ザ・グレイトバトル外伝

無双戦隊フォースレンジャー

第5章

 

 

 蓮斗たちに拘束されて、フォースレンジャー本部の営倉に入れられたタロウ。目を覚ました彼は、脱走しようとも抗議の声を上げようともしない。
「文句の1つも言わないとは・・大人しい性格でも思えん。それとも極限状態に慣れているのか・・」
 仙太郎が牢屋の前に来て、タロウに声を掛けてきた。
「今はどうなっている?お供はどうしている?」
「そういう言い分をしているうちは、現状を話せないし、君の力を返すわけにもいかない。」
 問いかけるタロウに、仙太郎が毅然とした態度を見せる。
「君は自分が戦いの場において絶対の存在だと思っている。そのため、自分より力が劣る者を邪険に扱っている。」
「お供がオレより劣っているのは事実だ。それなりの評価がされるのは当然だ。」
「だから悪く扱ってもいいと?道具のように扱ってもいいと?」
「お供はお供だ。道具ではない。」
 仙太郎に問い詰められても、タロウは自分の考えを変えない。
「志を同じくする者は、互いに意見を交わし、互いの考えを分かち合い息を合わせる必要がある。1人の人間が絶対的な存在となって周りを思い通りに支配するのは、昔のやり方であり、今では忌み嫌われるやり方だ。成長も止まり、限界を定めることになる・・」
「世界を幸せにするのがオレの生き方だ。オレにしか世界の全てを幸せにできない。」
 仙太郎が正しさを訴えるが、それでもタロウは自分の考えを貫く。
「その独りよがりな考えでは、いつか手痛い敗北を喫することになる。少なくとも、そのような人間を防衛隊に加えるわけにはいかない。」
「それで世界が滅んでも構わないというのか?」
「君のその考え方も、崩壊を誘発する原因につながる。私は蓮斗たちの上官として、最善手を模索しなければならないのだ。」
「それが、お前たちの戦いということか。」
 世界や仲間のために尽力を尽くす仙太郎の言葉を、タロウが聞く。
「君がここから出るには、我々と和解し共闘するか、力ずくで出て己を押し通すか。ただしその後も身勝手に行動するなら、私が指示しなくても、蓮斗たちが君を敵として倒しに来るだろう。」
「だったら懲らしめるまでだ。」
 仙太郎からの警告にも、タロウは動じない。すると仙太郎がタロウのいる廊下の格子を強く叩いた。
「我々を、世界や地球を守るヒーローを甘く見るな・・・!」
 タロウに鋭く言って、仙太郎は営倉を後にした。
「ヒーロー・・・」
 彼の言葉の意味を考えて、タロウは思い詰めていた。

 ケンゴの代わりに蓮斗たちがスーパーフォースロボで出撃した。バイスたちとはるかたちがダマラスたちたちを迎え撃つ。
「ここからが本当の踏ん張りどころだぞ、お前ら!」
 翼が呼びかけて、はるかたちとバイスが頷いた。
「あの5人がいても我々を止められないというのに、今のお前たちに何ができる?」
 ダマラスがはるかたちをあざ笑い、バリゾーグたちが彼と合流した。
「オレたちの実力は、まだまだこんなもんじゃないぜ!」
 バイスが言い返して、強気な態度を見せる。
「ザイエン、ここにいる敵は全員排除する。よいな?」
「研究できないのは残念だが、ヤツらは私の研究の障害でしかないからな。」
 ダマラスに問われて、ザイエンが悠然と答える。
「まずはオレから行くぜ!お前らはその後のとどめを任せるぜ!」
 バイスがはるかたちに言って、ダマラスたちに向かって走り出す。
「まずは貴様の首からもらい受ける・・!」
 ダマラスが迎え撃って、剣を振りかざす。バイスがジャンプして剣をかわして、ダマラスの背後に回った。
「うおっ!」
 バイスが繰り出したパンチを背中に当てられて、ダマラスが押されてうめく。バイスが続けてパンチを出して、ダマラスが剣で防いでいく。
「ダマラスどの、加勢させてもらいますよ。」
 ザイエンがダマラスに言って、両手から触手を伸ばす。はるかたちがとっさにドンブラスターを撃って、触手をはじいた。
「僕たちがいることを忘れてもらっちゃ困るよ!」
 つよしが言い放って、さらにドンブラスターを撃つ。
「ならば私はお前たちの相手をしてやろう。お前たち4人、バラバラにしてくれる。」
 ザイエンがはるかたちに狙いを絞って、触手からビームを発射した。
「うわー!」
 はるかとつよしが慌てて、真一、翼とともにビームをかわしていく。
「あのヤロー!」
 バイスが不満の声を上げて、ザイエンに向かっていく。だがダマラスに剣で背中を切り付けられた。
「うがぁ!」
「よそ見をしている暇はないぞ。」
 前のめりに転んだバイスに、ダマラスが声を掛ける。
「このヤロー・・後ろから攻撃するなんてー!」
“バイスが背中を見せるからなのもあるよ!”
