、デスティニーがエックスに向かっていく。
「エクスラッガー!」
エックスがエクスラッガーを手にして、デスティニーが振り下ろしたビームソードを受け止める。しかしデスティニーに押されて、エックスが地上に叩き落とされる。
「す、すごいパワーだ・・!」
「本来のデスティニーのパワーもあるが、ベリアルとダークサンダーエナジーがさらに力を引き上げている・・!」
大地とエックスがデスティニーの強さを痛感する。
「まずはダークサンダーエナジーを!」
大地が呼びかけて、立ち上がったエックスがエクスラッガーを構える。
「エクシードエクスラッシュ!」
エックスが飛び出して、デスティニーにエクスラッガーを振りかざす。だがデスティニーのビームソードに受け止められて、一閃でエックスが突き飛ばされた。
「ぐっ!・・エクスラッシュが効かない!?」
「ベリアルとダークサンダーエナジーをかけ合わせた邪悪な力が、あまりにも巨大すぎて、エクシードエックスでも簡単に振り払うことができないんだ・・!」
驚きの声を上げる大地に、エックスが言いかける。デスティニーの力に追い込まれるエックスのカラータイマーが赤く点滅する。
「まずはお前の息の根を止めてやるぞ・・!」
ベリアルが言いかけて、デスティニーがエックスに向かっていく。エックスは立ち上がるも、エネルギーの消耗が大きい。
そこへ一条の光線が飛び込んできて、デスティニーが突撃を中断して後ろに下がる。ゼロが駆けつけて、エメリウムスラッシュを撃ってデスティニーを引き離したのである。
「大丈夫か、エックス!?」
「あ、あぁ・・助かった・・!」
ゼロが呼びかけてエックスが答える。ゼロがデスティニーに視線を戻して、ベリアルが笑みをこぼしてきた。
「お前・・ベリアルだな・・・!」
「久しぶりだな・・・会いたかったぜ、ゼロ・・・!」
声を振り絞るゼロに、ベリアルが彼との再会への喜びを見せる。
「また復活したのか・・そして、お前もこの世界に来ていたのか・・!?」
「そういうことだ・・お前を含めたウルトラマンたちに復讐するためにな・・」
怒りを覚えるゼロに、ベリアルが笑みをこぼす。
「コイツの怒りとダークサンダーエナジーっていう力は最高だ。オレに十二分に馴染む・・」
「シンに憑りついたのかよ!?・・すぐにシンから出ていけ!」
「居心地のいいヤツだ。手放すわけにはいかないな・・」
呼びかけるゼロにベリアルが笑い声を上げる。
「ゼロ、エックス、お前らここでまとめて始末してやるぜ!」
ベリアルが言い放って、デスティニーがビームソードを振りかざす。ビームソードから巨大な光の刃が放たれた。
ゼロがエックスの腕をつかんで引っ張って、光の刃をかわす。光の刃は地面をえぐり、木々を一瞬にしてなぎ払った。
「ベリアル・・貴様・・・!」
「うまくよけたな・・だが、次はどうか・・・!」
怒りをふくらませるゼロと、さらに笑みをこぼすベリアル。デスティニーがビームソードを構えて、ゼロとエックスを狙う。
そのとき、デスティニーに向けてビームと砲撃が飛んできた。ベリアルが反応して、デスティニーが攻撃をかわす。
「この世界はムチャクチャで退屈しないな・・」
ベリアルが笑みを浮かべて、デスティニーが振り返る。ゼロとエックスもその方向に目を向ける。
その先の空にいたのは赤い船。帆にマークを記した空飛ぶ海賊船だった。
「何だ、あれは!?・・海賊・・!?」
「宇宙を渡る海賊・・だが“炎の海賊”とは違うみたいだ・・!」
大地とゼロが海賊船を見て声を上げる。海賊船に乗っているのは、6人の男女。
「またおかしな世界に来たと思ったら、盛り上がってるみたいじゃない。」
「それなのにこっちから仕掛けるようなことしちゃって〜・・!」
海賊船「ゴーカイガレオン」の船内かにて、女性の1人、ルカ・ミルフィが気さくに言いかけて、青年、ドン・ドッコイヤーが不安を見せる。
「オレたちの行く手にアイツらがいた。それだけだ・・」
「だからそこをどくようにと、威嚇を撃ったのですわ。」
青年、ジョー・ギブケンと女性、アイム・ド・ファミーユが落ち着いたまま語りかける。
「あれはウルトラマン!光の巨人、ウルトラマンですよー!」
青年、伊狩鎧がエックスとゼロを指さして喜びの声を上げる。
「ウルトラマン?何だ、そりゃ?」
青年、キャプテン・マーベラスが鎧に疑問を投げかける。
「地球と宇宙の平和を守る正義の味方ですよー!まさかここで会えるとはー!」
「そんなことはどうでもいい。ハッキリしてることは、アイツをブッ飛ばして突き進むってことだ。」
感動を見せる鎧を押しのけて、マーベラスが笑みを浮かべる。
「みんな、行くぜ!」
マーベラスが呼びかけて、ジョーたちとともに携帯電話「モバイレーツ」、「ゴーカイセルラー」を手にして、鍵「レンジャーキー」をセットする。
「ゴーカイチェンジ!」
“ゴーーカイジャー!”
