ザ・グレイトバトル
-ロストヒーローズ-
第1章
様々な次元、様々な宇宙、様々な世界が無数に存在している。
光の巨人、ウルトラマンが地球と宇宙を守るために活躍する世界。
素顔を隠し、大切なもののために戦う仮面ライダーのいる世界。
チームワークを最大の武器にして、力を合わせて敵の組織に立ち向かうスーパー戦隊の世界。
MSを始めとした数々の兵器を用いる人々が交戦を繰り広げるガンダムの世界。
次元を隔てた、本来なら交わることのない世界の戦士たちが、運命の出会いを果たす。
15年前に突如発生した超常現象「ウルトラフレア」。その影響で現れた怪獣や、地球を狙う宇宙人に対する防衛のため、特殊防衛チーム「Xio」が結成された。
そのXioの研究開発セクションに所属する1人の青年、大空大地。
大地はXio日本支部の屋上にて、電波受信機を使って宇宙からの「声」に耳を傾けていた。
「今も宇宙の声を聴いてるの、大地?」
そこへ1人の女性隊員がやってきて、大地に声をかけてきた。
山瀬アスナ。Xio特捜班の1人で、大地とバディを組んでいる。
「うん・・父さんと母さんはまだ見つかってない・・習慣になっちゃったのもあるけど・・」
「相変わらずしょうがないわね、大地は・・休むときは休まないと、体が持たないよ。」
答える大地にアスナが注意を言う。
「アスナの言う通りだぞ、大地。」
大地に声をかけたのはアスナではなかった。大地の持つデバイスから声は出ていた。
Xio隊員が携帯しているデバイス「ジオデバイザー」。大地が持つのはそれが変化した「エクスデバイザー」である。
エクスデバイザーには1人の人物が宿っている。その人物の名は、ウルトラマンエックス。
エックスは地球や宇宙を守る光の巨人の1人。体がデータ化している彼は、大地のデバイザーに宿っている。
エックスはかつて虚空怪獣グリーザと戦い、太陽に落として撃破した。そのときに発生したのがウルトラフレアである。
その後に新たに出現した怪獣たちとの猛威から地球を守るため、エックスは大地のデバイザーに宿ったのである。
「両親や仲間、この地球のために一生懸命になるのはいいことだが、君に何かあれば悲しむ人がいることも忘れてはいけないぞ。」
「そうだよ、大地。たまには息抜きとか気分転換しなくちゃ。」
エックスとアスナに言われて、大地は笑みを見せて頷いた。
「そうだね。声を聴くのは、ちょっと間を置いてからにするよ。」
大地が頷いて、1度屋上から離れることにした。
そのとき、大地たちのいるXio基地の近くの空に突然ゆがみが発生した。
「な、何っ!?」
突然の出来事にアスナが声を上げる。ガラスが割れるようにゆがみから穴が現れた。
「空が、割れた・・!?」
「あそこから強力な引力が働いている!基地内にいないと吸い込まれてしまうぞ!」
驚きの声を上げる大地に、エックスが注意を呼びかける。
「行くよ、大地!」
アスナが大地を連れて、基地の中に戻ろうとした。だが穴からの強い引力に捕まって、アスナが床から宙に離される。
「アスナ!」
「大地!」
穴の中に引きずり込まれるアスナに、大地が手を伸ばして叫ぶ。
「アスナを助けないと!エックス、ユナイトだ!」
「よし!行くぞ、大地!」
大地の呼びかけにエックスが答える。大地がエクスデバイザーの上部のボタンを押して「Xモード」に展開して、エックスの「スパークドール」を呼び出した。
怪獣や宇宙人が人形化したスパークドール。大地はエクスデバイザーにエックスのスパークドールを乗せて、そのデータを読み取らせる。
“ウルトラマンエックスト、ユナイトシマス。”
エクスデバイザーから音声が流れる。
「エックスー!」