 ダマラスに文句を言うバイスに、一輝が注意をする。
「もう油断しないぜ!まずはアイツをブッ倒してやるぜー!」
「いい気になりおって・・貴様たちにあるのは敗北と破滅のみ!」
 バイスがいきり立って、ダマラスが言い放つ。
「見せてやるぜ、オレの必殺パンチを!」
 ダマラスに向かって走りながら、バイスがリバイスドライバーのレバーを倒して、オーインジェクターを回転させた。
“バババ・バーイス!バババババッバ・バーイス!・・”
 音声を発するローリングバイスタンプのトリガーを、彼は押した。
“ヌリヌリミックス!”
“バババ・バーイス!バババババッバ・バーイス!・・”
 バイスがさらにリバイスドライバーのレバーを倒して、オーインジェクターを回転させた。
“ナックルアーップ!”
“ヒッサツ・ローリング・ゴーイング・ドローイング!”
 バイスがダマラスに向けて、高速のパンチを繰り出した。ダマラスが剣を掲げるが、防ぎ切れずに突き飛ばされた。
「おっしゃー!どんなもんだー!」
 バイスが倒れたダマラスを見下ろして、手を握りしめて勝ち誇る。
“バイス、早く決めるんだ!”
「おっと、そうだった、そうだった・・!」
 一輝に言われて、バイスが気持ちを切り替えた。
「うわあっ!」
 そのとき、はるかたちがザイエンたちの攻撃に押されて、バイスのそばまで吹き飛ばされてきた。
「お前ら!」
 バイスが声を上げて、ザイエンたちに振り返る。
「その程度では我らの前ではとても歯が立たぬよ。」
 ザイエンがはるかたちを見下ろしてあざ笑う。
「私たちでは、敵わないというのか・・・!?」
「こんなとき、桃井タロウがいたら・・・!」
 真一が焦りを噛みしめて、はるかがタロウのことを考える。
「でも戸沢司令官や蓮斗くんたちは、桃井さんの考え方をよく思っていないんじゃ・・」
「どっちにしても、オレたちがまず全力を尽くさなければ意味がない・・・!」
 つよしが不安を口にして、翼が檄を飛ばす。
「そうだよね・・弱音吐いてたら、あたしたちもこの世界もおしまいだもんね!」
「それに、この無様を聞いたら、桃井タロウが何と言うか・・」
 はるかが気を引き締めなおして、真一が嫌な予感を思い浮かべて肩を落とす。
「いいぜ、いいぜ!そうこなくっちゃな、お前ら!」
 バイスが笑みをこぼして大きく頷いた。
「オレのお供ならそのくらいでなければな!」
 そこへ声がかかって、はるかたちが振り向いた。営倉にいるはずのタロウが姿を現した。
「も、桃井さん!?」
「おいおい!牢屋に入れられたままじゃなかったのかー!?」
 つよしとバイスがタロウの登場に驚く。
「コイツがオレのところに戻ってきた。それで外へ出たということだ。」
 タロウが説明して、持っているドンブラスターを見せた。
 牢屋の中にいたタロウは、仙太郎に没収されていた自分のドンブラスターを呼び寄せた。彼はすぐに発砲して牢屋を破って、外へ脱出してきたのである。
「さすが、暴れん坊の桃井タロウ・・・」
 はるかが呆れ果てて、大きく肩を落とす。
「今まで待った分、大暴れさせてもらうぞ!」
 タロウが高らかに言って、ドンモモタロウギアを取り出した。
「アバターチェンジ!」
 タロウがドンブラスターのギアテーブルにドンモモタロウギアをセットして、スクラッチギアを回す。
“よぉ~!”
