ザ・グレイトバトル

-感情の力-

第12章

 

 

 自分たちのためなら他を平気で切り捨てる防衛隊の上層部、それの言いなりになっている隊員や関係者たちに激しい怒りを覚えたアキト。不信をふくらませた彼は人類を見限り、自ら世界を正そうとしていた。

「オレはお前のしたことを許せない・・お前が裏切ったせいで、オレたちはムチャクチャになった・・アイツも・・トウカも・・・!」

 ハルキもアキトに対して、怒りを噛みしめていた。

「トウカって・・ハルキの大切な人なのか・・・?」

 ライがハルキに向かって声を掛ける。

「あぁ・・オレの仲間で、大切な人だった・・だけど、1年前に、アイツと宇宙人たちの襲撃のときに、命を落として・・・!」

 ハルキが答えて、1年前の悲劇を思い返す。

「たとえ上層部が傲慢で許せなくても、オレは、トウカを死なせたお前を許せない・・!」

「トウカにも上層部のやり口を話した・・しかしトウカは信じなかった・・オレがどれだけ力説しても・・制裁ではなく、話し合いで解決すればいいと・・・!」

 怒りを向けるハルキに、アキトも怒りをふくらませていく。

「トウカも、当時の隊長たちも、上層部と同罪だ・・処罰されて当然だ・・・!」

「ふざけるな!人殺しをしてはいけないという、トウカの気持ちを分からずに・・!」

 トウカにも憎しみを向けるアキトに、ハルキがさらに怒鳴る。

「分かりたくもない・・愚か者の傲慢も、それを守ろうとするヤツも・・・!」

「アキト・・上層部がお前の言う通りの悪者だとしても、今のお前も、その悪者と同じだ!」

 吐き捨てるアキトに、ハルキがさらに怒鳴りかかる。

「ハルキ、お前も愚かな存在に毒されたか・・・!」

「お前のほうが、愚かな道を進んでいるんだぞ・・・!」

「もう、お前と交わす言葉はないようだ・・・!」

「オレはお前を止める・・怒りや復讐ではなく、大切なものを守るために・・・!」

 敵意を強めるアキトに、ハルキが信念を示した。怒りや憎しみに囚われずに見出した新しい信念を。

「アンタらのことはよくは知らないが、どうやらお前の敵は、オレたち全員ってことになったな。」

 マーベラスがアキトに向かって声を掛けてきた。

「お前が憎んでいた愚か者は1年前に死んだから、オレは手を下せないが・・同じように思い上がるお前は、オレがここでブッ倒す・・・!」

「オレたちは怒りに任せては戦わない・・人それぞれだけど、大切なものを守るために戦うのは、みんな同じみたいだ・・!」

 ノゾムが怒りを口にして、コウが彼らのそれぞれの考えを知って戸惑いを見せる。

「最高最善の王様になるには、その気持ちを大事にしないと・・」

 ソウゴがハルキたちの決意や真剣を見て、改めて決心した。

「今でも勉強熱心だ、我が魔王。」

 そこへ声がかかって、ソウゴとゲイツが視線を移す。彼らの前に1人の青年が現れた。

「ウォズ、君も来てくれたんだね!」

「今まで何をしていた?まさか迷っていたとでも言うつもりか?」

 ソウゴとゲイツが青年、ウォズに声を掛ける。

「我が魔王と離れ離れになってしまったのは、私の一生の不覚。しかしもうそのようなことはしない。この世界でも祝おうではないか。オーマジオウがこの世界でも伝説を築くのを。」

 ウォズが優雅に振る舞って、高らかに言いかける。

「少し面倒そうなのが来たか・・」

「ま、敵じゃなさそうだからいいんじゃないかな。」

 バンバがウォズに呆れて、トワが気さくに言いかける。

「また1人、愚かさを振りまくヤツが出てきたか・・・!」

 アキトがウォズに目を向けて、鋭く言いかける。

「コイツが愚かということには賛成するが・・」

 ゲイツがアキトに目を向けたまま、ウォズへの不満を口にする。

「さて、私も加勢させてもらうよ。我が魔王に仇名す君を、ここで排除する。」

 ウォズがアキトに言いかけて、アイテム「ミライドウォッチ」の1つ「ウォズミライドウォッチ」を取り出した。

“ウォズ!”

“アクション!”