大地がエクスデバイザーを高く掲げると、まばゆい光に包まれる。彼はエックスとの一心同体「ユナイト」を果たす。
“エックス、ユナイテッド。”
大地とユナイトしたエックスが巨大化して、アスナを追って飛び立つ。
「向こうがどこに通じているか分からない!ウルトラマンゼロの力を使おう!」
エックスの呼びかけに、彼の中にいる大地が頷く。
“ウルティメイトゼロ、ロードシマス。”
エクスデバイザーから「ウルティメイトゼロ」が描かれたカードが転送されてきた。
怪獣や宇宙人のデータが収められている「サイバーカード」。Xioの装備だけでなく、エックスにも力を与えることができる。
“ウルティメイトゼロアーマー、アクティブ。”
ウルトラマンゼロが神秘の鎧「ウルティメイトイージス」を身にまとったウルティメイトゼロ。そのサイバーカードを大地がエクスデバイザーにセットすると、エックスがサイバーアーマー「ウルトラマンゼロアーマー」を身にまとった。
別宇宙への移動を可能とするウルティメイトイージス。その能力を得たエックスが、アスナを助けるために穴の中に飛び込んだ。
大地やエックスたちのいる宇宙とは別の宇宙。地球から遠く離れた位置にスペースコロニー「プラント」があった。
遺伝子操作によって生誕している種族「コーディネイター」が、プラントに滞在している。そのプラントによって組織された軍が「ZAFT」である。
そのプラントから離れた宙域を1機の機体が移動していた。
機体の名は「デスティニー」。ザフトが開発した高性能のMS。多種多様な武装を装備しており、どの状況下でも戦えるよう配慮されている。
デスティニーのパイロットはシン・アスカ。目覚ましいパイロット能力と功績を認められて、デスティニーを与えられたのである。
シンはプラント近辺の捜索に出ていた。戦艦が出ると、暗躍する敵が潜んでいたとき、戦力を削ぐ好機を与えることになってしまうからだ。
捜索の宙域を周回したシン。そこへもう1機の機体「インパルス」がやってきた。
「シン、交代の時間だよ。」
インパルスのパイロット、ルナマリア・ホークがシンに呼びかける。
「ルナ、オレはまだやれる。デスティニーのエネルギーは機体が負傷しない限りなくならないし・・」
シンが言いかけて首を横に振る。
インパルスは「デュートリオンビーム」によってエネルギー供給を受ける「デュートリオンエンジン」を搭載している。デスティニーはこれに加えて核エンジンを含む「ハイパーデュートリオンエンジン」が動力源となっていて、これにより半永久的な活動を可能としている。
「デスティニーはそうでも、シンの体力は無限じゃないんだから・・私が代わるから、シンは休んでて・・」
「ルナ・・分かった。インパルスのエネルギーに気を付けろよ。」
ルナマリアの呼びかけを聞いて、シンは微笑んで頷いた。
そのとき、シンたちのいる宙域に突然変動が起こった。
「な、何だ!?」
「近くでエネルギーの変動が起こってる!・・空間が、歪んでる・・!?」
シンが声を上げて、ルナマリアがレーダーに目を向ける。デスティニーとインパルスの近くの空間が歪んで、ガラスが割れるように穴が開いた。
「宇宙に穴が!?」
「引き寄せられてる!ブラックホールってヤツなのか!?」
周辺のものを吸い込み始めた穴に、ルナマリアとシンが緊迫を覚える。デスティニーとインパルスも穴の引力に引き寄せられている。
「インパルスのパワーじゃ抜け出せない・・シンだけでも逃げて!」
「そうはいくか!ルナを置いていけるわけがない!」
呼びかけるルナマリアにシンが言い返す。デスティニーがインパルスをつかんで、一緒に穴から離れようとする。
しかしデスティニーの手をすり抜けて、インパルスが穴に引き込まれていく。