 音声の発するドンブラスターのスクラッチギアを、彼はさらに回していく。
“ドン!ドン!ドン!ドンブラコー!暴太郎!”
“ドンブラコ!ドンブラコ!・・”
 タロウはドンブラスターのトリガーを引く。
“ドンモモタロウ~!よっ!日本いち~!”
 タロウはドンモモタロウに変身して、はるかたちの前に出た。
「ドンモモタロウ!」
「サルブラザー。」
「オニシスター!」
「イヌブラザー・・!」
「キジブラザー!」
 タロウ、真一、はるか、翼、つよしが名乗りを上げてポーズを決める。
「あ、あ、暴太郎戦隊!」
「ドンブラザーズ!」
 タロウが声を上げて、はるかたちが声をそろえた。
「もう1人加わったか。だがたとえどれほどの力があろうと、1人加わっただけで戦況は簡単には変わらんよ。」
 ザイエンがタロウを見て笑みをこぼす。
「それで盛り上がれるのが祭りってもんだ!さぁ、勝負勝負!」
 タロウが高らかに言って、手にしたザングラソードの切っ先をザイエンに向けた。
「バリゾーグ、バスコゾーグ、あの5人を始末しろ。私はザイエンどのに加勢する。」
「分かりました、ザイエン様。」
 ザイエンが指示して、バリゾーグが答える。
「それじゃ仕切り直して、アイツらをブッ倒してやるぜ!」
 バイスも高らかに言って、ダマラスとザイエンに向かっていく。
「行くぞ、お前たち!」
 タロウが檄を飛ばして、走り出してドンブラスターを撃つ。バリゾーグとバスコゾーグが剣で射撃をはじく。
 はるかたちもドンブラスターを撃って、タロウを援護する。射撃を防ぎ続けるバリゾーグたちに向けて、タロウがザングラソードを振りかざす。
 タロウとバリゾーグがザングラソードと剣を激しくぶつけ合う。バスコゾーグも剣を振りかざして、タロウがかわす。
 しかし2対1の状況に押され、タロウがバリゾーグとバスコゾーグの剣を体に当てられて突き飛ばされた。
「力があるが、我々を同時に相手をしては敵わないか。」
 バリゾーグが告げると、バスコゾーグと剣を合わせてビームを放った。タロウがビームを受けて、さらに吹き飛ばされた。
「あ~、桃井さん!」
 つよしがはるかと一緒に、慌ててタロウを支えた。彼はすぐに立ち上がって、ドンブラスターを構える。
「お供たち、オレの体を守れ!」
 はるかたちに言って、タロウがアバタロウギア「ドンモモタロウギアアルター」を取り出した。
「アルターチェンジ!」
 タロウがドンブラスターギアテーブルにドンモモタロウギアアルターをセットして、スクラッチギアを回す。
“よぉ~!”
 音声の発するドンブラスターのスクラッチギアを、彼はさらに回していく。
“ドン!ドン!ドン!ドン!ドンブラコー!暴太郎!”
“ドンッブラコ!ドンッブラコ!・・
 タロウはドンブラスターのトリガーを引く。
“ドンモモタロウ~!よっ!天下一!”