 ウォズがウォズミライドウォッチのスイッチを入れて、装着しているベルト「ビヨンドライバー」の右のスロットにセットした。

「変身。」

 彼がビヨンドライバーのレバーを押し込んだ。

“投影・フューチャータイム!スゴイ・ジダイ・ミライ!カメンライダー、ウォズ!ウォーズ!”

 ウォズの体をライムグリーンのスーツと仮面が包み込んだ。彼は仮面ライダーウォズへ変身した。

「これでオレたち3人がそろったね。」

 ソウゴが並び立ったゲイツとウォズを見て、笑みをこぼした。

「たとえ何人立ちはだかろうと・・オレはこの世界を正す!」

 アキトが声を振り絞って、右手を振りかざして光線を放った。光線を浴びたハサミジャガー、ドーラスケルトン、スカル魔の1人が復活、巨大化した。

「アイツ、倒した怪人を巨大化光線で大きくしたよ!」

 ドンがハサミジャガーたちを指さして叫ぶ。

「あっちはオレたちに任せてくれ!その人の相手はみんなに任せるよ!」

 コウがハルキたちに呼びかけると、メルトたちと頷き合った。

「ティラミーゴ!」

「トリケーン!」

「アンキローゼ!」

「タイガランス!」

「ミルニードル!」

 コウ、メルト、アスナ、トワ、バンバが恐竜「騎士竜」を呼んだ。5体の騎士竜、ティラミーゴ、トリケーン、アンキローゼ、タイガランス、ミルニードルが駆けつけた。

「フォース、もう変身してもいいか・・!?

“今、変身可能までエネルギーが回復した。しかし完全回復までにはいっていないから気を付けるんだ。”

 ハルキが問いかけて、フォースが答える。

「分かった・・すぐにアイツらを倒すぞ!」

「オレとイサミが先に行く!フォースが1秒でも長く戦えるように・・!」

 フォースに呼びかけるハルキに、カツミが呼びかけてきた。ハルキが頷いて、カツミとイサミが前に出た。

「セレクト!クリスタル!」

 カツミとイサミがそれぞれタロウクリスタル、ギンガクリスタルを展開する。

「まとうは火!紅蓮の炎!」

「まとうは水!紺碧の海!」

“ウルトラマンタロウ!”

“ウルトラマンギンガ!”

 2人がルーブジャイロの中央にタロウクリスタル、ギンガクリスタルをセットした。

“ウルトラマンロッソ・フレイム!”

“ウルトラマンブル・アクア!”

 カツミとイサミがロッソとブルに変身して、ティラミーゴたちと合流した。

「うおー!何だ、こりゃー!?

「これが光の巨人、ウルトラマンというのか・・!」

「こんなかっこいい宇宙人がいるなんてね!」

 コウ、メルト、アスナがロッソたちを見て声を上げる。

「オレたちもアイツらに負けない力を持っている。そうだろう?」

「そうだね、兄さん。やるよ、コウ!」

 バンバが言いかけて、トワが答えてコウに呼びかける。

「メルト、アスナ!」

「うんっ!」

 コウの声にメルトとアスナが答えた。ティラミーゴ、トリケーン、アンキローゼが変形して合体を果たす。

 騎士竜の巨人「キシリュウオー」が誕生した。

 ハルキが意識を集中して、フォースブレスを構えた。

「フォース!」

 ハルキがフォースブレスを前に掲げて、フォースに変身した。

「ハ、ハルキくん・・・!?

 その変身の瞬間を、ナツが目撃していた。

「ハルキくんが・・あのウルトラマン・・・!?

「ナツさんに、ハルキが変身するところを見られた・・・!?

 動揺を隠せなくなるナツを見て、ソウゴも動揺を感じていた。

「ハルキの今のチームのメンバーか・・・!」

 アキトもナツを見て、笑みをこぼした。

「変身。」

 アキトは変身をして、ナツを狙って歩き出す。その彼の前にライ、聖也、ノゾムが立ちはだかった。

「お前の相手はオレたちだ!」

「早く本部に戻るんだ!」

 ライがアキトに、聖也がナツに呼びかける。

「リュウソウジャーとかは向こうにかかりっきりになっちゃったけど、それでもオレたちは君を止めるよ・・!」

「お前がオレたち全員に勝つことは不可能だ。覚悟を決めることだな。」

 ソウゴとゲイツが言いかけて、ハルキと対峙する。

「これを使えば危険を伴うことになるが・・このまま敗北を喫するよりはいい・・・!」

 アキトは思い立つと、フォースドライバーのレバーを逆手で持って引く。そこから半回転させてから押し込んだ。

 するとアキトのまとう装甲が黒く染まって、黒いオーラが煙のようにあふれ出してくる。

「な、何だ・・!?