「ルナ!」
シンが声を上げて、デスティニーがインパルスを追いかける。2機はそのまま穴の中に入り込んで、直後に穴も消えた。
様々な宇宙、様々な次元。別の次元を超えることは普通の能力ではできない。
しかし次元を超える能力を備えた者が存在している。
ウルティメイトイージスを身にまとったウルトラマンゼロがその1人である。ゼロは別宇宙に逃げ込んだ甲冑星人ボーグ星人ロイドを追ってきた。
「ボーグ星人ロイド、どこへ逃げてもムダだぜ!」
ロイドの前に回り込んで、ゼロが笑みをこぼす。
「おのれ、ウルトラマンゼロ・・我々の宇宙征服の邪魔をしおって・・!」
ロイドがいら立ちを覚えて、頭部からビームを放つ。ゼロがビームをかわして、さらに両手を交差してビームを防いだ。
「往生際が悪いぜ、ロイド!」
言い放つゼロにロイドが飛びかかる。重みのあるパンチを繰り出すロイドだが、ゼロに軽々と受け止められる。
「バカな・・我らボーグ星人の力が通用しないだと!?」
ゼロの強さに驚くロイドが、彼からたまらず逃げ出す。
「逃がすか!ゼロスラッガー!」
ゼロが頭部にある2つの突起物「ゼロスラッガー」を飛ばした。ゼロスラッガーは鎧を貫通して、ロイドの体を切りつけた。
「ぐあぁっ!」
体を切りつけられたロイドが、絶叫を上げて爆発を起こした。ゼロスラッガーを頭に戻して、ゼロがひと息つく。
そのとき、ゼロは別の場所で爆発と衝撃が起こったのを感じて振り向いた。その先には2体の機体が激しい戦いを繰り広げていた。
1機は青と白をした機体、もう1機は黒い武者のような機体である。
「純粋に戦いに挑み、そしてガンダムを超える!それが私の、生きる証だ!」
「オレは生きる・・生きて明日をつかむ・・それがオレの戦いだ・・!」
黒い機体のパイロットの意思に、青い機体のパイロットも意思を言い放つ。青い機体の中にいるパイロットの姿を、ゼロは目撃した。それが超人特有の透視能力によるものだったのか、何らかの現象なのか、彼は分からなかった。
「そう・・オレは・・オレたちは・・ガンダムだ!」
パイロットの強い意思が込められた叫びが、ゼロの心にも強く響き渡った。
「この世界の戦い・・アイツらに任せてもよさそうだな・・というよりも、オレが関わる必要がない・・」
自分がいなくても今行われている戦いは終わりを迎える。そう直感したゼロは戦いに介入せずにこの宇宙を後にすることにした。
しかしゼロの心には深く刻まれていた。青い機体「ダブルオーライザー」のパイロット、刹那・F・セイエイの意思が。
突如現れたブラックホールにのみ込まれたシンのデスティニーとルナマリアのインパルス。気絶していたシンが意識を取り戻す。
「こ・・ここは・・・?」
シンが呟いて周辺を確かめる。
「座標が表示されない!?・・プラントも、他のザフトの部隊もない・・・!?」
レーダーに何も表示も反応も示さないことに、シンが驚きを覚える。
「ルナ・・大丈夫か、ルナ!?」
シンがインパルスのルナマリアに向かって呼びかける。ルナマリアも目を覚まして、周囲を気にする。
「シン・・私たちは・・?」
「分からない・・きっとあの穴に吸い込まれたんだろうな・・プラントとも連絡が取れない・・・!」
ルナマリアが声をかけて、シンが状況を説明する。
「機体は正常なのに、どうなっているの・・・!?」
自分たちが置かれている現状に、ルナマリアもシンも動揺を隠せなくなる。彼らを吸い込んだ穴も消えて、宙域は平常だった。
そのとき、デスティニーとインパルスのレーダーが熱源を捉えた。
「こっちに近づいてくる反応・・数4・・!」
「4・・MSか・・!」
