ザ・グレイトバトル
-ロストヒーローズ-
第2章
シンのデスティニーとルナマリアのインパルスに突然襲撃を仕掛けてきた怪獣たちに、エックスとゼロが立ち向かう。ベムスターが2人に向かって突撃を仕掛ける。
「ベムスターはあらゆるエネルギーを吸収してしまう・・!」
「だったらオレのこの力の出番だな・・!」
大地が声を上げると、ゼロが笑みをこぼして言いかける。ゼロがウルティメイトブレスレットに意識を傾ける。
「ルナミラクルゼロ。」
ゼロの体の赤が青に変わる。彼はダイナの「ミラクルモード」とコスモスの「ルナモード」の力を宿した「ルナミラクルゼロ」となった。
「パーティクルナミラクル。」
ゼロが青い光を発して、ベムスターに突っ込む。彼がベムスターの腹から体内に飛び込んだ。
「ゼロ!」
ベムスターの中に入ったゼロに、エックスがたまらず声を上げる。その直後、ベムスターの体が突然爆発して吹き飛んだ。
ベムスターの中からゼロが現れた。彼は自身のエネルギーをふくらませて、ベムスターを中から倒したのである。
「外が頑丈でも、中まではそうはいかないみたいだな。」
ゼロが笑みを見せて、エックスと大地が安心を覚える。そこへベロクロンが飛び込んで、ゼロとエックスにミサイルを発射しようとした。
そのとき、ベロクロンの体を光の刃が貫いた。デスティニーがビームソードを突き出して、ベロクロンに突き刺した。
「エックスとゼロに任せ切りにするわけにいくか!」
シンが言い放って、デスティニーがビームソードをベロクロンから引き抜いた。息の根を止められたベロクロンが、宇宙に流れてから爆発を起こした。
「その状態で超獣を仕留めるとは、とんでもない強さを持っているみたいだな・・」
ゼロがデスティニーと、そのコックピットにいるシンを見て呟く。
「この近くに地球に似た環境の星がある。そこにアスナが、オレの仲間が待っている。」
大地が呼びかけて、ゼロがその緑の星に目を向ける。
「そこで体勢を整えたほうがよさそうだな・・」
ゼロが納得したときだった。彼とエックスの胸にある発行体が青から赤になり点滅を始めた。
「お前らも一緒に来てくれ。どうやら、この世界の住人じゃないみたいだし・・」
「あ、あぁ・・分かった・・・」
ゼロに呼びかけられて、シンが頷く。
「しかしその状態では、大気圏を突破できる代物だとしても、それにはムリがあるか・・ネイチャーフォース。」
ゼロが右手から青い光を放って、デスティニーとインパルスに注ぐ。すると2機の破損が修復されて、インパルスのエネルギーも回復した。
「回復した!?・・機体が正常に戻ってる・・!?」
「もしかして、あなたの力なの・・!?」
ゼロの力にシンとルナマリアが驚く。
「詳しい話は向こうについてからだ。2人とも行くぞ。」
ゼロがエックスとともに緑の星に向かう。シンとルナマリアも2人についていった。
ゼロ、シン、ルナマリアとともにアスナのところへ戻ってきたエックスと大地。大地はエックスとのユナイトを解除して、アスナのそばに来た。
「アスナ、目を覚ましてくれ!アスナ!」
「だ・・大地・・・」
大地に声をかけられて、アスナが意識を取り戻した。
「ウルトラマンって、人間だったのか・・・!?」
シンが大地を見て驚きの声を上げる。
「正確には、大地はれっきとした地球人、私がウルトラマンだ。自身の肉体を失った私は、このデバイザーに宿っているのだ。」
エクスデバイザーにいるエックスが、シンたちに答える。
「私と大地がユナイト、つまり一心同体となることで、私は実体化することができるのだ。」
「そうだったのね・・でも、ゼロはあなたとは違うみたいね・・」
エックスの話に納得して、ルナマリアがゼロに視線を移す。
「エネルギーの回復を図らないと・・誰かと一体になることはできないから、ここは・・・」
呟くゼロの脳裏に、別の宇宙で戦っていた刹那の姿がよぎった。
「お前の姿、借りることにするぞ・・・」
再び呟いてから、ゼロが意識を集中する。彼の姿が小さくなって、刹那の姿かたちを借りた。
「ゼロ・・それが、ゼロの地球人としての姿・・・」