 その直後にタロウの体がはるかたちにもたれかかった。ドンブラスターから出た桃が変形して、小さなドンモモタロウ「ドンモモタロウアルター」となった。
「ハッハッハー!祭りだ、祭りだー!」
 ドンモモタロウアルターとなったタロウが言い放って、バリゾーグたちに向かっていく。
 バリゾーグとバスコゾーグが剣を振りかざすが、小さい体で素早く動くタロウに攻撃を当てることができない。その隙を狙ってタロウが打撃を当てて、2人を翻弄していく。
 バスコゾーグが光を放出して、タロウを吹き飛ばそうとした。タロウは光から離れて、ドンモモタロウアルターが消えたことで自分の体に戻った。
「よし!お供たち、合体攻撃だ!」
 タロウが立ち上がって、ドンブラスターの天面のボタンを押した。
“パーリーターイム!ドンモモタロウ~!”
 音声を発するドンブラスターのスクラッチギアを、彼は回す。
“ヘイ、カモーン!”
 エネルギーを集めたドンブラスターを、タロウが構える。彼のいる舞台をはるかたちが上に上げていく。
「狂瀾怒桃(きょうらんどとう)・ブラストパーティー!」
 タロウがドンブラスターのトリガーを引いた。
“イヨ~!ドンブラコ~!”
 ドンブラスターから虹色のビームが放たれた。バリゾーグとバスコゾーグが剣からビームを出してぶつけ合う。
「いけいけいけー!」
 タロウが叫んで、ビームを押し込んでいく。バリゾーグがビームを受けて、体から爆発を起こす。
「バ、バスコゾーグ・・ヤツらを倒せ・・・!」
 バリゾーグが指示を送って、バスコゾーグがタロウたちに向かっていく。
「しぶといヤツだな・・」
「だったら私たちももっと力を出さないとね。」
 翼がため息をついて、真一が言いかける。
「お前たち、ロボで行くぞ!」
 タロウが呼びかけて、はるかたちとともにアバタロウギア「ロボタロウギア」を取り出した。
「アバターチェンジ!」
 タロウたちがドンブラスターのギアテーブルにロボタロウギアをセットして、スクラッチギアを回す。
“よぉ~!”
 音声の発するドンブラスターのスクラッチギアを、彼らはさらに回していく。
“ドン!ドン!ドン!ドンブラコー!ロボタロウ!”
“ドン・ブラボー!ドン・ブラボー!・・”
 タロウたちはドンブラスターのトリガーを引く。
“ドンロボタロウ~!よっ!世界一!”
 タロウたちの体に変化が起こる。全員がロボットのような姿となり、さらに真一、翼、つよしはより猿、犬、キジの容姿が強調されるようになった。
 タロウたちは強化形態「ロボタロウ」となった。
「ヤツらも機械の体になれるのか・・」
 立ち上がったバリゾーグがタロウたちを見て呟く。
「さぁ、次の勝負だ!かかってこい!」
 タロウが高らかに言って、バスコゾーグを迎撃してザングラソードを振りかざす。バスコゾーグも剣で攻撃を仕掛けて、激しくぶつけ合う。
「力は確実に上がっている・・バスコゾーグだけでは・・・!」
 バリゾーグが危機感を覚えて、タロウに向かっていく。
「お前の相手はオレがする・・!」
 そこへ翼が飛び込んで、バリゾーグに突進した。不意を突かれたバリゾーグが後ろに押される。
「僕も行きますよー!」
 つよしが急降下して、続けてバリゾーグに突撃した。突き飛ばされたバリゾーグを受け止めて、真一が持ち上げて地面に叩きつけた。
 一方、はるかがバスコゾーグに飛びかかって、棍棒「フルコンボウ」を振り下ろしてきた。バスコゾーグが後ろに動いてフルコンボウを回避する。
「逃がさないよ!トゲトゲー!」
 はるかがフルコンボウに付いているトゲをミサイルのように発射した。バスコゾーグが剣を振りかざして光の刃を飛ばして、向かってきたミサイルを爆発させた。
 次の瞬間、ドンモモタロウが爆発の煙を突っ切って、ザングラソードを振りかざしてきた。バスコゾーグが斬られて、体から火花を散らした。
「このままでは、バスコゾーグが・・・!」
 窮地に追い込まれて、バリゾーグが危機感をふくらませる。
「お供たち、必殺奥義だ!」
 タロウがはるかたちに命令して、ドンブラスターの天面にザングラソードのつば中央のスクラッチギアをタッチさせた。
“パーリーターイム!ドンロボタロウ~!”