ルナマリアが呼びかけて、シンが警戒を覚える。デスティニーたちのメインカメラが、その反応の機影を捉えた。
「こちら、ザフトのインパルス、MS、応答せよ。そちらの所属は?」
ルナマリアが機影に向かって呼びかける。しかし機影からの応答がない。
「こちら、デスティニーのシン・アスカだ!そこの機体、応答しろ!」
シンも呼びかけるが、機影はそれにも答えない。
やがてシンとルナマリアの視界に、4つの機体の姿が入ってきた。
「MSじゃない・・!?」
機体の姿にシンがルナマリアとともに目を疑う。現れた4つの機体は、2人のMSにおける知識にない形状をしていた。
機体の1体が動いて、装備されている銃砲をデスティニー、インパルスに向けて発射してきた。
「何っ!?」
突然のことにシンが声を上げる。デスティニーとインパルスが動いて、射撃をかわす。
「攻撃してきた!?」
ルナマリアも機体に対して驚く。4体の機体が合体を果たして、1体のロボットとなった。
「ロボット!?MSじゃない!」
「ザフトでも連合でもない・・見たことのないヤツだ・・だけど、攻撃してくるなら!」
ルナマリアがさらに声を上げて、シンがロボットに敵意を向ける。デスティニーがビームライフルを手にして発射するが、ビームがロボットの装甲にはじかれる。
「装甲が硬い・・何てヤツだ・・!」
強度と耐久力の高いロボットに、シンが毒づく。ロボットが右腕の銃砲を発射してきた。
シンが反応し、デスティニーが両翼から赤い光の翼を発してスピードを上げて、ロボットの砲撃をかわす。
「攻撃の威力も精度も上がっている・・デスティニーでも油断できないか・・・!」
ロボットの性能を分析して、シンが緊張をふくらませる。デスティニーが左背部にある高エネルギー長射程ビーム砲を展開して発射する。
ロボットがエネルギーを集めて、強力なエネルギーの球を発射して、デスティニーのビームとぶつけ合って相殺する。
「射撃が通じないなら、コイツで叩き切ってやる!」
シンが言い放って、デスティニーが右背部に装備されている「アロンダイトビームソード」を展開して手にした。
ロボットの射撃をかいくぐり、デスティニーが残像を伴った素早い動きで飛び込む。ビームソードによる一閃が、ロボットの左腕を切り裂いた。
「浅い・・でもこのまま押し切る!」
シンが目つきを鋭くして、デスティニーがロボットに追い打ちを仕掛ける。
「シン、別の熱源が近づいてくる!」
ルナマリアが呼びかけてきて、シンが視線を移す。デスティニーたちに向かって、1つの巨大な影が飛び込んできた。
青い巨体と赤い目をした生物。顔にあるくちばしのような口の他、腹部に大きな口が存在していた。
「な、何だ、あのバケモノは!?」
生物を目の当たりにして、シンが驚く。生物が目からビームを出して、デスティニーがロボットから離れてかわす。
「みんな問答無用に攻撃してきて!」
ルナマリアがいきり立ち、インパルスがビームライフルを構えてビームを放つ。ところが生物の腹部の腹にビームが吸い込まれた。
デスティニーがビーム砲を発射するが、そのビームも生物に吸い込まれた。
「ビームを吸収した!?」
ビーム攻撃を吸収されて、シンが毒づく。生物が目からマシンガンのビームを発射してきた。
シンが反応して、デスティニーが素早く動いてビームをかわす。そこへロボットが銃砲からビームを発射して、デスティニーは回避が間に合わず、左足を撃ち抜かれた。
「ぐっ!」
「シン!」
シンが衝撃に揺さぶられてうめき、ルナマリアが叫ぶ。ロボットと生物がデスティニーに迫る。
そのとき、生物が突然横から突き飛ばされて、そのままロボットと衝突した。
「な、何だ!?」