「いや、これはある人間の姿を借りただけだ。オレはアンタたちと違って地球人じゃない。」
大地が声をかけると、ゼロが落ち着いたまま答える。
「オレはエックスたちとは違う宇宙のウルトラマンだ。そしてここも、大地たちやお前らがいたのとは違う宇宙だろう。」
「違う宇宙・・どういうことなんだ・・!?」
ゼロの話にシンが疑問を投げかける。
「多次元宇宙、平行世界、パラレルワールドっていえば分かるか?」
「それじゃここは、そのパラレルワールドってことなの・・?」
ゼロが投げかけた言葉に、ルナマリアも問いかける。
「オレはウルティメイトイージスを身にまとうことで、次元を超えることができる。立て続けに次元のゆがみが起きているのを感じて、その根源を探しているところで、お前たちを見つけたんだ。」
「そうだったのか・・とにかく、こうしてまた会えて嬉しいよ、ウルトラマンゼロ。」
ゼロから事情を聴いて、大地が笑みをこぼして彼に手を差し伸べる。
「今のオレは、そうだな・・モロボシ・ゼロとでもしておこうか。」
ゼロも笑みを見せて、大地と握手を交わした。
「私はルナマリア・ホークです。彼はシン・アスカ。よろしくね、ゼロ。」
ルナマリアがゼロに自分とシンの紹介をする。
「お前らも、ガンダムっていうタイプのロボットに乗ってるのか。」
ゼロがデスティニーとインパルスに目を向ける。
「オレもガンダムを見たことがある。アレらとは違う姿かたちだったけどな・・」
「オレたちの世界の他にも、モビルスーツが・・・!?」
ゼロの話を聞いて、シンが緊張を浮かべる。
「そのガンダムのコックピットにいるパイロットの姿を、オレは透視で見た。そいつの強い意思を感じたオレは今、そいつの姿を借りることにしたんだ。」
「そうだったのか・・ということは、ゼロとエックスとも、世界が違うのか・・」
シンもゼロに納得して、大地とアスナに振り向く。
「そしてアンタが、エックスと一緒になって・・」
「うん。オレは大空大地。」
「私は山瀬アスナ。特殊防衛チーム、Xioのメンバーよ。」
シンが声をかけて、大地とアスナも自己紹介をする。
「それにしても、またこうしてゼロと会うことができたとは・・もしかしたらオレたち、運命の赤い糸というもので結ばれているのかもしれないな。」
「えっ!?」
「なっ!?」
エックスが口にしたこの言葉に、ゼロも大地たちも驚く。
「おいおい!気色悪いこと言うなって!」
「そうだよ、エックス!それはこういうことに使う言葉じゃないって!」
ゼロと大地がエックスに向かって声を荒げる。
「ん?ではどういうことに使うんだ?」
「そ、そういうことは恋人関係というのに使うんだよ・・!」
疑問符を浮かべるエックスに、大地が顔を赤くする。宇宙人故の認識と解釈と違いなのか、エックスは地球の常識をきちんと把握していないところがあった。
「Xio・・違う世界に存在する軍・・いいえ、防衛隊・・」
ルナマリアが大地たちについて呟く。
「君たちは軍の一員ということなのか?」
「あぁ。オレたちはザフトのパイロットだ。」
大地が問いかけて、シンが自分たちのことを語りかけていく。
シンとルナマリアは自分たちが知る限りの自分たちの世界のことを、大地たちに話した。コーディネイター、ザフト、MS、そして繰り広げられた戦争について。
「あなたたちの世界じゃ、人間同士の戦争が・・・!?」
「怪獣やウルトラマンが存在していなくて・・ナチュラル、普通の人間と遺伝子操作を受けたコーディネイターが争っているなんて・・・!」
人間同士の戦争が行われている世界に、アスナも大地も動揺を隠せなかった。
「オレは始めは、世界や戦争のことなどどうでもよかった。オレたちはただ平和に暮らしてただけだったから・・」
シンが自分のことを大地たちに話す。
「だけどオレたちは拡大した戦争に巻き込まれた・・オレたちは逃げようとしたけど、オレ以外の家族はみんな・・・!」
自分の過去を思い返して、シンが拳を握りしめる。