 タロウの持つザングラソードに虹色の光が宿ると同時に、翼とつよしがバリゾーグたちに突っ込んだ。
 直後に真一が両手を地面に叩きつけて、その衝撃ではるかが大きくジャンプした。
「いくよー!トゲトゲ花火!」
 はるかがフルコンボウからミサイルを発射して、バリゾーグたちに命中させた。
“アーバタロ斬・アバタロ斬!アーバタロ斬・アバタロ斬!・・”
「前人未桃(ぜんじんみとう)・・打ち上げロボタロウ!」
“必殺奥義・ロボタロ斬!」”
 タロウがザングラソードを振りかざして、連続で斬撃を放つ。体制が整わないバリゾーグとバスコゾーグが斬りつけられていく。
 直後に真一とはるかが地面を殴りつけて、その衝撃でバリゾーグたちを高らかに跳ね上げた。
「ワ・・ワルズ・ギル・・様・・・」
 ワルズのことを思うバリゾーグが、バスコゾーグとともに爆発して花火となった。
「ドン・ドン・ドンブラザーズ!」
 タロウたちが高らかにポーズを決めた。
「ハッハッハ!あっぱれ、あっぱれ!」
 タロウが勝ち誇って笑い声をあげていた。
「とりあえずこっちは、一件落着かな・・」
 決着がついたことに、はるかが安心した。

 ダマラスとザイエンの前に、バイスは追い詰められていた。
「やはり数的な優劣は否めない。戦闘力の面でもこちらが上だ。」
 ザイエンがバイスを見て笑みをこぼす。
「こうなったら、オレたちの必殺技をお見舞いしてやるぜー!」
 バイスがいきり立って、リバイスドライバーのレバーを2回倒して、オーインジェクターを2回回転させた。
“バババ・バーイス!バババババッバ・バーイス!・・”
 足元に黒いインクがあふれて、彼がその中に潜る。
“ローリングスタンピングフィニーッシュ!”
 インクがダマラスたちにまで広がって、バイスが飛び出してザイエンを上空に吹き飛ばした。バイスが続けてジャンプして、ザイエンにキックを叩き込んだ。
「まさか、この私が・・最高の頭脳を持つ私が・・!」
 ザイエンが蹴り飛ばされて、地上に叩き落とされた。
「へッ!どんなもんだい!」
 着地したバイスが勝ち誇る。
“バイス、危ない!”
 そのとき、一輝が呼びかけて、バイスが緊張を覚える。ダマラスが接近して、バイスを剣で切り付けた。
「うおっ!」
 バイスが前のめりに転んで、痛みにうめく。
「私は皇帝陛下やそのご士族のために戦っている。目的のために手段は選ばん。」
 ダマラスが冷静に告げて、バイスに剣の切っ先を向けた。
“バイス、大丈夫か!?”
「とても大丈夫な状況とは言えねぇな・・!」
 一輝の声に、バイスが声を振り絞って答える。
「まずは貴様からとどめを刺させてもらう・・・!」
 ダマラスが剣を振り上げて、バイスが身構えた。
「危なーい!」
 そのとき、1人の青年が飛び込んできて、ダマラスに突っ込んできた。ダマラスが横に突き飛ばされて、バイスから遠ざけられた。
「イタタタタ・・派手に転んじゃったよ~・・」
 青年が痛がりながら立ち上がる。
「あ~!すいません!大丈夫ですかー!?」
 彼はダマラスを突き飛ばしてしまったことに気付いて、慌てて心配する。
「おのれ・・よくも邪魔をしてくれたな・・!」
 立ち上がったダマラスが青年を睨みつけてきた。
“良太郎、そいつはザンギャックってヤツだ!”