「とんでもない力を発揮しているようだな・・・!」

 ライが声を上げて、ジョーがアキトの状態を見て呟く。

「これでオレの力がさらに飛躍した・・すぐにお前たち全員、排除してやるぞ・・・!」

 アキトが声を振り絞って構えを取る。彼は全身に力を込めていた。

「来るぞ!」

 ゲイツが呼びかけた瞬間、アキトが動き出した。その動きは目にも留まらぬスピードになっていた。

 ライたちがアキトの高速の攻撃を受けて、強く突き飛ばされる。

「は、速い・・それに強力だ・・・!」

 聖也がアキトの力を痛感して毒づく。ソウゴがアキトに目を向けて、未来を見抜こうとする。

 アキトが正面から向かってくるビジョンは見えた。だがスピードの速さのため、ソウゴはかわせずに体にキックを叩き込まれた。

「先読みができても、体がついていかないようだ・・・!」

 ソウゴがアキトの高まっている力に、危機感を感じていく。

「目には目を、スピードにはスピードだ・・!」

 ゲイツが言いかけて、ゲイツリバイブ・疾風の力を駆使して加速する。彼とアキトが高速の攻防を繰り広げる。

 しかしゲイツでもアキトの高速に追いつけず、ゲイツがキックを受けて地上に叩き落とされる。

「ゲイツ!」

 ソウゴがゲイツに叫んで、着地したアキトに視線を戻す。

「これがリミッター解除を果たしたオレの力だ・・この戦闘力、先ほどオレを追い詰めた力をも超える・・!」

 アキトが鋭く言って、再び高速で動き出す。

「ぐっ!」

 ノゾムがアキトに首をつかまれて、地面に押し付けられる。

「くそっ!放せ!」

 ノゾムがアキトの腕をつかんで押し返そうとする。しかしエクシードフォルムの力でも、アキトの力をはねのけることができない。

「ノゾム!」

 ライが駆けつけて、アキトに向かってクロスカリバーを振りかざす。アキトがノゾムから手を放して、その手でクロスカリバーの刀身をつまんで止めた。

「なっ!?

 攻撃を止められてライが驚く。アキトが左手を振りかざして、ライを突き飛ばす。

「このヤロー!」

 ノゾムが怒号を放って足を突き出す。蹴り飛ばされるアキトだが、すぐに体勢を整えて着地した。

「これでお前たちの勝利がなくなったことを確信した。お前たちにとどめを刺す・・!」

 アキトが笑みをこぼして、黒いオーラを発しながら上昇する。

“スペシャルチャージ!”

 マーベラスたちがゴーカイシルバーのレンジャーキーをセットしたゴーカイガレオンバスターを構えた。

「くらえ!」

“ラーイジングストラーイク!”

 マーベラスたちがゴーカイガレオンバスターを発射して、光線を放つ。しかしアキトの発するオーラに光線がかき消された。

「何っ!?

 驚きの声を上げるマーベラスに、アキトが目を向ける。

「ムダな抵抗はしないことだ・・苦しみが長引くだけだ・・・!」

 アキトは鋭く言うと、オーラを霧状から光に変えて放出する。

「おわっ!」

 光が地上に落ちて爆発が起こって、マーベラスたちもライたちも押されてうめく。

「もう1度キックをやるよ・・あれだけのパワーに打ち勝つには、こっちも全力を出し切らないと・・!」

 ソウゴが呼びかけて、ライたちが頷いた。

“ライダースマッシュ・カメーン!”

“ライダースマッシュ・ヴァーイス!”

“フィニッシュターイム!”

“エクシードチャージ!エクシードスマーッシュ!”

 ライ、聖也、ソウゴ、ゲイツ、ノゾムがそれぞれのベルトを操作して、エネルギーを集めてジャンプする。

“ビヨンドザタイム!”

 ウォズがビヨンドライバーのレバーを開閉して、ソウゴたちとともにジャンプする。彼らが足を突き出して、アキトに向けてキックを繰り出した。

 アキトがオーラを放出して、ライたちのキックを受け止める壁にした。ライたちのキックを食い止めている間に、アキトが足にエネルギーを集めてキックを繰り出した。

 ライたちのキックの光が、アキトの黒いオーラとキックに打ち砕かれた。ライたちが突き飛ばされて、地上に叩きつけられる。

「そ、そんな・・・!?