「家族の命を奪った戦争が許せないだけじゃない・・力がなかった、何もできなかった自分が悔しかった・・だからオレはザフトに、軍に入ったんだ・・・」
「力を求めて、か・・何かを守るためとか、戦いを終わらせるためとかで・・」
シンの話を聞いて、ゼロが言いかける。
「それでシンは、どういう力を求めて、手に入れたんだ?」
「どういうって、力は力だろ?強くなるための・・」
ゼロからの問いかけの意味が分からず、シンが眉をひそめる。
「力にもいろいろある。光や正義の宿った力から、闇や邪悪に染まった力まで・・もちろん、使い方次第で正義にも悪にもなるのが多いけどな・・」
「使い方次第で、正義にも悪にも・・・」
ゼロの言葉を聞いて、シンが戸惑いを覚える。
「まずは救援を求めたほうがいい。いつまでもここにいてもどうにもならないわ・・」
ルナマリアがインパルスに戻って、救難信号を出そうとした。
「それはやめておけ。今回の事件に関わっている悪い連中に気付かれる危険がある。」
「でもそれじゃ、私たちどうしたら・・・?」
ゼロに呼び止められて、ルナマリアが疑問を投げかける。
「もしもすぐにでも自分たちの世界に戻ろうとしているなら、オレが送り届ける。ただ、ウルティメイトイージスのエネルギーが回復するまで待っててくれるか?」
「いや、オレも一緒に戦う・・オレたちがこうなったのは、何か原因があるんだろ・・・!?」
言いかけるゼロにシンが協力を申し出てきた。
「オレも手伝うよ!もしも今起こっていることが、僕たちや他の世界に影響を及ぼすなら、何もしないわけにいかない!」
大地もゼロたちに協力を申し出てきた。
「それに、もしかしたらこの世界に、父さんと母さんがいるかもしれない・・」
「大地・・・」
自分の正直な思いを口にする大地に、アスナが戸惑いを覚える。大地は今いるこの世界に両親がいるのではないかと思っていた。
「どんな危険や敵が待ち受けているか、分からないんだぞ。それでも戦うつもりか?」
ゼロが忠告を送ると、シンと大地が真剣な顔で頷いた。
「感謝するぜ、みんな。ここは力を合わせて、事件解決といこうか。」
ゼロが笑みを見せて、シンと大地に頷いた。
「そうと決まったら、この星に誰かいるか、食べ物があるかどうかを調べないとな。」
「でもここは森と山ばかりの星よ。人じゃなくて違う動物が出てくるんじゃないの・・?」
ゼロが呼びかけると、ルナマリアが心配を口にする。
「動物が出てきても、たとえ怪獣が出てきても、この環境で生きているんだ。悪い事態にはならないと思うよ。」
「どこからそんな自信が・・・」
大地が信頼を込めた言葉を口にして、アスナが呆れる。
「最悪、野宿になりそうだけど、こういうサバイバルに耐えられないほどやわじゃないぞ、オレたちは。」
「個人的にそういうのはイヤだけど、仕方ないわね・・」
言いかけるシンに、ルナマリアがため息まじりに付け加える。
「オレが周辺を探ってみる。この星の状況を把握する。」
「オレは反対側を探してみる。他にもオレたちみたいに、こっちに来ているヤツがいるかもしれない・・」
ゼロが呼びかけてシンも捜索を名乗り出る。ゼロは変身して、シンがデスティニーに乗って星の探索に出た。
星の探索を行ったゼロとシンだが、星は森林地帯が大部分を占めていて、人や町を見つけることができなかった。
「この星は動植物ばかりだ。怪獣はいないが、人もいない・・」
「獰猛な動物も少ないのがせめてもの救いか・・少なくてもこの近くにそいつらはいない・・」
ゼロとシンが星のことを大地たちに話す。
「この星事態に危険がなくても、宇宙の怪獣が攻め込んでこないとも限らない。夜は交代で見張りをしよう。」
ゼロが呼びかけて、大地たちが頷いた。
「周りの木々には食べられる木の実や果物が多い。今晩はそれでしのごう。」
「背に腹は代えられないか。そうと決めたら取りに行くか。」
大地からの説明を聞いて、シンが果物狩りに向かおうとする。
「もう取ってきたわよ、シン。」
ルナマリアに言われて、シンがもう取ってきていた果物を見て言葉を詰まらせた。