シンが声を上げて、ルナマリアとともに視線を移す。2人を助けに来たのは、大地とユナイトしているエックスだった。
アスナを助けるため、次元の穴に飛び込んだ大地とエックス。宇宙空間に飛び出す前にアスナを救ったエックスだが、彼女は意識を失い、エックスたちは穴の先の宇宙に飛び出していた。
エックスはアスナを受け止めている左手から光の球を出して、彼女を包んで守っている。
「間一髪だった・・アスナは無事だ、大地・・」
「でもここはどこなんだろう?・・地球も見当たらない・・・」
安心を口にするエックスと、周辺に目を向けて疑問を感じていく大地。
「まずは安全な場所に行かないと・・ユナイトできる時間には限りがあるし、ユナイトが解けたらアスナが危ない・・」
「近くに小さな惑星がある。地球の森林や草原と同じ地形と環境で覆われているようだ。」
大地がアスナの安全を考えて、エックスが近くにある緑の惑星に振り向く。大地がエクスデバイザーでその惑星の環境の分析をする。
「人間に有害な物質は探知できない。むしろ本当に地球の森林とほぼ同じだ・・」
「その惑星に行って体勢を整えよう。状況を確かめるのはその後だ。」
「分かった!行こう、エックス!」
大地と声をかけ合って、エックスは近くの緑の惑星に向かった。エックスが着地した草原は、分析通り、地球に似た環境だった。
エックスはアスナを草原に下ろすと、大地とのユナイトを解除した。大地が元通りになり、エックスがエクスデバイザーに戻る。
「アスナ、しっかりして!アスナ!」
大地が呼びかけるが、横たわったアスナは目を覚まさない。
「心身に別状はないようだが、すぐには目を覚ましそうにない・・」
「アスナ・・・オレたちは、どこに来てしまったんだろうか・・」
エックスがアスナの様子をうかがって、大地が周りを見回す。
「この星は地球ではない。もしかしたら、この宇宙は我々のいた宇宙とは違うかもしれない・・」
「でもまた、ゼロのアーマーで戻れば・・」
エックスが自分たちの居場所について告げて、大地が言葉を返す。
そのとき、大地たちのいる星の空に爆発の光がきらめいた。
「な、何だ!?」
「近くの 宙で起こっているようだ!生き物と機械、それぞれの出す光の爆発だ!」
驚きの声を上げる大地にエックスが呼びかける。
「ここならアスナも大丈夫のはずだ・・エックス、ユナイトできるか!?」
「大丈夫だ!回復している!」
大地の呼びかけにエックスが答える。大地は頷くと、エクスデバイザーを起動する。
「エックスー!」
“エックス、ユナイテッド。”
大地とユナイトしたエックスが飛び上がり、爆発のしたほうへ向かう。その宙域にはシンたちがいた。
「あそこにいるのは、キングジョーとベムスターだけど、ちょっと感じが違う・・!」
大地が戦況を見て驚きの声を上げる。
デスティニーとインパルスを襲撃したのは、宇宙ロボット・キングジョーの強化型、キングジョーブラック、そして宇宙大怪獣ベムスターが強化改造された改造ベムスターである。
「あの2体のロボットは初めて見るタイプだ・・しかもそれぞれ中に人がいるぞ!」
「テルのように、中で動かしているのか・・!」
エックスがデスティニーとインパルスに目を向けて、大地がかつて出会った宇宙人、ゴールド星人テルと彼が動かしたメカ守護獣ルディアンを思い出す。
「あの2機のロボットのパイロットからは悪意は感じられない!怪獣たちに襲われているようだ!」
「まずはベムスターとキングジョーを止めないと!」
エックスと大地が声をかけ合う。エックスが飛び出して、デスティニーに迫ったベムスターを横から突き飛ばした。
「大丈夫か、君たち!?」
「な、何なんだ!?・・巨人・・・!?」