「我々の力をここまで引き出して集めても、あのライダーには敵わないと・・・!?

 ソウゴとウォズが驚きの声を振り絞る。

「お前たちの全力はオレには通じない・・オレがとどめを刺すことで、お前たちは完全に終わる・・・!」

 アキトが言いかけて、さらにオーラを発していく。

「こうなったら、冷凍圧縮で封じ込めるしかないですよ!」

「一か八かやってみよう!」

 鎧とドンが呼びかけて、マーベラスたちとともにレンジャーキーを取り出した。

「ゴーカイチェンジ!」

“ターイムレンジャー!”

 マーベラスたちが未来戦隊タイムレンジャーに変身した。

「ボルテックバズーカ!」

 彼らがバズーカ砲「ボルテックバズーカ」を呼び出した。

「ターゲット!」

「ロックオン!」

 アイムとマーベラスが掛け声を上げて、ボルテックバズーカをアキトに向けた。

「ブレスリフレイザー!」

 ボルテックバズーカから冷凍圧縮の効果のあるエネルギー弾が発射された。エネルギー弾が受けたアキトが、オーラごと封じ込められたかに見えた。

 だがアキトは圧縮冷凍をされる直前で打ち破った。彼から出ているオーラが、冷凍圧縮を打ち破ったのである。

「そんな・・これも効かないのか・・!?

 鎧がアキトを見て動揺を隠せなくなる。

「お前たちも終わりだ!」

 アキトが体から出ているオーラを集めて、光の球にして放った。光の球が地上に落ちて大きな爆発を巻き起こして、ライたちが吹き飛ばされる。

 土煙の舞う地上に、アキトがゆっくりと降りてきた。

「しぶといヤツらだ・・全員生き延びている・・・!」

 起き上がろうとするライたちを見渡して、アキトがいら立ちを噛みしめる。

「ならば次でとどめとするだけだ・・お前たちに勝ち目がないことに変わりはないのだから・・!」

 アキトが言いかけて、またオーラを光の球にして構えた。

「次は耐えられはしない・・まとめて消えるがいい・・・!」

「やられるわけにいかない・・お前が憎んでいる人間も許せないが、心優しい人まで手に掛けていいことにはならない・・!」

 笑みをこぼすアキトに、ライが声を振り絞って言い返す。

「愚か者そのものだけではない・・愚か者に賛同する者もまた、愚か者となる・・ならば粛清の対象だ・・!」

「お前・・自分が神にでもなったつもりか・・・!?

 自分の意思を貫くアキトに、ノゾムが怒りをふくらませていく。

「オレたちもお前も人間だ・・少なくとも神じゃない・・そのお前が神のように振る舞うのは思い上がり・・絶対に認めはしない!」

「オレにしか世界を変えられない・・それを阻むことこそが愚かしいことだと気付け・・死とともに受け入れるしかない・・・!」

 怒号を放つノゾムだが、アキトは考えを変えない。彼はライたちにとどめを刺そうと、光の球を放とうとした。

 

 巨大化したハサミジャガーたちをフォース、ロッソ、ブル、そしてコウたちが呼んだティラミーゴたちが迎え撃った。ギンガ、ビクトリー、レオ、アストラ、パトカイザー、ゴッドガンダムも彼らに合流した。

「これだけの仲間がいるのは、心強いかも・・!」

「しかし我々はエネルギーを消耗している。1度回復を図る必要がある・・!」

 トワが笑みをこぼすと、レオが言葉を返す。彼とアストラ、ギンガ、ビクトリーのカラータイマーは点滅をしていた。

「オレたちはまだまだ戦えるが、今からの戦いの主力はお前たちになる!気を引き締めろ!」

 ドモンが呼びかけて、カツミとイサミ、コウたちが頷いた。

「フォース、アキトのことがまだ気になっているけど、今は巨大怪人たちを倒すことに集中しよう・・!」

「もちろんだ。力を合わせよう、ハルキ・・!」

 ハルキとフォースも声を掛け合う。フォースが先陣を切って、ハサミジャガーたちに向かっていく。

 ハサミジャガーが振りかざすハサミを、フォースが素早く回避していく。

「オレたちも行くぞ!」

 コウがメルト、アスナとともにリュウソウルを投げ放った。

“ケ・ボーン!”