日が沈んで夜が訪れていた。夜空には輝きを宿した星が散りばめられていて、シンたちのいる場所はさほど暗くはならなかった。
その夜空をシンは1人見つめていた。自分たちの常識を覆す出来事に、彼は困惑をふくらませていた。
「自分たちの世界のことを考えてたのか?」
そこへゼロがやってきて、シンに声をかけてきた。
「まぁ・・それと、おかしなことが立て続けに起こって、夢でも見てるんじゃないかって思って・・・」
「それはムリもないことかもな。現実に起こるはずがないことが起こってるんだからな・・」
答えるシンに頷いていくゼロ。ゼロは力を求めたというシンの話を思い返す。
「さっき言ったな。力は使い方次第で正義にも悪にもなると・・」
ゼロが投げかけた言葉を聞いて、シンが真剣な面持ちで頷く。
「力を求めて溺れて、邪悪に堕ちたヤツがいた・・オレの故郷、ウルトラの星で・・」
「ウルトラの星・・?」
ゼロの話にシンが疑問符を浮かべる。
「オレにも聞かせてくれないかな、そのウルトラの星のこと・・」
そこへ大地がルナマリア、アスナとともにやってきて、ゼロたちに声をかけてきた。
「みんなも来たのか・・分かった。」
ゼロが笑みをこぼしてから、自分の故郷「ウルトラの星」について語り始めた。
「M78星雲」に存在する「光の国」とも呼ばれる星。その住人は、かつては地球人とよく似た姿をしていた。
しかしウルトラの星に光を注いでいた太陽の爆発により、ウルトラの星は滅亡の危機にさらされた。
その後、ウルトラの長老を中心とした研究団によって、人工太陽「プラズマスパーク」を作られ、ウルトラの星は再び光を取り戻した。
そのとき、プラズマスパークの強大な光を浴びたことで、ウルトラの星の人々が巨人に、ウルトラマンとしての姿に進化した。
「それが、ウルトラマン誕生の瞬間・・・」
ゼロの話を聞いて、シンが息をのむ。
「それじゃエックスも、元々は人間・・・!?」
「それは分からない。私はゼロたち光の国のウルトラマンではない。少なくとも私は、ウルトラマンとして生まれた・・」
声を上げる大地にエックスが語りかける。
「たくさんの宇宙があるからな。光の国出身じゃないウルトラマンや、人間がウルトラマンの力を手にしたケースもある。」
ゼロが付け加えて、話を続ける。
「だけど、ウルトラの星の歴史の中で、プラズマスパークの力を手に入れようと考えたヤツが2人いる。」
「プラズマスパークを!?」
ゼロが切り出した話に大地が緊張を見せる。
「1人はウルトラマンベリアル。力を求めてプラズマスパークを手に入れようとしたが、その巨大な光の力に拒絶されて、光の国を追放された。だがアイツは凶悪な姿になって、ウルトラマンへの復讐と宇宙の支配を企んだ・・最終的に、オレとオレの仲間によって倒されたがな・・」
「ウルトラマンの中にも、邪悪になった人がいたなんて・・・!」
ゼロの話を聞いて、アスナが驚きを見せる。
「強い力と自分自身の心の弱さを制御できなかったのか・・ウルトラマンでも、それは例外じゃない・・」
力に溺れることの怖さを考えて、大地が深刻さを浮かべる。
「それで、もう1人は誰なんだ・・?」
シンがゼロに向かって問いかける。
「プラズマスパークに手を出そうとしたもう1人・・それはオレだ・・」
「えっ!?ゼロが!?」
ゼロの答えにルナマリアが驚きの声を上げる。
「オレも力を求めていた。もっと強くなりたくて・・それでオレは、プラズマスパークの光に手を伸ばした・・」
ゼロが語りかけて、かつての自分の過去を思い返していく。
「だが寸でのところで止められた。宇宙警備隊から追放されたけど、オレはベリアルの二の舞を演じずに済んだ・・」
「ゼロ・・・」
「それからオレは肉体を鍛えられると同時に、大切なことを教えられた。力ではなく、守るための強さと心を持つことが、大事だということを・・」
ゼロの過去を聞いて、大地が戸惑いを感じていく。
「あのとき、オレを止めてくれたのが、オレの親父、ウルトラセブン。そしてオレを鍛えてくれたのが、かつて親父に鍛えられたウルトラ戦士、ウルトラマンレオだ。」
「それじゃ、もし止めてくれなかったら、ゼロも・・・」