呼びかけるエックスにシンが驚きを覚える。
「あの怪獣とロボットからには悪意が感じられる。というよりも、何者かに操られているというべきか・・」
エックスが言いかけて、キングジョーとベムスターに目を向ける。
「ここは協力してこの状況を打破することを提案する。君たちのその状態、とてもいいとは言えないようだし・・」
「シン、ここは聞き入れたほうがいいみたいね・・誰なのかは分からないけど、そうしないと私たちはやられてしまう・・!」
エックスの提案を聞いて、ルナマリアもシンに呼びかける。
「そうするしかないか・・オレはシン・アスカだ!」
「私はエックス。ウルトラマンエックスだ。」
「ウルトラマン・・!?」
互いに自己紹介をするシンとエックス。シンはまた疑問符を浮かべるも、気持ちを切り替えてキングジョーたちに視線を戻す。
エックスが先に飛び出して、ベムスターに挑む。パンチなどの打撃を与えていくエックスだが、ベムスターは彼を押し返していく。
「さすがベムスター!強さが怪獣の中でも段違いだ!」
「しかもこのベムスター、以前に戦ったヤツよりも強い!」
改造されたベムスターの強さに、大地もエックスも危機感を覚える。ベムスターがスピードを上げて、エックスに突撃を仕掛ける。
「目には目を、ベムスターにはベムスターだ!」
大地がサイバーカードの中から1枚をエクスデバイザーにセットした。
“サイバーベムスター、ロードシマス。”
サイバー怪獣、サイバーベムスターの力を使う大地。
“サイバーベムスターアーマー、アクティブ。”
エックスがサイバーアーマー「モンスアーマー」の1種「サイバーベムスターアーマー」を装備した。
ベムスターが腹からビームを放つ。エックスがベムスターの腹の形をした盾でビームを防いで吸収する。
ベムスターアーマーの盾はベムスターの腹部のようにエネルギーを吸収することができ、さらにそれを跳ね返すこともできる。エックスは吸収したビームを、キングジョーに向けて反射した。
怯んだキングジョーに向かって、デスティニーが飛びかかってビームソードを振り下ろす。デスティニーの一閃が、キングジョーの硬い胴体に傷をつけた。
「私も負けてられない!」
ルナマリアも意識を集中して、インパルスがビームサーベルを手にして、ベムスターに向けて振りかざす。ビームサーベルはベムスターの体に傷はつけられなかったが、押し込むことはできた。
「このまま一気に押し切ろう!」
大地が呼びかけたときだった。周辺の空間が突然ゆがみだした。
「何だ!?」
大地だけでなく、シンも声を上げる。空間のゆがみから2体の怪獣が現れた。
「また怪獣が出てきたのか!?」
「いや、2体とも怪獣ではなく、超獣!宇宙生物と他の生物を合成させた生物兵器だ!」
シンの声にエックスが答える。新たに現れたのはミサイル超獣ベロクロン2世とサボテン超獣サボテンダー。いずれもベムスター同様、強化改造されたタイプである。
「さらに出てくるなんて・・これじゃオレたちもピンチだ!」
立ちはだかるキングジョーたちに、大地が焦りをふくらませる。ベロクロンとサボテンダーが突起物やトゲをミサイルとして発射してきた。
「くそっ!回避だ!」
シンが声を上げて、デスティニー、インパルス、エックスがスピードを上げて、ミサイルをかいくぐる。
「キャッ!」
だがインパルスがミサイルを命中されて、ルナマリアが衝撃を受けて悲鳴を上げる。
「ルナ!ぐあっ!」
シンが声を上げたとき、デスティニーもミサイルを直撃されて、爆発に襲われる。
「大地、このままではあの2機ともやられてしまうぞ!」
エックスが大地に呼びかけて、シンたちを助けようとする。だがキングジョーとベムスターに行く手を阻まれる。