 ナイトモードのリュウソウルが巨大化する。レッドリュウソウルが変形したティラミーゴと合体して、同じく変形したトリケーン、アンキローゼとも合体する。

「キシリュウオー・スリーナイツ!」

 騎士竜3体が合体した巨人「キシリュウオー」が誕生して、コウ、メルト、アスナが乗り込んだ。

 キシリュウオーがドーラスケルトンに向かっていく。キシリュウオーが右手の刃「ナイトソード」を振りかざす。

 ドーラスケルトンがナイトソードで首を切られるが、頭が宙に浮いて、胴体が剣を持ってキシリュウオーに襲い掛かる。

 キシリュウオーとドーラスケルトンがナイトソードと剣をぶつけ合う。

「やはり頭を倒す以外にないようだ・・!」

「頭のほうはオレに任せろ・・!」

 メルトが言いかけると、バンバが声を掛けてきた。

「ミルニードル!」

 バンバの声を受けて、ミルニードルが針「ナイトニードル」を発射する。ナイトニードルがドーラスケルトンも頭に命中して、彼の胴体の動きが鈍くなる。

「今だ!」

 コウが声を上げてメルト、アスナとともにリュウソウケンを構える。キシリュウオーが構えたナイトブレードに、エネルギーが集まる。

「キシリュウオー・ファイナルブレード!」

 キシリュウオーがナイトブレードを振りかざして、ドーラスケルトンの体を切り裂いた。体が倒れて爆発して、ドーラスケルトンの頭も空中で吹き飛んで消滅した。

「やったー!オレたちの勝ちだー!」

 コウがドーラスケルトンに勝利したことを喜ぶ。

「あっ!危ない!」

 そのとき、トワがコウたちに向かって呼びかける。次の瞬間、キシリュウオーが後ろから突き飛ばされて倒れる。

「おわっ!・・な、何だ!?

 ふらつくコウが声を荒げる。キシリュウオーを突き飛ばしたのは、巨大な怪人、ドーラタイタンだった。

「また敵が出てきたの!?

「戦うしかない・・他のみんなに負担を掛けさせるわけにいかない・・!」

 アスナが声を上げて、コウが声と力を振り絞る。

「僕たちも行くよ、兄さん!」

「あぁ、トワ・・オレたち5人と騎士竜5体の力を合わせる!」

 トワとバンバが声を掛け合って、タイガランスとミルニードルに乗り込んだ。キシリュウオーにさらにタイガランスたちも合体する。

「キシリュウオー・ファイブナイツ!」

 5体の騎士竜が合わさったキシリュウオーが、ドーラタイタンの前に立ちはだかった。ドーラタイタンが剣を持って、キシリュウオーに向かっていく。

 キシリュウオーが左手に盾「ナイトシールド」を、右手に槍「ナイトランス」を持つ。ドーラタイタンが振りかざす剣を、キシリュウオーがナイトランスでぶつけ合って、ナイトシールドで防いでいく。

 ドーラタイタンがさらに剣を振りかざして、キシリュウオーがナイトランスで受け止めた。

「トリケーンカッター!」

「タイガースラッシュ!」

 キシリュウオーが右肩の「トリケーンカッター」を振りかざして剣をはじいて、続けてナイトランスでドーラタイタンを切りつけた。

「ミルニードルアタック!」

 キシリュウオーが胸部の針とドリルを突き出して、ドーラタイタンを突き飛ばす。

「ティラミーゴバースト!」

 キシリュウオーが掲げたナイトシールドから雷を放って、ドーラタイタンに命中させる。

「アンキローゼショット!」

 キシリュウオーが左肩のキャノン砲を発射して、追い打ちをかける。ダメージが増して、ドーラタイタンがふらついて地面に膝を付けた。

「行くぞ、みんな!騎士竜たち!」

 コウが呼びかけて、メルトたちとともにリュウソウケンを構えた。同じく構えを取ったキシリュウオーから、光があふれる。

「キシリュウオー・ファイナルアルティメットスラッシュ!」

 キシリュウオーが5体に分身して、一斉に切りかかる。ドーラタイタンが連続で切りつけられて、力尽きて倒れた。

「よし!もう1体も倒したぞ!」

「このままみんなの援護に向かうぞ!」

 コウがまた喜んで、バンバが呼びかける。キシリュウオーがフォースたちの援護に向かった。

 

 フォースの正体はハルキだった。それを目撃したことへの動揺を抱えたまま、ナツは1度本部に戻ってきた。

(ハルキくん、フォースとなって戦っていた・・私たち以上に、大変な思いをしていた・・・)

 ハルキの抱えている辛さが自分が思っていた以上のものだったことに、ナツは心を揺さぶられていた。

(私にできることはないかもしれない・・それでも、ハルキくんの負担を少しでも軽くできるなら・・・!)