シンも戸惑いを見せて、ゼロが小さく頷く。
「だから力を求めることに囚われるのはよくない。力は使い方次第で、守る力にも破壊の力にもなる・・」
自分の過去とこれまでの戦いを思い返して、ゼロが大切なことを確かめていく。
「みんなもそのことを、そして自分が戦う理由を忘れないようにな・・」
「うん・・」
「あぁ・・」
彼の意思を聞いて、大地とシンが頷いた。アスナとルナマリアも微笑んで頷いた。
「オレはこのまま見張りを続ける。時間になったら起こす・・」
「分かった。シン、お願い。」
シンが1人残って、大地が声をかけてからゼロたちと一緒に休みに入った。
(オレも戦う・・今の戦いが終わっても、オレ自身の戦いを、オレの意思で・・・)
改めて決意を固めて、シンは見張りを続けた。
ゆがみの激しい異次元空間。その中心に1つの不気味な影が存在していた。
「様々な世界、様々な宇宙、そして様々なウルトラマンと人間どもか・・」
影が笑みを浮かべて呟く。
「手を組まれると我々とて厄介になるだろう。だがヤツらの心に付け込み、分断させてしまえばよい・・」
影が1つの企みを練り上げて、さらに笑みを浮かべる。
「お前の手下の怪獣軍団を送り込んだ甲斐があったか?」
そこへ声をかけられて、影は振り返って正体を現す。その正体はウルトラ戦士の宿敵、異次元人ヤプールだった。
ヤプールの前に現れたのは暗黒の戦士、ウルトラマンベリアルである。
「オレの1番の目的はゼロの始末。そのために利用できるものは全て利用してやるさ。」
「ならばヤツも連れていけ。ゼロと一緒にいる人間どもに揺さぶりをかける・・」
ゼロ打倒を目論むベリアルにヤプールが呼びかける。2人に向けて1人の人物が頭を下げてきていた。
交代での見張りを続けていく大地たち。彼らが滞在している星に朝が訪れた。
最後に見張りをしていた大地のそばで、ゼロたちが目を覚ました。
「みんな、おはよう。敵が侵入してきた様子はないし、周辺に異変も見られなかった・・」
「そうか・・この現状だ。夜中に奇襲を仕掛けてくるヤツが出てきても不思議じゃないと思ってたのだが・・」
大地が挨拶して、ゼロが警戒心を抱く。
「ところで大地、お前は何のために戦ってるんだ?Xioの一員としての戦いなのか・・?」
シンが唐突に大地に問いかけてきた。
「それは、地球の平和を守るXioだからね。でもオレはそれだけじゃない。」
大地は語りかけて、エクスデバイザーを見つめる。
「オレの父さんと母さんも科学者なんだ。でも2人とも、別の次元に消えてしまった・・父さんと母さんの行方を追うためにも、オレは戦っているんだ・・」
「アンタも、両親のために・・・」
大地の話を聞いて、シンが戸惑いを覚える。
「それに、実現させたい夢もあるんだ・・オレたちの世界でも、怪獣や宇宙人が地球に現れている。でも地球や破壊行為を目的としている者ばかりじゃない。怪獣にも事情があるから・・」
「怪獣にも、事情が・・・!?」
「だからすぐに敵だと決めつけて、無闇に攻撃をするのはよくない。将来、人間が怪獣や宇宙人と共存することもできるようになる・・」
自分の夢についても語っていく大地。
「怪獣との共存か。ウルトラマンコスモスのいる宇宙でも共存が実現している。お前も実現できるはずだ。」
「コスモスの話は聞いているよ。その話を聞いてオレ、自信がついた・・」
ゼロが話を切り出して、大地が頷いた。
「共存って・・そんな簡単にできることじゃないだろ・・・!」
シンが大地に対して不満を口にしてきた。
「オレは戦争を引き起こすヤツ、オレの大切なものを奪うヤツを野放しにはしない・・どんなに分かり合える同士だとしても、大切なものを奪った罪は償わないといけないんだ・・・!」
「確かに、オレたちは戦争を体感したことはないけど・・それでも気持ちを伝え合えば、分かり合うことができる!必要のない争いをしなくて済ませることだって・・!」
「それで納得できるほど、共存や分かり合うことは簡単じゃない!少なくてもオレは簡単に許すつもりはない!・・死んでしまった人は、生き返ることはできないんだから・・・!」