モバイレーツ、ゴーカイセルラーから音声が発すると同時に、マーベラスの体をそれぞれの色のスーツとマスクが包み込んだ。海賊を思わせるデザインのスーツである。
マーベラスがゴーカイガレオンの船上に出て、ベリアルに目を向ける。
「オレの邪魔をしてくるとはな・・何者だ、お前ら・・!?」
ベリアルがマーベラスたちに目を向けて言いかける。
「ゴーカイレッド。」
「ゴーカイブルー。」
「ゴーカイイエロー!」
「ゴーカイグリーン!」
「ゴーカイピンク。」
「ゴーーカイ、シルバー!」
マーベラス、ジョー、ルカ、ドン、アイム、鎧が名乗りを上げる。
「海賊戦隊!」
「ゴーカイジャー!」
マーベラスが声を上げて、ジョーたちが声をそろえた。
スーパー戦隊の1チーム「海賊戦隊ゴーカイジャー」。宇宙海賊として宇宙をまたにかけて冒険を続けている。
マーベラスたちも発声した次元の穴を通って、大地たちが今いるこの世界に来ていたのである。
「海賊戦隊ゴーカイジャー・・チームで地球や宇宙を守っているスーパー戦隊の1つか・・!」
ゼロがマーベラスたちを見て呟く。彼はスーパー戦隊についても耳にしていた。
「海賊戦隊?またおかしな連中が出てきたか。少しは楽しめそうか・・」
ベリアルがマーベラスたちを見て笑みをこぼす。
「海賊合体!」
ゴーカイガレオンが「ゴーカイジェット」、「ゴーカイトレーラー」、「ゴーカイレーサー」、「ゴーカイマリン」と合体して、1体の巨大ロボとなった。
「完成!ゴーカイオー!」
ロボ「ゴーカイオー」がサーベル「ゴーカイケン」を手にして、デスティニーの前に立ちはだかった。
“ハッシン!ゴージュードリル!”
鎧がドリルタンク「豪獣ドリル」を呼び出して乗り込んだ。
「フン。いかにも海賊だな・・だが何だろうとオレを止めることはできないぞ・・!」
「面白い。だったら派手にやってやるぜ!」
笑みをこぼすベリアルにマーベラスが言い放つ。ゴーカイオーと豪獣ドリルがデスティニーに向かっていく。
「よせ!その機体とパイロットは憑依されているだけだ!傷つけるんじゃない!」
エックスが呼びかけるが、マーベラスたちは突撃をやめない。
「だったら入り込んでいるヤツを、思いっきりブッ飛ばして追っ払ってやりゃいいだけだ!」
マーベラスが言い放って、ゴーカイオーがゴーカイケンを振りかざす。デスティニーは上空に飛んでかわすと、ビームソードを振り下ろす。
ゴーカイケンを掲げて防ごうとするゴーカイオーだが、デスティニーのパワーに押されて突き飛ばされる。
「みなさん!今度はオレが行くぞ!」
声を上げた鎧が豪獣ドリルを前進させて、豪獣キャノンを発射する。デスティニーが残像を伴った動きで砲撃をかわす。
「豪獣ドリルアタック!」
豪獣ドリルが前方のドリルを回転させて、デスティニーに向かって突っ込んできた。デスティニーが豪獣ドリルの上を飛んでかわして、右手を突き出してパルマフィオキーナを撃ってきた。
「ぐっ!」
豪獣ドリルが上部を攻撃されて、鎧が衝撃に揺さぶられる。
「アイツ、とんでもないパワーを秘めている・・しかも動きも速く正確だ・・!」
「感心してる場合じゃないって・・!」
ジョーがデスティニーの強さを痛感して、ルカが文句を言う。
「へこたれるな、お前ら!こんなの、“ザンギャック”の総攻撃に比べたら大したことはねぇ!」
マーベラスが檄を飛ばして、ゴーカイオーが立ち上がる。
「なかなかやるな・・力を全開してもよさそうだな・・」
ベリアルが持てる力を発揮しようとした。
「シン!」
そこへインパルスが駆けつけて、ルナマリアが呼びかけてきた。彼女はデスティニーの異変に動揺を覚える。
「デスティニーが・・どうなっているの・・!?」
「今のシンは操られている・・邪悪なウルトラマン、ベリアルにな・・!」
声を上げるルナマリアにゼロが答える。ベリアルがインパルスを見て、さらに笑みをこぼす。
「コイツの仲間か・・アイツを仕留めたら、コイツはどんな気分になるだろうな・・・!」
ベリアルがルナマリアたちに狙いを変えて、デスティニーがビームソードを構えた。
「まずい!逃げろ、ルナマリア!」