ベロクロンがデスティニーに向けて口から炎を放とうとした。
「ウルトラゼロキック!」
そこへ炎をまとったキックが飛び込んできて、ベロクロンが横に突き飛ばされる。
「今度は何だ!?」
「き、君は!」
シンとエックスが再び声を上げる。彼らの前に駆けつけたのは、次元を飛び越えて駆けつけたゼロだった。
「怪獣、超獣、ロボットと、ずいぶんとにぎやかになっているみたいだな。」
「君はゼロ・・君もこの宇宙に来ていたのか!」
強気に言いかけるゼロに、エックスが声をかける。彼と大地は以前にゼロと会ったことがある。
「久しぶりだな、エックス。そのロボット・・オレが見たことのあるヤツと同じタイプか。」
ゼロがエックスに声をかけて、デスティニーとインパルスに目を向ける。
「どういうことになってるかは分からないが、アイツらを何とかしたほうがいいみたいだな。」
ゼロがキングジョーたちに目を向けて、エックスとともに構えを取る。
「そこのロボットは離れていろ!そんな状態じゃ戦えないだろ!」
「ここは任せるしかないか・・・ルナ、下がるぞ!」
ゼロの呼びかけを受けて、シンがルナマリアに呼びかける。デスティニーとインパルスがエックスたちから離れる。
「さぁ行くぜ、エックス!」
「分かった、ゼロ!」
ゼロとエックスが声をかけ合って、キングジョーたちに向かっていく。
ベロクロンとサボテンダーがミサイルを連射する。エックスがミサイルをかいくぐって、ベロクロンにパンチを叩き込んで突き飛ばす。
ベムスターが目からマシンガンのようなビームを放つが、ゼロは素早くかいくぐっていく。そこへキングジョーが右腕の銃砲「ペダニウムランチャー」を撃ってきた。
「あれだけのヤツらを2体いっぺんに相手をするのはさすがにムリがあるか・・!」
毒づいたゼロがキングジョーに狙いを絞る。彼は左腕に装備している「ウルティメイトブレスレット」に意識を傾けた。
「ストロングコロナゼロ!」
ウルティメイトブレスレットから赤い輝きが放たれる。ゼロの体の青色が赤に変わり、赤が主体となった。
ウルティメイトブレスレットには2人のウルトラマン、ダイナとコスモスの力が宿っている。ゼロの別形態「ストロングコロナゼロ」は、ダイナの「ストロングモード」とコスモスの「コロナモード」の力を備えた攻撃力重視の姿である。
ゼロが両手に炎を灯して、キングジョーの胴体にパンチを叩き込んでいく。頑丈なキングジョーの装甲だが、攻撃力を増したゼロの攻撃に耐えられない。
キングジョーが反撃に出て右腕を振りかざすが、かわされてゼロに組み付かれる。
「ウルトラハリケーン!」
ゼロが高速回転して、竜巻を起こすと同時にキングジョーを上に投げ飛ばす。キングジョーにとどめを刺そうとしたゼロだが、ベロクロンと交戦しているエックスをサボテンダーが背後から狙っていることに気付いた。
「エックス!」
ゼロが呼びかけてエックスがサボテンダーの奇襲に気付く。2人が頷き合って、互いに狙いを変える。
「ガルネイドバスター!」
「ザナディウム光線!」
ゼロが右手を突き出して、炎の光線を放つ。同時にエックスが振りかぶり前に出して×字に構えた両手から光線を放つ。
ガルネイドバスターを受けたサボテンダーが炎に包まれて、爆発を起こして消滅した。
竜巻で動きを封じられたキングジョーが、ザナディウム光線を受けて爆発する。そしてキングジョーが収縮されてスパークドールとなった。
怪獣をスパークドールに変える能力。それはエックスだけでなく、彼が大地とユナイトして生まれた力である。
「このまま一気に行くぜ!」
ゼロが強気に言い放って、エックスとともに構える。2人がベムスターとベロクロンに目を向けた。