 青年、野上良太郎(のがみりょうたろう)に向けて声が響いた。怪人「イマジン」の1人、モモタロスの声である。
「ザンギャックって、ゴーカイジャーに倒された、あのザンギャック・・!?」
 良太郎がダマラスのことを知って、動揺を見せる。
“謝ることも遠慮もいらねぇぜ、良太郎!変身するぞ!”
「うん・・行くよ、モモタロス・・・!」
 モモタロスの呼びかけに答えて、良太郎がベルト「デンオウベルト」を装着して、赤いボタンを押した。デンオウベルトから電車の発射メロディに似た音が鳴り響く。
「変身・・・!」
 良太郎がパスケース「ライダーパス」をデンオウベルト中央の「ターミナルバックル」にかざした。
“Sword form.”
 良太郎の体を装甲が包み込んだ。赤を基調した電車をモチーフにした姿である。
 同時に良太郎の体にモモタロスが憑依した。
「オレ、参上!」
 モモタロスが高らかにポーズを決めた。
 良太郎は時間の変化の影響を受けない「特異点」であり、モモタロスたちイマジンは憑依して意識を共有することができるのである。
「えーっ!?おめぇも仮面ライダーだったのかー!?」
 バイスがモモタロスを指さして驚く。
「何だ、何だ?オレみてぇなヤツがいるな!」
 モモタロスがバイスに振り返って、因縁をつけてきた。
「ヘッヘ!オレはは悪魔だぜ!悪魔の恐ろしさ、おめぇにも見せてやる!」
「何が悪魔だ!オレはイマジンっていう未来からの侵略者だぜ!テメェはオレの強くてかっこいいとこを思い知ることになるぜ!」
「へッ!イマジンだかジンマシンだか知らねぇが、上等だぜ!」
「おうおう!やるか!」
 バイスとモモタロスが顔を近づけて睨み合う。
“バイス、そんなことをやっている場合じゃないだろ!”
 一輝が怒鳴って、バイスが思いとどまる。
“モモタロスもそういう態度は失礼だよ・・”
「り、良太郎・・・!」
 良太郎も注意をして、モモタロスが口ごもる。
“バイス、この人に謝って!”
「一輝・・・」
“モモタロス、謝るんだ・・・!”
「ま、またこれかよ・・・!」
 一輝と良太郎に言われて、バイスとモモタロスが気まずくなる。
「ごめんなさーい!」
 バイスとモモタロスが頷き合ってから、深々と頭を下げた。
「それじゃ気を取り直していくか!こっからはオレたちもやらせてもらうぜ!」
 モモタロスがダマラスに視線を戻して、意気込みを見せる。
「フン。ふざけたヤツが出てきたところで、この状況を覆すことはできんぞ。」
 ダマラスがバイスとモモタロスを見てあざ笑う。
「オレたちを甘く見てると痛い見るぜ!なぜならこっちは、最初から最後までクライマックスなんだからな!」
 モモタロスが高らかに言い返して、武器「デンガッシャー」を剣の「ソードモード」にして構えた。
「いくぜ、いくぜ、いくぜー!」
 モモタロスが叫びながら、ダマラスに向かって走り出す。モモタロスとダマラスがデンガッシャーとケンを激しくぶつけ合う。
「オレたちもいくぜー!」
 バイスも負けじとモモタロスに加勢する。2人に攻め立てられて、ダマラスが押されていく。
「そのような野蛮な攻撃で!」
 ダマラスが剣を振りかざして、バイスたちを引き離す。
「言ってくれるじゃねぇか!だったらコイツを受けてみな!」
 笑みをこぼすモモタロスがライダーパスを手にしてターミナルバックルにかざす。
“Full charge.”