 ハルキを助けたいという思いをふくらませて、ナツはトウジのいる指令室にたどり着いた。

「ナツ隊員、無事だったか・・・!」

 トウジがナツの帰還に笑みをこぼす。

「隊長、フォースガンダムは出せますか・・!?

「フォースガンダム!?・・修復は完了しているが、ハルキとの連絡が取れない・・・!」

 ナツの問いかけに、トウジが深刻な顔を浮かべて答える。

(ハルキくんがフォースに変身しているから、連絡がつかないのね・・・!)

 ナツがハルキの現状について考える。

「私が乗ります!私に行かせてください!」

「ナツ隊員が!?フォースガンダムは、Gパニッシャー以上の高度な操縦が必要になる!その技術を持っているのか・・!?

 フォースガンダムに乗ることを志願するナツに、トウジが忠告する。

「ハルキ隊員は今も必死に戦っているんです・・私もこのまま何もしないで、彼に負担を掛けてばかりというわけにはいきません・・!」

 自分の決意を固めて、ナツがトウジに進言する。彼女の決心が揺るがないものだと悟って、トウジは頷いた。

「よし、やってみろ・・ハルキたちと協力して、フォースたちを援護するんだ!」

「隊長・・・了解!」

 トウジが投げかけた指示に、ナツが笑みを浮かべて答えた。彼女は敬礼をしてから、フォースガンダムのあるドックへ向かった。

 修復と整備が完了しているフォースガンダムに、ナツが乗り込んだ。彼女は機体のデータと変形データをチェックする。

「新しいデータが入っている・・ハルキくんが構築したのかな・・・?」

 新しい変形データが入っていたのを確かめて、ナツが呟く。

「今はフォースの、ハルキくんの援護に専念しないと・・・!」

 ナツは気持ちを切り替えて、発進と戦闘に備えた。

「フォースガンダム、行きます!」

 ナツの操縦するフォースガンダムが、Gフォース本部から発進した。

 

 Gパニッシャーが戦闘でのダメージを受けて、ギンとイズルはフォースたちの援護に向かえないでいた。

「ちくしょー!こんなときに何もできないなんてー!」

「文句を言う暇があったら、少しでも機体が動けるようにしなくちゃ・・!」

 不満を叫ぶギンに、イズルがGパニッシャーの修復をしながら答える。

「んっ!?イズル、フォースガンダムが出てきたぞ!」

 ギンがフォースガンダムに気付いて声を上げて、イズルも目を向ける。発進したフォースガンダムが飛翔していた。

「直ったみたいだね・・フォースに向かっているみたい・・!」

 イズルがフォースガンダムを見て呟きかける。

“ギンさん、イズルさん!”

 ギンたちの通信機からフォースガンダムからの通信が入ってきた。

「その声、ナツさんか!?もしかして、君がフォースガンダムに乗ってるのか!?

“ハルキくんのようにうまくは動かせないけど、やれるだけやってみます!”

 驚くギンにナツが呼びかけてきた。

「待って、ナツさん!いくらフォースガンダムでも、1機だけで行くのはムチャだよ!」

“それは分かっています・・でもみんなもハルキくんも戦っているのだから、私が何もしないわけにはいかない・・!”

 呼び止めるイズルだが、ナツは思いとどまることなく、フォースガンダムを前進させた。

「勇ましいことだな・・あんなの聞かされて、オレたちが何もしないわけにいかないな・・・!」

 ギンが背中を押された気分を感じて、笑みを浮かべて修復作業を進める。

「そうだね・・でもハルキ隊員は、今どこに・・・?」

 彼に頷くも、イズルはハルキのことを気にした。

「ハルキ隊員、応答して!どこにいるの!?

 イズルが呼びかけるが、ハルキからの応答はない。

「応答がない・・早く修理を急ぐ理由がまたできたかもしれない・・!」

 イズルが言いかけて、ギンが頷いた。2人はそれぞれGパニッシャーの修理を急いだ。

 

 

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