ゼロがルナマリアに向けて呼びかける。身構えるインパルスに向かって、デスティニーが迫ろうとした。
そのとき、デスティニーの、シンの動きが突然止まった。ベリアルは彼の体を動かせなくなった。
「な、何だ・・!?」
「えっ・・!?」
声を上げるベリアルとアスナ。ベリアルがシンの体を思うように動かせなくなる。
「どういうことだ!?・・体が、いうことを・・・!?」
「・・・ルナに・・・手を出すな・・・!」
ベリアルが驚愕する中、シンが声を発する。その声はベリアルではなく、シン本人のものだった。
「シン・・シンの心は、まだ残っている・・・!」
「シン、もうやめて!目を覚まして!」
大地が声を上げて、ルナマリアがシンに向けて呼びかける。
「まさか・・オレを跳ね返そうとするとは・・・」
ベリアルは再びシンを支配する。が、彼はシンの精神力への脅威を感じていた。
「人間でも侮れないとでもいうつもりか・・だが、1度出直したほうがよさそうだ・・・」
ベリアルは呟いてから、エックスたちに目を向けた。
「今はこれで終わりにしてやる・・だが次はお前ら全員、この手で始末してやるぞ・・・!」
ベリアルが大地たちに呼びかけて、デスティニーがきびすを返して飛び去っていった。
「シン!」
ルナマリアが呼び止めるが、デスティニーが止まることはなかった。
「シン・・まさかアイツに、ベリアルが憑りつくなんて・・・!」
この深刻な事態にゼロが毒づく。シンがベリアルに体が乗っ取られてしまった。
シンを連れ去られた辛さを抱えたまま、大地たちはアスナたちと合流した。タケルとマコト、マーベラスたちとも。
大地たちはタケルたちから話を聞いていた。
「それじゃみなさんも、それぞれの世界からこっちに来たんですね・・」
「まぁな。別の世界や宇宙に行くのには慣れてるけどな。」
タケルが声をかけて、マーベラスが笑みを見せて答える。
「それにしても、ウルトラマンやガンダム、みんなのヒーローと実際にお目にかかれるとはー!」
「浮かれてる場合じゃないでしょ!」
感動の叫びを上げる鎧に、ルカが文句を言う。
「ウルトラマン、仮面ライダー、ガンダム、そしてスーパー戦隊がこうして顔を合わせて、さらに怪獣、超獣、宇宙人、怪人、MSを始めとしたメカニックもそろっている。この世界は今とんでもないことになっているぞ。敵も味方も。」
ゼロが大地たちに現状を口にする。対立する両者はどちらも勢力がとんでもないことになると予感させるには、難しいものではなかった。
「我々を狙ってきている以上、敵は結託して攻撃を仕掛けていると判断すべきだろう。」
「新しく現れた妖怪や、眼魔という怪人も・・他のライダーや戦隊の敵も来ている可能性も・・」
エックスと大地も敵の結託について語る。この世界で起こっている混沌はさらなる広がりを見せていた。
「元の世界に戻るべきところもあるが、この問題をどうにかしなければ、オレたちの世界にも影響が出そうだ・・」
「オレたちも協力するよ。怪獣みたいな大きな相手にどこまでやれるか分からないけど・・」
マコトとタケルも大地たちに協力の意思を示す。
「ま、降りかかる火の粉を払うだけだ、オレたちは・・」
「その目的だけは共通していますね、私たちは。」
「もしかしたらこっちにもザンギャックがいるかもしれないしね。」
ジョー、アイム、ドンもベリアルたちと戦うことを心に決めていた。
「シン・・どうしたらシンを助けられるのかな・・・」
シンのことを心配するルナマリア。するとアスナが彼女の肩に優しく手を添えてきた。
「大丈夫だよ。大変だけど、今の私たちはこんなに味方がいるんだよ。シンくんを助けるいい方法をきっと見つけられる・・」
「アスナ・・うん。そうね・・私が勝手に諦めてたら恥ずかしいよね・・」
アスナに励まされて、ルナマリアが微笑んで頷いた。
「シンからベリアルを追い出して、この事件を解決する・・そして、元の世界に帰る!」
「待ってろ、ベリアル・・お前たちの野望、オレたちが打ち砕く!」
大地とゼロが決意を口にする。シンを助け出すため、全ての世界を守るため、それぞれの思いのため、大地たちはベリアルたちに立ち向かおうとしていた。