大地が呼びかけるが、シンは納得できなかった。家族や大切な人を奪った人に心を許せるほど、シンの心の傷は浅くはなかった。
「確かに夢を叶えることも違う種族との共存も、簡単なことじゃない。コスモスだって長い時間とたくさんの経験を経て実現させている。」
ゼロが声をかけてきて、大地とシンの間に割って入る。
「それにウルトラマンは神じゃない。救えない命も届かない思いもある。命をよみがえらせるのも、本来は奇跡の力だ・・だから守ること、生きることはとても大切なことなんだ・・」
「ゼロ・・・」
ゼロの言葉を聞いて、大地が戸惑いを覚える。シンは歯がゆさを浮かべたまま、彼らに背を向ける。
「シン・・・!」
「大地、これ以上言ってもよくはならないだろう・・」
声をかけようとした大地をエックスが呼び止める。
「シンは戦争に巻き込まれて、家族や友人を失っている。彼の怒りと悲しみは小さくはない。」
「エックス・・・」
「それに彼は頑ななところがある。ここは自分で経験して、自分の悲劇を乗り越えるしかない・・」
エックスの言葉を受けて、大地はシンに対して困惑していた。するとアスナがシンに言いかけてきた。
「私も最初、大地の共存って夢を信じてなかった・・でも大地は本気だよ。ただの夢物語でもきれいごとでもない。私も今は、大地の夢の手伝いができたらって思ってる・・」
「アスナ・・・」
自分の気持ちを正直に告げるアスナに、大地が戸惑いを覚える。
「オレたちには、それぞれの夢や戦う理由がある。そのために人間は一生懸命になる。」
「それが、生きるってこと・・・」
ゼロが言いかけて、ルナマリアが頷いて微笑んだ。
「戦う理由・・オレが今まで戦ってきたのは・・・」
自分が今まで戦ってきた理由と記憶を思い返していくシン。彼はその中で自分の意思を確かめていく。
「そうだ・・オレだって、自分の意思で決めたんだ・・自分の戦う理由を・・自分で、戦う運命を受け入れることを・・」
「シン・・・」
決意を固めるシンに、ルナマリアが戸惑いを見せていた。
そのとき、ゼロが違和感を感じて周りを警戒する。
「どうしたんだ、ゼロ・・?」
「オレたちの周りに誰かいる・・姿の見えない誰かが・・ただ、オレたちを狙っているのは間違いないようだ・・・!」
大地が声をかけると、ゼロが真剣な面持ちで答える。
「私も感じた。近くに何者かが潜んでいる・・」
エックスも周囲への警戒を示す。アスナが光線銃「ジオブラスター」を手にして構えて、ゼロが左腕のウルティメイトブレスレットからアイテム「ウルトラゼロアイ」を取り出した。
ウルトラゼロアイは着眼してウルトラマンゼロに変身するだけでなく、折りたたむことで光線銃としても使える。
ゼロが目つきを鋭くして、透視能力を使う。彼は姿を消している怪人を見つけ出して、ウルトラゼロアイを使って射撃する。
射撃は何も見えない地点に命中した。そこから怪人たちが姿を現した。
「何だ、コイツら!?」
「新たな宇宙人か!?姿を隠して近づいてくるとは!」
シンも銃を手にして構えて、エックスが声を上げる。
「ポー!もう見つけられてしまったかー!」
そこへ2体の怪人が現れて、他の怪人たちの前に立ちはだかった。
「えっ!?ネコ!?ネコの宇宙人!?」
「宇宙人ではなーい!オレ様は妖怪ネコマタだー!ゲラゲラ!」
アスナが声を上げると、怪人の1体、妖怪ネコマタが名乗りを上げる。
「オレっちは妖怪マタネコニャ!ネコマタアニキはオレっちのはとこの友達のお兄さんでウィス!」
もう1体の怪人、マタネコも名乗る。
「はとこの友達のお兄さんって・・・」
「他人だよね・・・?」
「他人だな・・・」
「全くの赤の他人だな・・・」
ルナマリアが言いかけて、アスナ、ゼロ、シンが付け加える。
「うるさいニャー!どいつもこいつも冷たい目で見れくれちゃってー!」
「ネコマタを侮辱するとは許せん!お前らやっちゃえー!」
マタネコが不満を叫んで、ネコマタが呼びかける。後ろにいた怪人たち、眼魔コマンドが大地に襲い掛かった。