 デンガッシャーの刀身に赤い光が宿る。モモタロスはライダーパスを放って、バイスの手元に当たった。
「いくぜ、オレの必殺技!」
 モモタロスが振りかざしたデンガッシャーから刀身が射出された。ダマラスが剣ではじいていくが、刀身が続けて飛んで彼を斬りつけた。
「これで終わりではない・・我々はまだ、切り札を残しているぞ・・・!」
 ダマラスが声を振り絞って、力尽きて倒れた。
「よっしゃー!オレたちの勝ちだー!」
 モモタロスが勝ち誇って、高らかに叫んだ。
“何だかオレとバイスみたいだな。”
「そうか?オレたちのほうがすげぇ気がすんだけどなぁ・・」
 モモタロスと良太郎に対して、一輝が微笑んで、バイスが疑問符を浮かべていた。
「この勢いでどんどん敵をやっつけていくぞー!」
 モモタロスが喜んで、高らかに叫び声を上げていた。
「浮かれていられるのも今のうちだ。」
 そこへ声がかかって、バイスとモモタロスが振り向いた。彼らの前に1人の男が現れた。
「ん?誰だ、てめぇは!?」
「お前も仮面ライダーか!?」
 モモタロスとバイスがその男に疑問を投げかける。
「ワイズマンとでも名乗っておこうか。」
 男、仮面ライダーワイズマンが答えて、バイスたちに向かって右手をかざす。
“モモタロス、この人、ウィザードと戦っていた魔法使いだよ!”
 良太郎がワイズマンのことをモモタロスに伝える。
 魔法使いの仮面ライダー、ウィザード。人々の希望を守るために戦った彼と対峙していたのが、白の魔法使い、ワイズマンだった。
「特異点とイマジン、悪魔とその契約者・・全員が手を組んでも、私の魔法には届きはしない。」
 ワイズマンが冷静に言って、右手から炎を発した。バイスとモモタロスが左右に動いて炎をかわす。
「魔法を使ってきたってことか!」
“でも聞いた話とは少し違うみたい・・“ウィザードリング”を使っていないのに、魔法を使っている・・・!”
 声を荒げるモモタロスに、良太郎が助言する。
 ワイズマンが魔法陣を作り出して、それをトンネルにして右手を入れた。彼の手がモモタロスのそばから出ると同時に巨大になって、打撃を繰り出した。
「おわっ!」
 モモタロスが叩かれて、さらにワイズマンの手につかまれた。
「おい、電王!」
 バイスが叫んでモモタロスに駆け寄る。ワイズマンも左手も魔法陣を通して、バイスを突き飛ばした。
「すごい力だ・・これが魔法だっていうのかよ!」
“ジャックリバイスさえも上回っている・・バイス、代わってくれ!”
 毒づくバイスに一輝が呼びかける。
「一輝・・あぁ!やるぞ!」
 バイスが聞き入れて、一輝と意識が入れ替わった。彼はバイスタンプ「サンダーゲイルバイスタンプ」取り出した。
“Come on!Thunder gale go!Come on!Thunder gale go!・・・”
 一輝がサンダーゲイルバイスタンプをオーインジェクターに押印して、リバイスドライバーにセットして、レバーを倒した。
“一心同体!居心地どうだい!”
“超ヤバいっス!轟雷と嵐でニュースタイル!”
“仮面ライダー、リバーイス!”
 一輝のまとっていたスーツとマスクが色とりどりに変わった。彼は仮面ライダー、リバイスとなった。
「アイツ、パワーアップしたみてぇだ!こっちも負けてられねぇ!」
“うん!行くよ、モモタロス、みんな!”
 モモタロスが意気込みを見せて、良太郎が呼びかける。
“やっと僕の出番だね。”
“オレらの出番や!”
“僕も行ってもいいよね!?答えは聞いてない!”
 他のイマジン、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスも声を上げた。
「いいぜ!みんな、やるぞ!」
 モモタロスが笑みをこぼして、携帯電話「ケータロス」を取り出した。
“Momo,Ura,Kin,Ryu,Climax form.”
 彼がケータロスのボタンを押してベルトにセットする。すると電王の別形態「ロッドフォーム」、「アックスフォーム」の仮面が両腕に、「ガンフォーム」の仮面が胴体に装着され、電王の仮面も開くように新しくなる。
 電王の強化形態「クライマックスフォーム」である。
「ここから反撃の時間だぜ!」
 モモタロスが高らかに言い放って、一輝とともに構えを取った。

 

 

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